週末、ついに16/17シーズンのEPL(English Premier League)が開幕した。オープニングゲームから数日のあいだ気を失っていたので、ちまたの喧騒について詳しくはわからないが、フットボールの季節がやってきたことに興奮しているファンも多いに違いない。
今季からプレミアリーグのロゴが変わったことも、事前にニュースになっていたから知っていた人も多いのではないだろうか。試合中のスコア表示や画面切り替えのトランジション効果が新しくなっていて新鮮に感じた。今季からはスポンサー企業の名前(バークレイズ)が入らないごくシンプルな名称とライオンをかたどっただけのロゴマークになった。
近年はヨーロッパで勝てないというフットボールの実力はともかく、世界でもっとも人気の高いプレミアリーグは近年巨大ビジネスになっており、ロゴを始めとしたVI(Visual Identity)の刷新もデザイン業界ではまれに見る巨大なプロジェクトであったことは想像に難くない。
日本の建築物件ばかりを掲載している建築・デザイン系ウェブサイトの老舗、Dezeen Magazine(http://www.dezeen.com/)が、今日、プレミアリーグのリブランディングについて取り上げていた。
今回プレミアリーグのVIの刷新を担当したのは、ロンドンとサンフランシスコに拠点を持つDesignStudio。日本でも話題のairbandbを始め、数々の優れたデザインを作り出すことで知られるデザインファームである。
以下抄訳。
DesignStudioによる英国プレミアリーグのミニマル・リブランディング
かなりミニマルなライオン頭のロゴで、イングランド・プレミアリーグの16/17シーズンが始まった。
ロンドンとサンフランシスコで活動する「DesignStudio」は、1992年以来のリーグの伝統的なライオンロゴを、よりそぎ落とすことで進化させた。
プレミアリーグの組織委員会は、16/17シーズンのVIリニューアルについて「モダンかつフレキシブル」というテーマを課した。
「わたしたちは出来上がったものにとても満足していますよ。プレミアリーグを取り巻くみんなを祝うVIだね」プレミアリーグのマネージング・ディレクター、リチャード・マスターズは語った。
デザインは元々のロゴのキーとなる要素をそぎ落としていった。ボールやライオンの身体といったもの。冠のデザインは2007年からのロゴから踏襲されたものだ。
その他の大きな変更としては、バークレイズ・バンクがロゴから消えた。これはプレミアリーグが今季、冠スポンサーをつけなかったことによる。プレミアリーグ創設以来、初めてのことだ。
「包括的な目標としてはプレミアリーグのとても大きな文化的シフトを達成することでした。そして組織にあった誤解を指摘すること」DesignStudioのファウンダー、ポール・スタッフォードはDazeenに語った。
「わたしたちの調査では、リーグへの意見は試合自体へはポジティブであるのにくらべて、ビジネスに関してはなぜかネガティブだということでした」
「今年は新しいプレミアリーグのブランディングが始まる最初の年になる。試合をどう認識し直すかというチャンスでした」彼はいった。
新しいロゴは広く人びとの目に触れるだろう。プレミアリーグは212の地域で放送され、このVIはスタジアム、広告、ユニフォーム、マーチャンダイズ、チケット、テレビのグラフィック、そして10億個のナイキのボールにもプリントされる。
これらを実現するために、DesignStudioは異なる目的ごとに対応できる「パーツ・キット」を提案した。大小のロゴバージョンはもちろん、テキストのあるなし、異なるバックグラウンドカラーやパターンも。
「平面的なコミュニケーションのかわりになるように、わたしたちはどんなものにでもうまく適応できるツールキットを提供しました」スタッフォードは語る。
最近では、著名なブランドの数々がよりミニマルなデザイン・アイデンティティへと向かっている。
2010年、デザイナーAntrepoが行った、スーパーで見かけるありふれた商品のコンセプト・デザインがヴァイラルで拡がったことがあった。この手のアプローチのもっとも初期のデモンストレーションのひとつである。
プレミアリーグの新VIはとにかくビビッドカラーが目につく。シンプルで力強い。DesignStudioのウェブサイトでは、モーショングラフィックを含めそのデザインの一端を見ることもできる。
これは始まりにすぎない。DesignStudioでは「パーパス・ビルド」でさまざまな目的に合わせたプレミアリーグVIを開発していくとのことである。