「契約をまっとうする」と事あるごとに発言しているように、ヴェンゲルは自ら退任を希望しないし、クラブもヴェンゲルが続投を望むようならあえてリスクを取る必要性もないので、ファンやメディアがいくら騒ごうが、来季以降もヴェンゲルは続投するはずだ。
とはいえ、タイトルを賭けた崖っぷちの試合で、もっとも負けたくないチームに見るも無残に敗れるという、一般のビッグクラブであれば解任は避けられない事態が起きているのは事実。
#WENGEROUTのハッシュタグが盛り上がるなか、各メディアが「ヴェンゲル後」の監督候補をこぞって挙げている。これまでにあまり噂のなかった人選をしているメディアもあったりで、なかなか面白いのでこれまでに候補に挙げられた次世代アーセナルの監督候補の一覧をまとめてみたい。
ヴェンゲル・アウト! 次の監督候補
「The Sack Race」というサイトがある。その名のとおり、クラブの監督解任にまつわるニュースやオッズを取り上げたサイト。基本的にオンライン・ベッティングのアフィリエイトで成り立っていると思われる、なかなかおもしろいサイトである。
さまざまなメディアがさまざまな次期監督を予想しているが、ここではTheSackRace.comでのランキング(2017.2.8)を利用して一覧してみようと思う。順位については、SKY BETとPADDY POWERというブックメイカーのオッズでランキングされていて、バラバラにラベルがついているのであまり厳密な順位ではないようだ。※SKY BETのサイト上のオッズとも結構差があるのでどうなっているのかよくわからない。
Next Arsenal Manager Betting | Odds on Arsene Wenger To Be Sacked | The Sack Race
- Massimiliano Allegri Current Team: Juventus
- Eddie Howe Current Team: Bournemouth
- Patrick Vieira Current Team: New York City FC
- Joachim Low Current Team: Germany
- Ralph Hasenhuttl Current Team: RB Leipzig
- Luis Enrique Current Team: Barcelona
- Ronald Koeman Current Team: Everton
- Thierry Henry Previous Team: None
- Roberto Mancini Previous Team: Inter Milan
- Laurent Blanc Previous Team: Paris Saint Germain
- Marco Silva Current Team: Hull City
- Brendan Rodgers Current Team: Celtic
- Diego Simeone Current Team: Atletico Madrid
- Thomas Tuchel Current Team: Borussia Dortmund
- Unai Emery Current Team: Paris Saint Germain
- Roger Schmidt Current Team: Bayer Leverkusen
- Claude Puel Current Team: Southampton
以上17位まで、ブックメイカーが予想する次期監督候補ランキングである。
次期監督はアッレグリで決まり?
このなかで、アーセナルの次期監督候補として最近とくに注目されているのが1位の現ユヴェントス監督のマッシミリアーノ・アッレグリだろう。
※画像はWikipediaより
Wikipediaによると、ACミランを成績不振で解任されたあと、コンテの後任で14/15シーズンにユヴェントス監督に就任。セリエA優勝を達成、さらにユヴェントスにとって20年ぶり10回目となるコッパ・イタリアを制覇、CL決勝進出(決勝でバルセロナに敗れる)。15/16シーズンにはセリエA5連覇。2018年まで契約延長。
イタリア国内リーグだけでなくヨーロッパでも一定の成績を残すなど、アーセナル次期監督候補としては十分な実績の持ち主である。残りの契約年数も短いことが予想を加速させている可能性はある。コンテのEPLでの成功は、イタリアでの経験がイングランドで十分通用することを証明している。
現実的にはエディ・ハウ?
一方で、おそらくもっとも現実的なヴェンゲル後任として捉えられているのが、現ボーンマス監督のエディ・ハウだ。
※画像はWikipediaより
ボールをキープして攻撃するというプレイスタイルがアーセナルのそれに近いということや、年齢も若く(現在39歳)、短期間に勝てるチームを作り上げたという(潜在的な)才能は高く評価されている。
だが、現実には今シーズンのEPLで現在14位、もちろんビッグクラブでの監督経験やヨーロッパでの経験もなく、アーセナルの監督として誰もを納得させるには実績が足りないのは否めない。
また、現在のアーセナルに失われているのがメンタル・タフネスだとすれば、それを植え付けるだけのカリスマを持った監督の就任が望ましく、「若い」ということが逆の効果を生む可能性はある。
ヨアヒム・レーヴでエジルも満足
パトリック・ヴィエラはひとまず置いといて、ドイツ代表チームを率いるヨアヒム・レーヴもたびたびアーセナルの次期監督候補に挙げられる人物だ。
※画像はWikipediaより
不潔であることを除けば、申し分のない監督だろう。少なくともエジルをサイドに置くことができるという時点で、ヴェンゲルより有能である可能性がある。
ヴェンゲル以来のチームの「フランス化」から、エジル、メルテザッカー、ムスタフィといった選手を筆頭にした、アーセナルの「ドイツ化」が進められるのかと思うと非常に興味深い。
ドイツチームを率いてワールドカップで優勝している監督である。勝者のメンタル。まず間違いはないはずだ。
その他の監督
参考までに、Sky Betの直近のオッズも載せておこう。
シメオネが4番めにランクされている。3位のヴィエラってそんな噂されてたっけという感じである。ベルカンプも結構上位。アンリを含め、レジェンドの監督就任はけっこうなギャンブルであるように思う。
ヴェンゲルからのフレンチ・コネクションで見ると、ブラン、エメリ、デシャンあたりも捨てがたいところか。
ひっそりと紛れるジョゼ・モウリーニョ(33/1)に苦笑を禁じ得ない。
名古屋コネクションでストイコビッチ(25/1)もしっかり入っている。
アーセナル時期監督の条件
しかし、常識的に考えてアーセナルレベルのクラブを率いることができる監督という条件で考慮すれば、こんなにたくさんの候補は挙げられない。
- ビッグクラブでの成功・経験
- ヨーロッパでの成功・経験
- 選手が憧れる名声・カリスマ・人格者
- アーセナルのプレイスタイル(守る必要があるのか?)
加えて、「優勝請負人」を自認してクラブを転々とするようなタイプの監督は、それこそアーセナルのようなクラブには似つかわしくないように思う。じっくり腰をすえて選手の育成を含めクラブの未来を託すことができる人物。それを満たせるのはせいぜい数人だろう。
このなかから、新しい監督が選ばれるのか、はたまたまったく予想外のところから新しい監督を連れてくるのか。
ところで、Sky Betでのヴェンゲル退任のオッズは現在20/1。Skyさんだってヴェンゲルが辞めるなんて信じていないのだ。