先日サンティ・カソルラがあと5ヶ月は復帰できないかもしれないというニュースは世界を駆け巡った。すでに32才という年齢で引退も視野に入ろうかというところ、サンチャゴは復帰を諦めないとコメント。全世界100億人グーナーが彼の笑顔を思い出し涙を拭った。
そのニュースの後、カソルラの後継者をどうするか問題で某メディアが特集記事を組んだりしているように、長期離脱をへてカソルラが本来の調子を取り戻せるかは疑問を持たれている。
また、このまま順調に回復したとしても復帰が見込まれるのは11月。フィットすればCMかつゲームメイカーとして彼ほど心強い選手もいないのであるが、アーセナルにとっては来季の戦力としてカウントしていいかどうかは微妙なところでもある。
ところでちょうど今朝起きてジルーのハットトリックがあったということで昨夜のフレンドリーマッチ「フランスVSパラグアイ」のハイライトビデオを観ていた流れで「スイスVSベラルーシ」を視聴したところ、ストーク・シティでおなじみの小さな巨人オロナミンCことジェルダン・シャキリ(Xherdan Shaqiri)のスーパーゴールでスイスが勝利していた。このロングシュートすごいよ。一見の価値がある。
EUROでの活躍やストークでのプレイもたまに観ていて、前からいい選手だなあとは思っていた(その前の時代は知らない。バイエンやインテルにいたんだってね)。アーセナルが獲ればいいのにとも思っていたものだ。だいたいストーク・シティって意味がわからない。クラウチと並べてみたかっただけだろ。
そんなこんなでシャキリをぼうっと観ていたら、そういやカソルラに似てるよなあと思い始めてきた。おもに風貌が。というより身長が。そしてボール扱いが。まあシャキリって小さいけどかなりのガッチリ体型だし、見た目はいうほど似てないけど。
そして思い至ったのである。もしかしたらシャキリはカソルラの後釜にちょうどいいんじゃないだろうかと。スイスでのチームメイト、ジャカと並べられるというのも、大きなメリットである。
カソルラとシャキリを比べてみる
データはWhoScored.comから。
カソルラ32才。シャキリ25才。若い。
カソルラ168cm。シャキリ169cm。※きっとふたりともサバ読んでる。
カソルラは前も後ろめもセンターが主戦場でワイドは適していない。典型的なゲームメイカータイプだ。シャキリはセンターと右ワイド前めが主戦場(左もやることがあるようだ)の攻撃的ミッドフィルダー。
プレイ分析では、ふたりのキャラクターはかなり似ているといっていいだろう。共通している部分は多く、
- ボールを持つ
- ドリブル
- キーパス
- スルーボール
- セットピース蹴る
- ロングシュート
- ディフェンス弱
強いてそれぞれのプレイの特徴を挙げるならば、
カソルラはパスが鬼強。レイオフ(ボールをほかの選手がシュートしやすいように落とす)しがち。
シャキリはクロスが強。長距離シュートしがち。
くらいか。
シャキリのクロス強は単にポジションの影響だと思われる。基本的にクロスボールはサイドから上げるもんだからね。
カソルラとシャキリの比較マトリックス
こっちはSquawkaから。カソルラは怪我で欠場した試合が多く今季のデータが少ないので15/16シーズンのデータ。シャキリは16/17。
プレイスタイルの傾向が似ているとはいえ、カソルラとシャキリではポジションが違うため、こうして一括りに比較することはあまり意味はないかもしれない。しかしポジションが違うはずなのにスコアもポゼッション以外はかなり似通った結果になっているのも不思議といえば不思議。
まずアタックスコアは、シャキリの勝利。カソルラがCMで深い位置にいるのに対してシャキリは前でプレイする選手なのでこれは当然だろう。
ディフェンススコアはどちらも低い。まさにどんぐりの背比べ状態。カソルラはCMとしてはこれではちとまずい。
一個飛ばしてパス成功率、それぞれ90%、80%とポジションを考慮するとシャキリのパス性能は非常に高い。
チャンスクリエイテッドはわずかにカソルラの勝ち。CMとAMの選手との比較であると考えればさすがおれたちのサンチャゴとしかいいようがない。
シャキリはカソルラの後継者になれるか
ここで、カソルラの後継者にシャキリはどうかに戻ろう。
ここでいう「カソルラの後継者」とは、つまり「CMでゲームメイク」という現在のカソルラが中盤真ん中あたりで担っている役割を受け継げる選手という意味である。
具体的には、ビルドアップ(ディフェンスラインから前線へのボールのつなぎ)、ボールキープ、ドリブル、正確なショートパスとロングパス、機を見ての攻撃参加、あとはこれはカソルラに欠けている部分ではあるので後継者に必須とするのは酷だが、タックルやボールインターセプトといった守備の貢献。
シャキリをカソルラの後釜にすえるということは、ポジションのコンバートを意味する。ある程度成熟したプロフットボーラーでポジションを入れ替えるということはふつうはあまりされない。
ただアーセナルにはウインガーからCFに鞍替えして大成功したティエリ・アンリはいうまでもなく、ポジション・コンバートに複数の実績がある。
となりにコクランという守備専がいたにせよ、アーセナルのカソルラはポジションコンバートの成功例だ。フィジカルも守備力もないカソルラがCMで光るとはそれまで誰も考えていなかったはずだ。
つまりシャキリがポジションをコンバートされて、CMとして才能を開花させないとは誰にもいえないのである。
ポゼッション能力について
当然ながら現在のアーセナルのプレイスタイルでは、ポゼッション重視のため中盤の選手にはパス能力が要求される。
現状のスコアでは、シャキリはポゼッションスコアが低い。ただし、同じポジションのアーセナルの選手たちと比べてみると極端に低いということもないことがわかる。シャキリがストークでそれだけ攻めのタスクの比重が高い(ボールを失うリスクをかけてプレイする)結果ともいえる。
シャキリと同じくサイドを務めることがあるアーセナルのMF系の選手としてはイウォビやラムジーがいるが、もちろん彼らのポゼッションスコアは高い。
しかしチェンボあたりと比べれば、シャキリのポゼッションスコアは悲観するほどでもないことがわかる。
シャキリはこのなかでは得点率も高いので、ポゼッションスコアの低さは、あくまでプレイスタイルの結果として受け止めるべきだろう。
実際どうなんだろう
来季以降アーセナルが3-4-3をメインのフォーメーションとして使うなら、もしかしたら4の真ん中でジャカの相棒にカソルラを使うという選択肢はそもそもないのかもしれない。(いや3バックで後ろに3人いるからむしろアリなのか?)
CMのカソルラをひとことで評すならば、巧みなテクニックでフィジカルの弱さをカバーしたということになるんだろうが、いつまでも守備の課題が解決されないアーセナルとしては、ジャカの相棒にはやはりバカヨコとか松井Dみたいなフィジカルな選手が理想なんじゃないだろうか。
だったらシャキリがCMでカソルラの後継者になれるかどうかなんて考えても無駄だったかもしれない。
とそんなふうに思う一方で、(好調時の)アーセナルにおけるCMのカソルラ的存在というのは、アーセナルのファンにとってすでに特別なものになっているんじゃないかとも思うのである。笑顔もふくめてアーセナルのセントラルミッドフィールドにあの輝きをもう一度と思っているファンはぼくを含めけっこういるように思う。
じゃあ具体的にカソルラを代替できそうなプレイヤーは誰なのか。一時話題になったイスコとかもう高嶺の花。あれ?シャキリが似てる? 身長が似てる? これはいける。そう思っただけである。現時点で彼は純粋に攻撃的選手であり、彼にCM適性があるかどうかは実際にやってみなければわからないことだ。
シャキリの市場価格は現在12.75Mポンド(transferMarketによる)。現在の契約は2020年まで。
これだけは確実にいえる。われわれにとって、真ん真ん中になんか小さい人がいるという違和感はない。はず。
シャキリより紗霧のがいいよねとかいわないように。