BBC SPORTSにこのような記事が来ていた。エジルとデブルイネを比較した記事かと思って読むと、それは冒頭だけで、あとは今季10試合を終了した節目でプレミアリーグのプレイヤーやクラブのスタッツを材料にあれやこれやとまとめている記事であった。なかなか面白い。
Why Mesut Ozil is as good as Kevin de Bruyne and other Premier League statistics
今季エジルとデブルイネの比較については攻撃面では大きな差はないが、守備面では圧倒的な差があるという事実。もちろんデブルイネの圧勝である。タックルやボールリカバリーはほとんどトリプルスコア。もしエジルがデブルイネだったらアーセナルはどれくらい強かったんだろう(遠い目)。
その他。歴代のスロースターターチャンピオン。
マンUの02-03シーズンがEPL10試合を終えてポイント数18、首位と6ポイント差で優勝したとのこと。今季アーセナルはEPL10試合を終えて19ポイントでまだ優勝の可能性は絶無とはいえないが、首位との差が9ポイントと今季のマンシティが強すぎて逆転の見込みは薄い。今週末アウェイでアーセナルが万が一マンシティに勝つようなことがあればスロースタートチャンプに近づけるが。
さて、今回エントリの本題はそこではなくて、その記事からリンクされていたこちらのMetroの記事。Metroは毎日のようにチェックしているのだけど先月(2017年9月)の記事を見逃していた。
Who is Mesut Ozil angry at? What Arsenal’s legends have said about the German
「エジルは誰に怒ってるのか? アーセナルレジェンドたちがエジルについて語ったこと」。
エジルが怒っているというのは、いうまでもなく批判に晒されていたエジルが自身のSNSで批判は受け入れるとしながらも「stop talking and start supporting(批判はやめて支援をお願いします)」とやったアレだ。
クラブOBに向けての発言だったため、直後にクラブレジェンドのイアン・ライトに、もしアーセナルに少しでも責任を感じているならなぜ新契約にサインしないのか?と矛盾を付かれてしまったが、エジルが自分への批判に対する考えをSNSを通じてダイレクトに表明したことはちょっとした話題となった。
インスタの写真をスワイプしていくと彼のメッセージが読める。
いままでもこのブログでクラブOBがエジルに苦言を呈すのを何度も取り上げてきたが、今回はこのMetroの記事がレジェンドたちのエジルへのコメントをよくまとめてあって面白かったので紹介したい。※編集的な意図かオリジナルの記事では時系列にはなっていないところがあったのでソートした。
エジルに対するレジェンドたちの批判
ティエリ・アンリ
選手たちもまた責任を果たす必要がある。メスト・エジルはどうか。トップ4クラブに対して、今日は8試合目だけど、0ゴールと2アシストだ。それじゃ足りない。結局彼がアーセナルに来てから14アシストした。セスク・ファブレガスを見てごらんよ。彼は1シーズンで16アシストした。選手はここぞというときに活躍する必要がある。2015年4月
現在のところ、彼ら(エジルとサンチェス)はクラブを人質にとっているようなものだよね(※ふたりが新契約を拒否していることについて)。彼らはたしかにすごいよ。でももしその額の報酬を受取るならわたしは彼らに毎週ハットトリックを求めるよ。2016年12月
今年彼は調子をキープすることに苦しんでるね。アーセナルのシャツを着てプレイするときはね、アーセナルのスタンダードを超えていかなきゃならないんだよ。彼がいい試合をするとき、彼はもう誰にも止められないほどだ。彼はワールドカップチャンピオンで、レアル・マドリッドでも勝ったし、アーセナルではふたつのカップを獲った。でもいつもそんなふうにプレイしなきゃ。2017年4月
No.10ポジションで彼がベストのひとりだってことはみんなが知っている。でもときどき彼のクオリティに継続性が付いていかないんだな。2017年5月
リー・ディクソン
もし彼(エジル)がデル・アリが持っているものの半分でも持っていたら。あのナスティな走りとか。彼はいまより10倍はいい選手になってるよ。だって、エジルはデル・アリのいいところを全然持っていないんだから。2017年3月
チャーリー・ニコラス
アーセナルの問題はメスト・エジルがスーパースター・フットボーラーであるということだね。アレクシス・サンチェスもね。なのにビッグゲームでは輝けない。マンUやPSGはエジルのスペースを徹底的に消して、好きにやらせなかった。2017年1月
マーティン・キーオン
もしアーセナルがエジルとサンチェスにさよならをいうなら、それは正しい決断なんだ。今季ふたりはときどき甘やかされてきて、バイエルンに2敗させアーセナルを失意に落とし込んだ。10失点させてね。それが問題のレベルだ。2017年6月
メスト・エジルという選手は、これまでアーセナルのシャツを着た選手のなかでもっともフラストレーションの貯まる選手だよ。彼はお飾りみたいな選手だ。チャンスを創って試合に勝つことはうれしいが、チームのために身を粉にして戦うことができない。ティエリ・アンリやデニス・ベルカンプがプレイするときはすべてを捧げていた。彼らはクリエイティブの天才であると同時に戦いを恐れなかった。2017年8月
エジルは高価な贅沢品だ。彼はボールを持っていないときでも持っているときのようにハードワークしなければならない。なぜ相手選手を追いかけてボールを奪おうとしないのか。そのポジションにいてそれでは十分じゃない。試合をコントロールする必要があるんだ。2017年8月
アラン・スミス
わたしは評判といったものよりもその選手のフォームについて注目したほうがいいと思ってるよ。そしてフォームを見ていったときエジルは試合に入っている感じがしない。彼はいくつかのビッグゲームではラグジャリー(贅沢品)だ。ラグジャリーというのは、つまり彼はアノニマス(匿名)で、彼がいると試合の半分を10人で戦っているようなものなんだ。11人必要なんだよ。ボールを持っていないときはボールを奪うことに考えをシフトさせる。不幸にもエジルにはそういうことがいつでもできる選手じゃないんだな。2017年2月
ポール・マーソン
彼はボールが来るのがいやそうにしていて、ボールから逃げてるみたいだったよ。それじゃダメなんだよね。それじゃあリーグタイトルは取れない。彼はタイトルを取る必要すらない。アシュリー・ウィリアムズを阻止するにはちょっとぶつかれば十分だったけど、彼は諦めたんだ。アーセナルはそんなプレイを許せるクラブじゃない。2016年12月
エジル? わたしは彼のような試合を変えることができない選手にトップ6のクラブがそんな大金を支払うとはとても思えないね。2017年2月
エマニュエル・プティ
彼が試合でいいプレイをしてからだいぶ時間がたっちゃったな。彼が試合を支配してチームメイトたちとともにいいパフォーマンスをしていたときからはもっとかな。彼だってまだいい試合はできるよ。けど、3、4、5週といいパフォーマンスを続けていくとなると、エジルが続けていけるような気がしないんだ。わたしがもっともがっかりしたのが彼の姿勢だよ。彼のピッチ上での敗北主義的な姿勢やチームメイトたちへの無関心とか。2017年8月
以上
エジルへの批判は正当なのか?
というSKY SPORTSの記事も面白い。これもエジル批判が注目されているなかでの先月の記事だがどこかの時点でエントリを書こうと待っていたもの。
Are criticisms of Mesut Ozil fair? The stats on his Arsenal role and record
エジルはもしかしてアーセナル不調のスケープゴートになってるだけなのではないかという観点から始まり、さまざまな切り口でエジルのパフォーマンスを検証している。
- エジルは怠け者?
- ビッグゲームで行方不明?
- エジルは努力が足りない?
エジルが大好きなみんなは詳細をSKY SPORTSウェブサイトで確認しよう。以下画像はすべて当該記事より。
いうほど走ってないわけじゃない。
トップ6におどろきの勝率16%。これでまったく責任がないとはいえないかと。
攻撃はいい。われわれの問題は守備だ。でもそう考えると、守備タスクを免除されたうえでの記録ともいえるのがこの立派なスタッツだ。複雑である。これに近い攻撃力で防御力も高いとかデブルイネ最高じゃん(最初に戻る)。
おわりに。アーセナルにはエジルを使うだけの余裕がない
たしかにエジルは守備が苦手だが、彼がいることがそのままマイナスとはいえない。だって彼のチームはワールドカップで頂点に立ったし、マドリーでもリーガのタイトルを獲っているのだから。彼の攻撃センスをうまく使って成功したチームというものは存在している。
ただドイツでもマドリーでもいいが、彼が多少守備が下手くそでもそれをカバーできる十分な戦力があったともいえる。そうでなければ彼の創造性をチームのストロングポイントにできなかったのだ。
翻ってアーセナルはといえば、ドイツやマドリーと比べればスコッドのクオリティが総合的に劣っていて、たったひとりでも守備を疎かにする選手がいるとバランスが崩れてしまう、その程度の戦力しか持っていないともいえる。ピッチの中央にクロース、モドリッチ、そしてカゼミーロがいるようなチームと比較することは到底できない。
しかし現在のフットボールでは、全員で守って全員で守備をするというのはほとんど常識であり、ジダンの後ろにはつねにマケレレがいた的な「天才ゲームメイカー」を守備職人という「努力」でカバーするような文化というのはますます廃れてきていると思う。守備のカバーが必要なエジルがクラシックなタイプのNo.10だといわれる所以でもある。
今季マンシティでデブルイネが守備タスクをこなしながらエジルと同等の攻撃力を発揮していることは、われわれにとってショッキングな事実としかいいようがない。
エジルをどう使うべきか。というより今シーズン限りで移籍が濃厚と思われている今、彼をどう使うべきだったのか。それを検証することもアーセナルというクラブにとっては無駄なことではなさそうな気がする。