久々にアーセナルと関係ない話題。
フットボールファンおなじみのFour Four Twoにこんな記事が来ており。「Expected Goals(xG)って一体何なの?」。最近よくエクスペクテッド・ゴールズってことばを聞くようになったよねという。
No, seriously: what the heck is expected goals (xG)?
こんなビデオが話題らしい。SKYのSoccer SaturdayでJeff Stellingさんという人が「Expected Goalsって何だよ!誰も聞いたこともないのにさらっと持ち出しんじゃねえよ!フットボール史上もっとも無駄!試合はもう終わってんのにexpectedってなんだよ!ふざけんな!」みたいに激昂しているというおもしろ動画。
Jeff Stelling shared his thoughts over the ‘Expected Goals’ statistic at the weekend 😡😂 pic.twitter.com/SP2MgMuuoQ
— Soccer AM (@SoccerAM) 2017年11月21日
「xG」は予想ゴール
じつは以前にこのブログでもxGに触れたときがあって、そのときはぼくもよくわかってなくて、SKY SPORTSの独自の指標なんて書いてしまったんだけど、スタッツデータの提供で有名なOptaが今夏から新しく提供を開始したスタッツらしい。
Expected Goals、すなわち「期待される(た)ゴール/予想ゴール」。「xG」と表記される。その選手が実際にゴールしたかどうかではなく、その選手がその局面でゴールをどのくらいの確率で決めるべきだったのか、それを示すのがxGということ。平均的な選手が得点するチャンスの確からしさといえばいいか。どんなチャンスでも100%(1.0xG)ということはあり得ないので、必ず0.nという数字になる。0.5xGみたいな。
ふつうそれは入れるっしょという期待値なので、つまり、xGよりも実際のゴールが上回ればその選手は優れたフィニッシャーといえるし、そうでなければフィニッシャーとしてはクオリティが低いといえる。
絶好のチャンスをたくさん外していた数シーズン前のオリヴィエ・ジルーなんかは、xGのほうが実際の得点よりも大きいポイントだったはず。ちなみにToTのハリー・ケインはこの3シーズンずっとxGよりも得点が上回っているらしい。こういう規格外の選手がいないとタイトルは獲れないよな。
われわれはスタッツデータというものを、実際に起こったこと(Event)だけを淡々と積み重ねたもので、分析についてはそのデータを受け取った側が行うというふうに考えていると思う。しかしこのxGについては単なるイヴェントデータというよりはもっと分析側に踏み込んだものになっているように思う。
そういった理由からか、スタッツとしてはちょっとわかりにくいということもあって、少しググれば「What is xG?」といった記事をたくさん見つけることができる。
今回は、おそらく本家が一番わかりやすいだろうということで、Opta社の公式解説ビデオを紹介したい。
Opta公式による解説
GIGAZINE方式でキャプチャの連続ごめん。
「おお、彼はハットトリックを決めるべきだった」「もっとうまくやれなきゃ」「そこで決めなきゃだめ」わたしたちは毎週のようにコメンテーターやファンがこんなふうにいうのを聞きますよね。でも彼らは正しいんでしょうか? まあ、xGでの計測が用いられるまではとてもわかりにくかったんです。
でもxGってなんでしょう?
エクスペクテッド・ゴール(xG)とは?
xGはチャンスの質の測定なんです。Optaは30万以上のシュートを分析して、そのシュートが得点になる可能性を計算しました。ピッチの特定の位置、特定の試合のフェーズの間。そのモデルを7種類の事象に落とし込んで、それが具体的なシュートチャンスにどう影響するか検証したんです。
どんなシュートにもxGバリューがあり、それはそのシュートが結果的にゴールとなるチャンス%です。
xGのサンプル
このペドロのシーンを見てみましょう。彼は抜け出してGKと一対一となります。ボックスに侵入した彼はゴールに近づきますが、アングルはとても狭い。それらの(不利な)要素をすべて取り除けば、ペドロはこのチャンスで得点できそうです。それはおよそ35%で0.35xGとなります。
これはつまり選手がだいたい3回のチャンスで1得点できるというシチュエーションというわけです。
エヴァートン戦でのルミン・コネのゴールは、シュートと高いxGバリューのとてもよい見本です。カザリがクロスを入れます。ボールはディフレクトして1ヤード離れたコネに渡ります。すべての要素を検討して、これはOptaが定義するところの「ビッグ・チャンス」ですが、xGバリューは0.91xGとなります。言い換えれば、選手はこの機会なら91%の確率で得点するということです。
エムレ・チャンによるこのシュートのシーンは、どういうときに得点可能性が低いかを示しています。ボールがこのジャーマンに渡り彼はボックス外からのシュートを選択します。そしてシュートは右にそれてしまう。この距離。この鋭角のアングルではおよそ2%程度しかチャンスはありません。言い換えれば、この状況から得点を決めるには50本ものシュートを打たねばならないということです。
チームか選手個人のxGの合計から、チャンスから平均的にどれくらいゴールできるか、ゴールすべきだったかが示されます。
クラブはこのスタッツをもう2年ほど使っていて、だんだんとメディアでも使用されるようになってきました。
じゃあ、これがわたしたちに何をもたらすか?
15/16シーズン、xGランキング上位者のヴァーディとアグエロの比較
15/16シーズンのプレミアリーグのxGランキングを見てみましょう。レスターがセンセーショナルな優勝を果たしたシーズン、ジェイミー・ヴァーディが1位の得点益を持っていました。彼の合計19ゴール(PKなし)はフォックスのタイトル奪取を助けました。彼の合計xGは18.3です。
言い換えれば、彼はわたしたちが予想するハイクオリティなチャンスをしっかり決めていました。
ヴァーディのコンヴァージョンレートは19%でした。セルジオ・アグエロの18%にとても近い数字です。アグエロはプレミアリーグのなかでもベストのフィニッシャーとして知られていますが、彼の合計20ゴール(PKなし)は14.8xGのチャンスから来ていました。これは彼が平均的な選手のざっと5回以上、より難しいチャンスを決めていたということになります。
15/16シーズンのユヴェントスの事例
ユヴェントスの15/16シーズンも、実際の結果に比べてパフォーマンスが下回っていたといういい例です。
ユーヴェはスロースタートになりました。開幕から10試合で3勝しかできませんでした。しかし予想得失点差はまた別のストーリーを示していました。この時期の結果は、彼らのパフォーマンスが示していたものより悪かったのです。彼らが実際に得点したのは11で、彼らがつくったチャンスからすればだいたい19は取れるはずでした。また、失点も9しましたが、予想された失点ではたった5点だったのです。
上辺から見ただけだと彼らはうまくいっていませんでしたが、しかしxGはチームの成績はすぐに上向くはずと見ていました。
驚いたことに12節あたりから彼らの運命は変わり始めます。チームは得点し始め、xGを超え始めたのです。これが最終的なタイトルへの道筋です。
以上。すべて©Optaで。
さいごに
xGでは、得点という結果だけからは見えないものが見えてくる。アーセナルとリーグ下位のクラブでは得点チャンスの量も質も違ってくるだろうが、仮にxGの低いクラブと得点数が同じだとしたら、チャンスが多いアーセナルの選手たちのフィニッシュ性能が低いということになる。現在のアーセナルはそのようなことはなさそうだが、数シーズン前のチャンスをなかなか決められないといわれていた時期なら、得点がxGを下回っているという状態だったのかもしれない。
xGとゴールは基本的には強い相関関係があるんだろうから、そういったことはあまりないはずだけど、その小さな差を見つけることは、クラブがその選手を分析するにあたってとても重要なデータになるだろう。
例えば得点の絶対数は少なくても、xGを大幅に上回るような得点を上げているストライカーがいたら、それはチャンスの多いビッグクラブで大化けする可能性のあるストライカーであるということだ。
また、難しいゴールは決めるのに簡単なゴールを決められないというような、昔だった印象論だけで語られていたような不思議な選手も、いまだと数字で明らかにされてしまう。
そういえば、これってペナルティのときはどうなるんだろう? どの場面であっても距離や周囲の状況は変わらないはずだから必ず同一のxGになるはずだけれど、時間帯や勝敗の状況なんかも数値に影響するんだろうか。消化試合のPKとチャンピオンズリーグの決勝戦で終盤に同点に追いつこうという状況でのPKじゃキッカーのプレッシャーが全然違う。興味深い。