2017年も終わったということで、今季ここまでのリーグテーブルを確認しよう。
現在6位のアーセナルは残り1試合を消化しても4位のリヴァプールには追いつけず(6ポイント差)、次節にでウエストハムと対戦する5位のToT(2ポイント差)にも追いつけない可能性が高い。しかもアーセナルの次の相手はチェルシーだ。つまり下馬評どおりトップ6最弱の6位。それがアーセナルのEPL17/18前半戦の結果である。
アーセナルはチェルシーに負けるようなことがあると、もはや第二グループよりもバーンリーやレスターとともに第三グループを形成することになるかもしれない。
アーセナルは今季チャンピオンズリーグの出場がないことで恩恵を受けたのか?
【まとめ】フットボールメディア、解説者たちのEPL17-18順位予想(※随時追記)
ここにまとめた人たちだけではなく、今シーズンが始まる前、トップ4に入れるなどの数少ないアーセナルに比較的楽観的な予想をしていた識者の根拠として、今季はUCLの負担がないからというものがあった。
16/17シーズンのチェルシーがEPLのタイトルを獲れたのは、前年の極端な不調からトップ4を逃しUCL出場の負担がなかったおかげともいわれており、それにならえば、アーセナルもヨーロッパリーグはあるにせよ、きっといくらかはチャンピオンズに出場しない恩恵を受けるはずであると思われた。
実際にシーズンが始まってみれば、ヴェンゲル監督にしては驚くほどローテーションを行っていて、リーグ戦とカップ戦(ヨーロッパリーグとリーグカップ)で11人まるごと入れ替えるということも珍しくなく、例年に比べるとレギュラーチームのメンバーが疲労から怪我をしたりということも少なかった。その点ではほかのトップクラブに比べてUCLに出場しなかった恩恵はたしかに受けているといえる。なんせアーセナルはミッドウィークの連戦に耐えきれず毎年この時期は夜戦病棟かというくらい怪我人で溢れかえっているのだから。(もっとも、現在長期離脱のカソルラはもちろん、ラムジー、ジルー、コラシナツ、エジル、モンレアル、コシエルニとレギュラーにもじわじわと故障者が増えてきた)
しかし、今季ここまでのアーセナルの結果を見る限りではプレミアリーグでフィットネスの有利を活かすことができているとはいい難い。
アーセナルのEPL17/18前半戦の結果
ここまで負けがすでに「5」と敗戦が多いのはもちろん悪いが、勝ち続けるべきところで負けているのが痛い。ワトフォードのアウェイマッチでは勝っていれば5連勝だったし、エティハドでの負けを引きずらずNLDの勝利から続いた3連勝のあとシュート33本を乱れ打ちながら負けたマンU戦のショックからか、そのあとは6試合でたったの2勝しかしていない。
シティといえば先日引き分けたパレス戦が話題となっていたが、彼らは20勝2分である。今季彼らの引き分けはアーセナルの負け以上の重みを持っているという事実。頭を抱えたくなる。
アウェイでやられすぎ問題
今季アウェイでのフォームはとくに悲惨だ。アウェイのみの結果がこちら。
緑すくなっ。今季アウェイでの成績はW3D4L4。アウェイ11試合でたったの3勝しかしていない。そのかわりホームでは好調といえるのかもしれないが、ぼくの記憶が確かなら昨シーズンか、その前のシーズンあたりはなぜかホームで勝てずアウェイが好調だった時期があったはず。なぜこういう説明できないことが頻繁に起こるのだろうか。
いい調子を維持できないアーセナルの不安定さというのは、おそらく多くの識者にとってアーセナルの重大な問題だと思われている。なかなか良いパフォーマンスを持続することができない。それがさまざまな問題をいつまでたっても解決できないアーセナルを象徴している。
トップ6 vs アーセナルの前半戦
もちろんUCL出場の負担があってこちらが有利であるはずのトップ6との対戦でも相変わらずいい成績は残せていない。
- リヴァプール D1L1
- チェルシー D1
- シティ L1
- ToT W1
- ユナイテッド L1
すでに6試合を行い、W1D2L3。半分は今季好調だというホームでの戦いだが、たったの1勝しかしていない。
リーグ戦に集中したアーセナルが勝てないのはなぜか
そもそもクオリティの高い選手がいない説
アーセナルにハリー・ケインはいるか。モ・サラーはいるか。ケヴィン・デ・ブライネはいるか。いまのアーセナルにこれから後半戦でブレイクをしそうな選手はいるか。
われわれのスター選手といえば、ラカゼットはここ6試合でゴールなし。サンチェスはここへきてフォームを取り戻しつつあるものの相変わらずの独りよがり。エジルはビッグゲームで行方不明。それでも彼らより優れた選手はアーセナルにはいない。
中盤から後方についてはどうか。残念ながらどのポジションでも他のトップクラブには見劣りがしてしまう。
レギュラーとサブのクオリティの差も心配だ。ウィルシャーがラムジーのポジションで、AMNがコラシナツのポジションでうまくやっていることはポジティブといえるが、ほかの選手はどうだろうか。
おとといのWBA戦、怪我で不在のエジル役を任せられたイウォビがエジルより優れたパフォーマンスを見せただろうか。戦前から劣勢が予想された今季前半のチェルシー戦(A)では、エジルがいないことでイウォビやウェルベックの献身性が奏功することとなったが、逆に創造性を要求されるWBAといった格下相手の試合ではエジルの不在を強く感じさせるものとなった。
マンシティのような一部の本物のトップクラブを除いてどんなクラブだって、そこまで控えの選手を豪華に揃えているわけじゃない。しかしアーセナルはリーグタイトルを狙うといいながら、レギュラーでもサブでも選手のクオリティの総量が必要な水準、しかも最低限必要なそれに達していないのではないだろうか。リーグでなかなか勝てない彼らの様子を観ていて改めてそんな疑問を持つようになった。
ぼくはもともと彼ら選手自身のクオリティというよりも、彼らのクオリティを活かせないマネージメントのほうに疑問をもっていた。ボスやコーチの問題が大きいと。でも一部の選手については、いい加減クオリティ不足を指摘されてもしょうがないような気がしてきている。
レギュラーでいえば、たとえばジャカ。彼はそれこそ鳴り物入りでアーセナルに入団したわけだけれど、ここまで期待した役割をこなせているんだろうか。最近はカードこそもらわなくなったとはいえ、彼がアンカーポジションにいることでアーセナルの守備力が向上したなんて話はついぞ聞いたことがない。また彼のおかげで攻撃力が上がったという指摘もない。ときおり気の利いたパスを見せる以外では、守備にも攻撃にも大して貢献していない。
ウィルシャーだってここまでの彼の足跡を知っているから、たしかによくぞここまで戻ってくれたという気分にはなっているが、今のパフォーマンスだけを見れば本来はもっと活躍を期待したいところだ。
守備のやらかし
今季は攻撃力(決定力の低さ)について言及されることが多いが、それよりも相変わらずひどいのは守備方面だ。マンUに負けたあとにアップしたエントリで指摘したとおり、アーセナルは今季守備のミスが深刻な状況になっている。
EPL17/18「ディフェンシブ・エラー」ランキング。アーセナルはなぜ守備でミスをしてしまうのか
自陣ファイナルサードでのパスミスとか、うっかりボールを持ちすぎて奪われるとか。そういった軽いプレイを危険な場所でやってしまう。そして相手のチャンスになれば高確率で失点してしまう。シュートを打たれてもなかなか失点しないチームがあるなかで、シュートはなかなか打たれないのにたまに打たれれば即失点。それがアーセナル。
AWは攻撃しか好きじゃないことはファンなら誰でも知っている。であれば、クラブはいい加減に守備戦術のテコ入れをあらためて図るべきではないのか。スティーブ・ボールドがコーチになった当時はいくらか守備が向上したといわれたこともあった。だが、いまではそのような指摘をする人もいない。
軽い守備についてはメンタリティについても指摘をしたいが、まずはそれよりも技術や戦術だろう。マンシティだって、昨シーズンには自陣でボールをかっさらわれていた。彼らは相変わらずGKからのショートパスでビルドアップを試みるチームで、そういったミスを選手のクオリティアップや技術(戦術)で克服したのだ。
チームワークが死んでる説
もちろん、サンチェスの話である。
彼とチームメイトたちの不和についてはメディアでも散々騒がれているし、この前のエントリでも書いたとおりで、公然の秘密というかもう隠せなくなっているようだ。アンリが指摘するくらいだもの。ボスは相変わらずそんなものはないと否定しているが、さすがにもはやまったく影響がないとはいえないだろう。
問題が根深いのは不和の原因となる人物がチームで一番優秀な選手だからで、仮にプレイについて言い争いになったとして、彼より結果を残せない選手たちが束になっても敵うはずもない。ふてくされようが、走らなかろうが、ボールをいくら失おうが、彼はしっかり結果を出している(今季ここまで7ゴール3アシスト)。ぐぬぬという声がコシエルニやチェフから聞こえてくるようじゃないか。
そして、チームのなかにはサンチェスにシンパシーをおぼえる選手たちも当然いるだろう。スペイン語でコミュニケーションがとれるベレリンあたりは、クラブへの低い忠誠心をふくめて彼に共感しているような気がする。
サンチェスのおかげでチームが二分している。三分しているのかも。考えてみれば、そんな状態のチームが試合に勝てないのは当然なのかもしれない。
サンチェスを売れ
というわけで、1月にサンチェスを売却するかどうかは彼の契約更新が絶望的であるいま、アーセナルは1月に彼を売って得られる移籍金と彼がシーズンいっぱいプレイすることで得られるポイントとの比較をしているはず。いや、していてほしい。
シーズン開幕前はライバルクラブに利するような取引はすべきでないと思われていたが、もうこれからシティがどれだけ強くなろうがアーセナルにはほとんど関係ない世界の出来事になってしまっている。おそらく今シーズンだけではなく、シティとアーセナルの格差は少なくとも数年は続くのではないだろうか。だからシティに売ることはアーセナルにとってもう問題ではない。
アーセナルは後半戦で、前半に落としたポイントを挽回する必要がある。そして、それをするためにはチームを変える必要がある。サンチェスがいなくなるのは確かに大きな痛手だろう。だが、サンチェスがいないことによるチームの進歩を信じたい。いずれにせよ去るのは時間の問題なのだし。
即戦力としてザハやマレズの名も挙がっている。サンチェスを残すことのほうがむしろ後ろ向きだと思う。
移籍金が得られる最後のチャンス。彼はもう売るべきである。売って次に進もう。