ウエストハムとの試合後に行われたプレスカンファレンスより。Arseblogが書き起こしてくれたものをリスペクトを込めて使わせていただく。一部、試合の感想を除いて翻訳。
(今日はあなたと選手たちにとってどんな日でしたか? 特別な日だったと思うんですが……)
ヴェンゲル:わたしたちはプロフェショナルだし仕事に集中する。プロであるということは、多少感傷的になるようなことがあっても仕事をする能力があるということを意味する。それがわたしが人生をかけてしてきたことだよ。いつも気楽な状態じゃなくてもね。わたしはプロであることはいつだって仕事を優先することだと信じているんだ。ここにいる限り、全力を尽くすよ。
(ファンのチャントは久しぶりです。「One Arsen Wenger」があんなに盛大に、大きな声で。あれは特別な瞬間だったんじゃないですか?)
ファンがハッピーならわたしもハッピーだよ。彼らをハッピーにするためなら自分が苦しんだって構わない。もしいつか彼らがわたしをハッピーにしてくれるというなら、喜んで受け入れるよ。この22年、ここでしてきたどんな決断も良かれと思って、そしてアーセナルのために行ってきた。たとえそれが間違った決定だったとしても、いつもあるプライオリティに沿って行われていた。クラブにとって利益になることをするというね。わたしはクラブを育てる方面でも、選手育成でも、プレイスタイルや結果についても影響を与えようとしてきた。その3つを同時に行うことはいつも簡単というわけではなかった。わたしはあらゆる側面でクラブを力強くできたと信じているよ。それがわたしの目標だったんだ。わたしの後任がつぎの20年でクラブをより素晴らしいものにできるよう道筋を与えること。それがわたしの願いだ。
(後任人事について何かいいたいことはありますか?)
ない。わたしはいつもこう考えている。フットボールクラブにとってもっとも重要なことは、みんなが自分の仕事をすることだ。わたしの仕事はフットボールチームとその結果、移籍のファイナンスについて見ることだ。それがわたしのしてきたことで、つぎのマネージャーを選ぶことはわたしの仕事じゃない。
(このタイミングが退任にするのにいい時期だということをあなたに納得させたものはなんですか?)
声明はわたしがつくったものだ。基本的に必要なすべてを網羅したつもりだ。全体的に、それについて話すときではないと感じている。今シーズンの終わりまで集中したいし、プライオリティをキープしたい。最後まで何ができるかに集中したいんだ。もう少しあとになったら話そうと思う。
(この数日を通して、あなたに去来した感情についてことばにすることはできますか?)
いや。そんな大げさなことはない。複雑な気持ちではある。まずいわなければならないのは、このイングリッシュ・フットボールの世界から得たすべての賞賛に感動している。この国でそのような経験が出来たのは光栄だし、特別だ。フットボールが特別な場所、情熱も特別な場所、ここ以外にはどこにも見つからない。わたしはこれほど特別なものを得られることは人生でもうないと知っている。この20年でプレミアリーグの発展を見られた。これはとてつもないことで、この先いつまでも続いてほしいと思っている。
ちょっとだけ自分の葬式を見ているみたいな気分になった。みんながわたしのことやわたしがどんなだったかを話している。少しだけ興味深いよ。だからわたしはもう死ななくてもいいのかなと。おもしろい体験だ。冗談はさておき、わたしに本当によくしてくれた皆さんには感謝したい。それはわたしたちの仕事でもあるが、身に余る称賛をもらって、ときには身に余る批判もあったかもしれない。それに対処するのは難しかったが、同時に素晴らしかった。
(アーセン、22年間本当にお疲れさまでした。自分が監督を辞めると知った瞬間はどんな気持ちでしたか? どこで何をしていましたか?)
それについて話すときではない。
(アーセン、あなたはずっと契約を守るといっていましたね。それは立派な態度でした。で、今回なぜ気が変わったのですか?)
さっき伝えたように、それについてはいつか話すときもあるだろう。いまではない。
(つい先ほどイングランドでふたたびクラブを率いることはないと話したようですね。それは本当ですか?)
あなたがエモーションについて話しているのなら、わたしのエモーションなんだろうが、エモーショナリーに難しい。わたしはそれなしに生きることがどんなふうかわからないんだ。だから今は絶対ないというのは難しい。いまあなたに話しているのは、わたしがどこか別のクラブに行くというには、わたしはこのクラブに居すぎているということだ。
(退任についてはまだあなたのなかで処理中みたいな感じですか? 夏に愛したクラブを去るということはショックですか?)
わたしがこのクラブから完全に去るということはないんだ。なぜならこれからもアーセナルの結果を確認することになるだろうし、クラブがどんなふうに発展しているかもチェックするだろう。いつまでも一緒なんだ。そりゃあ難しいよ。人生の22年間をあんなふうに捧げてきたんだ。人生で一番いい時間をクラブにね。46才のときにここへ来て週に7日働いた。6日じゃないよ。6日と半日でもない。7日間を22年だ。本当にありがとうなんていって簡単に出ていけるものじゃない。半生を捧げて何もなかったみたいな顔をして出ていくなんて不可能だ。それが自分にとってのチャレンジだということもわかっている。困難だということもね。しかしわたしの人生には別の困難もあったし、今回も乗り越えられるといいなと思っているよ。
(この発表をすることでチームとクラブとファンたちに刺激を与えることが望みだったんですか?)
さあ。これがクラブが未来に向けてする準備に必要だったとは最初は思われていなかったし、早めにいうことがベターだとも思われていなかった。6月1日にいっても誰も来れなかっただろうし、ほらいまは別々だろう、すきにしてほしい。
(ファーガソンがマンチェスター・ユナイテッドを去ったとき、当然リタイヤすると思われたし、そうなりました。あなたの声明であの件とは違うのは、あなたはマネージャーに……)
ルック、かもしれない。わたしにとって新しいことだ。わからない。ファーガソンとは違う。そこは同意するよ。彼はまだクラブにいる。彼はマンチェスター・ユナイテッドにとどまっているよ。
(去年あなたはアーセナルを去ってもマネージャーは続けるといいましたね。あなたがディレクター・オブ・フットボールをやっている姿は想像できません。毎日トレーニングしている姿なら……)
Yep.
(あなたが「出世」したがってるとか想像できません。正しいですか?)
正直、あなたにたくさんのことは話せない。半年後にまた来られて、嘘つき呼ばわりされたくないしね。いやこれまでも何度かウソはついているけどね!(会場笑い)
今日のところは確かなことはないんだ。この状況にどう対処していいかすらわからないんだから。
(アーセナルが新監督から何を得るべきだと思いますか? どんな人物がいいですか? またクラブが、とくにPLとCLで、野心的で期待されるレベルに戻るには何が必要だと思いますか?)
ルック。わたしがいた。そしてわたしのどのストロングポイントよりストロンガーな男がくる。そしたらそこにパーフェクトな男がいる。
(22年間、週7日間ずっと働いてきたといいましたがそれは大変な仕事でした。感傷的な気持ちにもなるでしょうが、いくらかほっとしてるとこもあるんじゃないですか?)
ノー。なぜならわたしは疲れてないからだよ。こんなふうに感じているんだ、なんていうかな……個人的には、このクラブは世界中でリスペクトされているクラブで、それはイングランドでよりもだ。われわれのファンはわたしがこのクラブのためにほしい団結のイメージをわたしにはくれなかった。世界中で。痛かったね。クラブはリスペクトされていると感じていたが、全体的にはクラブが与えたイメージは、クラブにあるものではなかったし、わたしの好きなものでもなかった。(※翻訳注:WENGEROUTについての言及のようだ)
(メルテザッカーを含む何にかの選手は、アーセン・ヴェンゲルのためにヨーロッパリーグのタイトルを取ろうといっています。アーセナルがもしELを勝てなかったらがっかりしますか?)
がんばるつもりだ。アトレチコ・マドリッドと戦う。とてもオープンだよ。最後までポジティブな結果を続けたいね。そのときそこからどこに行くのか、見えるだろう。
(ファンについてのコメントを詳しく説明してくれませんか。団結についてかなり強い発言だったので。それが起きたときどんなふうに感じたか説明してもらえますか?)
これ以上いうことはないよ。このクラブはファンタスティックなイメージを持っていると思うし、わたしにとってはそれはとんでもなく重要だ。いくらでも語ることはできる。スポーツというものは勝つことであり、負けることだ。試合に負けることも受け入れなければならない。わたしがそこにおらずともね。そしてそれは同時に勝ち負けを超えたものでもある。いつでも気にかかっているのは、クラブがワールドワイドでどんなふうに思われているか、アフリカのキッズに、アメリカのキッズに、チャイナのキッズに、フットボールをプレイしたい子どもたちの夢のために。クラブに責任がある。
(そういう意味では明らかにファンはあなたを傷つけた……)
いや、わたしじゃない。
(クラブですか? ファンが傷つけたのはクラブなんですか?)
ルック。わたしは腹を立てているわけじゃない。バカバカしいことでニュースの見出しになりたくない。ファンに怒っているんじゃないんだ。もしわたしのパーソナリティが、クラブがこういうものだと考えることに捕らわれていたとして、わたしにとってはわたし個人よりもそちらのほうがもっと重要なんだ。これがわたしのいいたいことのすべてで、ファンとは何の関係もない。ファンがハッピーでないなら、それがわたしの仕事だが、それも認めなければなならない。それは受け入れられる。
(緊張感は損なわれていたんでしょうか?)
それが損なわれていたのかどうかもよくわからないが、わたしがどのようにクラブが認知されるべきか、世界中から認知されるべきかについて感じていることについては対応していなかった。もしわれわれとともに旅をすれば、旅はよくするからね、このクラブは世界中でリスペクトされている。それは仕事に影響するし、フットボールのプレイにも影響するし、振る舞いや人々とのやりとりの仕方にも影響する。わたしはそれを続けたいし、リスペクトもされたい。たとえたくさんの金が遣えたとしてもね。とりわけ、金よりももっと、結果よりももっと、クラブがどのように認知されるか、世界中でクラブがもたらす影響が重要なんだ。
以上。
大変申し訳ないことにぼくの英語力だとボスが何をいいたいのかよくわからなくて意味不明なところがたくさんあると思う。気になったら原文を読むか、あるいはArsenal Playerにビデオがあると思う。翻訳の間違いの指摘も歓迎です。
会見のポイント
簡単にまとめると。
- 次期マネージャーの人選については口を出さない
- イングランドで別のクラブのマネージャーをやるかどうかはわからない(やる可能性がある)
- リタイヤはしない(マネージャーより上位のポジションにつく気もない)
- AFCの「イメージ」を重要視している
そんなところだろうか。
辞任か、解任か?
さて。この退任の件、ボスは自分の判断で辞任したわけじゃなくて、あくまでクラブからの解任だった(自ら辞任したふうに発表させられた)という説がある。
その説が少し信憑性があるのは、実際つい最近までボスは「契約をまっとうする」とことあるごとに発言していて、自分から身を引くなんてことはファンやメディアに全然予感させなかった。だからぼくも含めてWENGEROUTがヒートアップしていたわけだし、ヴェンゲル監督の言動をふだんからチェックしているファンであればあるほど驚いたわけだ。
この会見でも、一部記者からはクラブから「解任」されたことを前提として「解任を知らされたときにどこで何をしていた」なんて心無い質問をしている意地悪い記者もいる。ボスはこの質問に答えをはぐらかしているが、もしかしたら本当のところを見透かされてギクリとしていたのかもしれない。
真実はしばらくしてボスが自伝本でも出さない限りはわからないだろう。
翻訳ありがとうございました
よく解りましたよ
それにしてもボスは最後までボスですね
自分で育て愛したクラブを守ろうとする姿勢
記者のトラップにもまったくボロが出ませんね
コメントどもです。。
ちょうどBBCの記事(https://www.bbc.com/sport/football/43864425)で意味がわかったのがあって追記したとこです。
ファンの「団結(unity)のイメージ」のくだり、あそこはWENGEROUTとかファンの自分への抗議行動について言及していたようです。クラブのイメージ的に望ましくなかったと。
ぼくも最初何のことをいっているのかよくわからなかったのですが、WENGEROUTのことをいっているのかとわかったら、腑に落ちました。
会見の内容、詳しく読めて嬉しかったです。
実際は辞任ではなく解任、でもボスに配慮してみかけ上は辞任に…ということでしょうね。
モウリーニョが会見で語ったヴェンゲルがハッピーなら私もハッピー、悲しいなら私も悲しい、というような発言はこの辺が解ってるからかなあと。彼もチェルシーをクビにされましたし。
ビッグクラブの監督同士だけで通じるものもあるのかもですね。孤独な仕事だといいますし。
いつも読ませていただいております。
日本語オンリー(それすら怪しい)私には大変ありがたい記事をいつもありがとうございます。
私はもともとサッカーなんて知らず(通ってる学校にサッカー部やクラブが無かった)大人になりJリーグが出来てサッカーの存在を知った位の人間です。
新興Jリーグの監督してた人がイングランドで監督するって小耳に挟んで最初は冷やかし程度に覗いてみたアーセナル。
おもしれー❗️
だから、他のクラブのことはほとんど知らずにただアーセナルが好きでアーセナルの試合しか見てきてないです。
サッカーじゃなくプレミアリーグじゃなくアーセンのアーセナルしか知らないので、素人が見てもおもしれーって思えるサッカー(ぶっちゃけ負けてもいい)してくれる人に引き継いでもらいたいです。
長文失礼しました🙇
ぼくも恥ずかしながらヴェンゲル・アーセナル以外はそんなに知らないです。がんばっていろいろ読んで勉強してますけどね。
> おもしれーって思えるサッカー(ぶっちゃけ負けてもいい)してくれる人
ここじつは後任選びでかなり重要な視点だと思うんすよねえ。
負けてもいいってのはもちろん極論でしょうが、新しい監督がチームを作り直すうえでクラブが新監督に提示する「AFCとして譲れないもの」をどこに設定するか。
負けていいわけないんですが、勝てれば誰でもいいという考え方は明らかにクラブの目指すべき方向性ではないと。