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エメリとエジルの関係性の変遷をたどる

リーグカップのセミファイナル、ToT戦は、アーセナルはホームで2-0負けとPLのサウサンプトン戦につづいての敗戦となった。

22戦無敗のあとに2連敗。これはキツい。

さて、この試合ではNLDということでファンベイスでは試合についてももちろんたくさん議論されているが、エジルがスタートはおろか、ベンチ入りもしなかった理由がエメリによれば「タクティカル・リーズン」であったとして、そちらも大きな注目を浴びている。

エメリは、エジルを90分ベンチに置いたPLボーンマス戦でも同じように戦術上の判断だと語ったことがあった。

エメリはなぜエジルをベンチからも外したのか?

フィットしていないわけでもなかったエジルのような選手をベンチにも入れないという判断は、それがのちに大きな議論を呼ぶだろうことはエメリにも十分わかっていただろう。

最近はとくにエジルの扱いについては注目されていたのだから、90分ベンチに置いて結局使わなかったというほうがまだ無難な選択だったし、あの試合の展開だったら、むしろオプションとしてベンチに置いておくほうがノーマルな選択だっただろう。

しかし、彼はチーム一のビッグプレイヤーをあえてベンチにも入れないという、選手にとっては屈辱とも取られかねない、極端な選択をした。

それはなぜだろう。

昨日のArseblogによれば、トレイニンググラウンドでワークレイトと戦術への適応を求めるエメリとエジルの間で衝突したこともあったという報道もあるようだ。

そういった衝突が起きたゆえの排除だったのだろうか?

エメリはアーセナルに来てからずっと選手たちに戦術への適応やハードワークを求めていて、結果もそれなりに出ているなかで、ほとんどの選手はそのことについて苦労しつつもやりがいを感じているとポジティヴな反応を示していた。エジルもそのひとりだ。

しかしここへ来て、エメリがエジルの適応不足に不満を表すようになり、エジルとの関係も悪化していった。そんなことがあったのだろうか。

いずれにせよ、エメリがこういうかたちでエジルを排除したことには必ず意味がある。

われわれはこれをどういうメッセージだと受け取ればいいのか。

エメリとエジルの関係性を時系列で確認する

How Unai Emery’s relationship with Arsenal star Mesut Ozil has broken down

『Metro』がこのエジル排除を受けて、興味深い記事「いかにエメリとエジルの関係性が崩れていったのか」を掲載していた。

この記事では、エメリがアーセナルのヘッドコーチに就任して以来の、エジルに対する言動を時系列に紹介したもので、エメリがエジルについてどう考え、彼をどう扱ってきたかが順を追ってとてもわかりやすくまとめられている。

ざっくり紹介してみよう。

2018年5月23日:アーセナルでの最初の会見でエメリがエジルを称賛

エメリ:彼はアーセナルでもっとも才能ある選手のひとりでわたしがいてほしい選手だ。

2018年8月10日:エメリがエジルを5人のキャプテンのひとりに指名

エメリ:わたしのキャリアにおいて、チームにはリーダーがいてほしい。キャプテンのグループのなかだけでなく、チームにキャプテンシーを示せるリーダーたち。5人の選手たちがキャプテンになる可能性がある。

PLの新シーズン開幕の前日にエメリが指名したキャプテン5名は、コシエルニ、チェフ、ジャカ、ラムジー、そしてエジル。

2018年8月18日:チェルシー戦、エメリがエジルを途中交代させた理由を説明

エメリ:われわれは深く引きすぎたので、よりプッシュするためにアーロンを入れた。そのことでもっとプッシュしてボールを奪い攻撃をつづけようとした。

マンシティとの初戦でもインパクトを残せなかったが、この日のエジルも交代までパスは15本のみとまったく振るわなかった。

2018年8月25日:ウェストハム戦にエジルが出場せず。エメリが衝突の噂を否定

エメリ:彼とドクターとわたしで話して今日は出ないことを決めた。トレイニングを切り上げたのは病気だったからだ。今日わたしは彼にもし気分がよくなっているようならここへ来るように伝えていた。試合前にはチームといたしわたしとも何の問題もない。

2連敗のあと、エメリはこの試合でアーセナルでの初勝利となったが、エジルとのトレイニンググラウンドでの衝突が噂されていた。

2018年8月31日:エメリがエジルに違うポジションでの適応を要求

エメリ:わたしは選手には違うポジションでプレイさせることも好む。メストは右ウイングとNo.10でもプレイすることになる。われわれの要求はとてもとても高いものだ。メストだけでなくチームに求める。プッシュすること、野心を持つこと、毎日進歩しようとすること。これがわたしのチームへの、スクワッドへの、選手たちへのメッセージだ。

ヴェンゲルの下ではほとんど完全に中央でプレイしていたエジルに、エメリは戦術的柔軟性とハードワークを要求。

2018年10月7日:エメリがフルアム戦でのエジル不在を説明

エメリ:昨日彼は痛みを訴えて練習も試合もできなかった。

昨シーズン、エジルはELのグループステージには一切出場しなかった。しかし10月にはほかの何人かのファーストチームの選手たちとELカラバグ戦でアゼルバイジャンへ。5-1で勝利した3日後のフルアム戦には出場しなかった。この試合でアーセナルはシーズンでもっとも圧倒的な攻撃を見せた。

2018年10月21日:エメリがエジルが適応に苦労していると認める

エメリ:インターナショナルブレイクは2試合もプレイすれば簡単じゃない。選手がそれに参加しないなら、チームに集中する助けになるかもしれない。メストが早くわれわれのアイディアを見つけてくれれば。

エメリは、エジルのNTからのリタイヤを歓迎していたが、たとえそうなっても、自らのやり方に適応してもらうにはもっと時間が必要だと考えている。

2018年10月22日:レスター戦の活躍後、エメリはエジルにさらに要求

エメリ:メスト・エジルは今日すばらしいパフォーマンスを見せた。わたしたちはチームにも彼にももっと要求するためにプッシュするつもりだ。チームにはキャプテンシーをもった選手たちがいるが、エジルはどの試合でも彼のクオリティとコミットメントでプレイできると思う。選手たちにはこのコミットメントとふるまいを求める。

この試合、キャプテンを務めたエジルはアーセナルのキャリアでも最高レヴェルのプレイを見せた。しかしエメリはクラブで最高給を得る選手にさらに要求するといった。

2018年10月28日:CP戦で見せたエジルのかんしゃくにエメリが反応

エメリ:(エジルの交代時に見せた振る舞いについて)選手がハッピーじゃないなら、いたってふつうのことだ。わたしもハッピーじゃない。いい結果を得られなかったからだ。わたしは選手がうまくプレイできないときにキャラクターを見せることは好きだ。わたしが彼を交代させようとしたときには2-1で勝っていたんだから、たいていはどんな選手だってプレイをつづけたいだろう。

エジルが交代した68分の時点ではアーセナルは2-1で勝っていたが、終盤のペナルティによりドロー。アーセナルの11連勝が終わった。しかし試合後のプレスカンファレンスでは、エジルの交代時の振る舞いに質問が集中した。彼は途中交代されたフラストレイションでグローヴを投げ捨て、ピッチをあとにした。

2018年11月25日:エメリがボーンマス戦でエジルをベンチに置いた理由を説明

エメリ:今日の試合でどううまくプレイするか考えたんだ。フィジカルをとても要求されるし、われわれに対してインテンシティも高く来る。それでその決断(エジルを使わない)にいたった。

セルハースト・パークでかんしゃくを起こして見せたあと、エジルは4試合連続でチームに入った。しかしボーンマスではベンチだった。アーセナルはヴァイタリティ・ステディアムでの過去2戦で5ポインツを落としていた。しかしそれはフィジカルというよりも守備のオーガナイズの欠如であった。

2018年12月2日:エジル不在でのNLDでの勝利についてエメリ

エメリは、エジルには「背中の痛み」があったのだと主張。ルーカス・トレイラのファーストゴールもあり、後半の大逆襲でアーセナルが勝利。エメリは試合後にプレスにエジルのけがについて問われると、彼はけがについてもわからないし、ステディアムに来ていたかもわからないと答えた。

2018年12月20日:カラバオカップ敗退について、エメリがエジルを選ばなかったのは戦術的な理由だと主張

エメリ:(エジルをスクワッドから外したことについて)それは戦術的な判断だ。なぜならこの試合にベストな選手を選んだ。わたしたちは選手たち全員のことを考えている。24-25人の選手たちがいるが、誰が試合に出て誰が試合に出ないか、それは判断だ。今日は戦術的なことだった。いまわたしはこの試合を分析することに集中するし、土曜のバーンリーがとても重要だ。どの選手がバーンリーにふさわしいかはこれから評価していく。わたしは土曜の試合のことを考えていて、それ以外のことは考えていない。

どの選手もビッグプレイヤーだ。選手みんながだ。わたしは彼をプレイさせないと決めた。それはただ単に戦術的な決断だ。

スパーズに勝利した試合を含め2試合以上を背中のけがで欠場したあと、エジルはELのカラバグで復帰したが低調なパフォーマンスだった。その前にサウサンプトンでの3-2敗戦で、チャーリー・オースティンの終盤の勝ち越しゴールはエジルの責任もあった。

以上

 

うーん。どうでしょ。

ふたりの衝突やら、典型的な「ビッグプレイヤー対コーチ」の構図とか、外野ではいろいろいわれているが、少なくとも現時点ではエメリがエジルに満足していないのはほとんど明らかであるように思われる。

エジルはボスに適応せねばならない

RedditやTwitterなんかを見ていると、いまだにエジルを世界で最高のNo.10などと擁護する向きもあるが、彼が優れたクリエイターでありNo.10であり類まれな攻撃の才能を持っているなんてことは、おそらく関係者は誰ひとり疑っていない。

問題はあくまで、彼がエメリの要求に応えられるかどうか。そこだけだ。

エメリがすべての選手にハードワークを求めるのは、攻守のバランスを重視しているからだ。

攻撃は守備から。これはモダンゲイムのごく基本的なコンセプトのひとつだろう。

ハイインテンシティな試合で彼は使わないというのだから、エメリはいまでもエジルのハードワークは十分じゃないと考えている。

ぼくは個人的には、エジルは以前に比べたらいまはずっとハードワークしていると思うけどね。それでは足りないと。

エメリがアーセナルのヘッドコーチに就任して以来、問われつづけてきたエジル適応問題は、エメリがエジルを排除するという意外なかたちで終わりを迎えるのだろうか。

そういうことをやるマネージャーのようには思えなかったが、そこまでのことをしたとなると、やはりふたりのあいだにある確執が疑われる。

明日のホームでのバーンリー戦で、エメリがエジルを使うかどうかは否が応でも注目されるだろう。

もしそこでエジルを使わないようなことがあれば、アーセナルでのエジルのキャリアは終了を宣言しているようなものだ。

もしかしたら、またいきなり病気やけがで欠場となるかもしれないが、今度こそそんなウソは誰も信じないだろう。

エジルの今後

Arsenal make January transfer window decision over Ozil

『Independet』によれば、アーセナルはエジルを1月に手放すことを検討している。エメリがエジルのポジションを見つけられないのが理由だという。

そして、選手全員がエメリのやり方について受け入れているものの、唯一エジルだけがそうではないと。ちょっと前に本人はエメリのやり方もエメリもことも称賛してたけどね。

だが、以前にも書いたようにいざ彼を放出しようとしたときにこれが難しいのは、給与のあまりの高さに移籍先がかなり限られるということだ。

現状では、もし可能性があるとしても資金的にはPSGかマンUくらいしかないという。ちなみにマンUはエジルの信奉者のひとりであるモウリーニョが辞めてしまったばかりだ。

30才という高齢、超高給取り、プライドが高く気難しいビッグプレイヤーという三重苦。

しかも、ここ数年のアーセナルで高給に見合う実績をつくることができたどうかは、評価が分かれるところだろう。インテルやマンUは彼を本気で欲しがっているんだろうか。

すぐに売却先が見つからなければ、使わない選手の高給を少しでもカヴァーするために、ローンでの放出も考えているという説もある。

もしローン先のクラブに給与の半分を持ってもらったとしても、週に150k~をただただ支払わなければならない苦しさ。まさに負債。

そこまでするなら少しくらい守備がおろそかでも使えばいいのにと思ってしまうが、それもできないくらいにエメリは、エジルが使えないと思っているのか。

悲しくなってきた。

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6 Comments on “エメリとエジルの関係性の変遷をたどる

  1. エメリが合わせるか、エジルが合わせるか。
    開幕前から議論されていたことですが、エメリ流で結果が出ていた以上そちらに合わせるべきだという意見が多かった気がします。ただ、ここに来て3節以降からの無敗ストップ、さらには連敗とこの話題に関するファンの意見も流れが変わるやもしれませんね。

  2. アーセナルらしいゴールショーを演出したレスター戦はエジルのおかげ。ただ、今年のベストベームは間違いなくTOT戦。エジルがいなかったこの試合、逆転されてもエジルのことは思い出さなかった程。サウザンプトン戦では交代後に全くインパクト残せず、それどころか3失点目の起点に。カラバオもできればスミスロウを見たかった。リーグ3位の着地の可能性もあるが今シーズンは来期に期待できる若手と移籍市場での獲得を目指してほしい。エジルに固執する理由はない。

  3. エジルが何も❓コメントしていないので報道も一方通行になっていますね。
    ウェンゲル時代も良く風邪引いたので、風邪のシーズン始まったので欠場理由は風邪で良いんじゃ❓

  4. エジルに対するエメリのコメントの仕方が今日あたり違うのはどう解釈したものでしょうか。彼の選手起用はいまひとつ不可解。それ以上にエジルも不思議なパーソナリティですね。
    エジルは選手としてのキャリア構築に失敗しているように思うのです。そもそもアーセナルではレアル以上の結果が出せず、伸びていない。彼はこの点をどう考えているのでしょう。そしてフェデラーとかトムブレイディみたいに30過ぎでも活躍できる作戦をどれくらい立てているのか。スタミナ不足と痩せ過ぎなのは、、、モデルじゃないんだし。高額給料といい、ドイツ代表問題といい、チームエジルの戦略責任が大きいのではないかしら。もっとエジルの活躍が見たいし、このままで終わってほしくないなあ。

  5. 今後、エジルを偽⑨番的に使う形はどうですかね?w 2列目より守備負担も少なくてエジルたんも攻守に伸び伸びプレー出来るんじゃないかな~って期待するのですがww

  6. 今期ベストゲームの一つであるトッテナム戦ではエジルの役割はなかったけど、今期のもう一つベストゲームであるリバプール戦では十分に活躍していたので、フィジカルとかハードワークとかそういう問題じゃないような気がします。
    個人的に思うのは、エジルがいるとどうしてもボールが丁寧を回してしまうというか、縦にチェレンジするパスチームとしてでにくくなるんですよね。この辺がエメリの縦に速いサッカーと合わないというか。
    でも、エメリ のサッカーでは相手がガチガチに引いてきたらエジルぐらいしか突破口ないようにも思いますけどね。

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