22年のアーセン・ヴェンゲル時代を終え、新体制で大きな変革のときを過ごすアーセナル。
ようやく最初のシーズンが終わろうとしているタイミングで、ビジネス方面を統括するマネイジング・ディレクターのヴィナイ・ヴェンカテシャン、スポーツ方面を統括するヘッド・オブ・フットボールのラウル・サンレヒという、アーセナルFCの現場を率いるふたりの独占インタヴューが公式サイトに掲載された。
テーマはこのようになっている。どれもアーセナルFCの今シーズンの変化を見守る熱心なファンにとっては興味深い内容だ。
- この12ヶ月間のクラブの変化
- 今季ここまでウナイ・エメリのパフォーマンスについて
- ヨーロッパリーグ・ファイナルとチケット割当の問題について
- オーナーたちのクラブへの野心
今回はこちらのインタヴューをざっくり翻訳してみよう。※いつものように翻訳は自信がない部分もあるので気になるかたはセルフでお確かめあれ。
‘We’re so pleased with Unai’s impact’
今回はパート1ということで、パート2の公開も今週に予定されているとのこと。
ヴィナイ&ラウールのインタヴュー「われわれは正しい方向に進んでいる」
(今シーズンのクラブのパフォーマンスについてどう総括しますか?)
ヴェンカテシャン:おぅ、いきなりビッグ・クエスチョンが来た。。今シーズンは大きな変化の年だったと思うんだ。22年のアーセン・ヴェンゲルから、ウナイ・エメリへ移った。でもそれは個人の変化というよりは、われわれのモデルの変化だった。
マネージャーがなんでも責任を負うトラディショナルなフットボールモデルから、ウナイがヘッドコーチとしてより(チームの)コントロールが出来て、関係各所のエキスパートに責任が分散される。
われわれにはペア・メルテザッカーがアカデミーの責任者としており、アイヴァン・ガジーディスがACミランに去ってからはラウル(サンレヒ)とわたしが、新しい役割にステップアップした。とにかくたくさんの変化があったよ。
その変化のなかでわれわれは今シーズンの目標を設定した。これを要約するなら、ひとつは無事にウナイとコーチングスタッフたちをアーセナルに馴染ませること。そしてふたつめは、これはチャレンジングなことだとわかっているが、チャンピオンズリーグに出場することだ。
このふたつの目標について今シーズンのわれわれを評価しようとするなら、あるいはウナイを評価する一番いいやり方は、時間を巻き戻して、それでもわれわれが彼を選ぶかどうかだよ。
それはもう完全に100%、断固としてそうだと云える。われわれはウナイをあらためてアポイントするよ。彼がアーセナルに来てからのインパクトにはほんとうにみんな満足しているんだ。そして自分たちが彼を選んだことにもね。
チャンピオンズリーグに関しては、リーグを通してそこにたどり着くことが最初の道だった。アーセナルの全員が、ウナイも、わたしたちも、選手たちも、スタッフたちも、みんながトップ4に入れなかったことにほんとうに失望していた。
思うに、反応の仕方がふたつあるとして、それはそのひとつなんだ。あと少しのポインツでそこにたどり着ける可能性がありそれをミスしたとき、コップのなかに半分しか水が入っていないと思うか。あるいは、コップのなかに半分も水が入っている、そこにたどり着くあと一歩のところまでかなり近づいたと思うか。そこにたどり着けなかったのは事実で、だからこそとてもがっかりしているんだけどね。
われわれにはまだたくさんの期待がある。ヨーロピアンファイナルでヨーロピアントロフィを勝ち取れるチャンスがあるし、チャンピオンズリーグにも戻れるチャンスだ。アーセナルにいる全員がバクでの試合にかなり集中している。今季の自分たちを成功で終わらせるためにね。そしてその試合にはとても自信がある。
(ウナイに満足しているようですが、ウナイは正しい方向に進んでいると思いますか?)
サンレヒ:まったくもって。ヴィナイが全体を説明してくれたように。われわれはとても注意深くしているんだ。過去はとても重要だ。アーセン・ヴェンゲルの影響は巨大なものだ。われわれは彼と彼がしてきたことに最高のリスペクトがあるし、感謝している。アーセナルは彼と彼のしてきた偉大なことがなくては現在のようにはなっていないだろう。
だからこそ、ビッグレジェンドは大きなチャレンジになった。われわれが新しいオプション、ヘッドコーチ候補を分析しているとき、もろもろのカヴァーすべき領域を定義した。フットボールのプレイの仕方、ヤングスターの発掘、選手の育成、戦術その他。
そしてそのほかにわれわれが模索していたものは勇気だよ。大きな勇気を持つ人材でなければならない。大きなパッションでチャレンジできてしっかり遂行できなければならない。ウナイにはそれがあった。彼は勇気のひとであり、パッションのひとだ。彼はそれがあることをシーズンに渡り示しつづけてきた。
われわれはそのことを知っていたよ。でも実際にその人間が仕事のなかでそれを完璧にやるまではわからないものだ。わたしは彼が初日から始まってシーズン全体でそのことを証明してきた。選手、ファン、われわれ、スタッフとともにね。だから、わたしはヴィナイに賛成するよ。時間を戻ってヘッドコーチを探すにしても、また彼を選ぶ。
(ヨーロッパリーグのファイナルに進んだことについて)
ヴェンカテシャン:みんながヨーロッパのファイナル進出でわたしがどれだけワクワクしているか訊いてくるんだけど、これまでのわれわれのヨーロッパでのファイナルのことを考えれば、これは当然のことではない。ファイナルの日が待ち遠しくてしょうがないよ。
サンレヒ:これはわたしにも云いたいことがある。ヨーロッパリーグはウナイの好きなヤツで(笑い)、彼はもう3回もそれを勝っていて、ファイナルで敗けたことがない。それがつづくことを願っているよ。
初日から彼とはわれわれの目標である来シーズンのチャンピオンズリーグ出場については話していて、彼はいつだってヨーロッパリーグのことを話していたよ。彼ははっきりそのタイトルを欲しがっていたから、ファイナル進出にはとても喜んでいる。何度も行けるところじゃないからね。だからわれわれもとてもワクワクしているし、ファンにトロフィをもたらせるチームとヘッドコーチだととても強く信じている。
(とても大きな期待があるにも関わらずバクのチケットは6000枚しかありません。それについてどう思いますか?)
ヴェンカテシャン:まず云いたいのは、もちろんそのことは受け入れるし、ファイナル開催地も、ファイナルで誰が戦うか決まる前から設定されているということも了承している。われわれが今季始めのほうでグループステージでカラバグと戦うためにバクを訪れたとき、美しい街があったしバクのひとたちもとても歓迎してくれた。
しかし、これはクラブとしての立場から云うのだが、大きなヨーロピアンファイナルで結果的にこういう事態になっていることにはほんとうに失望している。ファンの移動の問題、それと両クラブにそれぞれ6000枚というチケット割当。エミレーツよりも大きなスタージアムでプレイするのにだ。これにはほんとうにがっかりだ。
これはファンからのサポートで成り立っているアーセナルのようなクラブにとっては重大な問題なんだ。われわれにはシーズンチケットホルダーが45000以上いるのに、実際にファイナルを観戦できるのはどれだけだという話しだ。まったくわれわれも失望していて、ファンからは苦情の電話や落胆の手紙を受け取っている。何年もホームでもアウェイでもアーセナルをサポートしてきたのにファイナルに行くことができない。
だからわれわれはこのことについてUEFAにメッセージを書いたんだ。なぜファイナルの開催地をバクに決定したのかの経緯、なぜそこでプレイするクラブのファンのことを十分に考慮していないのかについて説明を要求した。なぜならアーセナルだけじゃなく、UEFAのコンペティションに参加するすべてのクラブが二度とこんな状況に陥るべきではないからだ。われわれも、選手も、ファンもまた失望している。
(ファンはこの10年ずっとトップ4フィニッシュに入ることに満足してきました。どういう戦略で元の場所に戻るおつもりでしょう?)
ヴェンカテシャン:もちろんクラブは、このクラブにとってのヴィジョンはなにかと問うところからスタートした。そのヴィジョンはシンプルで、どうやって世界中のファンにとって誇らしいフットボールクラブになるかということ。そして、それを自分たちのやり方でやっている最中で、つまりメジャーなトロフィを取ろうとしている。アーセナルにとってはプレミアリーグとチャンピオンズリーグだ。このトロフィを取ろうとしたときに、130年以上に渡ってこのクラブをつくってきた歴史、伝統、価値、振る舞いをリスペクトすること。
これは誇り高い野心であり、一晩で達成できるものではない。たくさんのハードワークが必要だし、それはことばで云うだけじゃだめなんだ。チャンピオンズリーグに戻るための最初のステップは、ゆえに現状われわれにとって大きな集中が必要になる。
あなたの質問であるストラテジーについて、われわれはひきつづき収益を増やしていかなければならない。なぜなら収益がピッチ上でも成功への燃料になるからだ。だから来シーズン期待していることは、エミレーツとの新しい契約、新しいキット契約、スタジアムのホスピタリティエリアのさらなる拡充、プリシーズンツアー、これらすべてをより収益が上がるように効率的に行っていく必要がある。
もしお金や収益が燃料であるならば、フットボール面がエンジンということになり、エンジンもまたできる限り効率的に操縦しなければならない。使うお金のすべてが最大のインパクトを出せるようにするんだ。そしてそこにはフットボールクラブとしてできるだけ効率的であるためにたくさんのイニシアティヴがある。
そのひとつの例はもちろんアカデミーだ。ファーストチームでもアカデミープレイヤーの起用を継続して促進していく必要がある。それが重要なのは明らかに財政的なメリットがあるからだが、アカデミーから育ってファーストチームのドレッシングルームに入っていくような選手は、アーセナルをレペゼンする意味がよく理解できるからでもある。
われわれはアカデミーにペア・メルテザッカーが来てさらにいい場所になったと考えている。ヤングスターたちのいいグループがあって、今シーズンもファーストチームのスクワッドに入っていった選手もいる。U23やU18でグレイトなシーズンを過ごした選手もいる。だからアカデミーはとても重要なパートで、われわれがアカデミーからファーストチームに上がっていく彼らの成長をマネージングしているのだと理解する必要がある。
ある選手はU23でもう少しプレイしたほうがいいし、ある選手はU23からファーストチームに上がるほうがいい、あるいはローンで出たほうがいい。今シーズンもたくさんやることがあった。エミ・マルティネスはレディングへ行ったし、リース・ネルソンはホッフェンハイムに行った。エミール・スミス・ロウはライプツィグに行った。
彼らに成長の機会を与えるためにローンで出すが、ファーストチームでプレイして経験をつめるよう、ローン先のクラブは慎重に選ばなければならないと思う。
それとひきつづき、ウェイジ・ビル(給与総額)についてもしっかりと見ていかなければならない。われわれが給与をかなり払っていることは知られているだろう。それはいいことでもある。なぜならわれわれの財政的な筋力を示すものでもあるからね。財政力があることを示すことはアーセナルが成功するためには重要なことだ。しかし、お金の使い方はできるだけ効率的でなければならない。それを検討することについては多くの時間を割いている。
もちろん、われわれは賢くなければならないし、移籍ウインドウでは効率的でなければならない。真にチームに貢献するエクセレントな選手とのサインが必要だ。
前回のウインドウを振り返るなら、ベルント・レノ、マテオ・グウェンドゥージ、ルーカス・トレイラ、パパ・ソクラティスら。われわれは大きなインパクトを残せる選手とサインしたと考えている。来シーズンだってそうだ。それに選手を売却するときも資金を最大化するものでなければならない。それをまたチームに投資するんだ。そういった点においてもほんとうに規律があるかどうかチェックする必要がある。
いい例としてはまだキャリアの終わりに近づいてないシニア選手。残り契約が2年となった彼らをどうするか。難しい決断を強いられる。彼らは契約を更新するのか、それとも売却するのか。だからわれわれはそこでも勇気を持たなければならない。なぜなら、そういった選手のフリーでの退団を許可するようなことはもうあってはならないからだ。
もうひとつわれわれがフォーカスしていることは、カルチャーについて。クラブを取り巻く正しいカルチャー。クラブにはウイニングカルチャーのハイパフォーマンスが必要で、それは全員が一緒にチームとして成功しようと決心するものだ。
サンレヒ:わたしはキミにおめでとうと云うよ(と突如握手を求める)。
ヴェンカテシャン:おお、ありがとうございます(笑い)。
サンレヒ:これはわれわれがやっているコーディネイション業務の明確なエヴィデンスだと思う。スポーツの領域でも彼はほんとうにグレイトな仕事をしているね!
とまあそれは冗談だけど、すでに述べているわれわれが一緒に取り組んでいるふたつのことがらについて、これは明快なコーディネイションの実例なんだ。彼はわたしたちがフォローしているスポーツ面の戦略についても全面的に取り組んでいるし、どれだけわれわれがお互いにそれについて話し合っているかの証明でもある。つまりわたしは彼がそれについて話した一言一句に賛成だし、それこそがわれわれがクラブのスポーツ面での取り組もうとしていることだ。それが正しい方向であることを願っているし、まさにそれをいまやっているところなんだ。
(選手個人との契約についてですが、多くのファンが裏で何が起きているか知りたがっていると思うのです。スポーツ面のストラテジーについて話しましたが、オーナーたちはそのストラテジープロセスにどれだけ関わっているのでしょう?)
ヴェンカテシャン:それはいい質問だね。というのは、スタンとジョシュ・クロンキはスポーツのひとなんだ。彼らはスポーツにとても情熱を持っているし、勝ちたがっている。
わたしが世界中のファンにクラブを誇りに思ってもらえるよう、プレミアリーグやチャンピオンズリーグで戦えるクラブだと思ってもらえるようにする戦略について話すとき、それはラウールから来るのでもなければ、わたしから来るものでもない。それはオーナーたちから来るんだ。彼らはクラブに自分たちが求めるものについては熱烈な野心を抱いている。そして彼らはいつもそれについてわれわれに思い出させる。
だから彼らは(戦略に)かなり関与しているよ。ラウルかわたしは毎日というほど彼らと話しをしているくらいだ。直接会って込み入った話しをすることもある。マンスリーでロンドンかステイツで会っている。彼らはわれわれがやろうとしていることにも大きく関与している。アメリカンフットボールチームを持っていたりもするし、NBAのチームやNHLのチーム、MLSのチームにラクロスのチームだって持っている。スポーツにはかなりの知識がある。アーセナルにもかなりの情熱を持っているし、どうやってクラブを前進させていくかにも多大な情熱を持っている。
一方で彼らはとてもリアリスティックだ。一夜にして、いまいるところから行きたいところへ行けるとも思っていない。目標にたどり着くにはたくさんのハードワークが必要だということもわかっている。
サンレヒ:彼のことばにいくつか付け加えるとするなら、彼が云ったパッションとスポーツ面のこと、これを特筆することはとてもとても重要なことなんだ。もうそれはすでに十分証明されていることでもあるが、彼らがスポーツに生き、そのスポーツのエッセンスからわれわれが得ること、ハードワークに報いること、敗けたときの苦しみや勝ったときの喜び、そういったことを彼らはわれわれに望んでいる。
われわれは彼らと話すたびに彼らからサポートされていると感じるし、whatsappだろうがe-mailだろうがメッセージを受け取るたびどれもサポーティヴだと感じられる。しかし、ひとつの究極的な目標、それは勝つことだ。自分たちのやり方で勝つこと。
彼らはどのスポーツもやっているし、どんなスポーツにも情熱を持っている。そういったひとたちと働けることは喜びだ。それが毎日のモチヴェイションになっているよ。
(そういったことが達成できるとどれくらい信じていますか?)
サンレヒ:それはかなり信じているよ。とても楽観的に思えるのは、何よりもまずわれわれが今シーズンに見てきたものがあるから。シーズンに渡り、グレイトな兆しがあったと思うんだ。
ヤングタレントが入ってきてとても高いスタンダードのなかでプレイした。個人の名前を出さないのは誰か忘れると困るからだよ。それとコンペティションの知識を持つ経験ある選手も連れてきた。
云うまでもないことだが、コーチングスタッフもだ。グレイトな仕事をした。毎試合の準備、選手たちとの取り組み、戦術とか。わたしはほんとうにシーズンに渡ってそういうふうに見えたと思うんだけど、われわれは正しい方向に向いていた。
これは以前にも云ったことだが、われわれはマーケットの裏をかく必要があるんだ。これからも正しいポジションの正しい選手を連れてくる必要があり、それでチームを自分たちが行けるレヴェルまで進化させる。
わたしにはそれを信じない理由がないんだ。そこにたどり着こうと正しい方向を歩んでいると感じられるから。
ヴェンカテシャン:さっきのオーナーシップの質問に戻ると、どうやってクラブを前進させていくかにまつわるすべてのイニシアティヴやアイディアは、スタンとジョッシュから完全にサポートされている。そしてその方向は極めてシンプルで、フットボールクラブとして稼ぐどんなお金もチームが野心を達成するための投資になるんだ。それがわれわれがオーナーにお願いできる最大限であり、なぜかといえば、それがファイナンシャル・フェア・プレイのルールそのものだからだよ。
われわれは自分たちが目標にたどり着ける力を持っていることにとても自信を持っている。それは簡単じゃないよ。今後の道のりには浮き沈みだってあるだろう。ラウルだってわたしだってみんなと同じくらいそのダメージを受けるんだということはわかってほしい。
でも、自分たちがいま向かっている方向については、わたしは正しいと信じているんだ。
以上。近日アップ予定だというインタヴューその2につづく。
私はサンレヒには満足してないです
オーナーはケチってないでもっと金を出せと思う