ポゼッションについて
ヴェンゲルのファイナルシーズン、ガナーズの平均ポゼッションは62%だった。昨シーズンはエメリの下、それが58%に下落。今シーズンはここまで8試合の平均は54%。Optaが1996年に記録を始めて以来最低の数字となっている。
全体的にポゼッションが少ないことそれ自体は問題ではない。インヴィンシブルズの試合ごとの平均はたったの57%しかなかった。それ以降のほとんどどのシーズンよりも低い。だからもちろん試合の状態が決定的な要素なのだ。2003/04シーズン、アーセナルはよく試合で先行してからは守ってカウンターアタックで得点した。
しかし、ボールを持っていなければそもそも得点できないし、効率的に守ることができなかったり、ポゼッションができていなければ、相手にプレッシャーを与えることもできない。
それとパスアキュラシーも2006/07シーズン以来で最低レヴェルになっている。今シーズン、ガナーズは相手ハーフでのパス成功は76%。昨シーズンはそれが78%だった。ヴェンゲルの下での最後の6か7シーズンで、パスの正確さはだいたい平均で80%あたりだった。
ポゼッションについてはなあ。
むしろ、エメリはポゼッションしない方向にチームを連れて行こうとしているように感じられる。
ボールを大事にするよりはとにかく速く攻めたほうが効率的(ゴールを奪いやすい)というコンセプトなら、ポゼッションやパスが犠牲になってもしょうがない。何よりもボールを奪ってからのスピードがキモなんだから。そういうプレイスタイル自体を否定はしない。
むしろ、スペイスで活きやすいPEAやぺぺのプロファイルはそちらのほうが向いているし、トレイラの起用法、ジャカやルイスの正確なロングボール等々、是非は置いといても、エメリが本当にやりたいことはなんとなく見えてきている。
問題に思えるのは、コンセプトがどうあれそのイメージがチームでちゃんと共有されているのかどうかということだ。エメリはいまだに試合前会見などで「ボールをキープして試合をコントロールしたい」などと云っているが、それは明らかにこのコンセプトに反している。そういったことが選手たちへの誤ったメッセージになっている可能性があるのでは?
選手がエメリのインストラクションに混乱しているという指摘は以前からされている。
アーセナルで選手の信頼を失いつつあるウナイ・エメリ | ARSENAL CHANGE EVERYTHING
チーム全員がプレイのコンセプトを共有しているのかどうかは、いまプレイを見る限りでは疑わしく思える。
ビルドアップフェイズではボールを持てば常に出しどころを探しているような塩梅だし、プレスひとつとってもそこで行くのか行かないのか、ディフェンスラインを上げるのかとどまるのかとか、いちいち判断に迷っている(試合中ピッチ全体を見られるわけじゃないから知らんけども)。そういうことが各所で起きているから、チームがユニットとして動いているように見えないんじゃないかな。去年のCLのアヤックスとかほんとに美しかった。彼らはまるで一個の生き物みたいに全員でボールを動かしているように見えた。
AFCがクラブ/チームとしての成長プロセスだけでなく、はっきりそうだと云ったことはないと思うが、プレイのスタイルもリヴァプールのそれを意識しているのはみんな薄々は感じているだろう。PEA、ラカ、ぺぺの3人をリヴァプールのマネ、フィルミーノ、サラーに見立てているとか。
エメリはもう「われわれは令和のリヴァプールになるんだ!」ってはっきり宣言すればいいのではないだろうか。(令和ってなんだよってね。しかも令和のリヴァプールはもういるし。絶好調ですし)
それは冗談だけど、チームでそれくらい明確にプレイスタイルのイメージが共有できれば、今よりもずっとうまくいくんじゃないのかとは思ったりする。ほんとは「令和のインヴィンシブルズ」になってほしいんだけどさ。
ちと脱線した失礼。
ペナルティについて
ウナイ・エメリが来てから、アーセナルはどんなほかのチームよりも与えたペナルティが多い(10)。
これはべつに新しい現象ではない。アーセナルはそれ以前の2シーズンで16ペナルティを与えている。
それと、アーセナルはすべてのコンペティションで直近42のペナルティのうち40失点している。95%コンヴァージョン。ペナルティのコンヴァージョン平均は78%。
ペナルティは基本的にボックス内守備のまずさの現れなので、個人エラーの割合もそれなりにあるだろうけど、やっぱりチームとしてそういう状況を強いられてるという影響も大きそうだ。何度も1 v 1の状況をつくられているだとか。そういうデータがあればよかった。
シュートを打たれすぎていることとだって無関係ではないだろう。
ペナルティでの失点率が平均よりも異様に高いのは、アイスホッケーのGKになったチェフさんのせいもありそう。
Orbinho氏のツイートはここまで。
エメリは悪い流れを止められるか
こういったスタッツデータから総じて云えることは、このブログでもこれまでさんざん云ってることの繰り返しになるけれど、ここまでのエメリはAFCで期待された仕事をこなせているとは云いにくいということ。
アーセナルはヴェンゲルさんの最後の数シーズンでパフォーマンスが落ちている状況があった。それを最低の一番キツいところで引き継いだのがエメリで、彼はその流れをストップして(守備改善して)、チームパフォーマンスを安定化もしくは上向きにさせることがタスクだった。ところが、昨シーズンはその下降したフォームをストップするどころかさらに悪化させてしまった。
ただし、元々下降曲線を描いていたチームでもあったし、どんな有能なマネージャーであってもヴェンゲルさんのような伝説的マネージャーの後任が簡単な仕事のはずはなく、彼を擁護できるポインツはたくさんあった。だからとにかく今シーズンに期待しようと。そこからの現在だ。今シーズンはまだ始まったばかりながら、パフォーマンスは去年よりまたさらに悪化してしまっている。
ラッキーなことにリーグ3位という結果は出ているので(これはホントに謎)、改善の兆しさえあれば、おそらくはもっと安心できたと思うのだけど、現在のチームパフォーマンスからポジティヴなものを見つけ出すことはちょっと難しい。「改善の兆し」と書いたが、それはパフォーマンスそのもののことだ。
ティアニーやベレリン、ホールディングにラカゼットも戻るだろうし、PLではここから数試合は比較的イージーな相手が続くのでポインツは稼げそうだが(11月10日のレスター(A)まで?)、いまのパフォーマンスがつづくなら、シーズン終了まで3位をキープできるとはちょっと考えにくい。以前にも引用したが、xGベイスの分析では、現在のアーセナルはせいぜいテーブル中位の程度のパフォーマンスしか出ていないのだから、ゆくゆくはそのあたりに落ち着くというほうがリアリティがある。
逆に復帰した選手たちがかなりチームにフィットしてきて、ここから全勝をキープ、11/10のレスター(A)でいい結果を出せるようだとそこで一気に波に乗ることはあるかもしれない。レスターにアウェイで勝ったらたいそうな自信になる。今シーズンの彼らはすでにそんなチームになりつつある。
つづいて、「降伏インデックス」のほうを見てみよう。
海外の人たちはほんとすごいっすわ。チェンさんもありがとうございます。
概ね自分の印象との差はありませんでしたけど、シュートごとの平均xGバリューがリーグで2番目に低いってのは驚きましたね。確かにエリアの外からシュートを打たれることが多いイメージでしたけど。
それでもトップクオリティのチーム相手に同じようなことを繰り返すとより高確率に決められるでしょうから、打たせてOKとはなりませんよね。さらにペナルティエリアまで進出を許すとPKを与える確率が高まり、さらにPKストップの可能性も低いという。。とても守備が機能してるとは言い難いですね。
中央からの攻撃を減らしていることに関しては、去年エジルやラカゼットがいるときは、中央の狭い場所でのコンビネーションが引っ掛けられてカウンターで失点というのを何度も見た印象があります。さらにエジルはハードワークもそこまで、というところからもエメリがサイドアタック偏重に切り替えたのかなあ?中央で収められるラカゼットがいればその辺も大きく変わる可能性がありますが。
とはいえサイドアタックに切り替えても、前回のボーンマス戦ではSBの裏のスペースを悪用されてラインも下がり、中盤がスカスカになる始末。。SBが上がってなくてもアーリークロスのチェックも弱いから危険なエリアにパスが通ることもしばしば・・。
ELではナポリとかバレンシアとか、CLレベルの相手をそれなりにコントロールして勝てたのが逆に不思議に見えてしまいますね。戦力でいえばさすがにPLのボトムチームよりは確実に上なんでしょうから。
週末の試合には期待したいところですが・・・COYG
感銘です。
そう、彼はモイーズではないんです。
確かに昨シーズンのビッグマッチで興奮した記憶はかなりあって、きっとそれがあるから今年はうまくいくんじゃないかと楽観してたのかもしれませんね。
週末が待ちきれません。
タイトルで吹きました。(←コイツが一番失礼)
リスクという話で言うと僕はベンゲル時代ずっと、
「何でこのオッサン(ベンゲル)は要らんリスクばっかり背負い込むんだ。一人くらい普通のアンカー使え!」
って思ってた。
低い位置でトリッキーなプレーメーカー使ってどうすんの!?とか。
今のエメリはまるっきり真逆で、意味のあるリスクすら取らないっていう感じに見える。
2人とも同じようなメンバーを使ってるのに、真逆の事をやってるのが面白いなって思う。
エメリが選んでるメンバーだって、決してリスクの低いメンバーじゃない。
ルイス・コラシ・AMN(ベジェリンでも同じ)・ジャカ・ペペ。
敵陣なら敵にとっての大惨事の危険があり、自陣なら味方にとっての大惨事の危険がある人達。(←失礼)
エメリはわざわざ彼らを選んで、その多くを自陣に配置してる。
2度の補強であれだけの大金を使えた立場なら、他に全くチョイスがなかったとは考えにくい。
ものすごく壮大なプランなのか、あるいはものすごい見込み違いをしてるのか。
できれば単純にエメリ個人の勇気の問題だと思いたいが。。。
モヤモヤの理由をこうやって解明していくのは本当に有意義ですね、まとめてくださって感謝です。
今のアーセナルの強みはなんといっても豪華な攻撃陣なのですから、確かにエメリにはそこを1番信頼して欲しいですね。
ラカゼット早く帰ってきてほしいですが、結局オーバメヤンとの併用は期待しちゃっていいんですかね?
エメリ監督についてのこちらのエントリや関連記事読む限り、勇気を持つのがまさにこの人の課題かも。ロシア時代から迷ってアプローチ変えるのが信頼失う原因みたいですし。コンサヴァ1番!と言えないでカメレオンに〜って言うのが弱さじゃないかと思います。言うこととやってることも違ってしまって。
リヴァプールを真似る割にプレッシングの練習して無いというのはコーチとして如何なものかと思いますが…
このプレッシングの話しはけっこう謎なんすよねえ。
どんなスタイルでも基本的にハイプレッシングは有効で、いまやPLのチームはほとんどみんなやってる。
それなのに、プレッシングの練習をあんまりしてない+実際プレッシングも大してやってない(リーグ19位のデータがありましたね)。
どゆこと??
熱い選手なんで嫌いじゃないですけど(最近暴走気味?)、4バックの選手がコラシナツとパパからティアニーとホールディングに変われば、両センターバックが足元うまい選手ななりますし、サイドバックの動きも改善されて少なくとも後ろから繋げるようにはなんじゃないかと期待してます。
エメリは昔からチキンですから。
セビージャのアウェーは、WOWOWの実況と解説がもっとリスクをかけて攻めてチャンスを作らないと点が取れません、これでは勝てませんよ!!と毎回批判してました。でもエメリはシーズン終了まで何も改善せず。エメリはアウェーだとリスクをかけてチャンスを作って点を取ることにビビります。
PSGでCL、カンプノウでバルサに世紀の大逆転を許した、あのチキンな戦い方が象徴的です。
そしてアーセナルでは更にチキンになりました。セビージャの時はホームは攻めまくっていたのに、アーセナルではホームですらアウェー化してしまいました。
何でこのメンバーでここまでチキンな戦い方になるのか甚だ疑問です。選手の長所を生かしてない。この戦い方なら、他の中堅以下のクラブでやりなさいよ。
セビージャという立ち位置のクラブが
アウェーでそんなにリスクをかけて攻めればいいかどうか
については疑問が残りますね。
アウェーでは負けない事が第一条件ですから、
相手と状況によるし解説なんて監督業をやれないかそれ未満の
ただの人かただのOBか監督リタイア組ですからね。
PSGとバルサを実際見てみれば分かりますが、
選手達がカンプノウでのプレッシャーに押し潰されて、
驚くほど自滅としか言えないプレーを連発しています。
カバーニのゴールは良かったですが、
ディマリアは元レアルですから試合中のヤジ含め
精神的には色々とあったでしょう。
そもそも監督が慎重でリスクを冒さないのと、
実際の選手がピッチで瞬間瞬間で判断するプレーには
そこに直接の因果関係はないでしょう。
ゲームの様に監督によって動かされてもいないし、
特に長期政権でもなければ監督の影響力は
選手の判断力にまで深く浸透しているわけがない。
それをしようとするかもしれないのがモウリーニョですが、
彼の様な自らの考え方を強烈に押し出す人は稀で、
エメリはそのタイプではありません。
むしろ厳しい試合やアウェーや逆境でも選手達を鼓舞できるかどうか、
勝負どころでのモチベーターとして、
エメリはベンゲルと同じく物足りないかなという印象です。
采配云々よりも選手に自信と精神的強さを与えられるかどうか、
その問題こそがバルサPSGで露呈していたし、アウェーで大事な事だと思います。
また、相手をしっかりやっつけて仕留めるんだという残忍さも必要ですよね。
エメリはやや中途半端で甘い。これもベンゲルと似ていますが