昨日エントリでは、憶測をもとに、なぜ小規模な救済すらクラブはできないのか/しないのか、またクラブ運営におけるラウル・サンレヒとキア・ジューラブシアンのパートナーシップあるいは独裁(笑い)について書いたが、その後の情報によれば、解雇されるという55人の多くはリクルーティング部門のスタッフであることがわかってきた。
今回の件でより注目すべきポイントは、名もなき従業員たちの無慈悲なファイヤというよりは、AFCのリクルーティング部門の長期的なオーヴァホウルプランにあるようだ。
55人の解雇はリクルート部門のスタッフがメインである可能性
アーセナルが55人を解雇すると発表し、その後そのなかにHead of international recruitmentであるフランシス・カジガオが含まれると報じられた件、じつは彼を筆頭にヨーロッパをカヴァするシニアスカウトの多数が含まれていることが判明したようである。
#AFC UPDATE: Arsenal have let a further 10 scouts go.
Mackie, Daniels, Latimer ????????
Alex Stafford ????????????????????????????
Stephen Bradley ????????
Ty Gooden ????????????????
Julio de Marco ????????????????
Leonardo Scirpoli ????????????????
Hans Gillhaus ????????
Alessandro Sbrizzo ????????????????Details here for @TheAthleticUK:https://t.co/pvbqO59sXk
— gunnerblog (@gunnerblog) August 6, 2020
『The Athletic』の記事によれば、まずは、カジガオ、Peter Clark (head of UK scouting) 、Brian McDermott. この3人がクラブを去る。この3人はリクルート部門のトップ3ということ。彼らは社内の既存スタッフの配置換えでリプレイスされるようだ。
そのほかにクラブから解雇が伝えられているのは、
- Ty Gooden (France & Belgium)
- Julio de Marco (Spain & Portugal)
- Leonardo Scirpoli (Germany & Austria)
- Stephen Bradley (Ireland)
- Hans Gillhaus (Holland)
- Alessandro Sbrizzo (Italy & Switzerland)
さらにUKをカヴァする
- George Mackie (northeast)
- Dave Daniels (northwest)
- Peter Latimer (midlands)
- Alex Stafford (Scotland)
ここに名前が挙がっているだけでも計13人を数える。
担当エリアを見ると、いわゆるヨーロッパの5メイジャーリーグ(イングランド・フランス・スペイン・ドイツ・イタリー)とその周辺の重要エリアが軒並み入っている。彼らはシニアスカウトだというのだから、このエリアでのマンパワーによるスカウティングを事実上止めるということなのか。どえらい決断である。
また当然彼らにもアシスタントや協力スタッフもいるだろうことを考えると、ひとりにつきひとりいたとしても26人。ふたりいれば39人。今回財政難で解雇されるという55人のうちかなりの程度をリクルート部門のスタッフが占めるのかもしれない。
われわれは55人の解雇について「一般従業員」をなんとなくイメージしていたが、こうしたスペシャリストが解雇対象であることを考えると、コストカットできる金額はもっと大きいものになるはず。アーセナルのような一流企業で働く専門家である彼らのそれぞれが高プロ人材(?)じゃないとは考えにくい。とくに古参のスタッフであるカジガオなどは相当稼いでいなければおかしいだろう。
ということは、昨日ぼくが書いたような「小さなコストカットのために」というのは議論の出発点が若干違っていたかもしれない。もちろんKSEの資産規模からすれば、どちらだって大差はないだろうが。
こと財政難への対応という観点では、名もなき一般従業員を解雇するよりは大きなコストを削減できるはずで、それについては理にかなっているのかもしれない。
アーセナルがリクルーティング部門を再構築する理由
人員削減の理由のひとつは財政難によるコストカット。それ自体は疑う必要はなさそうに思う。とにかくクラブは赤字を減らさなければならない。いま夏のウィンドウがオープン中だが、資金がなければ補強もできず。それはファンだって望んでいないことだ。
ちなみに、今日r/Gunnersでみかけた情報によれば(※数字のソースわからず)アーセナルのnon-football related staff(選手やコーチではない一般従業員?)の数は、ほかのトップクラブと比較して多いほうらしい。
特筆すべきはチェルシーやシティの従業員の少なさで、今回アーセナルが55人減らしてもなおシティの2倍以上。スタッフがいればいるだけコストはかかるのだから、近年のアーセナルのスポーツ面での実績を考えれば、これはあまり喜ばしいことではない。
もちろんゆくゆくはトップレヴェルで戦うクラブに戻るつもりだが、現在のプロセスにおける危機的フェイズで、クラブがコストカットのために従業員の人員削減を画策したとしても理解できないことはないのかもしれない。実際にいまいるスタッフを路頭に迷わせていいのかどうかは別問題だが。
しかし、それでもクラブの運営にとってとりわけ重要と思われる、場合によっては根幹になりうる、超重要なリクルーティング部門で、なぜこのような驚くほど大胆で大規模な人員整理を行うのか。
ヨーロッパエリアにおけるスカウトメンの重要性低下
憶測のひとつとしては、近年の選手リクルート界隈では、すでにヨーロッパの主要エリアでは隅々までスカウティングネットワークが張り巡らされていることが挙げられる。
下部リーグからトップリーグまで選手のパフォーマンスデータ、その分析から実際のプレイ映像まで、サードパーティでもかなりカヴァされていて、これまで違い自前でスカウトメンを雇う旨味が減ってきているという。
もちろん、スペシャリストの経験に基づくスカウティングのベネフィットはあるだろうが、それでなければダメだった以前に比べれば、その重要性は減少している。あるいはコストパフォーマンスが悪くなってきた。
これについては、ぼくら熱心なフットボールファンもそれを実感することはあるんじゃなかろうか。
エンドユーザに無料で解放されているスタッツ情報のサイトもたくさんあるし、そこでは驚くほど多様なデータを閲覧することができる。また、そういったメディアでスタッツアナリティクスを交えた詳細な選手リポートなどを目にする機会はますます増えているように感じるし、われわれ素人の目線ですらそうなのだから、クラブが彼らのサーヴィスを利用するなら、比較にならないほど詳細で濃密なデータが提供されるだろう。
もちろんStatsDNAだってまだ存続しているはずだし、いまだってOptaのようなデータサーヴィスはすでに利用しているはずだ。
高いサラリーが必要な専門家がいなくても、最低限のスタッフさえいればいいという考え方に傾いてしまいそうな状況はある。
整理対象から除外される南米エリアと東欧エリア
興味深いのは、くだんの『The Athletic』の記事よれば、今回南米エリアと東欧エリアのスカウトは解雇の対象にならないということだ。
カジガオとともに南米エリアで働いていたJonathan VidalleとEverton Gushikenはそこでの仕事を継続。東欧をカヴァしているTomasz Pasiecznyもそのまま残るということ。
サードパーティのデータカンパニーがスカウトメンを代替する説(+コネでの取引)を信じるならば、これらのエリアはヨーロッパの主要エリアに比べてまだそういったスカウティングネットワークで十分にカヴァされておらず、直接ひとの眼で確かめる必要があるということだろうか。
サンレヒやエドゥで南米方面のスカウティングが加速するという憶測があったが、今回の件で彼らがやはり南米エリアをとくに重視していることが裏付けられてもいるだろうし、またスカウトが残る東欧エリアもまだひとの手が必要なある種の「未開の地」なんだろう。
ということで、いまのアーセナルボードはコストカットをするなら真っ先に整理できる部分はヨーロッパ主要エリアのメインのスカウティングスタッフだと考えた。そんなところかもしれない。
更新おつかれさまです。
とても分かりやすい内容でした。
ありがとうございます。
アーセナルのスタッフはそんなに多かったんですね。
毎回示唆に富んだ記事楽しみにしています。
サンレヒとエドゥが意思決定をし易くなるコネクション優先型はかなり懸念ありますが、どうなるか見てみるしかないですね。
それよりも、社内で困惑の声が上がっていたりする事実もあり、加えて選手、アルテタ(選手のペイカットを説得したので結果顔に泥を塗られた形)が納得して、一枚岩で前に進んでくれるのか、そこが最大の懸念です…
いずれにせよフロントは今回の件について説明責任があると思います
chanさんの解説だけでもだいぶスッキリするものを、何でクラブがちゃんと説明しないのか。
筋が通った話ならそう言えば良いものを、何で隠そうとするのか。
結局撤回したトッテナムやリバプールの解雇の件とは、違う種類の不明朗さを感じますな。
現場はちゃんとやってるんだから、よけいに後ろがしっかりしてもらわないと困りますがなあ。
情報を載せて頂きありがとうございます。
ただソースも何の値かもはっきりしていないと信ぴょう性がないのと
クラブごとの人数の比較にそこまで意味があるのか疑問に思いました。
でもこういう情報でいろいろ妄想するのは楽しいですよね。
シティはシティ本体とシティ・グループで機能わけてるからスタッフの人数を比べるのは難しいかな。
スカウトを整理するのは賛成だけど、取捨選択している感が少ない。。
今の体制だって長続きする確証ないし、、 その後焼け野原でしたは困るのにな。。。
55人解雇にリクルート部門のスカウトは含まれてないみたいで、55人は一般従業員みたいですよ。なので、55人解雇とスカウト解雇は、コスト削減と組織再編で別問題だと思われます。
構造や体制が変わるのは必然的だけどそれがちゃんと時代にあったものだと信じたいですね。どの組織でも同じ体制が続くと非科学的で非効率な暗黙の了解のような謎ルールが存在したりするものですが、それを解消する為の人員整理だと信じたいなと