ファビオ・ヴィエラがアーセナルにもたらすもの
さて、ここからは彼のパフォーマンスやスタッツなど、戦術的にすこし突っ込んだ話を。
彼は、テクニックに秀でたクリエティヴなアタッキングMFということで、いまのアーセナルのチームになにをもたらしてくれるのか。
ポジション
まずは、ポジションから。
彼のヴァーサティリティについては以前にもお伝えしたとおり。優秀なことはもちろん、若く、複数のポジションでプレイできる選手。この夏のアーセナルの典型的リクルートメントと云えるだろう。いちおう利き足は左ながら、両足つかいでもあるという。ますます、らしいプロファイルである。
おなじみの『The Athletic』が昨シーズン(21-22)のポルトでの彼がプレイしたポジションをまとめていた。いつものようにビッグリスペクトしつつグラフィックを拝借。
それによれば、
- CAM(38%)
- ST(33%)
- CM(16%)
- RM(9%)
- RW(3%)
- LB(1%)
CAM(No.10)とSTで70%以上。
CAMと同じくらいSTとしてプレイしているのは少々意外ながら、これはポルトが多くの試合で採用した4-4-2フォーメイションのときの、フロント2のひとりのようだ。そのときは、フロント2というよりも、5人のMFのひとりのようにプレイしていたという。「フォルス9でもプレイできる」というのは、そのときの役割のことを云っているのだろう。
攻撃的なエリアならどこでもプレイできるほどヴァーサタイルとはいえ、基本的に中央で起用されてきたNo.10、あるいはプレイメイカータイプの選手と思ったほうがよさそうである。アーセナル的にメスト・エジルが引き合いに出されることもあるが(ワークレイトのあるエジル)、ヴィエラはアシスト職人というだけでなく自分でゴールもできるタイプ。
ヴィエラの適性ポジションは?
それと特徴的なのは、彼は中央でもやや右寄りのエリアを好んでおり(右ハーフスペイス)、いまのアーセナルのセットアップに当てはめたときには、そのまんまオーデガードのポジションということになる。自然な成り行きとしては、オーデガードのカヴァ、あるいは彼とポジションを争うことになりそうだ。
4-3-3で、彼とオーデガードといっしょにプレイさせたいなら、左MF(ジャカのポジション)。右にくらべ、左サイド(左ハーフスペイス)でのアクションもそれほど少ないというわけではない。
ユーリ・ティーレマンスはもともとジャカのポジションでプレイすると思われていたため、もしアーセナルがヴィエラを取ったことで彼への関心がやや薄れているというのなら、アルテタはもしかしたら左MF/8でヴィエラがプレイすることもイメージしているのかもしれない。
ちなみに、ヴィエラはポルトのファーストチームに上がるまえは、ポルトBで、いまよりもっと深いエリアのCMロールをやっていたという。そこでは、深く落ちてGKからボールを受け取るようなプレイもしばしばあったそうなので、いまジャカがやっている役割も担える。もちろん左足でもある。
パーティの前に、ふたりの似たプロファイルのゲイムメイカーがいるセットアップ。それも興味深い。
ヴィエラが、現在サカがプレイしている右ワイドでのポジションでプレイすることをアルテタが想定しているかどうかは定かではないが、そういう意味で中央よりは守備リスクがないし、見返りも多いかもしれない。ワイドにウィンガータイプではなくNo.10タイプを置くのは(いわゆるInverted winger)、なかなか興味深いポイントだと思う。その場合は、ワイドエリアが空くため、トミヤスよりももっと攻撃マインドのRBのほうが相性がよさそうではある。
ESRは、No.10だけでなくウィンガー適性もあるが、左でもすでに似たようなことをやっているといえばやっている。
来季から交代枠が五人になることを考えると、ヴィエラのような危険なエリアにチャレンジングなパスを出せる選手は貴重に思うし、出てくるチャンスは全然ありそう。
先制された相手を覆せないって課題にも効きそうな特徴。ワクワクしますね。