ヴィエラのプレイスタイルと強み
ぼくが、彼についてかなりいろいろな情報を観たうえで(たくさんありすぎる)、ポルトでの彼のプレイスタイルの特長をざっくりまとめると、以下のようになる。
- パス
- シュート(ミドル/ロングレンジのシュートあり、正確)
- ドリブル(優秀なボールキャリアー)
- クロースコントロールとターン(タイトなエリアでボールを前進させられる)
- ヴィジョン・ポジショニング・味方のためのスペイスメイキング・意思決定
多くの面で、かなりハイレヴェルな技術を持ったクリエイターという評価。
相手ディフェンスを切り裂くパスは、シットバック/ディープブロックをやる相手を崩すにも効果的だし、トップチームのインテンスなプレスをかわすボールの技術もある。
彼のもっとも特筆すべき能力は、彼がボールを持ったときに発揮されるアクションであり、そのあたりはスタッツからも確認できる。
Fábio Vieira, FC Porto 2021-2022 Midfield and Attacking Midfield Template, Radar pic.twitter.com/HEjmwzdJLj
— Scott (on vacation) Willis (@oh_that_crab) June 16, 2022
以下は、Arseblog(Scott Willis)より。各項目の順位はパーセンタイル(99が満点で多いほど優秀)。
<攻撃>
- 1.7 – オープンプレイショッツ /p90 ※MFで94位
- 0.24 – ノンペナルティxG ※MFで97位
- 0.39 – ノンペナルティxG /p9o ※MFで99位
- 1.68 – オープンプレイキーパス /p90 ※MFで97位
- 0.4 – xA /p90 ※MFで99位
- 0.9 – アシスツ /p90 ※MFで99位
- 3.8 – ボックス内へのパス成功 /p90 ※MFで98位
- 4.9 – 縦パス成功 /p90 ※MFで86位
- 5.2 – ディープコンプリーションズ(相手ゴールの25メーター以内へのパス)/p90 ※MFで99位
極めて優秀。ほとんどトップクオリティ。ヤバい。
<ボールプログレッション>
- 5.4 – ファイナルサードへのパス成功 /p90 ※MFで76位
- 2.5 –ファイナルサードへのボールキャリー /p90 ※MFで91位
- 5.4 –ファイナルサードでのパス受け取り /p90 ※MFで95位
- 1.4 – ドリブル成功 /p90 ※MFで78位
- 5.8 – プログレッシヴキャリー /p90 ※MFで88位
ヴィエラの強みのひとつはパス。とくに危険な場所へのパス。彼のパス成功率は82.9%とまあまあであるが、その程度の数字なのは、彼がかなり難しいパスをやろうとしているから。そして彼はそれをかなり高い確率で成功させている。
わたしは「エクスペクテッドパッシング」というメトリックで、すべてのパスの平均的成功率を測り、それでその選手がいかにパスで優れているか評価しようとしている。その評価でも、ヴィエラは際立っているように見える。
彼はこうした危険な場所へのパス107つのうち、71を成功させていて、これは51.6%の期待値に対し、66.3%の成功率になる。これは、パスの価値からすれば、とんでもなく優秀である。
ヴィエラの攻撃面の優秀さを示す別のグラフ(出典)。縦軸が前方パス、横軸がxA。U-23限定。とくにxAは彼より優秀なのは、ふたりしかいない。
いっぽう、守備。
<守備>
- 2.4 – タックル /p90 ※11位
- 1.6 –タックル成功 /p90 ※18位
- 39.6% – タックル成功率 /p90 ※33位
- 0.8 – インターセプションズ /p90 ※MFとして15位
- 0.8 – パスブロック /p98 ※MFとして33位
- 4.9 – ボールリカヴァリ /p90 ※9位
- 0.5 – 空中戦勝利 /p90 ※19位
- 44.4% – 空中戦勝率 /p90 41位
攻撃やボールプログレッションのスタッツにくらべると、守備のスコアはかなり見劣りがする。平均ですらない。
すくなくともポルトでの彼は、MFとはいえ、ほとんど守備タスクのない、攻撃の選手としてプレイしていたということがわかる。これはFCポルトのリーグでの立場的な影響もありそうだ。
ところで、Scott Willisはこの記事で、このような彼のスタッツを評価する際の注意点をいくつか挙げている。
ひとつは、彼が複数ポジション(役割)でプレイしていたこと。ポジションによってアウトプットはそれなりに変わる。
それともうひとつは、ポルトガルリーグのクオリティ。ポルトガルリーグはヨーロッパのトップ5リーグスにつぐ6番目のリーグだが、それでもPLとはだいぶ違うことは念頭においておかねばならないと。イングランドはポルトガルよりもっとインテンスだし、上下格差のあるポルトガルリーグで支配的にプレイしていたクラブでのスタッツを鵜呑みにすべきではない。イングランドで同じように能力を発揮するのは、より難しいはず。
オーデガードとの比較
この記事中から、オーデガードとの比較についても。MFとしてのキャラクタは、やはり全体的に、かなり似ている。
概ね似ているが、オーデガードのほうがよりマイルドに全方面にそれなりのアウトプットがあるのに対して、ヴィエラのそれは攻撃やポゼッションに偏りがある。
とくに、プレッシャーやタックル、ボールリカヴァリのような守備面でのヴィエラのスタッツは、オーデガードとはだいぶ差がついている。
アルテタが、オフザボールの状況で、ヴィエラにもラカゼット(エンケティア)やオーデガードのレヴェルの献身性を求めると、ヴィエラにとってはなかなかチャレンジングな環境になりそうである。
それと、ヴィエラは、セットピースのキッカーとしても優秀で、彼の小柄な体躯を考えると、彼がアーセナルでフリーキックやコーナーキックを蹴ることになる可能性もわりとありそうだ。
アーセナルが彼の強みを最大限活かしてプレイさせたいならば、やはり多くの識者が指摘するように、ポルトでやっていたような、よりゴールに近いポジションでプレイさせるのがよさそうに思える。
ヴィエラのリーダーシップクオリティ
オーデガードとの類似点では、リーダーシップも挙げておかねばならない。
現在のアーセナルのリクルート方針が、若さやヴァーサティリティにフォーカスしているのは、去年夏以降新加入の選手たちや今年うわさになっている選手たちの顔ぶれを観てのとおりで、そこにさらに加わる重要な要素のひとつがリーダーシップだろう。
ジャカやパーティといったシニアを除いても、いま次世代ガナーズのなかには、KT、オーデガード、サンビ・ロコンガのようなチームキャプテンの経験者も多数おり、またガブリエル、ホワイト、ラムズデイルらも、ファンのあいだではつぎのアーセナルのキャプテン候補に挙げられている。
ヴィエラについては、前に触れたポルトガルのジャーナリスト氏も指摘していたように、ピッチ上でも攻撃をつかさどるリーダーだし、実際にユースNTのキャプテンを務めていたということは、まさしくリーダーの器。
つまり、彼もまた次世代アーセナルが歓迎したいリーダーシップクオリティを22才の若さで持っている。
来季から交代枠が五人になることを考えると、ヴィエラのような危険なエリアにチャレンジングなパスを出せる選手は貴重に思うし、出てくるチャンスは全然ありそう。
先制された相手を覆せないって課題にも効きそうな特徴。ワクワクしますね。