試合の論点
シティ vs アーセナルのトーキングポインツ。
トップクオリティとの差は確実に近づいている
アーセナルは、アルテタを迎えてからは一度だけシティに勝ったことがあるとはいえ(※19/20のFAカップ)、もうしばらく彼らの圧倒的クオリティに歯が立たない期間を過ごしてきた。エティハドで最後にアーセナルが勝ったのは8年前?
だが、昨シーズン(21/22)にホームでアルテタのチームが観せたパフォーマンスは、2-1で試合には敗けたものの、近い将来には彼らに追いつける兆しを観せたのは事実であり、そして今回。折しも、アーセナルがシティを抑えて、リーグトップを独走しているなか。やはり今回も、われらがさらにトップレヴェルに近づいていると思わせる内容だったのではないか。
ぼくはこれまでシティとアーセナルの試合をレヴューするときに、「プロとアマ」とか「大人と子ども」とか、そういう極端な対比をよくしていた。なぜなら、そのとおりに観えたから。
今回は、まったくそんなではなかった。コーチの戦術、戦術の浸透、チームワークのレヴェルのあたりでは、もうあまり差がないようにすら観えた。まだ超えられない壁があるとすれば、個人のレヴェル。そこはまあ現在のチームビルディングのフェイズなので、しょうがない。トップオブトップとはくらべられない。
しかしそこだって、あんなにローテイションされたチームで、少なくとも前半は、あれだけのパフォーマンスを観せた。以前は、お互いのチームの個人レヴェルもほとんどのエリアで負けていると思わされたが、いまはもうそこすら近づいているように感じる。
選手のクオリティすら近づいているという意味で個人をひとり挙げるなら、あのトロサールはどうだったろう? あんなふうに相手DFを翻弄するなんて。彼はアーセナルでフルデビューだった。
最序盤にかなりノリノリでハイプレスを仕掛けてくるシティだったが、アーセナルはたじろぐことなく応戦し、トロサールを起点に逆襲。トミヤスの強烈なショット(アレが入ってればなあ)を含めた一連の攻撃プレイを終えたときには、シティはすっかり守備の形になっていたのは痛快だった。このときまだ試合が始まって5分。あのシーンは、これまでのアーセナルとの違いを相手につよく印象付けたという感じがした。もう、やられっぱなしじゃない。
お互いのちからが拮抗しているように感じたのは、ミケルとペップで全体的にはやはり似た戦術があったからかもしれない。試合が落ち着いたときには、とくにそれを感じた。
お互いオーガナイズされたプレスでGKからのバックからのプレイを許さず、ロングボールを狙うやりかた。サカ、マーレズといった1 v 1のスペシャリストにワイドで仕事をさせない方針も、かなり似ていたように思う。全体的にチームのプレイのスタイルが似ているのは、云わずもがなであり。
そんなわけで、アーセナルのチームはこの試合結果にがっかりしすぎることはない。むしろ、この試合を糧にしてPLで勝てばいいのである。彼らのようなチーム相手に、手応えも得ることができたという意味では、有意義ですらあった。
ミケルのマン to マンディフェンス?
これは、ぼくは白状すると、試合が終わってアルテタの会見を読むまでは気づかなかった。ハイライトも見返してみて、そんな云うほどかな?と思ったり。まあボス同士がそれを認めているのだから、そうなんだけど。こういうとき、ピッチ全体が観えたらなあと思う。
シティのFW(ハーランド)が深く落ちてボールに触ろうとするときに、いつもビッグガビが張り付いてるなくらいは思ったけど、全体的にアーセナルがマントゥマンをやっていたとは思わなんだ。
後半は、前半ほどアーセナルがうまくいかなくなったのは、やっぱりそのせいなんだろうか。マンtoマンに気づいたペップがHTで調整した。それと彼が言及しているように、サブのウォーカーとベルナルド・シルヴァ。
失点してからは、とくにシティの支配する時間になったが、それまでも後半に入ってからはアーセナルがやや劣勢に観えた。
このレヴェルだと、対策の対策を試合中にやられるという好例だったかもしれない。
アーセナル的には、マンtoマンディフェンスというのは、もちろんいつもはやってないはずで、今後これはオプションになるのだろうか。ちょっと興味深い。
エキスパートたちの戦術解説を楽しみに待とう。
ホールディングとサンビ・ロコンガという敗者
試合には敗けたものの、アーセナルのチームは全体的にポジティヴだったと思うが、ふたりのバックアップ選手は、残念ながら悪い印象を残すことになった。
ひとりは、ロブ・ホールディング。
開始早々ハーランドともつれたところは、お互いシャツをつかんでいたからかハーランドのファウルが取られたが、下手するとホールディングはラストマンディフェンスで一発レッドもありえそうなシーンだった(今回は、ややアウェイチーム優しいジャッジメントだったような?)。
また別の機会には、激しいディフェンスでハーランドに肘鉄を食らわせて、彼はしばらくダウン。あそこもファウルにはならなかったが、場合によってはレッドカードでもおかしくなかった。逆なら絶対そう主張してる。
シティは、ハーランドに対しホールディングを狙うように指示をしていたのだろう。ふたりのバトルは何度も訪れたし、CBがボールを持ったとき厳しくプレスをかけるのもホールディング。彼は、ハーランドにはかなり手こずっているように観えた。あの相手FWに対応できてなさ具合は、いつぞやのToTでのレッドカードを想起させた。
あのときも、彼はソン・フンミンに対して気負いすぎたのか、無謀なファウルを2回やって早い時間に退場になったが、今回もまったく同じに観えた。ハーランドに対して、気負いすぎな様子がありあり。それもフィジカルやスピード勝負で勝てないからというのが観ていてわかって、ちょっと痛々しかった。
前半には結局カードが1枚。彼があの調子でプレイをつづければ、後半のどこかでひとり減るのは避けられず。アルテタも彼を前半で下げざるを得なかったと思われ。
ホールディングがHTで退くまでの前半、ハーランドとビッグガビのバトルの機会が少なかったのは、要するにそういうことだろうと思う。彼らにとって、バックアップ選手のホールディングは狙いどころだった。
いまやほとんどワールズベストのモンスターCFを相手にすることは、どんなDFにもタフなので、今回のホールディングを一方的に責めるのは気が引ける部分もあるが、その後ビッグガビ(サリバ)がうまく彼に対応しているところを観れば、やはりそれができなければトップを目指すアーセナルでは、レギュラーでプレイするのは難しいということなんだろう。
それと、パーティの故障で後半から入ったサンビ・ロコンガ。
後半の50分、タッチの大きさからボールを失うというドジっ子なところを観せて、すぐにピンチに。そこは、トミヤスとサリバのふたりがかりでハーランドを抑えたものの、なんとも幸先の悪いスタートだった。
その後は彼も試合の空気に慣れたのか、徐々に試合に入っていき、正確なダイアゴナルのロングボールなど、気の利いたプレイを観せたときもありながら、最後までこのチームでスターティングでプレイするにふさわしいところを見せることはなかった。今回もまたと云うべきか。
今回低調なパフォーマンスだった彼にとってなお悪いのは、このようなポジショニングのミスをオーデガードにたしなめられている試合中の様子が、ソーシャルメディアで拡散されていること。
Martin Ødegaard was heated with Albert Sambi Lokonga for his positioning on this play 😮 pic.twitter.com/0p6Tnn0XFC
— ESPN FC (@ESPNFC) January 27, 2023
試合後のファンからは、「ボールを持っているときはまだしも、守備のポジショニングがまともにできない」のような批判を浴びていて、ファンのあいだでは失格の烙印を押されつつある。
もっとも、この試合のサンビについてはファン界隈でもあまりにもネガティヴ論調が優勢なので、カウンターとして彼を擁護する声もある。
たとえば、アーセナルのようなトップレヴェルで、しかもパーティのようなリーグベストのNo.6役を、たいしてプレイもしていない23才がいきなりできるわけないとか。あるいは、プレイタイムがなく自信を失っているとか。それはかなりあると思う。本人がアーセナルでの未来を信じるなら、ローンで経験を積んでもらいたいところだ。
だが、彼の問題はもうひとつあって、メンタリティ。
Sambi just walked straight off the pitch. Didn’t clap the fans. If he wants to go, be my guest. pic.twitter.com/YNXHHHFRgJ
— H (@ClockEndH) January 27, 2023
こちらはファンがスタンドからのピッチの様子を撮影したもの。サンビがチームメイツと一緒にファンにあいさつをせず、ひとりピッチを立ち去る様子が映っている。ふてくされちゃったのか。これはいけません。いまのチームでこういう選手がいるのはちょっとまずい。
これまでの彼の振る舞いや発言などを観ていると、どうも自分が自身に抱いている自信に、現実の自分が追いついていないことに対するいらだちがかなりあるんじゃないかと思う。そして、その感情のやり場を持て余している。自分でもわかっているのに、どうすることもできない。みたいな。
たぶんこれはどんな選手にもあって、アルテタの理想は、それをトレイニンググラウンドにぶつけられる選手なのだよね。エディが好例。
アーセナル(アルテタ)が、彼をちゃんと正しいあるべき方向に導くのか、あるいは見限ってしまうのか。それも結局はサンビ次第なんだろう。彼が前を向くなら、それを助けないコーチもチームメイツもいない。アーセナルだもの。
パーティのケガが深刻なら、エルネニーもいないいま、サンビがNo.6で担うパートもけっして小さくないはず。なんとか、うまくやってもらいたいものだが。
その他試合について
- 初ハーランド。
ロボットはやっぱりすげえな。あのクオリティは、200mじゃ買えないという気がする - トロサールのレディメイドっぷり。いきなりチームにフィット。プレスも教えることなし。両足使いもナイス。トロサール/マルティネリのRWは非常につよい
- エンケティアもCFとして光っていた。惜しいショッツも
- トミヤスのあのショット。。彼はその後もよかった。さすが両足使いという狭いエリアで気の利いたパスも
- ジンチェンコのナツメグ
- ♪Love will tears us apart again
この試合については以上
これは蛇足。カップ戦で敗けそうなときはいつも思うのだが、最後の数分でGK含めて全員上げてゴール前に放り込むみたいなのをなんでやらないのかな。敗ければもう終わりなんだから、失点のことなんて考える必要もなくて、ああやって最後にウダウダやっている意味が毎度わからない。
ウデゴが何を言ったのか知りませんが、
あのような状況でロコンガが裏抜けについていく(釣られる)のは、
冨安がサイドに開いてガナの2CBのスライドが間に合ってない状況では仕方ないですね。
ハーランドを怖がって2CBをつけっ放しにして冨安も開いているなら
マーク受け渡す味方のいないロコンガはある程度ついていくしかないし、
それでギュンドアンに突っかけるならサリバの役目でしょう。
でもハーランドを怖がり2CBつけてDFラインも上げないからそれも中途半端でできず。
しかしギュンドアンは守備の突っかけを想定してかなり後退した。
警戒して勝手に下がってくるギュンドアンを待ち構えて嵌められなかった悔しさが、
ウデゴにあったのでは?
ロコンガが2人分の守備を出来るわけないしDFリーダーの指示もないので
あれは低いライン含めたDF全体の問題であって、深い意味はないでしょう。
負けたのは残念ですが、これまでの負けとは段違いの内容。
ポジティブな負けだと思います。
残念ながら、ホールディングは無理ですね・・・
退場にならなかったのが救いです。
試合後のジンチェンコとウォーカー&ギュンドアンとの絡みがほのぼの。
ジンチェンコの人柄が分かりますよね。