そしてローンへ。もうマドリッドにはいられない
FIFAのキャリアモードでプレイしているなら、レアル・マドリッドからHeerenveenへ行くことは、なにかうまくいかなかったと思うかもしれない。オランダリーグのことを悪く云うつもりはないよ! でも正直、ぼくにとっては、あれは素晴らしい経験だった。ファーストチームのレヴェルでレギュラーでプレイすることができるようになったことは、まさにぼくに必要なことだった。Heerenveenへのローンは、かなりありがたく思っている。人間としても成長した。そしてVitesseでは、選手としても成長した。
Heerenveenでは、ぼくは運転免許も取った(これでもう父さんに運転を頼む必要がなくなった)。自分で責任を負うことも学んだ。Vitesseでは、マネジャーのLeonid Slutskyと出会った。彼はすごい。彼はぼくが毎回マジカルでなくとも、ぼくの能力を信じてくれた。彼は、ぼくの意思決定とチームワークを進歩させてくれた。そして、ぼくはまた難しいパスを探すようになっていった。
オランダでの2年半のローンのあと、ぼくはラ・リーガへ戻る準備ができていた。そして2シーズン、レアル・ソシエダに落ち着いた。最後には、うまくはいかなかったが。あそこは世界の美しい部分にある素晴らしいクラブであり、ファンもチームととても親密。ある意味、バスク文化はノルウェイみたいなところがある。人々は外見は控えめながら、ひとたび心を許せば、とても思いやりがあり守ってくれる。彼らの一員になること。大好きだった。
ぼくはいいプレイをしていて、あそこでとてもハッピーだった。しかし、1年後にはマドリッドに呼ばれた。ぼくは考えた。「このチャンスはいまつかまないと。16才のときからずっと追っている夢なのだから」。
ぼくは彼がBチームでコーチをしていたときから、ジダンとはいい関係だった。彼もぼくを気にしてくれていたし。だから、今回こそそれがうまくいくと信じたかった。
だが、そこでCovidを患った。20-21シーズンの最初の2試合でプレイしたが、完全には回復しなかった。そのあとも自分のベストでパフォームできず。それ以上のチャンスはなかった。ほとんど皆無。いっぽうでぼくはレアル・ソシエダをTVで観ていた。「まだあそこにいられたかも」。
それについては、かなり考えた。
1月の移籍ウィンドウを前にして、ぼくはエイジェントに話した。「ねえ、ぼくらにはなにかが必要だよ…… ぼくはただここにいるために戻ったんじゃない。プレイするために戻ったんだ。ぼくはプレイが必要だし、成長も継続させたい」。
彼はぼくを落ち着かせようとして、マドリッドに戻るためにひとつ契約をキャンセルしたわけじゃないと云った。ぼくがいつも云っていたのは、安定がほしいということ。5ヶ月後にまた移籍する? ぼくはもう決心していた。
ぼくはマドリッドには感謝しかない。16才の子どもに投資してくれたことに。全員によい意図があったし、ぼくも誰も責めたくない。でも、ぼくには落ち着ける場所を見つける必要があった。ホームを見つけることが必要だった。
それをノースロンドンで見つけた。
アーセナルに移籍する
キャリアモード。
ぼくのふたりめのエイジェントが云っていたことをふと思い出す。アーセナルがぼくに興味を持っていたと。それは正しいと感じた。
ぼくはミケル・アルテタとZoomで話した。彼はプロジェクトの全体について話してくれた。そのときのアーセナルはうまくいっていなかった。彼らはテーブルで15位まで落ちていて、でもそのミーティングでは…… 正直、アルテタとのミーティングから帰ってきて、もし彼の述べたことを信じない人がいたら、問い詰めたいくらいだ。
彼はネクストレヴェルだ。説明が難しい。彼は情熱的。彼はインテンスで、ときどきはまあ、ちょっとクレイジー…… でも、彼が話すと、彼が起きると云ったことは、なんでも起きるのだとわかる。
彼は彼のプランをぼくに話し、彼がそれに向かって築いているすべてを話した。彼はクラブで何を変える必要があるのか、完璧にわかっていた。そして、彼はスクワッドにいる素晴らしい若い選手たちについて話した。サカ、マルティネリ、スミス・ロウ etc etc…… いかにぼくにそこに入ってきてほしいか、いかにぼくが成長していくかについて彼は語った。
ぼくはこの力強いフィーリングをもらった。彼がそこに込めているものはとても特別だった。
もっと納得させられる必要があったというわけではないけど、ぼくはアーセナルファンからのたくさんのメッセージをもらっていた。Instagramではぼくにアーセナルとサインしてくれと。ぼくだけじゃない。家族全員、友人、ぼくがフォロウしている全員にだ! なんてことだ。なんて活発なファンベイスなのか。ぼくの知人からは、何人からもこんなコメンツがあったと見せられた。「マーティンにアーセナルとサインするよう伝えて!」。
これはもう…… Wow
云わねばならないのは、ぼくがここに来てからファンはずっとすごい。ぼくらが選手として、そんなのどうでもいいと思っているひともいるかもしれないが、それがどうでもよくないんだ。エミレーツでは、タックルしてボールがスロウインになったとき、いつでもステディアム全体がゴールしたみたいに声を上げる。こんなふうに自信を与えられれば、なんでもできるような気持ちになる。
ぼくのファーストシーズンだった20-21が終わり、8位でフィニッシュしたとき。クラブの誰も自分たちのやっていることを疑わなかった。全員が自分たちを信じていた。それはすべて計画の一部だと。その前のシーズンですら、とてもタフだったというのに。もちろん、CL出場を失ったことはつらかったし、あんなふうに手中から逃してとあっては。でも、ぼくらはその経験からも学んでいる。
ぼくらはもっと近づき、力強く、ハングリーになって戻ってきた。
ぼくらはいまタイトルレイスにいる。しかし、まだ道のりは長い。信じてほしいが、いまは誰もまだ5月のことを考えていないんだ。これはお約束だけど、ぼくらは試合づつやっていく。トレイニングセッションごとにやっていく。ひとつづつだ(One piece at a time. )。
でもこれは云っておく。もしこのチームを完全に信じていないものがまだ残っているなら、ぼくからこのことばを:ぼくらが達成できるものに限界はない。何人たりとも例外を云うのは許さない。
ぼくはこのクラブのキャプテンでいることがとても誇らしい。これからも長くここにいることになると感じる。
ボクシングデイのウェストハムでの勝利のあと、ぼくはヴェンゲルと話す機会があった。彼とは2018年にエミレーツで話して以来だった。そして、あのステーキとフライを食べたとき以来。ぼくらはいい感じに話して、彼はぼくがマドリッドを選んだあとでさえ、ぼくのキャリアを追いつづけていたと云った。彼は率直で、ぼくに起きていたことについて心配していたときもあったと云ってくれた。でもいまはぼくが正しい環境のなかで、うまくやっているのを観てうれしいとも。
彼はなにかを感じたのだろう。ぼくはノルウェイを去ってから、なんだかすべてのことが「仮のこと」だと感じていた。安定はなかった。本物の深い関係も。それもいままではだ。とても重要なこと。
エミレーツで、ぼくがチームを率いて出てくるときはいつでも、これは自分自身の時間だと思う。雰囲気を十分に感じたいし、ファンからの電撃的な空気も。スピーカーで“North London Forever”が流れるのが聴こえ、深呼吸していっしょに歌い始める。
毎度鳥肌がたってしまう。
目を閉じ、子どものころ、Drammenの人工芝のピッチにいた自分について考える。いまこの瞬間の写真をそのころの自分に観せ、これが未来の自分だと伝えたら?
彼はそのために死ねるだろう。
まだひどく長い道のりがある。でも、ぼくは夢のなかで生きている。
帰ったよ(I’m home)。そしてベストはまだまだこれからだ。
以上。
これはたぶん、このブログで訳した記事では過去最長。
でもすごく平易な単語しか使われてないから、ぼくでも比較的早く訳せた。英語は、よく中学生英語で十分みたいなことが云われるが、アレはマジだな。中高生および英語学習者のひとは、オリジナル記事を観てもらいたい。※そして誤訳の指摘も歓迎
さて、語りどころが多くて困るな。マドリッド時代の挫折エピソードはとくに興味深い。
いまはちょっといま時間がないので、このエントリは以上にするが、この発言は、ことあるごとに振り返ることになりそうな予感がある。
彼のような選手がアーセナルに来てくれたことは、ほんとうに最高。ありがとうマーティン。
最後に、今朝バート・バカラックが亡くなったというニュースを観た。最近は有名人の訃報が多くて、ほんとうになえる。まるで毎週みたいである。
バート・バカラックというひとは云うまでもなく日本でも有名な作曲家で、バカラック&(ハル)デヴィッドのコンビで、カーペンターズやディオンヌ・ワーウィックといったアーティストの数々のヒット曲を世に送り出したことでもよく知られている。知らんというひとも曲を聴けばわかる。
ソウルやレゲエなどのカヴァーヴァージョンで彼の名曲に触れているというひとも多いと思う。ぼくもです。
流浪のすえに、マーティンがやっと見つけたアーセナルという名のホーム。そこにちなんで。お聴きください。バカラック&デヴィッドの代表作『A house is not a home』。Sugar Minott。この曲以前も貼った気がするけど、今回はシュガーで。好きなんだよ。
おわり
泣いた
素敵な訳をありがとうございます
ジャンパーでも無く、ストライプでも無くボーダーじゃないかと思ったが、そんな事はどうでもいい
彼にはアーセナルで、どこまでも高く昇り詰めて欲しい
全てのタイトルにチャレンジしてサカとバロンドールを争って欲しい
ずっと応援します
COYG
素晴らしい。
日本語訳が出てもそちらは読まないので消さないでほしいです笑
ありがとうございます。
キャプチャがレアルに行ったのはみんな知ってたと思いますが、その後の苦しみや孤独はこうして語られて初めてわかりました。
壮絶な10代。考えられない。
その経験からのアーセナル。
ベンゲルとのエピソードも胸が熱いですね。
アルテタが来て以降、ホントにいろんなことがあったのですが、なんか1人一人いろんな個性のキャラを見つけて仲間にしていくRPG みたいで、その先には素晴らしいエンディングが待ってるに違いないとゆうこども心に戻った気分です。そしてエピソード2,3と続いて行くみたいな。
神童と言われようが人の子なんですよね。
アーセナルってホントに魅力的なチームだと思います。
ノースロンドンに生まれたかったな。
素晴らしい訳ありがとうございます!
いいね!押す機能があったら間違いなく押してました。
落ち着きもあって今じゃキャプテンそのもののウーデゴールが初めて、人間らしく思えました。
顔も好きだし言うことも素敵…
一層彼のことが好きになるインタビューでした!
めちゃくちゃいいインタビュー!ありがとうございます!
ますます、アーセナル愛、キャプテン愛が高まりました!日本語訳ありがとうございました!
Best. Truly best.
素晴らしいキャプテンの言葉に素晴らしい訳を添えて。Class.