ジョルジーニョのロングインタヴュー@The Athletic 2023年12月
ここからはThe Athleticでのインタヴューを。このインタヴューは動画で一般公開されている。尺は1時間以上と超充実。話題はかなり多岐にわたるなか、ペナルティやハヴァーツなど、興味深いトピックもたくさんある。
一部だけにするつもりが、けっこう長くなってしまった。
(みんなあなたのことをなんて呼んでるの? Jorginho? それともJorg?……)
ジョルジーニョ:なんでもアリだね。ジョルジもいれば、ジョルジーニョもいる。「Papai」なんてのもある。ポルトガル語で仲間うちで冗談みたいに云うんだよ。翻訳するとしたら、daddy。でも友だちとか、仲間に云うんだよ「ヘイ、Papai!」って。
(アルテタがあなたのことを好きだと云っている。あなたがもたらしているのはなんだと思う?……)
それは彼への質問じゃないかな! ぼくにはわからない…… 彼は何度かぼくとサインしようとしてくれてて、喋ったこともあった。彼は「Ok、じゃあこれが最後のトライだ」みたいに云った。
思うに、彼が頼ってくれているのはぼくのクオリティ、ピッチ上だけじゃなくてオフザピッチでもそう。ぼくが望んでいて、やりたいことは助けることだから。チームメイツ、クラブのみんな、スタッフにぼくの経験をもたらしたい。いつだってぼくのメンタリティは勝ちにこだわること。
カイ・ハヴァーツはとてもグッド
(あなたはチェルシーでも彼とプレイしていたけど、彼はアーセナルではちょっと誤解されてる? 彼とのプレイはどんな感じ?……)
彼は信じられない選手だよ。人間としても。ことばもない。とてもとてもとてもグッド。ナイスガイ。カイが大好きだね。彼はもう友人であり、いつだって選手としての彼からベストを引き出したい。
彼には知性がある。おかしいのは、彼のことを観てあんまり速くないなと思ったりするひとがいること。だが彼は速い。そして、彼はちょっと痩せて観えるからあんまり強くなさそうとも思われる。だが、彼はチャレンジに行くし、実際強い。
だから、彼のクオリティが理解されるには少し時間がかかるのかもしれない。それに、彼がどれほど努力をしているか…… 彼が自信をつけたとき、彼のクオリティは突然に出てくるよ。ほかのみんなと同じように。
彼の知性、テクニック、フィニッシング。彼がフィニッシュするとき、まるでただ入れてるだけみたいに観える。なんでもないみたいにさ。ボールがネットのコーナーに入っていくのを観て、ぼくは「いまのどうやったの?!」みたいになる。
(ファンが気づかないクオリティを持つ選手がいると?……)
間違いなく。100%そう。フットボールを知っている者なら、カイを好まないなんてありえないんだよ。
それと、いまキミが云ったことの意味もぼくはわかるよ。それはぼくにもたくさん起きたから。だが、彼といっしょにプレイすれば、それは何かが違うんだ。すぐに彼のクオリティ、彼がなにをもたらすかがわかる。
彼を観たら、彼がどうしたいかわかる。彼が自分になにを期待しているか。ボールを持って何がしたいか。そのポジションでどこに身体を置きたいか。だから、彼は、彼の周囲にいる選手を楽にしてくれるんだ。
なかなか理解されないクオリティ
(あなたもひとに理解されないでいたことがあったけど、それにはどう対処していた?……)
それをモチヴェイションとして使うことを学んだ。ふたつのやりかたがある。批判されて落ち込むか、それともそれを受け入れて、間違いを証明するためのモチヴェイションに変換するか。
ぼくが、Veronaでいつもやっていたことだ。ぼくはとても若くて、ファンはぼくをプレイさせたくなかった。若すぎたからまだ準備不足だとね。それは正しくなかったんだけど。だってもうプレイを始めていたから。
ぼくはセリエBからセリエAへ行った。そして最初の半年で7つゴールを決めて、Napoliに売られた。ナポリでも同じことだったよ。ファンからは信頼されない。そこから、ぼくらは自分たちのプレイで歴史をつくったのさ。
そしてチェルシーでもまただ。「彼は遅すぎる…… フィジカリティも……」。ぼくはそれをキャリア全体でずっと聞かされてきた。フィジカリティとペイス。
そこが強みじゃないのはわかってる。だから、そこに頼ってもいない。でもぼくはここにいて、たくさんのものを達成した。なぜか。それはぼくの強みのおかげだよ。それは頭脳(brain)だと思ってる。
ぼくはものごとを予期するし、ものごとの違った見方もできる。ぼくのクオリティは、チーム全体をもっと楽にさせることであり、チームにもっといいプレイをさせることであり、チームをコンパクトにさせて、ことを起こす。それは簡単に観える。でもそれほど簡単なことじゃないかもでしょ?
(ちょっとスタットを確認しても? 昨シーズンのPLのMFでプレッシャー下でのボール保持率<プレス耐性>があなたよりも高かったのは、Rodriしかいませんでした……)
じゃあ、ぼくはそれほど悪くなかったってことか!
(あなたはひとから決めつけられることに不満がありますか? フットボールをわかってないみたいな。この産業がどこへ向かうのか心配?……)
そうだね。でも、そこは人間としてはあんまり煩わされないかな。ぼくは自分が誰かわかっているし、やることもわかってる。ぼくと親しいひとたちもそう。それで十分だよ。みんなを自分みたいにすることなんてできないし。それは不可能。
誰にも意見はあるし、ぼくはそれに煩わされない。ときどき笑わせてもらうことだってある。チェルシーでのファーストシーズンで、こんなのがあった。2000ものパスをやってるのにひとつもアシストがない。でもYouTubeでそのシーズンの動画を観れば、そこでどれだけのチャンスがつくられていたかがわかる。
ペナルティのオプション
(CLランスでのペナルティのゴール……)
あれが特別だったのは、母と妹(姉)がそこにいたから。とてもうれしかった。(その前月)イタリーでペナルティを外してたのもあったからね。
(ペナルティを外したら、多くの選手はもう一度蹴りたがらない。なぜに蹴りたかった?……)
ぼくは自分を信じてるから。チームを助けられると信じてる。あれは利己的になる状況でもなかったし。ぼくは自分が十分だと証明したかった…… いや違うな。誰かに証明する必要はない。ぼくはただゴールしてチームを助けられると思っているだけ。
もし誰かがペナルティをやりたがったとして、それは問題ないとぼくが真っ先に云っただろう。あくまでもチームだ。まずはチームファースト。そのあとに自分。
(あのペナルティであなたはホップしなかった。あれはPLでも成功しているテクニックですが、なぜやりかたを変えたので?……)
GKは、ますます学習するようになってきていて、ペナルティもどんどん難しくなっている。これからもっともっと難しくなっていくはず。
だから、ある時点でぼくはこう感じた。「Ok、もうひとつのオプションが必要だな」と。キーパーがそれをセイヴするのは難しい。だが、彼らもそれを学習してトレインし、そのオプションに対し準備することになる。だから別のオプションを持てば、彼らにはちょっとだけ面倒になる。