フットボーラーへの度重なるアビューズ
(わたしはブカヨ・サカと同じナイジェリア系英国人です。彼が2021年にペナルティをミスしたときに受けたアビューズはひどかった。あなたはブラジル人でありながらイタリー代表であり、かつて似たようなこともあった……)
キツい。不幸にもそれにはだいぶ煩わされる。なぜなら全力を尽くしているから。ベストを出そうとしている。ときどきそのベストが足りないこともある。そして、人々は忘れてしまうんだ。ぼくらがただの人間だということを。
最初に自分を傷つけるのは誰か? それは自分だ。それを起こしたくはなかったのだから。それが起きたとき、最初に背中を刺すのは自分だ。「なんであんなことをやっちまった?」「ほかのことはできなかったのか?」。いい気分ではない。
もしフットボーラーがミスをやれば、もう世界の終わりみたいになる。みんなが自分を殺したがっている。
キミが職場でなにかミスをやったとしようか。あなたはそこでやらかしました。以上。キミのボスは怒るかもしれないけど。でも、少なくともキミの子どもたち、家族にはなんの影響もない。ぼくらの場合は違う。たくさんのひとに影響する。そこに関わった選手だけでなく、母親、父親、兄弟。スタジアムにいるかもしれない。子どもたちは学校にいけば、ほかの子たちから「ほら、おまえの父ちゃんがなんとかかんとか」。ソーシャルメディアがなくてもそう。
(彼らはなんでも云える……)
なんでもだ。彼らはスクリーンの裏側に隠れることもできる。でも、それに影響されるのはぼくら選手だけじゃない。家族が脅迫まではされたことはないけど、ほかの選手には起きた。フットボールの試合のおかげで。みんなが愛する試合だ。楽しむ代わりにそれ。これは悲劇。その先はどうなってしまう?
戦術とパーソナリティ
(サブでピッチに入るときアルテタの要望はどれほどある?……)
そうだね。彼からの情報はたくさんある。でも、たとえばトレイニングでは起きなかったことが起きたときとかも、彼は「Ok、そうなったか、じゃあこれとこれをやらないと」みたいになる。
(そしてピッチに入ったときには選手たちがやるべきことを全員に正確に伝える?……)
そう。全員じゃないかもしれないけど。ふたりだけとかもあるかな。すべてのディーテイルと情報はトレイニングで伝えてあるから。だから、ぼくらがそこにいるときは、彼はぼくらに考えたりさせたくない。彼は、チームには準備万端でいてほしいし、試合のなかでは自由にプレイし、自由に自分たちを出すことを望んでいる。
(つまり彼は選手たちにパーソナリティをもってプレイすることを許している?……)
そのとおり。当然さ。そうでなきゃいけない。結局、フットボールというのはタレントでもあるから。
(ひとによっては、たとえばペップ・グアルディオラみたいなかなり几帳面なコーチは、選手とパーソナリティを切り離そうとしているように見えているかもしれない。でも、あなたは戦術はあっても同時に自分自身を出すという……)
彼がやろうとしているのは、戦略をつくること。それが選手のベストを引き出せる。だから、彼は選手にあるキャラクタリスティクスを読んで、その選手がベストキャラクタリスティクスを出すことを許す。
例を出すと、彼がぼくをプレイさせるとき、彼はぼくには空中戦を競いに行かせたくない。戦略のなかで、彼はぼくにはセカンドボールに向かわせる。
(それはたいへん興味深い。「なぜジョルジーニョは最初にボールに向かおうとしない?」は計画的だったということ?……)
もちろん。すべては計画されてる。うまくいかないときだってあるけど、試合のなかのどんな状況も、ミケル・アルテタの計画どおりだと思ってくれていいよ!
15才でイタリアへ。代理人にだまされる
(15才でブラジルからVelonaへ行って月€20で過ごしていたとか……)
週€20だね(※訳注:現在のレイトで約3100円)。学生とか若い選手がいた修道院で6人部屋に住んでた。15才で一年半そこにいた。そのあと、エイジェントに中抜きされてたことを知ったよ。
(いくらくらい? 云ってもいいの?……)
云いたくない。それを知ったときは、おかしくなりそうだったよ。そのとき、フットボールはもう終わったと思った。家へ帰りたかった。もうあきらめたくなって……
泣きながら「もうたくさんだ」と家に電話した。友人や家族を残して、ぼくは€20で生活してる。ここでなにができる?
(フットボーラーになってお母さんやお父さんを助けるのが夢だった……)
それがぼくの目標だった。でも帰りたいと電話をしたら、両親にはノーと云われた。「帰ってきちゃいけない、まだプロにはなるには遠すぎる」と。
惜しいところにはいたんだ。17才でファーストチームとトレイニングしていたし。両親は「もうちょっとじゃない、いまあきらめちゃだめ」と。ぼくが「お願いだから家に連れて帰って」と云ってもだめだった。
結局は残るように説得された。幸運なことに、このあとすべてがかわり始めた。
(代理人がお金を中抜きしてるとどうやって知ったので?……)
ぼくには選手契約がなかったんだ。
(それはふつうじゃないでしょう? あるいは場合によってあること?……)
まあ場合によるけど、あのときはふつうじゃなかった。ほかの選手たちは契約があったからね。そして、ぼくはファーストチームといっしょにトレインしている、たったふたりのユース選手のひとりだった。そうじゃないほかの選手たちには契約があり、ぼくにはない。
だから、ぼくはエイジェントになんで自分のそれはないのか訊いたんだ。いつもこんなだったよ。「あー悪いね。クラブがそれを望んでないんだ。キミにはべつのやりかたを見つけないとね」。これはおかしいと思ったよ。
そのあと親友だったGKのエイジェントに訊いたら、チームは彼と話していたというんだ。ぼくは未成年だったから、チームは彼と話したんだろうって。
契約については、彼はチームに多くの金を要求していた。ぼくには「チームはキミと契約したがってない」と云っておいて。そのおかげでぼくは契約もされずに週€20で暮らしていた。
(最後の質問です。PLで対戦したなかでベストな選手は?……)
Kevin De Bruyneは笑っちゃう。でも、ぼくが思い浮かべるのはMohamed Salahかな。そうだね、まずはSalah。彼はすごく強くて、パワフルで、かなり速い。彼のメンタリティたるや…… 彼がシュートすればそれが入ってしまう。
ピッチ上でのインテリジェンスといえば、Kevinも別次元だ。マークするのがとても難しい。彼はいつも正しいところにいるし、いつでも背後にいる。「彼はどこにいる? さっきここにいなかったっけ?」みたいになる。彼はもうそこにはいない。
以上
これはジョルジーニョのファンが増えちゃいそうなインタヴューであるな!
さてジョルジーニョ。
ファンからの批判ポインツのひとつである鈍足については、けっこう最近の試合でも相手のカウンターアタックで足の遅さが露呈していて、思わず目を覆いたくなるシーンもあったのだけど、彼の場合はそれを補ってあまりある長所があるという。
彼は、アーセナルに来てからも長い間ベンチを温めているひとりではあるが、出番がくれば、安定してハイスタンダードでプレイしてくれる選手というのが大きい。
ESRやネルソンを観ていれば、つねにチームでプレイしているわけではない選手が、短時間でパフォームする難しさが察せられるというもの。考えてみれば、それもなかなか得難いものがある。
そして、たぶん(自分も含めて)ファンにもっとも過小評価されている部分は、オフザピッチでの貢献なのだろう。
すでにチームではコーチのように振る舞っているというし、年長者らしくドレッシングルームの兄貴分であり、人気者でもあり。最近も、ビッグガビが「チームでいちばんファニーなのは誰?」という質問に、ジョルジーニョと答えていた。ポルトガル語や英語だけでなく、多言語をあやつる彼ならではの余裕もある。彼の話し方なんかもとてもリラックスしていて、柔和な人となりを感じさせる。要するに大人。
チームのなかには、キャプテンのオーデガードがいて、彼以上にキャプテンらしさを醸し出しているライスも入った。ジョルジーニョの役割は、彼らのそれとはまた違うかもしれないが、きっと若いチームに彼だけがもたらせるものがある。
去年寸前まで行きながら惜しくも逃したPLタイトル。そこで得た経験もあるし、今年は彼らがいることで、精神的にもより盤石な体制でシーズン後半戦に入っていけそうである。
来月からは、AFCONでパーティとエルネニーがチームを離れることもわかっているので、彼のCMでの存在感は否が応でも増すはず。
今シーズンのトロフィに向けて、われわれファンに観える部分でも、観えない部分でも、ジョルジーニョがキーパートを演じるんじゃないかと思う。
32! 🎂🍾
Thank you so much for all the messages! I promise I’ll try to respond to all of them 😂❤️ pic.twitter.com/KGJQHLqOTT
— Jorginho Frello (@FrelloJorginho) December 20, 2023
そういえば、契約はどうなるんだろ。彼の契約は今シーズンかぎりで、クラブは一年の延長オプションを持つ。
たしか、ちょっと前の彼のインタビューでは、クラブと契約の話はまだ出てないみたいなことを云っていたような。
クラブも決めかねているのかもしれない。方向性としては、中長期で計画できる若いCMを取りたいはずだが、補強エリアはそこだけじゃないし、FFPもある。
現在アーセナルのCMは、パーティ、エルネニー、ジョルジーニョとシニアが3人もいるので、近い将来大改造が予想される。
どうなるか観てみよう。
これからのジョルジーニョの活躍を祈念して。
おわり