試合の論点
ノッティンガム・フォレスト vs アーセナルのトーキングポインツ。
Securing all three points 🔒
Watch the best of our 2-1 victory over Nottingham Forest 👇 pic.twitter.com/BpvkXwfV1u
— Arsenal (@Arsenal) January 31, 2024
スーパーロウブロックのフォレストに忍耐を強いられる。強いられる?
オーデガードのコメントにもあるように、アーセナル相手にディープブロックをやるチームはもはや珍しくなくなっているが、それでも今回は、PLでもおそらくアーセナルにとりもっとも守備的にプレイするチームとの対戦だっただろう。
おそらく現状、アーセナルがボールを持っているとき、PLでも半分以上のチームがシットディープしようとするが、今回はさすがにそれが極端に思えた。彼らは守備ではファイナルサード(彼らのディフェンシヴサード)に11人全員が入ることも珍しくないという極端さ。
Scott Willisによれば、今回はロウブロックのなかでももっとも低いブロックのひとつで、この試合はしばしばピッチ上の22人中21人がファイナルサードに入っていたという。つまりダヴィド・ラヤ以外の全員。試合を観ていても、まさにそんな感じだった。使えるスペイスは極小。
Nottingham Forest, Defensive Actions Heat Map – Nottingham Forest vs Arsenal
One of the lowest of low blocks, often 21 of 22 players in the final third pic.twitter.com/UYC0IzMDLe
— Scott Willis (@scottjwillis) January 30, 2024
ゴール前、とくに中央を人数をかけてきっちり締めて、ワイドのサカ、あるいはマルティネリにボールが渡ればすぐに複数で対応。彼らの守備には、現在のアーセナル対策のエッセンスがあった。
そんなすでに整った相手守備を崩してゴールしなければならないチャレンジ。これは最近チャンスをゴールに結びつけることに苦労しているアーセナルのチームには、さらにタフなタスクだった。
その点、今回は実際どうだったか。とくに、チャレンジクリアとなるジェズースのゴールが決まる時間(65分)までの約1時間。
個人的には、あのフラストレイションのたまった前半ですら、今回はそれなりの改善はあったんじゃないかとは感じた。このある種のスランプのなかでも多少の進歩があったような。ボックスのなかに何度も侵入してクリエイトしようとしていたし、実際クリエイトしていた。もしラッキーがあれば、ゴールがひとつくらい決まっていてもおかしくはない程度には。あのジェズースのポストをヒットしたやつが入っていれば、まさに分厚いブロックを破ったゴールだった。ESRの惜しいのも。
だが、そうしたチャンスがありながら、今回も多くの場面でラストアクションのなさが決定的だっただろう。ラッキーや偶然や相手のミスでもないかぎり、ゴールは生まれそうもなかった。そこはいつもどおり。
いくらボールを持って連携して相手の守備ブロックを崩そうとして、それ自体がそこで成功しても、せいぜいその局面で相手DFのひとりかふたりを出し抜くだけで、ゴール(シュート)まではたどり着かない。そして、フォレストの固い守備ブロックは全体としては、そうした攻撃も想定内だからブロックは全体としては崩れていない。つねに自分たちのつくるブロックの前でのプレイであり、裏を取られたという感覚がない。だから、落ち着いて対処できるという。落ち着いて対処できるとき、守備はより強固になる。
ぼくはこの試合を観つつ、アジアカップの日本代表のパスはすごい積極的だったなあと、また彼らを思い出していた。日本代表ならそこでライン間にいるESRにパスが出るだろうなあとか思ってしまった。
たぶん、あそこでESRにパスを出せば彼はワンタッチですぐとなりにいるGJにボールを渡してパス&ランをしかける。そして裏を取られそうになるフォレストのDFは慌てる。そしてジェズースはESRのおとりのランにつられたDFが開けたスペイスに入ってきたオーデガードにパス、ズドン。とか妄想したり。だがそんなことは全然起きてくれない。
アーセナルより日本代表のプレイのほうがワクワクするとかあっていいのかな?(いいとも)。
アーセナルファンの多くがイライラしている、最近のゴール不足状況におけるファイナルサードでのextra passとかextra touchはなぜ起きるかといえば、それはやっぱり躊躇でしょう。ボールを失うことを恐れているのか、「支配」が重要なのか、チャレンジングなパスを躊躇する。スタンドのため息を恐れているのか、シュートをためらう。だからいつまでもブロックの周辺でボールを回しつづけて遅攻になるし、意外性もなく、ブロックもなかなか崩れない。
アルテタの試合後会見でも記者から「このチームは完璧なゴールを目指しすぎでは?」みたいな質問がされているのは、そういうファンのフラストレイションを代弁してくれていると感じる。チームはもっと失敗を恐れずチャレンジングなプレイをすべきなんじゃないかと、みんな思ってる。いやしらんけど。でも、そのほうが相手も絶対イヤだろうし。
今回はそれでも、ディープブロックに対するクリエイションは、これまでよりはよかったとは思うけれど。多少は。
ぼくがこのチームにちょっと不安に思っているのは、アルテタがその「ためらいマインド」をあんまり問題だと思っていないっぽいところだ。選手コメントともあわせると「いまやっていることをつづけよう」という姿勢はチーム全体で共有されているようだが、こういうマインドでのプレイをこのままつづけていくべきなんだろうか。後ろ向きまで云えば語弊があるが、少なくともすごく積極的ではない。冒険的ではない。
アーセナルがファイナルサードでもっとチャレンジングでリスキーなプレイをすると、支配もコントロールもいまよりできなくなる。平均ポゼッションもぐっと下がる。失点の可能性だって増えるだろう。だが、あんなふうに分厚いブロックを崩すよりはゴールするのはだいぶ楽になりそうである。
だから、わざわざ忍耐とか我慢が必要な、ボールをネットに入れるのがとても難しい状況をつくっている大きな部分は、自分たちのおかげであり、選んだプレイスタイルのおかげになってしまっているんじゃないか。
城を攻めるのに、城壁ができあがってから攻めるのはたいへんに効率が悪いに決まっているが、戦況(結果とは無縁の)を支配してコントロールしたいがために、相手が城壁をこしらえる時間を許してしまっている。相手守備が整ったその時間帯がもっともゴールが難しいのに、高いポゼッションによって、支配的振る舞いによって、90分のなかの多くの時間がそのような時間帯になってしまっている。
アルテタだって、攻撃におけるファイナルサードの<混沌>を歓迎しているはずなのに、実際生まれているのは、むしろその正反対の<秩序>ある状況。みんなが冷静。アーセナルのアタッカーたちが苦労して何度も何度もゴールに近づこうとしても予想外のことがなかなか起きない。アーセナルのゴールだって、実際その多くがカウンター/トランジションみたいな混沌から生まれているというのは事実なのだが。
まあ、世の中にはいろんなスタイルのフットボールがあって、ミケルのアーセナルはこれでここまで成功しているのだし、ファンとしてそういうフィロソフィを支持してもいるのだけど、このゴール問題を考えるに、ゴールを取るためのもっと効率の良いやりかたが絶対あるという気はする。
アルテタとチームが信じるいまのやりかたをこれからもずっと同じように継続するつもりなら、この問題はずっとつづき、毎回のようにゴールに苦労することもつづく。そして、たまに30もショッツをはなってカウンターの一撃で敗けたりする。
アルテタが来た当初も、ぼくは似たようなことを考えていたが、最近はまたその頃に戻ったみたいに感じる。ゴールをより難しくしているのは自分たち。それに気づかないと、いつまでもディープブロックに苦しんで、チームとしてネクストステップを踏めないんじゃないかね。
きっと、それは100mのビッグストライカーが来ても解決しなさげ。なにしろ、困難なのは状況なんだから。そっちのほうを変えないと。そのほうが話はやくね? 安くすむし。
よく知らないけど、ToTのアンジとか、ボールを失うリスクを恐れずプレイしろって選手に云ってそうである。アルテタが云ってなさそうなこと。
更新お疲れ様です!
12月のリーグでのリヴァプール戦ですが、負けてませんよ!!
1-1のドローです!
勝てなかったので、なんだか負けたような気分なのはわかりますがw
エミレーツではしっかり借りを返したいですね!
twでもご指摘いただきまして。そうなんだよ! 勝てなかったから敗けた気になってた!
修正しました。ご指摘ありがとうございました。