試合の論点
ウォルヴズ vs アーセナルのトーキングポインツ。
Professional performance on the road ✊
📺 Relive our victory against Wolves all over again! 👇 pic.twitter.com/810Cqtees9
— Arsenal (@Arsenal) April 20, 2024
苦しいコンディションながら意味ある大きな勝利
これは、非常に意義深い勝利だった。連敗もストップしたし、4月の呪いをひとまずは解いた。
この勝利のおかげでアーセナルは、今週末にPL試合のないシティをかわして暫定トップに。彼らにプレッシャーをかけることができた。
ここでもしポインツを落とすようなことがあれば、さすがにチームは意気消沈せざるを得なかっただろう。そうなれば、バウンスバックするのはかなり難しい。タイトル争いにとても大きな影響を与えたはず。
もっとも、ここでのアーセナルのパフォーマンスは最高というわけでもなかった。最終的に2-0というスコアで勝ったものの、試合自体は、アーセナルがコントロールする時間が長かったとはいえ、勝てない可能性は十分にありそうな内容だった。
とくに30分のラヤがセイヴした相手のショット。アルテタが「個人エラー」と指摘したキヴィオールの対応のまずさから突破され、かなり際どいシュートを打たれた。あれがもし入っていたら、その後はまったく違う展開になっていたことも想像できる。
アーセナルは、この試合に絶対に勝たねばならなかったため、そのためには必ずゴールが必要だったが、それが1点なのと、それ以上なのとではプレッシャーがまったく違う。そして、この試合もいかにもゴールに苦労しそうな匂いがプンプン漂っていた。
最近のローテイション議論の先入観も多少あったかもしれないが、ぼくには今回は前半がすでに後半みたいな、やや疲れたパフォーマンスに観えた。
守備ではハイプレスの意図は感じたものの、ひとつひとつのプレイにもあまりエナジーを感じず、少なくとも元気いっぱいという感じではなかったし、攻撃に関しても、このチームは基本的にはやることはいつもと変わらないため、相手の対応もあるので、スピードやアイディアが少し減っただけでも急に八方ふさがりみたいに見えたりする。そういう疲労による影響は随所に感じられた。
あれでは、ゴールが遠いのも仕方ないように観えたし、ゴールをなかなか取れないことでも徒労感がたまっていくみたいな悪循環に陥りそうな予感もあった。
だから、トロサールのゴールはまさに値千金だっただろう。まぐれだろうが、なんだろうが、あそこで1点決まったのは、かなり大きかった。ウォルヴズもケガ人が多数出ていて不調の真っ最中だったから、彼らを意気消沈させることもできた。
もしこのゴールがなければ、やはりゴールが取れないときの悪循環にハマっていった可能性が高いように思う。
アルテタがよく「小さなマージン」と話しているように、今回はようやくその小さなマージンで、こちらに有利に傾いてくれた。入らなくてもおかしくない、ほんとうにギリギリのゴールだった。そういうラッキーもときには必要だろう。
ともあれ、これでわれわれはタイトル争いに踏みとどまった。シーズンが終わらないで済んだ。ありがとうアーセナル。
チームセレクションのジレンマ
このタフな連戦のなかで、今回も世間的にはやっぱりローテイションを望む声が多かったし、このあまりにも見慣れたスタートの11人にはやや失望もあった。ここで変えないなら、チェルシーやToTで変えられるはずがないのだから、結局いつまでも変えられないという。
そして、サブ。今回も変えたのはふたりだけ。しかも、下げたのはトロサールとジェズースという最高に疲弊しているほうじゃないほうのふたり。いや、トロサールは目に見えてちょっと疲れていたから、彼を下げたのは妥当と思うけれども。
ずっと出ずっぱりのサカ、オーデガード、ハヴァーツ、ライス、ホワイトあたりは、今回もきっちり最後までプレイすることに。
ただ、今回はアルテタのセレクションにもある程度は理解を示さねばならないと思ったのは、終盤の彼らの活躍を観て。
最後の20分くらいは、わりとウォルヴズがプッシュする時間帯で、かなり嫌な雰囲気が漂っていた。1-0で試合は進んでいたので、もしひとつでも失点すれば2ポインツ失い、アーセナルにしてみれば敗けも同じ。
そんな状態をなんとかしのぎ切ると、6分の追加時間が宣告された90分以降は、逆にアーセナルがかなりプッシュする展開に。あの時間、ボックスでのサカの個人技や、ライスの単独突破、そしてオーデガードのゴールなど、アルテタが絶対の信頼を寄せるレギュラーたちが、さすがという存在感を示した。肉体的には最高に疲れているはずのあの時間に、あのパフォーマンス。ああいうのがあるから、いくら疲れていても彼らを外せないのだろうなと。
それに今回だと、仮に後半のどこかの時点で1-1に追いつかれていたら、どうしたって3ポインツのために攻撃にシフトせざるを得ず、そのようなゲイムステイトで彼らに変えてバックアップの選手を入れることもできなかった。もっと早く2-0以上になっていたら、違うサブだったかもしれない。
まあ、だからといってそのまま彼らをいつまでも使いつづければ、どんどん疲弊してしまうので、この問題はどうにか解決されねばならないが、今シーズンはもう行くところまで行くのかもしれない。
アルテタが怖がっているのは、当然試合に勝てないことで、タフな試合しかないなかで、いまのチームで彼らに休息を与えている余裕は全然ないのも事実だから。
いまみたいなお祭り騒ぎの期間じゃなく、もっと早くから計画的なスクワッド運用をしていれば、こんなことにならなかったのにとは思うが、そうしていればいまのようなタイトル争いに加わるようなポインツは積んでいなかったかもしれないし、まあ結局ジレンマである。
ガラスのトミヤス
キックオフの60分前にクラブからこの日のスターティング11が発表されたとき、トミヤスはknockのためアウトと発表されていた。またノック。冨安ノック。冨安ノック師匠。
これはさすがになあ。バイエルンでいざ90分プレイしたらもうケガで、ちまたでは「ガラス製かよ!」とおなじみのツッコミもちらほら。redditで「彼の足はUdonよりsoftだ」というコメントを見かけたが、日本では、おうどんはコシの強さが問われたりする食べ物ですから、あまり適切なたとえじゃないなと思った。それはさておき。
チームの誰もがある程度のケガを抱えながらプレイしているなか、ただのknockとはいえど彼はスクワッドにも入れないのだから、云うほど良くはないのだろう。彼は、チームの非レギュラーのなかでも、レギュラーにかなり近いほうの立ち位置なので、もしこれでシーズン終了ならほんとうに残念。まだシーズンが終わるまで、活躍する機会はあっただろうに。
またここから2-3ヶ月の離脱になったりして。そして、プリシーズン全滅で、つぎのシーズンが始まり彼がフィットし始めたところで、ちょうどよく日本代表に招集。そこでケガして帰ってきてまた復帰が伸びる。みたいな。彼は、アーセナルに来てからそんなことを繰り返している。
今回は、バイエルンで彼がスリップしたアレが原因だろうか。足首がグキってなってたヤツ。あのあともふつうにプレイしているように観えたので、問題ないかと思ったのに。そういえば、彼の以前の長期離脱も、あんな感じの「不運な」事故だったような。不運がつづくのは、もはや不運じゃないのかも。
トミーはフィットしていれば最高というのは、アーセナルファンの誰もが認めるところ。1 v 1にめっぽう強い守備のスペシャリスト。ただ、そのavailabilityが致命的なほど安定しない。
先日彼が契約延長したとき、契約期間の短さが気になったが、やっぱりこういうリスクを見越したものだったのだろうか。このまま今後もフィットしたりしなかったりを繰り返すようなら、彼のアーセナルでの未来は暗いと云わざるを得ない。
さすがにこの夏にどうこうということはないだろうが、来シーズンはトミヤスにとってはかなり重要な年になりそうだ。この調子では、スクワッド計画のなかでも彼はキープレイヤーというよりは、バックアップだろうし、新しく進化していくであろうチームでちゃんと居場所を見つけられるかどうか。いまは、かなり心配である。
とにかく早くよくなってほしい。わしは、あんたのプレイが観たいんじゃ。
この試合については以上