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Arsenal, Behind The Scene

24/25プリシーズン、ジョッシュ・クロンキが語る「これからもサポーターを誇らしくさせつづける」

ここ数日でエントリを連発して済まない。ネタが豊富すぎて。

昨日、『ESPN』(James Olley)が、アーセナルFCのオーナーであるKSEのジョッシュ・クロンキの単独インタビューを公開していた。

Reviving Arsenal: Kroenke reflects on Super League fallout, Arteta’s success

そもそもアーセナルの3年連続となるプリシーズンの遠征場所に選ばれたアメリカは、当然オーナーつながりということもあり、今年もまたジョッシュや彼の父親であるスタンリー・クロンキがAFC御一行の元を訪れ、アルテタやオーデガードらと親しげにやりとりする姿も伝えられていた。

このインタビューは、ちょうどこのときのマンU前のアーセナルとLA Ramsの子ども向けイベントの際に行われたようだ。

今年のPLは、われらアーセナルがタイトルの本命にかなり近いところにいるであろうこともあり、オーナーシップがここで何を考え、何をやろうとしているかは、たいへんに気になるところ。

今回はこのインタビューを紹介しよう。もちろん、すべては訳さないので詳細はオリジナル記事をご参照あれ。



「クロンキとその仲間たちはいかにしてアーセナルを再生させるか」

<アルテタとLA RamsのSean McVayが100人の児童をコーチしたコミュニティイヴェントにて>

ジョッシュ・クロンキ:ミケルとSeanがあそこにいて、周囲の子どもたちと話しているのを観ていると、なんだか、われわれがこの数年にわたって築いてきた完全なるサークルを観ているような気分になる。

わたしはつねに、われわれのなかにいる異なるグループをいっしょにする方法を見つけ出す必要があると云ってきた。だって、それはリンゴであり、オレンジであり、スイカであるが、すべてフルーツはフルーツなのだから。

わたしの父が築いたこの組織のおかげで、似たようなしかし異なるビジネスのあいだにある、ある種のコンセプトやアイディアをかけ合わせることができるようになった。そして、それがわれわれのチーム。

雇用のプロセスから考えてみても、たとえば、テクニカルディレクター/ジェネラルマネジャータイプの役割があり、ヘッドコーチの役割があり、あるいは新しいコマーシャルビジネスに参入するかもしれない。そこには大いに類似性があり、だが彼らはすべてとても違うものでもある。

Seanやミケルはとくにそうで、そこには優秀な人材をそのポジションに置くという相対的なテンプレートがあり、彼らには成功するために時間やリソースも与える。

<近年のKSEにはこうした調和がある。今回もUSツアー中のアーセナルとRams、それにDenver Nuggets(NBA)の関係者がディナーに集まりパネルディスカッション等でお互い切磋琢磨しようとしていた>

(“Kroenke Out”とファンベイスから猛烈に反発された2021年のEuropean Super League projectのとき、クラブを売りたい誘惑にかられた?)

いいえ。そんなオファーはなかったし、ありえない。父も、わたしたちの家族も長期の投資者であり、長期の株主だ。わたし個人としても、もう10年以上もクラブに関与している。わたしはそれをとても楽しんでいるし、クラブを愛している。

わたしも、成功できるポジションを取り戻して、少数のひとたちが誤解しているのだと証明できるなら、それはとてもやりがいのあることだとわかっていた。

本物のご褒美は、ステディアムに入っていったときに、そこで起きていることのエナジーを感じることだ。それが、わたしが想像できうるかぎりで完璧なお返しだ。

先日、わたしは昨シーズン最後のエヴァトン戦のヴィデオをひとに観せていたのだが、試合が終わって45分たっても、帰ったのはアウェイのファンだけ。満席だった。

われわれはつねに素晴らしいサポートをしてもらっているが、あのミケルや選手たちへの愛情と、それが彼らへ返っていくところを観て、わたしには鳥肌モノの瞬間だった。

(しかし、その愛情がKSEに注がれることはない?)

どうだろうね。こんなことは云いたくないが、わたしは気にしないのだ。なぜなら、それはほんとうに大きなグループだから。父は、わたしたちが、もしかしたら以前にはやったことがないようなやりかたでクラブに投資させてくれているが、彼がそうするということは、つまり彼がわたしたちのグループを信用しているということでもある。

わたしたちは競争力があるからこそ、このビジネスをしている。たくさんあるプロセスがたいへんなときもある。しかし、わたしたちがここにいる唯一の理由は、わたしたちには素晴らしいグループがあり、それをできるだけ長く維持できるようにしたいからだ。

(ヴェンゲルの退任からアイヴァン・ガジディスの突然の退社など混乱への批判にどう向き合った?)

楽しくはなかった。でも、それはチャレンジでもあったし、わたし自身は個人的にそういうチャレンジが好きな人間なのだ。

彼(ヴェンゲル)の過ごした時間もあり、彼のインパクトはこれからもクラブに永久に残りつづけるだろう。ページをめくって修正していくのは決して簡単なプロセスではないし、その転換において、すべてを100%正しくできる人間がいるとは思えない。

健全な組織には、一定の変化というものがある。しかし、もしそこであまりにも変化が大きいと、安定させるのはとても難しくなる。

(ヴェンゲルが去ってから)一年半かそれくらいで、わたしたちは各人材を各役割につけた。エドゥがボードに入った。残念ながら、ウナイ・エメリのときはうまくいかなかったが、わたしは彼が成功に向かっているところが観られて満足している。彼は優秀な人間で、わたしもとても尊敬している。他所であっても、優秀なひとが成功しているのを観るとうれしくなる。

あの時期の深刻な影響はCovidだった。あのおかげで、わたしたちがやろうとしていたことのいくつかは台無しになってしまった。

あのときを思い出すのは困難で、あの世界がいかに狂っていたか過小評価されている。あのとき、わたしはわたしたちの最高のサポーターグループと面会し、フィードバックを得た。

どのような人間でもそうだろうが、自分が間違ったことをしただとか、誰かを困惑させていると感じるのならば、手を挙げて「どうやってもっとよくするか、いっしょにやっていけるか」と云うものだ。

それこそが、わたしたちがクラブとしてやっていることであり、そこでは謙虚さや、ときには辛いような直接のやりとりも要求される。なぜならファンは感情をもって接してくるから。しかし、もし彼らにその感情がないのであれば、クラブに必要な情熱も持っていないことになる。

ミケルの初年度や2年めについて話しているかどうかに関わらず、いろいろな場面で出てくる用語のひとつが、必要な忍耐だとか、あるいはものごとの本性。

ときにそれは要求される。しかし、少しばかり無慈悲になることも必要になるし、忍耐を示しているときに間違った方向に向かっていないことを確かめる必要がある。そここそが、そのグループに対するあなたの信頼ということ。

わたしは自分たちの秘密をどこにも漏らしたくないが、父が長年にわたって教えてくれたことがある:ひとつ、自分の知らないことを知れ。ふたつ、成功するために自分より優秀な人材をポジションに置け。それが成功への近道だと。

動いている部品がたくさんある。しかし、自分たちのやっていることのフロントエンドを理解したい。わたしたちは勝つためにこのビジネスをやっている。勝利はそれ以外よりも楽しい。そこは保証できる。

(アルテタとRamsのボスMcVay)わたしはCovidのあいだもふたりとZoomでやりとりしていた。ミケルはSeanにルートの走り方を教えているわけではないことはわかっているし、Seanもミケルにバックからのプレイを教えているわけではない。だが、ドレッシングルームへのアプローチ、選手との会話のしかた、人間を管理する心理学といったものは、誰もが吸収できる。

(KSEは、野心の欠如、投資に消極的というふたつの大きな批判に応えている)

当然わたしたちがいまピッチで得ている結果でそうなっているが、父がクラブの100%の株式を取得できた当時(そしてそれで批判されたことも知っている)、自分たちがクラブを動かせる違うフェイズに入ることもできたし、ここで自分たちのチームにやっているように動かすこともできた。

わたしがそれをわかっているのは、なぜならわたしたちはほかのチームで勝ってきた経験があるからだ。勝利というのは、直線的なプロセスではない。最高レヴェルでの勝利はとても困難であり、グループをまとめて、勝ち取り、何年にもわたり勝つチャンスを得ること。それは、たくさんのいろいろな要素が要求される。

もしあなたがガナーズのここ数年でやってきたことを観ているのなら。5位のあと2位、そして2位。5位フィニッシュしたところも観ただろう。CLに入りたかったからあれは痛かったし、機会を逸したことで、突然に火力とメンタリティが戻ってきた。その翌年には、しゃにむにプレイしていた。

(5位フィニッシュのとき)わたしたちは、なんだかガス欠のようだった。シーズンの終盤にかけて、すべての重みが理解されないという要素があったのを観たはず。それがスクワッドのなかにあった。そして何人かのケガも。しかし去年、わたしは「このグループはやれるかもしれない」と思っていた。だが、その後にはやはり足りなかった。

しかし、わたしはこのグループがチャレンジする準備ができていると思う。これから何人かタレントが加わるし、そうなればもうひとつ上に行けるチャンスがある。わたしたちのファンがほんとうに祝えるものをもたらせる。

(今後は? エミレーツのアップグレイドや女子チームへの投資)

これからの計画について話すのは時期尚早だが、(スタジアムについては)内部で話が始まっている。簡単なリノヴェイションではないが、可能性をみている。

わたしたちの目標はつねにPLタイトルを競うことで、なぜなら、世界を見回しても毎年のようにリーグタイトルを競えれば、ほかのすべてでも競えるから。

ファンはなにを期待できるかについては、ここ数年で得てきたもののすべてだ。わたしたちはこのグループを補強しつづける。ミケルのエナジーがとても重要だということもわかっている。

女子チームも同様で、女子スポーツが世界中で盛り上がっているのはご存知だろう。その部分のビジネスについてもわたしたちは非常に興奮している。

しかし、クラブとしてわたしたちのメインの目標は、わたしたちのサポーターを誇らしくしつづけることだ。

以上

最後のくだりは、なんだか取ってつけたみたいだな。

 

さて、読んでみて、スーパーリーグやCovid時の55人解雇など、KSEにとっては黒歴史といった、当事者になかなか訊きにくいようなことにも突っ込んでいるのが興味深かった。ジャーナリズム。

インタビューのなかでジョッシュが云っている「サポーターと会ってフィードバックを得た」というのは、このときのことだろう。2021年4月。AFCのオーナーシップが初めてサポーターたちと直接面会したという。直接といってもオンラインではあるが。時期的にやむなし。

AFCファンズフォーラムのジョシュ・クロンキ(22/Apr/2021)ESL撤退後にオーナーがアーセナルサポーターに語ったこと | ARSENAL CHANGE EVERYTHING

あらためて読んでも、矢面というか、針のむしろというか、ファン代表からさんざんな云われよう。このときのファン世論からしても、こうしたファンからの辛辣な反応は十分事前に予想できたことで、よくこのひとも出てくる気になったなという。

ただ、このときの彼の姿勢はたしかにファンの心を打つものがあったと思う。ファンのオーナーシップに対する感情は、風向きを変えた感じはある。父親のスタンにはついぞなかったもの。

考えてみれば、近年のアーセナルの停滞期から本気でタイトルを狙うまでになったこれまでの軌跡を振り返るに、スタン・クロンキがAFCの表舞台からフェイドアウトして、かわりにフェイドインしてきたジョッシュ・クロンキの、そのクロスするタイミングがアーセナルの流れが変わっていく時期とけっこうかぶるのだよね。もちろん、ぴったりではないが。ファンが待ち望んでいたオーナー投資もある。だから、ファンがジョッシュに好印象を抱き始めてもおかしくはないし、このインタビューを観るかぎりではジョッシュもそれを感じていると思う。

いいことではありませんか。「オーナー=悪」の構図は、どのクラブでもありがちであるが、アーセナルはそれを脱して先へ進みつつある。

KSEがつぎに成功させるスポーツチームがアーセナル?

ところで、このインタビューは『ESPN』が行ったもので、云うまでもなくESPNは米国メディア。彼らのUSの読者のなかには、USのメジャースポーツでつぎつぎに結果を出しているKSEが、「UKサッカー」の名門チームであり、20年もタイトルから遠ざかっているアーセナルFCを勝たせることができるかどうかに興味をもっているひとも少なくないと思う。

KSE目線。

ちなみに、この記事中でも触れられているように、KSEがUSで所有するスポーツクラブ、Colorado Avalanche(NHL)、LA Rams(NFL)、Denver Nuggets(NBA)らが、ここ数年のあいだに続々とメジャータイトルを取っている。今回のUSツアーでも仲良くしているLA Ramsは、なんとSuper Bowlを勝ったのか。Super Bowlは、おれのような100%門外漢だって知ってる。なんかすごいやつでしょ。

したがって、近年のアーセナルの成功も、きっとそういう文脈のなかで捉えることもできるのだろう。

 

あとは、この記事で知ったのは、例のスーパーリーグ構想が頓挫したあと、サポーター代表をクラブの意思決定の場に加えるべしという主張がファンベイスからあったのであるが、結局クラブの戦略を話し合う場に新たに、ファン諮問委員会(fan advisory board)が結成されたそう。3年ごとに選ばれたサポーター代表が集うという。

その後に、クラブの補強が24才以下に限定されるポリシーにシフトしたとあるが、この件についてサポーターグループが関与した影響があったのかは記事からは定かではない。

 

最後、エミレーツスタジアムのアップグレイドについて。これは、先日のRamsのホームであるSoFiスタジアムで試合を行った流れで、エミレーツもああいう最新型スタジアムに改修されるという憶測がある。今回ジョッシュもそれを認めている。

もともとエミレーツは2006年の竣工からもう20年近くが経過しようとしていて、雨漏りなどの老朽化は指摘されていたこと。6万人収容の観客席も、毎試合のように満席となると、さらに増やしたいところではあるだろう。

SoFiスタジアムのあのピッチ上のどでかい360度ディスプレイはインパクトあった。あんなふうになるのだろうか。未来だ。

 

おわり



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