試合の論点
アーセナル vs モナコのトーキングポインツ。
今度こそ勢いを取り戻す。CLトップ8フィニッシュが現実的に
マンU、フラムとPLの2試合でオープンプレイからひとつもゴールできず、とくにフラムでは2ポインツ失ったことで、あまりいいムードは漂っていなかったアーセナル界隈。しかし、今回のパフォーマンスはさすがにそういったムードを払拭したんじゃないか。
アーセナルはこの試合で3-0という結果以上のチャンスをつくり、明確なチャンスを決めているだけでも5-0、6-0、あるいは7-0だってありえた。そのゴールチャンスのすべてが「心配された」オープンプレイからだった。
まあ、そもそもオープンプレイ問題というのもよく考えると変な話だったのだが。その間、セットプレイからはゴールを決めていたというだけで、全体的には単なるチャンス不足、ゴール不足に過ぎなかった。これまでにもあったこと。だが、そんなことはひとまずどうでもよろしくなった。
この試合の勝利が非常に重要だったのは、そういったチーム周辺のネガティヴムードをチャンスを量産し快勝するというかたちで一掃できたこと。それとCLリーグフェイズでトップ8フィニッシュが観えてきたこと。
アーセナルはこの結果で、テーブルで3位浮上。13ポインツは6チームもいるが、GDで3位。この試合を3-0で終えたことは重要だった。
そして残る2試合、8ポインツで24位のディナモ・ザグレブ(H)、そして3ポインツで30位のジローナ(A)。どちらも、アーセナルがこれまでCLで戦ってきた相手のなかでもクオリティ差はあるほうだろう。当然われわれの勝ちが期待される。
理想的には、つぎのディナモ・ザグレブでトップ8フィニッシュを決めて、最後の試合が消化試合になることだが、そこはほかのチーム次第。
なんとかこの試合に勝ててよかった。
マイルズ・ルイス・スケリーが鮮烈フルデビュー
G2 A1でまたしても大活躍のサカ以外では、この試合の最大の語りどころはやっぱりMLS。今シーズン、彼はすでにPLでもCLでもプレイしているが、それはすべてサブ。今回シニアチームで初スタートで、彼には記念すべき試合になった。しかもそれがこのCLという大舞台であり、なおかつあの堂々としたパフォーマンス。
今回のMLS(18才76日)のCLでのスタートは、アーセナルでは2011年のOx(18才44日)以来の最年少という。
そして、パフォーマンスもほんとうに素晴らしかった。Inverted FBとして、ボールを持っているときは基本的にCMとしてライスやパーティのとなりでプレイ、周囲の選手たちとの連携もまったく問題なかったし、物怖じしている様子もなし。
ぼくがもっとも感心したのは、彼のプレイがとても野心的だったこと。アルテタはそのことを「勇敢」と表現したが、とにかく前へプレイする意識が高い。前へパスができなければ、あの狭いエリアのなかでも自分で動いてアングルをつくってから前へパスをする。かといって、過度に挑戦的というわけでもなく、CMとしてちゃんとそのときどきの最善のプレイを選ぶ意思決定もある。
最初のアーセナルのゴールにつながった彼のプレイをあらためて見ると、オーデガードからクロスフィールドのパスを受けて、プレスに来た相手をいなすと(彼はあの身体を相手にぐいっといれるようなプレイをよくやりますね)、迷わず前方にいたジェズースにスルーボール。それが、彼のランとピタリと合ってサカのゴールになった。彼のみごとなプリアシスト。松木安太郎なら彼に何点かあげてる。
あのジェズースへ出したパス、保守的なマインドのCMなら、いかにも左でフリーになっていたメリーノに一度ボールを預けそうなものだった。しかし、彼は瞬時に相手の急所を見抜き、完璧なパスを出した。
あのプレイだけでなく、ほかにもそういったシーンは観られた。
そして、驚異的なのがそういう野心的・挑戦的マインドでプレイするような選手のパス成功率がなんと96%。45/47だからパス自体が少ないわけでもない。なんということでしょう。
96% – Myles Lewis-Skelly completed 45 of 47 passes tonight, the best passing accuracy (min. 25 passes) by an Arsenal teenager in a UEFA Champions League game since Johan Djourou vs Hamburger SV in September 2006 (97%), in the month Lewis-Skelly was born. Generations. pic.twitter.com/NVlq1Kw4aH
— OptaJoe (@OptaJoe) December 11, 2024
つねに簡単なほうを選ばずに決定的な場所にボールを出そうとする野心。それが彼のマインドでありアティチュードでありプレイのスタイルなのだと、今回はっきりと理解した。いまのアーセナルのチームにぴったりである。
この試合で彼は、アルテタのハートをがっちりつかんだかもしれない。LBでのパフォーマンスは、ほかの経験豊富なシニア選手たちにも見劣りしなかったし、少なくともモナコのレベルのクオリティの相手、このCLの大舞台にもまったくひるまず、神経の図太さも見せつけた。今後、ワニエリのようにPLでもチャンスを得るようになるか。
彼のお母さんは、ピッチでの彼をどんなふうに見つめただろう。
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深刻なジェズースの自信喪失
ホームで強敵に3-0快勝したこの試合、アーセナルにあえてネガティヴ面を挙げるなら、それはジェズース。前半のふたつの決定的チャンスを逃したことは、彼が現在抱える自信喪失問題を浮き彫りにした。ストライカーは、ああいう1 v 1を外してはいけない。
このところは本人もプレイ機会がぐっと減って、たまにチャンスがあっても最高のプレイができないもどかしさを感じているだろうし、なによりファンの信頼、マネジャーの信頼を感じているように観えない。信頼というか愛情? まったくの悪循環。
彼は以前「自分の最大の強みはゴールじゃない」と往年の日本代表FW柳沢選手のようなことを云ってひんしゅくを買ったことがあるが、試合後にはファンのあいだでそれも蒸し返されていた。9としてプレイしたいのなら、そういうことはあまり云うべきじゃない。
いちおう、この試合で彼はひとつゴールをアシストして、あのポジションの選手として最低限の仕事はしたことになるが、ああいうはっきりしたチャンスを、しかも複数回も逃したことで、さらに自信を失ったかもしれない。アルテタがこうして彼を起用するのは、結果を出すことで自信をつけさせたい狙いも当然あると思われるが、どうも裏目に出てしまった。
もし、今回の前半のふたつのチャンスを彼が両方決めていたら、アーセナルのチームにとっても非常に明るいできごとだった。残念。
CLのレフリーはクオリティが高い?
試合の論点とはちょっと違うけど。
今回前半マルティネリに2枚めカードが出なかったことはラッキーだとHTの話題になっていた。たしかに、彼はすでに一度カードをもらっていながら、そのあとかなり故意性の高いファウルをやったので、レッドカードでもおかしくなかったかもしれない。でもレフリーのDavide Massa(名前をおぼえておこう)はそれを出さなかった。
PLのレフリーならいかにも躊躇なく2枚めを出しそうな場面だったので、それを自重したレフリーにちょっと感心した。レフリーはああでないといけないと思う。ちゃんと(エンタテインメントとしての)試合をコントロールしてるし、裏方に徹して自分が主役になろうとしない。
アーセナルの選手が救われた身内びいきではなく、もしそれが相手選手だとしても今回のは許せると思う。
昨今ファンのあいだでもPLのレフリーのクオリティの低さが注目されるなか(先日はあのひとも首になっちゃったし)、CLの試合後に非PL系レフリーが称賛されるところをよく見る。今回のマルティネリのファウルへの対応に、そういう違いがよくあらわれていたと感じたのだった。
PGMOLにはヨーロッパ基準の判定ができるように、PLのレフリーに研修でもやってもらいたいものだ。
この試合については以上