試合の論点
ウォルヴズ vs アーセナルのトーキングポインツ。
Our will to win 👊
📺 Watch the highlights from our 1-0 victory against Wolves now. pic.twitter.com/DvGLKxjJqD
— Arsenal (@Arsenal) January 25, 2025
繰り返される疑惑のレッドカード。10人でもあきらめなかったアーセナルがついに報われる
今回アウェイで苦しい状況にありながら試合に勝ったことは、ほんとうに素晴らしかった。10人になったあともあれだけのパフォーマンスを見せ、最後には、どうしてもほしかった3ポインツを持ち帰ることに成功した。
そのような劇的な試合で、アーセナルファンは全員喜んでいいはずながら、試合後はこの件で大騒ぎ。
もちろん、マイルズ・ルイス・スケリーのレッドカード。とびきり疑惑のやつ。
0-0で試合が進んでいた43分。こちらのコーナーキックからの流れで、ボールを奪ったウォルヴズのカウンターの機会を止めようと、MLSが相手選手(Matt Doherty)に足をひっかけたプレイ。これに一発レッドカードの判定。なんとなんと。
あれは、MLSはすでにボールを観ていなかったし、完全に遅れたレイトタックルで、選手の足を故意に蹴っているのが明白となれば、そこに反論の余地はないと思う。無罪ではありえない。
ただ、あの手のいわゆるタクティカルファウルは、ふつうは罰でもイエローカードで済むものだ。
タクティカルファウルというものは、やられたほうがチャンスをつぶされて、相手の罰はカード1枚で済むアンバランスがあるため、ルールのハックめいたところもあるが、ともかくそういう習わしである。だから、だいたいどの試合でも観られる。
誰かも云っていたが、もしタクティカルファウルで毎回レッドカードが出るなら、シティのRodriなんてこれまで何度退場していたかわからない。グアルディオラやアルテタのようなコーチは、むしろそれを推奨しているふしすらある。それも、プレイの重要度に対して比較的軽い罰で済むという計算があるからだろう。コスパがいい。
その明白なタクティカルな意図をもったファウルで一発レッド。ラストマンディフェンスでも、暴力行為(violent conduct)でもない。
この判定の理由について説明しているのが、VAR判定をリアルタイム解説するPremier League Match Centreによるこのtw。そこではMLSのチャレンジが、“serious foul play”とみなされたということである。
#WOLARS – 43’
The referee’s call of a red card for Lewis-Skelly was checked and confirmed by VAR, who deemed his challenge to have been serious foul play.
— Premier League Match Centre (@PLMatchCentre) January 25, 2025
“serious foul play”とはなんぞ。相手が大きなケガをする可能性あったということか。
PGMOLによる“serious foul play”の定義では、”a tackle or challenge that endangers the safety of an opponent or uses excessive force or brutality”(相手の安全を危険にさらしたり、過度の力や残虐行為を用いたタックルや挑戦)とされているそうだ。つまり、Dohertyが受けたファウルは選手生命が脅かされるような危険行為だった。
BBCのMOTDでは、このときのVARの音声も流されたようで、そのなかにはあれが危険なプレイである根拠として“the contact was above the ankle”と云われていたそう。「足首の上部」。上のほうが問題になる?
まあ、いずれにせよあれはそこまで深刻なファウルだったようには思えない。上に貼ったハイライト動画のなかにもちょうどそのシーンがあるが、MLSは相手を止めるつもりでただ足をひっかけているだけ。そこまで危険には観えない。試合後にシェアされているその瞬間の写真を観ると足裏(スタッズ)が見えているアングルもあるが、動画で何度観ても踏みつけているというよりは、やはりひっかけているというほうが近い。力は上から下ではなく、横向きに入っている。ブーツの外側でひっかけている。
Sky Sportsの中継でゲストのマイク・ディーンが「写真を観るかぎりスタッズで踏んでいるし判定も理解できる」と述べていたが、動画のほうをちゃんと見れば印象はまったく違ったはず。そのあとでディーンは、アーセナルのレッドカード取り消しのアピールは成功するだろうとも述べていた。
と、そのような細かい検討はさておき、もっと重要なことは、あの程度のファウルでレッドカードが出たことにほとんどのひとが驚いているということだ。かつて誰も観たことがないような、今後も誰も観ることがないような前例なきレッドカード。それがまた<アーセナルに>起きたということ。
ふつう、タクティカルファウルでレッドカードは出ないのだ。
ネリのWイエロー、ライスとトロサールの遅延行為、サリバのラストマンDFなどなど、最近に限ってもその事例は山ほどある。同じファウル事例でも、なぜかアーセナルの選手だけが厳罰を受ける。今年から厳しくされているという遅延行為だって、ライスとトロサール以外でそれで退場になった選手はいないというのだから不思議なことじゃないか。あれ以来、遅延行為にカードが出るかどうかは毎回よく観るようにしているが、これまで同様に黙認されることすら少なくない。今回だってウォルヴズに見逃された明白な遅延行為があった(46分)。あれはライスのやったことと何が違うのか。
Gomesに出された2枚めカードも。MLSがあれでレッドカードなら、こっちはもっとレッドカードだろ。この試合のなかですら矛盾が起きている。ダブルスタンダード。一貫性のなさ。
そして当然のことながら、アーセナルファンはもちろん、TVパンディット、ジャーナリスト、ほかのクラブのファン、多くのひとがこの判定に疑問を呈している。「かつて観たなかで最悪の判定」と述べたのは、アラン・シアラーだけじゃない。たくさんのメディアを見渡してみたなかでも、今回の判定を正当だとはっきり認めている識者をぼくは誰ひとりとして見つけられていない。
なんならアンチアーセナルのファンだって「あれはレッドじゃない」と認めるものが少なくない。とかく嫌われがちなアーセナルに起きた事案では珍しいと思えるほど。試合後のr/Soccerで見かけた笑えるやりとり。
(マンUファン)わたしはアーセナルは大嫌いだが、あれはまったくレッドじゃない。ただのファウル
↑(リヴァプールファン)わたしはマンUが大嫌いだが、キミに完全に同意
↑↑(アーセナルファン)自分でもイヤになるが、キミらふたりに同意
それと今回のことがより深刻に思えるのは、ひとりの頭のおかしいレフリーがいたというだけでなく、VARもそれを支持しているということ。Darren England。貴殿である。
すでに多くのひとが指摘しているように、VARレフはあそこでレフリーに少なくともモニターでの確認を進言すべきだった。オリヴァーはあまりにも早くあの決断をしていて、自分の判断に自信があったようだが(あるいはその機会を手ぐすね引いて待ってたか)、VARレフはスロウも含めて映像で何度も確認したはずで、わずかでも疑念があればレフリーに確認を促す必要があった。あんな場面でレッドカードが出ることは極めて異例なのだから、疑念がまったくなかったらそのほうがおかしいだろう。それこそがVARの存在意義。ましてや、このような試合に重大な影響を与えるレッドカード判定である。それが機能していない。
Mirrorのジョン・クロスなど、一部ではダレン・イングランドとオリヴァーの関係性の問題を指摘する声もある。イングランドは先輩であるシニアレフのオリヴァーが自信満々に出した判定に、進言がしづらかったのではないかと。そんなことがほんとうにあるとすれば、それこそ大きな問題だ。独立性がないことになる。
さらに、今回のことで非常に面倒くさいのが、レフリーがマイケル・オリヴァーだったこと。ただでさえ、彼はアーセナルファンから疑念の目で観られていたというのに、今回もまた盛大にやってくれた。
彼のレフリーとしてのスタッツには、偶然というにはあまりに苦しいような、明白な偏りが観られる。
Michael Oliver has sent off an Arsenal player 8 times in his career, more than any other team. 🟥#WOLARS pic.twitter.com/BBCjg1eeeg
— WhoScored.com (@WhoScored) January 25, 2025
マイケル・オリヴァーがこれまでにアーセナルの選手を退場させた人数は8で、最多。ほかのどんなチームよりも多い。
彼がこれまでに出したレッドカードは、アーセナル7(54試合)※今回で8(55試合)、リヴァプール1(56試合)、シティ0(50試合)。どう観てもアーセナルが、あまりにも突出している。
今シーズンここまでのアーセナルにもっとイエローカード、レッドカードを出しているレフリーがマイケル・オリヴァー。彼が今シーズンにアーセナルの試合を担当するのはこれが4試合めで、そのうちに2回でレッドカード。2試合に1回出ている。※フェアにいえば、彼がAFCを担当する機会が多いこともあるし、イエローカードの率もワーストではないが
13% of Arsenal’s matches with Oliver have had a red card, how improbable is that? https://t.co/C1u7qwKshX
— Scott Willis (@scottjwillis) January 25, 2025
2010年からのスタットで、オリヴァーのアーセナル試合でレッドカードの確率は、それ以外のレフの平均8.5%が、13.0%に大幅増加。同じ期間シティでは、なんと6.6%がゼロ%に。
オリヴァーは、アンチアーセナルでシティびいきと云われるのは理由があり、そのひとつは彼が以前にシティのオーナーが主催するUAEでの試合で仕事をしていること。このときに£20kの報酬を受け取ったと云われており、PLの報酬が1試合が£1.5kというのでまさに桁違い。そういう特別な関係性が疑われている。
We play City next.
Just remember… pic.twitter.com/R9Qe0iqruk
— MATT 🅿️ (@PapaPincus) January 25, 2025
それに、彼がニューカッスルのシャツを着た写真がシェアされているように、もともと彼はニューカッスルのファンとして知られる。このあとアーセナルは、PLシティ(H)、カラバオカップのニューカッスル(A)を控えているため、ただでさえ少ないアーセナルの選手のひとりを3試合バンにしたい動機はある。
The games Myles Lewis-Skelly will potentially miss for Arsenal 🟥 pic.twitter.com/oI9aJk7roI
— Sky Sports Premier League (@SkySportsPL) January 26, 2025
彼の偏った判定には、これまでにもさまざまな陰謀論めいた説はあるのだが、さすがに今回は陰謀論が陰謀論じゃなくなってきているように感じている。
アーセナルの試合で実際に起きていることは、どう考えてもおかしいよね? 前例もなければ後例もなさそうな判定が、ここでだけ何度も何度も繰り返されている。今回のエリアでのタクティカルファウルで今後レッドカードが出ることはあるか。ひとつのプレイフェイズでWイエローのレッドカードは出るか。どちらもないんじゃないか。最初で最後のことが、なぜかここでだけは起きる。
オリヴァーは、もう阿部四郎とか日韓ワールドカップのこのひととかのカテゴリに入りそうである。正気とは思えない。
Vibe. #PGMOL pic.twitter.com/oylfByqTtT
— The AFC-Chan 🇺🇦 (@NewArsenalShirt) January 26, 2025
試合から一日たって、PGMOLが出した声明はこんな内容だった。この試合のあとに、オリヴァーがアビューズを受けていて、警察が捜査を始めたという。
PGMOL Statement ⬇️ pic.twitter.com/Go2gVNSzfk
— PGMOL (@FA_PGMOL) January 26, 2025
個人に向けたアビューズはどんなときも絶対的に悪いことだし、善良なファンなら誰もがそれを許さないと思う。こうしたことを軽々しくやってしまうバカチンには、それこそしかるべき罰が与えられるべき。愚かなことはいますぐやめろと云おう。
だが、オリヴァーとPGMOLには被害者の側面の前に、加害者の側面を忘れないでもらいたい。これは彼の初めてでもうっかりでもないのだから。捜査するというのなら、同時にオリヴァーやPGMOLだって捜査されるべきだ。特定のレフリーが特定のクラブにバイアスを持っている不公平な現状がはっきりしつつあるなかで、それをそのまま放置していいはずがない。そんなことは誰も望んでいない。まずは、第三者委員会の設置から始めようか。
影でリヴァプールに暴言を吐いていたレフリーはすでに追放されたし(あれは白い粉もあったからか)、アーセナルの試合で「オフサイドラインを引き忘れた」VARレフもその後に職を追われた。いくらレフリーだって聖域じゃないはず。そういう意味では、オリヴァーは今回ふくめ一連の判定について、しっかりと追求されるべき。
少なくとも、マイケル・オリヴァーは今後アーセナルの試合を担当してはいけないと思う。信頼できないレフリーで試合をプレイするなんて、もはや違うスポーツである。12人 vs 11人。
今日月曜日、週末のPL試合の審判を検証するSky SportsのTV番組“Ref Watch”があるということで、そこでいったいPGMOLのサイドからどのような説明がされるか興味深い。なにかしら理由をつけて、あれを正当な判定だったと強弁するようなら、PLというかフットボールに絶望してしまいそうだ。
まあ、もろもろの状況から考えて、彼らにしてみれば正当性の根拠は「危険なプレイ」に求める以外ないだろう。MLSのファウルはマジに大ケガにつながりかねないほど危険でしたと。「危ない」の判断は人それぞれで、もっともあいまいにできる。あれがそのように危険な、誰かに大ケガをさせるような無謀なプレイだったとは、誰も感じていないのだが。
いっぽうで、PGMOLとしては素直に誤審を認めるのも厳しいかもしれない。なぜなら、今度はなぜそのような誤審が起きたのかが追求されてしまうから。世間を騒がせているオリヴァーに目が向くことになる。
ちなみに、元PLレフリーで前PGMOLボスであるKeith Hackettはこんなことを述べていたという。
Keith Hackett:わたしはこれが重大なエラーだと認めるつもりだ。いわゆるNo.1レフリーがそんなことをするとは予想もしていなかった。彼はこの事案を把握している。彼は試合に近すぎると思うので、運営上のアドバイスが必要だと思う。
わたしなら、マイケル・オリヴァーにはしばらく休んだほうがいいと云うだろう。それをまず伝える。
(VARが責任を負うべき?)最終的にはレフリーが責任を負う。わたしも認めるが、VARはVARのすべきことをしていなかったのは明白だ。これは、clear and obviousなエラーだ。あれは、serious foul playではない。ダレン・イングランドがVARでオリヴァーを助けなかったことが信じられない。
どうなることやら。
いずれにせよ、アーセナルは今回こそはアピールをすべきだろう。アルテタは相手側からなにか行動があると期待しているようだが、無理な相談に思える。かといって、これまでのように甘んじて受け入れてはいけない。誰がどう観ても、あきらかにおかしい判定なのだ。このままなら、間違いなくファンは失望する。
MLSの汚名返上と3試合バン回避。来週はPLシティ。判定の撤回が、かならず必要だ。