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Arsenal, Controversy

ルイス・スケリーのレッドカード誤審にPGMOLの見解が示される

CL悲喜こもごも。

ここでセルティックがバイエンを倒してくれたら最高だったのになあ。だが、今回のプレイオフではミランやアタランタのようなビッグチームが消えるなど波乱の結果もありで、やはりCLはおもしろい。

アーセナルのラスト16は、ミランに勝ったフェイエノールト、あるいは今日行われるPSVとユーヴェの勝者、対戦相手はこのいずれかになった。今日の試合は、PSVのホームだから1-2のアグリゲイトスコア程度じゃまだわからんね。つぎの相手がフェイエノールトかPSVなら、アーセナルとしては悪くない。

今日はレアルとシティなんかもありで、またおもしろい試合が観られそうだ。

さて、そんな具合にフットボール世界はどんどんと先へ進んでいるなか、いまごろ先月のPLウォルヴズで起きたレッドカード誤審について、PGMOLのボスHoward Webbが公の場で説明を行っていた。もう一ヶ月近くたとうというこのタイミングで。さすがに遅い。

Myles Lewis-Skelly red card: Howard Webb believes Arsenal defender’s sending off at Wolves was wrong but defends referee Michael Oliver

組織の長として、VARがらみの誤審案件では毎度苦しい説明を強いられている彼であり、その都度ファンから発言についてツッコミを受けているが、今回も同じようにツッコミどころ満載。

記録のためにもこの話題について書いておこう。



ハワード・ウェブ「ルイス・スケリーの退場は誤審だったが、“horrendous”な判定ではなかった」

PGMOLのHoward Webbが、2025年1月25日に起きたPLウォルヴズ vs アーセナルで起きた誤審について、Sky SportsのTV番組『Match Officials Mic’d Up』で語った。(ところでこの番組はPremier League Productionsの製作らしい)

この番組内では、同時に、そのときにレフリー(Michael Oliver)とVARレフリー(Darren Englandとアシスタント)のあいだでかわされたやりとりの音声も公開している。まずはそれから。

MLSへのレッドカードのVAR確認やりとり音声完全版

Referee: “I’m going to go red card, mate. Red card on the ankle. Red card, serious foul play.”

レフリー:わたしはレッドカードを出すよ、メイト。レッドカード。足首へのシリアスファウルプレイのレッドカード。

 

VAR: “Just checking the red card for serious foul play. OK, it’s for serious foul play, not DOGSO (Denying an Obvious Goalscoring Opportunity). “OK, for me the contact’s on the top of the foot.”

VAR:シリアスファウルプレイについてチェックしています。OK、これはシリアスなファウルプレイです。DOGSO(明白なゴール機会の阻止)ではありません。OK、わたしにはこれは足の上への接触です。

 

Assistant VAR: “I think he catches him on the side of the ankle first. It glances off the side of the ankle down onto the foot. So the first impact is more that Achilles area.”

アシスタントVAR:彼は、最初に足首の側面をとらえたように思います。足首の横にぶつかって足の上に行った。だから、最初のインパクトはアキレス腱のあたりです。

 

VAR: “So first impact is on the Achilles, on the shin.”

VAR:つまり最初のインパクトはアキレスであり、すねだ。

 

Assistant VAR: “With no chance of playing the ball.”

アシスタントVAR:まったくボールをプレイしていない。

 

VAR: “So, it’s high up above the ankle then it comes back down. OK, just get me the number please.”

VAR:だから、足首の上のほうに接触したあと、足は下に行った。OK、ナンバーを頼む。

 

Assistant VAR: “It’s number 49, Lewis-Skelly.”

アシスタントVAR:ナンバー49、ルイス・スケリー。

 

VAR: “Michael, confirming the on-field decision of red card for serious foul play for Myles Lewis-Skelly. Away, 49. Check complete.”

VAR:Michael、マイルズ・ルイス・スケリーのシリアスファウルプレイというオンフィールドのレッドカード判定を確認しました。アウェイ。49。確認完了。

「最初のインパクトはアキレスであり、すねだ」。いや、どっちだよ(笑)。ここはredditでも「PGMOLは人体について学ぶべき」と、ツッコまれていた。

以下、番組内でのHoward Webbとのやりとり。聞き手はマイケル・オーウェン。

(この件はその後も大混乱と議論を引き起こしました。個人的にはわたしも初見ではイエローカードと思いました。彼の攻撃の防ぎ方はシニカルでしたがそこまでの激しさはなかった……)

HW:あの状況では、われわれは当初からイエローカードのほうが望ましいと考えていた。

ただ、あの日のレフリーは、明らかにMLSの行動がシリアスファウルプレイだったと感じていた。選手は、まったくボールをプレイする意図なく相手に向かっていったし、相手を止める意図ははっきりしていた。そして、レフリーは足が高く上がって接触するのを観て、選手が倒れるところも観た。だから、彼の意見ではあれはシリアスファウルプレイだった。

そしてVARは、それがはっきり明確に間違った判定だったかどうかを映像で確認し、そこまで高く足に行っているところは観られなかったし、そう(レッドカード)は感じなかった。しかし、もちろんわたしたちは、シリアスファウルプレイの認定では過度に力が入っていることや暴力性が(要件として)必要なことはわかっている。ここで見られるのは、ハイコンタクトで、軽く触れて、かなり素早く足から離れるというもの。

そのため、関係者全員がこれはシリアスファウルプレイには至らないという同じ結論に達している。それは足に当たったせいであり、スタッズ(足裏)は足にそのまま入っていないし、足を踏む前に当たっているから。

したがって、レッドカードを支持するような考えもあるが、それだけでは不十分だと言う意見もたくさんあるので、総合的に判断するとイエローカードの方がよかったと思う。

そしてVARは、この状況を再判定したくなかった。明らかに間違っていない限りはレフリーの判定は有効だと考えたからだ。彼らは、その日はそのようなレヴェルではなかったと感じ、フィールド上のレッドカード判定のままにしておくことにした。

(わたしもたくさんのひとに話を聞いて、あれがレッドカードだというひとはあまりいなかったし、あのシーンを観れば観るほどイエローカード以外ないと思った。でも、このアングルの映像を観るとたしかにスタッズが高くかなり危険なポジションにある。しかしこれは暴力行為ではないので、わたしはあれはイエローカードだと思うが、あれは絶対にレッドカードだという人たちもいる。その主張は理解できますか?……)

わたしたちが注意しなければならないのは、ものごとをスロウダウンしたりフレイムで観ること。事実をゆがめてしまう可能性があるので、それはしないように話している。わたしたちは、それをそのままフルスピードで観る必要がある。それが重要。フルスピードで観察すれば、スタッズもかなり素早く外れていることがわかる。

しかし、フィールド上での判断としては理解できる。後知恵ではそれは確かにVARが関与すべきだったと思うが、同時になぜそのときそれが行われなかったのかもある程度理解できる。

わたしたち(VAR)は試合に耳を傾け、レフリーにフィードバックして、それが試合の期待に沿っているか、またこうしたことをどのように判断しているかを確認しようと努めている。

(なるほど。ではそれがイエローだった、あるいはイエローであるべきだったの両方の意見に同意するとして、試合後の反応はいかがでしたか?……)

非常に失望した。批判はこの仕事の一部だということは理解しているし、フィールドの全員がある程度は批判はされるもの。マネジャーだってそう。しかし、そこには越えてはいけない一線がある。彼らの家族は誰からも脅迫されるべきではないし、レフリーも選手もすべての関係者がそうしたことにさらされるべきではない。

つねに全員が判定に賛成するわけではないので、感じたことで批判することはできる。だが、レフリーの脅迫にまで発展する状況はレヴェルを越えている。まったくもって受け入れられない。

以上

Sky Sportsのオリジナルの番組映像は日本からだとそのまま観られないので、YTに野良アップロードされている映像を観た。多少編集されているようだったので、これ以外にも話している部分があるのかもしれない。

 

さあ、どうでしょう。貴殿の意見は。

基本的にはWebbは、Oliverの誤審を認めたかたちであるが、彼自身がそうしてしまった理由も理解できると擁護している。まあ、いつものことだ。

今回の番組のなかで出ていたMLSが相手の足に接触する瞬間の映像は、ぼくが観たなかではいちばんはっきりとしていて、「あれ? これはもしやMLSの過失が微レ存?(死語)」と思ってしまったのだが、意外にもWebbはそれを誤審のいい訳にせず、「映像を止めて観るべきじゃない」と、むしろVAR判定の陥りやすい過ちに警鐘を鳴らしている。スロウで観ると現実がゆがむからしないのだと。アルテタも以前に似たようなことを云っていたと思う。彼のこの意見には、珍しく同意するファンも多かった。

番組の後半は、事案のあとに起きた、結果的にアーセナルが抗議で£65kの罰金を支払うことになった、Oliverへのアビューズについて費やされているのだが、そこにはあまり時間を使わないでほしかった。たしかにそれもいずれ解決されるべき重要な問題だが、とくに議論の余地はないから。

それよりも、こういう機会にもっと議論が必要で、ファンがもっとも関心を持っている本質的な問題にフォーカスすべき。つまり、あるレフリーにある偏向。今回ならOliver。彼はそれを強く疑われている。

Webbは「VARはリ・レフリー(再判定)したくなかった」と、VAR事案では定番のいい訳を述べているいっぽうで、ボーンマスでのサリバのように、レフリーが一度イエローカードを提示したあと、わざわざVARレフリーがレッドカードを進言したりしている試合もある。VARが、オンフィールドの判定にわざわざ介入して再判定してるじゃないか。ほかの試合で起きている同様の事案を考えれば、あのイエローカードは明らかな間違いでもなかったにも関わらず。この試合についてWebbが述べていることと、まったく矛盾していないか。

「clear and obviousな間違いがなければオンフィールドの判定を尊重する」とか、「VARで再判定はしたく」ないとか、そういうのは状況に合わせた都合のよい、その場しのぎのいい訳だ。なぜアーセナルが、そうした一貫性のない判定の結果つねに不利になるのか、それについて納得がいく説明が必要というのだ。

それと今回のWebbの発言で個人的に興味深く思った部分は、「VARは(判定が)<試合の期待>に沿っているかを確認しようとしている」という部分。試合の期待だって? 云っている意味はよくわかるが、また“letter of the law”の精神と矛盾したことをおっしゃる。ライスがちょこんとボールに触れただけで、明白な遅延行為だと厳罰を下したように、ルールブックにそう書いてあるから、空気なぞ読まずに厳密な判定をしてきたんじゃないのか。

でもそうか。なるほど、試合の期待に応えるからアーセナルはいつも不利になるのか。そこは矛盾してないな。

 

オーウェンには、Oliverのシティとアーセナルのレッドカード記録の比較とか、それこそこのタイミングなんだから、なぜかリヴァプールが3試合連続で2枚めイエローを免れている件とか、もっと彼に訊いてほしかった。「アーセナルファンが騒いでますが……」でもいいよ。Webbだって、公の場で反論できるならすればいい。そのほうがお互いスッキリする。

でもそんなことはきっとできない。判定の方針に一貫性がなく矛盾が存在していることは、承知しているはずだから。だからここでは話題にもならない。そもそもSky SportsはPGMOLのプロパガンダの片棒をかついでいると云われているくらいで、彼らに都合の悪い内容の番組にするはずもない。

こうしていつまでもモヤモヤが残る。

 

おわり

 

おまけ

GW25時点でのPLのVARエラーランキング by Squawka。アーセナルは「-3」でワースト2位タイ。チェルシーは、お中元(意味深)贈り忘れたとか? シティを見習わないとなあ。

 



※コメントくださるかたにお願い
プレヴューエントリでは、試合の結果がわかるようなコメントはお控えください
お互いリスペクトしあって楽しく使いましょう

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