試合の論点
レスター vs アーセナルのトーキングポインツ。
Three points in the bag 💼
Watch the highlights of our 2-0 win away at Leicester City 📺 pic.twitter.com/bKNuUJntqW
— Arsenal (@Arsenal) February 15, 2025
アタッカー危機のアーセナルにメリーノは救世主か。新9に大きな可能性を示す
およそ20分のプレイで、ショッツ2&ゴール2。ミケル・メリーノ。
われらにとっては、敗けとほとんど変わらないドロウになりそうだった、0-0で迎えた残り10分のあの絶望感のなかでゴール。さすがに、しびれたねえ。フットボールの美しさ。
メリーノ本人はこの日の朝にストライカーとしてプレイすると聞かされたというのだから、そのための準備もほとんどなかったはず。しかし、彼は9としてボックスのなかでボールを待ち、それをネットにいれるという仕事をみごとにやりきった。ちゃんと彼の強みも使って。
試合前、レスターはヘッダーによる失点がとても多いという情報があったので、今回はまんまとそれをやったかたちだ。Euroのファイナルで彼が決めたゴールを思い出すようなヘッダーのショットとゴールだった。
たったひとつの試合でゴールを決めたからといって、彼がチームの救世主とまでいうのは、あきらかに大げさな評価ではある。だが、興奮しているのはゴールというより彼のゴールの決めかただ。
上のマッチスタッツのところでも書いたように、メリーノが決めたゴールは、この日のアーセナルにとってはふたつの最大のチャンスだった。それを外さなかったこと。決めるべきゴールを決めたこと。それが最近のわれらにとってはとてつもなく重要なことのように感じるのだ。
だって、それはハヴァーツにはなかったものだから。
おっと、つい小声になってしまった。
今回のゴールがふたつとも、もしハヴァーツだったらと思うと、彼がしっかりと決めていた姿よりも、外して悔しがっている姿のほうがなんとなく想像できてしまう。絶対に入れてほしいショットを彼はなぜか外してしまうひと。そんなことをこれまで何度もやってきた。
このふたりには身長が高く、身体が強いという共通のプロファイルがあるが、もしかしたらメリーノのほうがゴール前での冷静さがあるのかもしれない。そう思えたのは、とくに彼の2点めのゴール。
トロサールのクロスがバックポストにいた彼に届いたとき、メリーノはほんとうに落ち着いているように見えた。ぼくは、選手がイージーなショットを外してしまうとき「なんでゴールにパスしないんじゃあ」と思ってしまうのだが、メリーノのあのショットはゴールへのパスに見えた。あの時間と空間がごく限られた一瞬であれをやれる選手は、ゴール貢献する才能アリだろう。
もちろん、9の仕事はそれだけではないし、とくにハヴァーツはたくさんの仕事を担っているので、それを代替するのはさすがに難しい。しかし、ことボックス内でボールをネットに入れる作業に関しては、今後メリーノが隠れたセンスを発揮するかもしれない。今回の20分という短時間でのふたつのゴールで、そんな期待感を抱かせてくれた。
メリーノは、アーセナルに来て以来、MF(8)としてはここまで100%フィットしていなかったこともある。いきなりケガをしたアーセナルライフだったので出遅れたこともあったし、いまだにどこか中途半端な存在に見えた。このあと時間がたてば、いずれ8でフィットしたかもしれないが、このままだとバックアップ選手としてプレイしていくことになっていたのかもしれない。しかしそれは彼も本意ではないだろう。
しかし、もし彼がFWとして開花するなら。チームにとってもかなり都合がよい。奇しくもハヴァーツとまったく同じプロセスだ。適材適所。大金でWatkins買わなくてよかったみたいなことになりかねない。
ハヴァーツと違って、メリーノはストライカーでプレイした経験がないということで(※過去に19分プレイしたことがあるという記録は、彼が自分でも9でプレイした自覚がなかったのかもしれない)もし9をつづけるなら、今後身につけなければならないCF仕草はある。28才のここから新人CFを始めるキャリアもちょっとおもしろい。
アルテタは、これからそれに積極的に取り組んでいくんじゃないだろうか。単なるオプション以上のものを期待して。
トロサール・メリーノ・ワニエリのフロント3は、もっと長い時間観てみたい。
ところで、Fellainiはアルテタの会見ですら名前が出ているので、彼が選手時代(※2024年2月にリタイヤ)にCFでどれだけの結果を出したのか確認してみた。以下TMより。
CFとしてのプレイは23試合と、彼の長いキャリアのなかでは云うほどは多くない。しかし、そのなかでのゴール貢献は13(G10 A3)とかなり多い。2試合に1点以上の頻度。だから印象に残っているのかも。
メリーノがこれからCFでプレイして2試合ごとに1ゴール決めたりしたら大成功の部類だろう。よしまずはヘアスタイルの変更から始めるか。
ワニエリがひきつづき絶好調
イーサン・ワニエリは、どんどんどんどんよくなっていくな。成長が順調すぎて怖いくらいだ。この試合でもまだ17才。もう20才くらいになってるかと思った。
この日、アルテタが「チームはスタンダードを満たしていなかった」と評したように、前半のアーセナルは低パフォーマンスで試合に入っていったなかで、彼だけはひとり気を吐いていた。あきらかにピッチ上のベストプレイヤーだった。最年少選手がもっとも優秀とはこれいかに。
観た目でもまったく素晴らしかったが、HT時点でシェアされていた彼の前半のスタッツには、正直度肝を抜かれたものだ。デュエルが8/8、ドリブルが5/5、タックルが2/2。おかしな数字が並ぶ。
Ethan Nwaneri’s half by numbers vs. Leicester City:
21 passes attempted
19 passes completed
8 duels contested
8 duels won
6 crosses
5 dribbles attempted
5 dribbles completed
2 tackles attempted
2 tackles won
1 key passThe 17 year-old has been Arsenal’s best player in the first… pic.twitter.com/ZB60iwz9oT
— Statman Dave (@StatmanDave) February 15, 2025
もちろん、前半だけでなく後半も大活躍だった。彼のゴール貢献の記録は、最終的にはメリーノのヘッダーに合わせた絶妙クロスでのアシスト1だけだが、ショッツがふたつ枠を叩いた。彼自身のゴールまでそう遠くなかった。今回もである。
ちなみに、意外なことに、今回の彼のアシストは15才でデビューしてからここまで、PLで17試合でプレイして初アシストになった(※ゴールは3)。彼は、以前より「自分のゲイムにアシストを加えたい」と述べていたそうで、今回ようやくその第一歩を踏み出したことにもなった。クリエイター。
試合後TNT Sportsの中継番組にゲスト出演していたJoe Coleは、ワニエリについて「ボックス周辺でのこまかなタッチはメッシみたいだ」とまで云った。アルテタの試合後会見でもメッシの名前は出ていたというので、今回の彼のパフォーマンスを観てそう感じたひとは少なくないのかもしれない。それほどのクオリティだった。(※今週はBHAのミトマもメッシが引き合いに出されていましたな)
今回の試合を含めて、AFCファン投票では今シーズンの彼は5回もMOTMに選ばれているという。この安定した活躍ぶり。
これはもう来月にサカが戻ったとき、ワニエリとの共存について検討を始めるレベルかもしれない。当初は、ただそこでもプレイできるというくらいだった彼のRWがこんなにもいいとは。
ところで、個人的にはこの試合でもオーデガードの存在感が薄くなっているように感じていて(もちろんいいプレイはしているし、彼にしかできないようなチャンスもつくっているが)、以前のような圧倒的なゲイムメイカーっぷりが鳴りを潜めている。長らくサカがいない影響もありそう。だが、彼が以前ほどの絶対的な選手でなくなってきているのなら、ワニエリとR8のポジションを競うような未来もあるのかもしれない。
この調子だと、サカが戻ったからといって、ワニエリがまたバックアップとしてベンチに戻るとは思えず、必ずどこかのポジションでプレイさせたい。
もうワニエリは、チームに欠かせないキープレイヤーになりつつある。
スターリング?? フロント3再考の必要性
ワニエリが逆サイドで大活躍していたとき、いっぽうのサイドでは相変わらずスターリングが苦しんでいた。
今回は悪目立ちと云ったらちょっと語弊があると思う。たしかにワニエリのおかげで悪目立ちはしているが、それに関係なくスターリングはマジひどかった。
ピッチ左右の対比がこんなにも鮮やか。
Sky Sportsのマッチレビューでは、スターリングは両チーム合わせて最低レイティングの「4」。
彼の悪いスタッツは、たとえばドリブルが0/2(上のグラフィックだと0/3)、地上デュエルが0/5(空中は1/1)、クロスが0/1など。ワニエリがとんでもない数字を出しているときに、これは目を覆いたくなるほどのひどさ。
ワニエリやトロサールがゴール貢献しているなか、もちろんスターリングにはゴールもアシストもないし、ショッツはブロックされたものがひとつのみ。アタッカーとしての生産性の貧しさが極まっている。
この日は、1 v 1で何度もボールを奪われたのもため息を誘ったものだ。本来1 v 1はサイドアタッカーの見せ場でなければいけないのに。相手のDFライン全体が見えるあのポジションで何度もオフサイドにかかったのもまずい(2)。
Raheem Sterling had more offsides (2) than shots (1) + key passes (0) + dribbles (0)
— Scott Willis (@scottjwillis) February 15, 2025
右ではワニエリがボールを持てば、毎回何かが起きそうな期待感があるいっぽう、左では彼のところで毎回のように攻撃がストップするので、観ていてほんとうにフラストレイションがたまった。
彼は、右でのプレイにくらべて、左のほうがまだマシという話もあり、今回のフロント3と同じ3人でプレイしたCLジローナでは実際悪くなかった。だが、今回はそのときと同じLWでも彼のワーストパフォーマンスだったような気がする。
少し前にどこかで読んだ記事で、「ローンでスターリングを獲得したとき、アーセナル(アルテタ)はここまで彼が使えないとは想定していなかった」とあったが、今回のパフォーマンスは、アルテタはじめコーチたちをよりいっそうそういう気分にさせたかもしれない。
あの、一時期はMVが€160mまで高騰したスター選手が、時間がたっているとはいえ、ここまで激しく劣化するとはちょっと信じがたい。このひとまだ30才なんだが。Mo Salahは6月に33才。まったく老け込むような年齢じゃない。アルテタは彼のことをよく知っているのだから、よけいにショックが大きいだろう。
今回はレスターのような相手でよかったとして、今後もっと強い相手との試合では1つのプレイの差で結果が変わってくる。
メリーノを本格的に9として起用すべき理由が、ここにもあるように思える。スターリングを今後もフロント3でスタートするひとりとしてカウントするのは危険ではないか。
試合後にあるファンが、「いまこそファンはスターリングをサポートすべき。なぜならチームは彼に頼る必要があるから」と殊勝なことを云っているのを見かけた。それも正論だとは思う。自信でだいぶ変わる可能性はある。
だが、さすがに今回のような試合を観させられると、チームは彼への依存度をできるだけ下げる方向で動くべきなんじゃないかと思わずにいられない。メリーノが9でスタートすれば、いちおうそこは解決できる。
この試合については以上
おまけ:キーオンとニステルが再会「あのときはごめんね」
A lesson in forgiveness… 😅 pic.twitter.com/JkxoEs23Zh
— Football on TNT Sports (@footballontnt) February 15, 2025
“Apologies for all the shenanigans that went on back in the day.” 💪
Ruud van Nistelrooy catches up with Martin Keown to settle the differences from their playing days 🤣
🎙 @lynseyhipgrave1 | 📺 @tntsports & @discoveryplusUK pic.twitter.com/ui3yaWiSWF
— Football on TNT Sports (@footballontnt) February 15, 2025
あれからもう20年以上たって、ふたりが会うのは2回めのようだ。和気あいあい。ていうかキーオンは前に会ったの忘れてた? いろいろウケる。