昨日はLIVのTAAのRM移籍が決まったというニュースでフットボール世界は大賑わいだったなか、アーセナル世界ではドルトムントのウィンガー、Jamie Gittensという選手の話題で盛り上がっていた。
20才の英国人でたいそうな将来有望株なのだとか。わしは名前すら初めて聞いた。
アーセナルでは、ストライカー同様にウィンガーもこの夏の最優先補強ポジションと云われており、これまでもさまざまな名前が取りざたされてきた。そこにあらたな名前が加わった。
Jamie Gittensとはどんな選手なのか。来年こそはタイトルを獲得する必要があるアーセナルにふさわしいのか。
今回はこの話題についてすこし。
「アーセナルはJamie Gittensの獲得競争でポールポジション」とドイツ報道
このニュースの発信源はここらしい。
Jamie Gittens kündigt BVB-Abgang in der Kabine an: Nächster Topklub steigt in den Poker ein
『Ruhr Nachrichten』というドイツのメディアで、BVB情報ではかなり信用できるということ。
ペイウォールで読めないのだが、この記事の内容としては。
- 本人が夏にはBVBを退団希望
- すでにその意向はクラブに伝えている
- アーセナルは選手サイドとすでにシリアスな交渉を始めており、それはチェルシーに先行している
- クラブが彼の退団に求める移籍金は€50-60m
- 彼の代理人(Elite Project Group Limited)はサカと同じ(TMを確認するとたしかに)
ちなみに、彼はこれまでチェルシーがもっとも高い関心を持っていると伝えられていたようだ。アーセナルのニュースでこれまで名前が出たことがあるのかどうかはわからないが、ここまで大きな話題になったことはないと思う。
ぼくが確認したところでは、まだアーセナル系のメジャーなジャーナリストたちは、この件について反応していない。
アーセナルが、この選手についてドルトムントと交渉しているのはほんとうだろうか。
アーセナルのJamie Gittensへの興味は理にかなう?
これまでアーセナルの夏のウィンガー補強の本命と云われていたのが、アスレティック・クラブのNico Williams(22)。マルティネリとトロサールがプレイするLWをアップグレイドするという意味では、アーセナルファンの多くがこのリンクに納得していたと思う。
ただ、問題は彼のサイドが求めるという特殊な契約条件。£50m前後といわれる移籍金(RC)はともかく、サラリー£250kpwという法外な要求は正直クラブは受け入れるのは難しいんじゃないかと思っていた。
単純に財政的にこれまで削減に努めてきた給与総額を圧迫するということもあるし、またチームのなかの序列や基準が崩れることもある。22才の選手が実際どれほどの活躍ができるかにもよるが、今後の既存選手とのあらたな契約更新交渉では彼と比較して昇給を求められることも出てくるはずで、クラブとしてはだいぶやりづらくなるはず。
ほかのビッグクラブの気前の良い選手給与と比較しても、アーセナルは選手給与についてはかなり慎重なクラブだから、こういった例外を嫌いそうである。シーズン30ゴールが約束されるみたいな、よほどの選手でもないかぎりは。
最近、レアル・マドリッドがRodrygoを夏に売却するというニュースがアーセナル界隈でもすこし話題になっていたが、こちらも似たようなサラリーの要求があるに違いなく(※現時点のRMでの給与がおよそ£200kpw)。
だから、仮に移籍金が同等だとしても、アーセナルがWilliamsよりも給与の要求はずっと低いであろうGittensに向かう動機はある。
ただし、クオリティの議論はまたべつの話。
アーセナルはJamie Gittensへ向かうべきなのか?
これは、個人的にはけっこうな賭けだと思う。
ぼくも昨日、YTでハイライトリールをすこし観ただけで、それはそれで非常に素晴らしい選手には見えたのだが、あれをそのまま鵜呑みにしちゃだいぶまずいようで。
というのは、アーセナルファン界隈でもこの件については賛否両論で、少なくともファンのあいだでは彼の評判は思ったほどには高くない様子。まだ20才と若く、未知数というか。そういった意見をつらつら眺めていたら、ぼくもちょっと心配になってきてしまった。
r/Gunnersでシェアされていたr/borussiadortmundでのコメントというのがあって、これがなかなか示唆的だったので紹介したい。いまから二ヶ月ほどまえのもの。ちなみにBVBは今シーズンあまり成績がよろしくない(※現在リーグ5位)という前提で。
そもそもGittensが問題なんじゃないかと思っているのはわたしだけ?
選手のなかでも、いまもっともイライラさせられるのがGittensだ。前回の試合ではもう我慢がならなかった。
彼が、彼のサイドでわれわれの攻撃を完全に予測可能なものにしているんだよ。だって彼はチームメイツとプレイしようとしないし、つねに同じことを試みるから。頑固にDFに向かって走っていく。
彼のゴール貢献の数字が最近の試合で落ちているのは偶然じゃない。相手は完全に彼に慣れてきている。彼のことをオーヴァーラッピングしていく選手のことなんて相手は気にする必要すらない。だって、彼はつねにカットインサイドするってわかりきっているんだから。
そのうえ、彼は頻繁に試合をスロウダウンさせるから、相手に考える時間を与えてしまう。彼はいいドリブラーではあるよ。でも、彼のドリブルは本物の価値を提供していないんだ。いずれにせよ、彼はDFまでまっすぐ走って行くだけ。
これはチームの士気を下げてもいる。選手はどうせ彼からはボールが来ないと思って走るのをやめてしまうし、利己的なソロプレイにうんざりして集中を維持できなくなる。
正直、わたしはGittensよりも一度Duranvilleが観たい。彼はまだとても荒削りだが、攻撃ではいまのGittensより悪くなりえない。そして、彼は右足が強みだ。もしDuranvilleじゃないならBeierでもいいよ。
……とにかく、Gittensにはウェイクアップコールが必要だ。あるいは頭をすっきりさせるためにちょっと休むか。ベンチからなら、彼のプレイングスタイルも有効かもしれない。相手が疲れていれば。
(後略)
これは……まるでアーセナルの誰かについておれが書いたみたいだ(笑)。
このような意見は、とあるBVBファンの特殊な意見というわけでもなく、プレイの幅がないとか、単次元とか、荒削りというのは、わりと彼に対する一般的な評価のようだ。このコメントに対してのレスに「いまの彼は本能でプレイしすぎるから、ガイダンスが必要」というものがあって、非常に納得するものがあった。
あるアーセナルファンは彼について「英国のマルティネリ」と云っていた。ゴール貢献はまあまあなウィンガー。なるほどなあ。
現時点では、彼が来たところで確実なLWのアップグレイドとは思われていない。だから、あまりこのニュースに好意的じゃないファンもいる。いまトロフィを取る必要があるフェイズにいるチームとして、的確な補強なのかと。
Williamsは金がかかりすぎるから、Gittensにしようというのはわかる。もしかしたらアーセナルは、BVBが求めているという€50-60mをだいぶ下回る金額で交渉しているのかもしれないし。たとえば€40mとか。アーセナルがいかにもやりそうである。
ここで大きな問題は、アルテタがGittensのような若い荒削りなタレントを正しく導けるかだろう。
利己的なソロプレイヤーということでは、ニコラ・ぺぺを思い出す。彼もファイナルサードでのリンクプレイが大好きな選手ではなかった。だからつねに予測可能で相手DFに対応されやすく、プレイが効果的になれない。彼の致命的なマイナスポイントは守備だったが、もし攻撃でもう一皮むけていれば、アーセナルでの寿命はもう少しくらい伸びていたかもしれない。
アルテタも彼についてはだいぶ考えて指導もしていたはずだが、最後は選手次第。いくらコーチががんばってもそれに応えてくれない選手もいる。Gittensがアルテタのコーチングにどのような反応を見せるかはわからない。だから彼に向かうのは賭けの要素が大きい。
逆に、アーセナルが彼に本気だというのなら、そのあたりで楽観的になれる理由があるということになる。サカと代理人が同じの英国人で、選手の性格や本質も知りやすかったり。
もちろん、Williamsだってまだ22才で英国フットボールへの適応問題もあるし、20才のGittensとそれほど大きな差があるわけではない。ただ、2才の年齢差と経験差でGittensよりもリスクが少ないとは思う。
金がかかっても手堅くWilliamsを選ぶか、あるいはGittensの成長と将来性に賭けるか。前者のやりかたのほうが、ビッグクラブっぽくてアーセナルっぽくはないが、「いま勝つ必要あるフェイズ」では求められる動きかもしれない。いま必要なのはギャンブルじゃないのは確か。
本当にこのふたりのうちのいずれかが来るかも全然わからないから、結局無駄な議論になるかもしれないが、アーセナルがチーム事情(現在と将来)とプロジェクト状況(五カ年プロジェクトのフェイズ5)をどう考えて動こうとしているかは、なかなか興味深いように思える。
Jamie Gittensのプロファイル
以下、TMより。
- 名前:Jamie Jermaine Bynoe-Gittens
- 誕生日:August 8, 2004 (20)
- 出身地:London England
- 身長:1.78 m
- 国籍:England Barbados
- ポジション:Attack – Left Winger
- 利き足:right
- 代理人:Elite Project Group
- 現行契約:June 30, 2028
ロンドン生まれの英国人。もちろんHG。
今シーズンのブンデスリーガでは、30試合でG8 A4。現在のMVは€50m。
ユースキャリアは、レディング、チェルシー、マンシティからドルトムントU19へ。2022からシニアチームでプレイしている。
NTキャリアは、イングランドU15からU21までの各年代。現在プレイするU21では、11試合プレイでゴール1。彼のチームメイツには、ヴィラのMorgan Rogers、チェルシーのNoni Madueke、リヴァプールのHarvey Elliottらがいる。なかなかのエリート集団。
ポジションは右足のLWで、アーセナルに来ればマルティネリと直接ポジションを争うことになる。
プレイスタイルは、ご覧のとおりで、スピードがありクイックでドリブルが上手、1 v 1でかなり強い。ただし、こういったハイライト動画では、先に指摘されているような彼のソロイストぶり(ダメっぷり)はわからない。
さて、Jamie Gittens。どうでしょうね。
理想的な展開は、アーセナルが彼を夏にいい条件で獲得してミケルの下でさらに選手として成長するみたいなことだけど、現実はそんなに甘くないか。
ウィンガーといえば、先日のCLアーセナル戦でも印象的だったPSGのKhvicha Kvaratskhelia(23)が€70m。ナポリから1月に移籍したばかりであの存在感。彼の給与はわからないが、アーセナルのウィンガー補強のベンチマークにはなるなと。かける金とそれに見合うクオリティかどうかは比較されてもおかしくない。
ウィンガー補強については、今後もニュースがあればお伝えしよう。
おわり