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【マッチレビュー】25/26 EPL アーセナル vs マンチェスター・シティ(21/Sep/2025)超守備的シティにホームで痛いドロウ

試合の論点

アーセナル vs マンシティのトーキングポインツ。

予想外に守備的なシティにあわやホームでゼロポインツも最後にはドロウに持ち込んだアーセナル

「あなたはストーク・シティですか? いいえ、マン・シティです」。

いやあ、つい見間違えちゃったな。しかし、あれがPep Guardioraのチームだなんて信じがたい。フットボールジーニアスにTony Pulisの魂が乗り移った!

試合前にも、今シーズンの彼らがシットバックも辞さず、トランジションやカウンターアタックに活路を見出すようになっているという話は、このブログでもちょっとだけ触れたんだけども、正直あんな露骨にやるとは思わなかった。Donnarummaのロングボールは21を数えた。

というか、彼らのこんな姿は誰も想像しなかっただろう。なにせ、彼らのあのポゼッション率の低さ自体が記録的だというのだから。今回はちょっと極端だったようだ。

マンシティのポゼッション32.8%(※Optaによるスコア)は、今回が601試合めとなるGuardioraのトップフライトでのマネジャーキャリアで最低という。

ちなみに、彼らのこれまでの最低ポゼッションもアーセナル戦だった(2023年2月のエミレーツで36.5%)。

さらに、この試合での彼らのボックス内タッチ(8)は、GuardioraのシティPL347試合中で最少。

10年に一度だからいいのか? RodriもSilvaも試合前はフィロソフィがどうのとあんなに勇ましいことを云っていたというのに。

またこうした数字もさることながら、なにより彼らの守備的な姿勢はサブにもはっきり現れていた。

68分には、Phil FodenをNathan Akeに変えてバック5に。その8分後にはHaalandを下げてCMのNico Gonzalez。残り20分もあるのに、ウィンガーをトップにした5-4-1であきらかに1点のリードを守るほうにシフト。

また彼らの選手たちも、試合終了までできるだけ時間を使おうとあからさまにゆっくりプレイしようとしていただろう。その傾向はすでに前半から観られたし、Donnarummaはそれのやりすぎでカードまでもらう始末。

あまり観たことがないような光景ではあった。

アルテタの会見にも出ているように、これは昨シーズンのエティハドでの展開(※アーセナルが最後までリードを守ろうとするも98分の彼らのイコライザーで2-2)に似ているが、あのときアーセナルは10人で、そこがこの試合とは大きく違う。1点のリードを守ろうとしたほうが、最後の最後で泣いたのは、まあ同じではあるか。

ということで、アーセナルがこの試合でドロウという結果は、非常にがっかりした。当然のように勝つべき試合だった。

もちろん、あの試合の状況を考えればポジティヴになれる部分もあるが、そもそもあんなふうに失点してはいけなかった。

この狭い空間に両チームの選手たちが集まっている

あの時間、アーセナルはかなりいいリズムで気分よく攻撃していて、ボールの奪い合いでつい人数をかけてしまったのだろう。ガブリエルまでボールを奪いに前に出てしまった。しかし、どさくさのなかそのボールが密集地帯から前に転がり出ると、一気にハーフウェイラインで2 v 2の状況に。さらに、Haalandがスプリントで加わって3 v 2の状況になると万事休す。密集地帯のなかにいたアーセナルの3MFはみんな置いてきぼりで、バックラインが突然にさらされた。

またこれは、ここぞのタイミングで全力スプリントするHaalandの抜け目なさにくらべて、アーセナルの選手たちはスウィッチオフしてしまったという気がする。集団のなかから走り出した瞬間は同じだったのに、気付いたときには,もう誰も彼には追いつけなかった。たらればながら、ズビメンディは彼にしがみつくなりタクティカルファウルでHaalandを止めるべきだったかもしれない。カード1枚で済むなら安かった。

まあ、それはいいとしようか。よくはないけど。

問題はそのあと。残り80分もあるので焦る必要はない。しかしながら、アーセナルはチャンスをつくることにたいそう苦労したのだった。

アーセナルの最初のショットは32分。その後、HTを挟んだ前後半のそれぞれの時間帯にそれなりのショッツもあるが、良質のチャンスとは云えず。試合終盤になると、バック5になったシティがますますシットバックするようになり、アーセナルがミッドテーブルクラブと対戦するときのブロックの外側を延々とボールをまわす見慣れた光景に。観ていて、正直かなりフラストレイションがたまった。

最終的には、エゼのひらめきとネリのラン&フィニッシュで、なんとかホームで最低限の結果は得たものの、もしこの試合で敗けていたなら、われわれのシーズンはかなり悲観的にならざるを得なかったと思う。

アルテタのチームセレクションは相手のことを考えすぎる? この結果に前半が高くついたとの批判

この試合でアルテタがピックアップした選手、しなかった選手。チームセレクションには疑問の声が多い。

スターティングラインナップについて、アルテタがアーセナルに加入以来いいプレイをつづけているエゼをベンチに置いてトロサールを選んだり、あるいはオーデガードの代替にまたしてもメリーノを選んだこと。考えてみれば、アーセナルはライスとズビメンディとすでにふたりの6が3MFでプレイしているのに、さらにそこに守備寄りのCMであるメリーノを入れていることになる。

リヴァプールのときにもあった守備的すぎる「3DM」の批判について、試合後の会見でアルテタは「ビルバオでは誰も文句を云わなかった」と述べたが、それについては、あの試合を救ったのはトロサールとマルティネリであって、誰もあの3MFを褒めてはいたわけではないとわりと各所でツッコまれていた。まあね。

メリーノは今回失点のすこしあとにわかりやすいエラー(パスの出しどころに迷って奪われる)もあったし、前半追いかけねばならない立場で、前方へのパスよりもバックパスを選んでしまうような攻撃プレイの消極性も散見された。彼はストライカーとしてもプレイできるヴァーサティリティの持ち主ではあるが、MFとしては攻撃的な、リスクをかけるタイプではけっしてない。

この3MFのなかに攻撃成分がなかった前半に対し、後半はエゼ(とサカ)が入ることで、攻撃が改善されていったのを観るに、アルテタが云うほどこのスタートの3MFの組み合わせの、攻撃面でのマイナス影響は小さくなさそうだ。彼がかなり好んでいるにも関わらず。

今回アーセナルにとって前半が高くついたとジェイミー・キャラガー。ジェイムズ・ベンジは、リヴァプールのときのキャラガーには同意できなかったが、今回はフェアな評価だと云っていた。ちょっと長いが引用しよう。Sky Sportsより。

JC:わたしはアーセナルを素晴らしいチームだと思っている。個人的にはPLでのベストスクワッド。今日楽に勝てたとまでは思わないが、それでも2-0で勝てたと思う。

PLを勝つことに関して、アルテタはとても特別に近いチームとスクワッドを持ったし、もしかしたらCLだって勝てるかもしれない。彼らはとてもいいと思う。

しかしだ。こうしたビッグゲイムのたび、アルテタはチームを選ぶときに自分たちよりも相手のことを考えて選んでいるような気がするのだ。それでPLを勝てないということではないよ。モウリーニョはそんな感じでPLを三度も勝ったから。

だがわたしにしてみれば、45分間が無駄になった。なぜわたしがそう云うのかといえば、わたしもリヴァプールでそういうマネジャーの下でプレイしていたから。トップチームにかなり近づいても、わたしたちは一度もPLを勝てなかった。

わたしは、ときどきGerard HoullierとRafa Benitezの下でプレイしたチームのことを考える。ある特定の試合でハンドブレーキをかけてしまう。それがいまのアルテタにも当てはまる。

リヴァプールはアンフィールドの後半では相手に向かっていったし、マンシティはこの試合の最初はそうした。その後にはアーセナルが試合に入っていくのを許してしまったが。

それは、シーズンごとに繰り返されるパターンで、アルテタでありアーセナルサポーターであるなら、シーズン終了時にそれが致命傷とならないことを願うしかないだろう。彼らは素晴らしいチームであり豪華なスクワッドを擁している。しかし、勝敗を分ける差はごくわずかなのだ。

なんだか、リヴァプールのときの議論をもう一度繰り返しているような気分になる。手前味噌ながら「小さな差のなかで勝負を決めるのはそういうメンタリティとかマインドセットかも」とはアテクシも書いたとおりである。

それにしても、アルテタは、ケガ明けのサカはともかく、エゼをベンチにした理由はなんだったんだろう? そこはけっこう謎だ。

彼はこのチームのベストプレイヤーのひとりであり、オーデガードがいないいまチームのクリエイティヴ成分を補える貴重な存在。べつにトロサールでも悪くはないが、エゼより優先すべき理由はよくわからない。トロサールがいつもぷんぷん怒ってるからかな。

トロサールは前半、何度かボールを持って抜け出そうという場面で失敗していて、あれなら走力のあるネリのほうがまだよかったんじゃないかとも思った。

このアルテタ=コンサバ論でちょっと深刻に思えるのが、そうした性質がアルテタに深く根付いていると思われるからだ。もうかれこれ5年くらい彼のことを観ていて、保守的・現実主義的という側面は、かなり彼の本質的な部分だと感じている。昨日今日始まったことじゃない。混沌よりも秩序を求め、リスクや変化を嫌い、慎重で注意深い。予測不可能性が必要など、口では反対のことを云っていたりもするのだが。

だから、このような充実したスクワッドを持っていながら、それでも最終的に目標に届かず、それがマネジャーの消極的メンタリティやマネジメントのせいだとしたら、なんだかやりきれない気持ちになってしまう。ほんとにあとすこしなのに。そのあと一歩が届かない理由が、そのような理由だったら。

でも、こういう試合を観ていると、心配が現実になるんじゃないかと不安になってしまう。多くの試合で問題になるのは、あともう1点。去年もそれが足りずにだいぶポインツを落とした。

もうドロウもダメだし、2位でもダメなのだ。

誰かが云っていました。「アーセナルは間違いなくヨーロッパ最強チームのひとつである。アルテタはそういう意識でチームをプレイさせねばならない」。

これは、まったくもって同意。自分たちが最強だと信じているなら、シティ、リヴァプール、レアル、PSG、バルサ、バイエルン、誰が相手だろうと関係ねえんだから。実際どうかはともかく、そういうメンタリティ、マインドセットを持つことは非常に重要と思える。とくに目標が大きいとき。

アルテタも選手もよく謙虚であることを自賛しているけれど、もうそろそろ傲慢になっても許されるんじゃないの。そういうフェイズだよ。

アルテタは、相手のことを考えすぎでリスペクトしすぎ。もっとシンプルに自分たちのことを優先に考えて、ベストなチームを出して、ベストな攻撃戦術でプレイすれば、ちゃんといい結果が得られる。それだけの強さもクオリティもある。そう信じれば、あともう一歩に届く?

このシーズン最序盤でリヴァプールとシティとの試合が終わってみて、そう感じている。

※コメントくださるかたにお願い
プレヴューエントリでは、試合の結果がわかるようなコメントはお控えください
お互いリスペクトしあって楽しく使いましょう

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