試合の論点
アスレティック・クラブ vs アーセナルのトーキングポインツ。
ネリ&レオのサブがインパクトでデプスの勝利も、ビッグスクワッドゆえの悩み
試合の終盤、正直試合がこのままドロウで終わってもしょうがないかなと思っていた。それくらいには両チームは拮抗していたし、アーセナルは後半の60分くらいから、ややインテンシティが落ちていったようにも見えたから(ビルバオのほうにこそ疲労があったと云われているが、ぼくはそっちはあまり感じなかった)。
だから、71分にマルティネリが入っていきなりゴールを決めたときは驚いた。あの株価低下の止まらない漢が。
ピッチに入って36秒後のどさくさ。
並走していた相手DFがネリの最初の頭でのバッドタッチにつられ、逆に抜き去ることができたという。そしてシュートもやや危なかった。うまくGKの脇の下へ抜けるも、あれは狙ったようには見えず。
でもまあ、まぐれだっていいじゃない。ゴールだもの。
トロサールのアシストもさすがだったな。あのバックヒールというか、フリックというか。ブーツの外側で。技あり。
このゴールは、アーセナルのCL試合でサブの最速ゴールとなった。
36 – Gabriel Martinelli opened the scoring for Arsenal just 36 seconds after coming off the bench, the Gunners’ fastest ever substitute goal in the UEFA Champions League. Introduction. pic.twitter.com/VxSDYR9IAj
— OptaJoe (@OptaJoe) September 16, 2025
そして87分には、今度はそのトロサールがネリのアシストでゴール。
マルティネリが、左サイドの1 v 1から相手を抜いてボックスに侵入すると、バイラインから目ざとくトロサールを見つけてラストパス。彼がずっと心無いファンに批判されていたプレイをここで成功させるというカタルシスがあった。とても冷静だったし、ちゃんと周囲が見えていた。
トロサールのショットが決まったのも、また若干まぐれくさいが(0.06xG)、まあそれがフットボールである。
ということで、マルティネリとトロサールのふたりのゴールでアーセナルは、CL初戦の貴重なアウェイ勝利を得たのだった。めでたし。
ところで、新シーズンが始まってから会見などでアルテタが大きなスクワッドに関する質問を受けることが多い。
夏の積極的な補強により、今年のアーセナルは例年になくスクワッドが充実したのはよいが、そのおかげで試合でプレイできない選手も当然出てくる。彼らの不満をどうマネジするか。これはビッグクラブでは当たり前でも、アーセナルでは新鮮な問題だった。
PLではスタートする11人にベンチが9人で最大20人、このうち実際にプレイするのは最大で16人。CLでベンチ枠が3人増えるが、試合でプレイできる人数は同じ。いまは少なくないケガ人が出ていることで、チャンスはそれなりにあっても、今後はケガ人がフィットすれば、シーズン開始当初のようにベンチにすら入れないシニア選手が出てくる可能性もある。アルテタはレギュラーを固定しがちなので、毎度ベンチに座っているだけの選手も出てくる。
スクワッドのクオリティ全体が底上げされたことで、質も量も増えたスクワッドとなり、それだけ選手のなかの不満も自動的に大きくなるというジレンマ。これから試合に勝っていくためにも、チームのなかでできるだけポジティヴなムードを維持したい。それにどう対処していくかは、スクワッド全体の士気にも関わる重要な問題だ。
マルティネリとトロサールの状況は多少違うが、現時点でスターティングポジションを失っている立場は同じ。その立場から、彼らはスクワッドのなかでも、とくに現状に満足していない代表的な選手だろう(そういえば、HOAが「怒っているトロサールはいつも活躍する」と云っていてちょっと笑ってしまった。たしかに)。
だから、今回このふたりが揃ってサブからチームの勝利に貢献したことは、彼らふたりにとってもよかったし、スクワッドマネジメントにとってもとてもよい展開だったと思う。
これによって彼らのプレイ機会が今後増えるかどうかは約束されないだろうが、少なくとも今回のことで彼ら自身のフラストレイションも多少ごまかされた改善されただろうし、そうなれば当然アルテタも助かる。彼は「スターターズよりもフィニッシャーズのほうが重要」のようなレトリックまでひねり出して、この状況をなんとかしたがっているのは明白。士農工商の農民か?
アーセナルにはスーパーサブのようなタイプの選手が長らくいなかったことからも、今回のふたりの活躍は重要に思える。トロサールはこれまでもスーパーサブ的に短時間で結果を出すみたいな仕事をしてきたが、とくにマルティネリにそうなってほしいと思う。いまのチームのなかで、それがもっとも似合う選手かもしれない。
ネリには今回も見せたような爆発的なペイスがある。あれはとくに相手が疲労している終盤こそ効果的。それを証明したゴールとアシストでもあっただろう。
残念ながら、現時点でエゼとネリでは総合的なクオリティ差はかなりあるため、左サイドアタッカーで現状の立場がすぐ逆転するとも思えず。そうなればネリがアーセナルで生きる道はスーパーサブ。この低フォームで苦しむなか、そこから再生への道を模索するのが彼にはいいかもしれない。
European nights are back ❤️ pic.twitter.com/vaMLGAaZKC
— Arsenal (@Arsenal) September 16, 2025
それにしても、このふたりに対するチームの愛情というか同情というか、グッとくるものがあったな。みんな彼らの苦しみに共感している。togetherness.