こんにちは。元気ですか。
さて、25/26シーズンも序盤を終わり、アーセナルはPLで7試合、カップ戦を含めたすべてのコンペティションで10試合を消化。ここまで、まずまずの結果を残していると云えよう。
そんななかで、EPL公式サイトがアーセナルの守備についての特集記事を公開していた。
Can Arsenal’s defence win them the title and break Chelsea’s record?
書き手は、おなじみのエイドリアン・クラーク。彼はAFCでの仕事もよく知られているが、最近はアーセナル試合の戦術解説をする自身のYTチャンネルも始めて、これがけっこう評判がよいようだ。
今回はこの記事を紹介しよう。
「ガナーズのディフェンスはチェルシーの記録を破り、PLタイトルを勝ち取れるのか?」by Adrian Clarke
記事を要約しよう。
23/24から始まったアーセナルの際立つ守備記録
- 現在アーセナルは、ヨーロピアンフットボールでもベストディフェンスのチームとして知られる
- 今シーズンここまでのすべてのコンペティション10試合で、失点がわずか3。オープンプレイからの失点はたったの1である
- シーズン初戦のマンU(アウェイ)での不安定なパフォーマンスから、かなり引き締めてきている
- 彼らの守備が極めて強固であることは、リヴァプールとニューカッスルのアウェイ試合でも証明されたし、PLでは初戦のマンU以降の直近6試合でxGを1.0以上喫した試合がない
- この期間の対戦相手を考えても、アーセナルの冷静さとオフザボールのレジリエンスは際立っていた
- またホームでのリーズ、フォレスト、ウェストハムのクリンシート勝利では、相手のSoTは3試合を合わせてもたったの2しかなかった
25/26 アーセナルのここまでの対戦相手 xGA Man Utd (A) 1.52 Leeds (H) 0.17 Liverpool (A) 0.52 Nottingham Forest (H) 0.20 Man City (H) 0.87 Newcastle (A) 0.61 West Ham (H) 0.49
- アーセナルは、試合がエスカレイトしていくことを防ぐことも非常にうまい
- つねにチームの感情はコントロールされ、もしなにか問題が起きたとしても、多くの失点をしない。2023年12月のルートン・タウン(4-3でアーセナルの勝利)以来、彼らが3ゴール以上を失った試合はない
- 今シーズン、リヴァプールとマンシティがすでに何度か試合で2失点しているのに対し(※LIVは4回、MCIは2回)、アーセナルはまだ2ゴール奪われた試合はない
- この堅牢なアーセナルの守備パターンは、23/24シーズンから始まっている
- この期間、アーセナルはおもなライバルチームよりもはるかに多くのクリンシーツを積み重ね、対戦相手のゴールを最大でも2ゴールに抑えることがはるかに多かった
失点(23/24~) Arsenal Liverpool Man City 0 35 26 29 1 31 31 32 2 16 18 18 3 1 8 1 4 0 0 2 5 0 0 1 アーセナルの優秀なディフェンダーたち
- ゴールキーパーのダヴィド・ラヤは大いに称賛されるべき
- 彼は多忙なGKというわけではないものの、彼のセイヴ%(88.33)は現時点でリーグベスト
- フルバックのジュリアン・ティンバーとリカルド・カラフィオーリもやばいフォーム
- ライトバックのティンバーは、相手ウィンガーを支配している。今シーズンここまでの25タックルはディフェンダーのなかでベスト2位の記録
- レフトバックのカラフィオーリも、絶好調をたもっている。ここまで、Jarrod Bowen、Mohamed Salah、Phil Fodenのような危険な選手を無力化してきた
- ワールドクラスの守備力を誇るふたりのフルバックを使っていることは、アーセナルの強さにおけるカギのひとつであり、チームにポジティヴインパクトをもたらしている
- ウィリアム・サリバとガブリエル・マガリャエスのパートナーシップも、もうひとつの要素。もっともこのふたりは今シーズンのPLでは65%しか時間を共有していないが
- 2025年にサリバとガブリエルがともにプレイした試合では、オープンプレイからの失点が5しかない
- 驚異的なのは、サリバとガブリエルがともにプレイしたアウェイ試合で、最後にオープンプレイから失点したのは、元日のブレントフォード戦でのBryan Mbeumoによるゴールのみ
- サリバとガブリエルの2025年の守備記録を、昨シーズンのタイトル勝者であるリヴァプールのVirgil van Dijk、Ibrahima Konateとくらべれば、フィットしているときの彼らがいかに優れているかがわかる
Gabriel & Saliba Konate & Van Dijk 試合数(2025) 16 25 オープンプレイからの失点 5 17 オープンプレイから失点の試合頻度 3.20 1.47 アーセナルからゴールするのはなぜ難しい?
- アーセナルは守備エリアにおいては、ほとんどミスをしない
- 今シーズン、アーセナルはハイターンオーヴァからの被ショットがわずか1。これはPL平均が6のなかでリーグ最少
- それに加えて、彼らの守備の集中力がとぎれるときがほとんどない
失点につながるエラー(24/25~) Total Arsenal 1 Nottingham Forest 5 Bournemouth 6 Liverpool 9 Newcastle 9 Wolves 9 Brentford 9 Crystal Palace 9
- 昨シーズンのスタートから、チェルシーとマンUは失点につながるエラーがそれぞれ16。マンシティは11ある
- 上の表が示すように、この期間におけるアーセナルのそれはたった1だった
- アルテタは、チームに集団としてのハードワークを強く求めており、そのスタンダードも極めて高く設定されている
- 彼らはよくプレスし、デュエルはアグレッシヴ。全員でバック4とGKを熱心に守っている
- 「PPDAメトリック(passes per defencive action)」とは、プレッシング行動を起こすまでの相手チームのパスの数。対戦相手としていかに難しいチームかを示す正確な測定ができる
- そしてアーセナルはその物差しのいちばん上のほうにいる
PPDA(25/26) Total Bournemouth 9.7 Arsenal 9.9 Brighton 10.0 Spurs 10.6 Liverpool 10.8
- アーセナルのペナルティエリアに侵入してチャンスをつくり出すことは、対戦相手にとって非常に困難な仕事になっている
- アーセナルは、自分たちのボックス内での対戦相手のタッチをかなり限定している
対戦相手のボックス内タッチ(25/26) Total Arsenal 104 Chelsea 140 Newcastle 149 Leeds 149 Man City (6th) 154 Liverpool (10th) 162
- 6ヤードボックスとペナルティエリアのあいだの空間は、ゴールを決めるのに最適な場所であり、アーセナルはそのエリアを完璧に守っている
- 下のグラフィックが示すように、ワイドからそれなりのパスやクロスがそこに到達しても、彼らはそこで高いxGのチャンスをほとんどつくらせていない(比較的チャンスになっているのは右コーナーとロングパスから)
アーセナルが相手につくられたチャンスクリエイション
- ここでわかるのは、アーセナルが受けたショッツと、リヴァプールやマンシティが受けたショッツのはっきりとした違い
- 図の下部に示しているように暗い色味のほうが高いxGヴァリューとなっているが、とくにリヴァプールはこの6ヤードエリアとペナルティエリアのあいだで守備を強いられている
リヴァプールが相手につくられたチャンスクリエイション
マンシティが相手につくられたチャンスクリエイション
- またリヴァプールもマンシティも、ピッチの最後の15ヤーズのエリアから、アーセナルよりも多くのパスを許している
- そこにパスを通そうとするチームに対し、アーセナルは強い。だから、ここまでヘッダーでの被ショッツが10でリーグ最少でもある
ディフェンスがタイトルを勝ち取らせる?
- アーセナルの試合ごとの平均失点0.428は、チェルシーの守備記録に挑戦できることを示している。04/05、彼らはわずか15失点でシーズンを終えた
- このままいくと、アーセナルは16失点。だが、それが達成可能な偉業であるかどうかはまだわからない
- ジョゼ・モウリーニョの20年前の際立った守備記録は、間違いなくマイルストーン
- 直近8シーズンのタイトル勝者のうち5チームが最少失点ではあった。しかしながら、この2シーズンでは2位フィニッシュしたアーセナルが最少失点チームだった
- 今シーズン、アーセナルがここ数年のチャンピオンの守備の平均スコアを上回る余地は十分にある
- アーセナルの被xG(xGA)も、タイトル獲得に求められる水準をはるかに上回っている
90分ごとの平均失点(合計) 90分ごとの平均xGA(合計) 直近8シーズンのチャンピオン 0.819 (Total – 31.12) 0.826 (Total -31.39) 現在のアーセナル 0.429 (Total – 16.00) 0.627 (Total – 23.83) 結論:守備だけではタイトルは取れない
- しかし近年の歴史が示唆しているとおり、チャンピオンになるにはトップスコアラーとしてシーズンを終える必要がある
- 直近8シーズンの勝者のうち7チームは、もっとも生産的なゴールスコアラーでもあった
- したがって、3年つづいた2位フィニッシュを終わらせるためも、アーセナルはピッチの両エンドでのベストを目指さなければならない
以上
守備が硬いだけではタイトルは取れないという結論。うむ、それがわれわれアーセナルファンが実感している悲しい現実でありますね。
いくら守備によってクリンシートを稼いだところで、ゴールを決めなきゃ0-0ドロウ。3ポインツは取れないんだから。
では、25/26のアーセナルの攻撃はどうなの?
この記事のテーマは守備なので、攻撃に関する分析はない。では攻撃はどうなのか。
しかし、もうご存知のように、アーセナルの攻撃もここまでは云うほど悪くないのだよね。プラグマティックやらハンドブレーキやら散々云われながら。
まず、ゴール14はリーグ2位(1位はシティの15)。
xGが11.9、npxGが10.3でともにリーグ4位(FBRef)。understatだとxGが3位となっている。
ボックス内タッチが最多なんていうデータもある。保守的で消極的なアプローチなのに。これいかに。めっちゃ攻撃してる。
🔴⚪️ Arsenal in the 2025/26 Premier League
◉ Most touches in box
◉ Least goals conceded
◉ Least shots on target against
◎ Second most goals & xG
◎ Second highest pressing (PPDA)📊 vs Top 7 League Teams
— 97th percentile for defending
— 89th percentile for goals
— 82nd… pic.twitter.com/KwOzUloyzp— DataMB (@DataMB_) October 7, 2025
もちろん、最高ではない。だが、云うほど悪くはない。ヨクレスのゴール3だって、リーグのほかの新ストライカーと比較してかなり劣っているわけでもない。
それにここで思い出すべきは、アーセナルのここまでのタフすぎたリーグフィクスチャ。もしあれがもっとイージーな7試合だったら、もっといい数字が出ていた可能性はある。
だから、何度も繰り返すように、やはりIBあけのミッドテーブルとの連戦が、アーセナルの攻撃を評価するいいテストになる。そこでのアウトプットが問われる。ゴールを決めるべき試合で決め、勝つべき試合で勝つ。いくらトップチームには強くても、それができないから2位にしかなれなかった。
おわる