こんにちは。
ここ数日は、グラニト・ジャカのASローマ移籍が日に日に近づいているようで、報道もだいぶアツくなっている。個人条件ではすでに合意しているといわれるなか、ローマの事情通というアカウントも「アーセナルとクラブ間の合意にかなり近づいている。週末までには決まる」と、この取り引きの成立を支持。
#Xhaka steps away from #Roma, total agreement with Arsenal is very close. The objective is to close before weekend.@ASRomaPress pic.twitter.com/WVDzW8snTl
— John Solano (@Solano_56) June 8, 2021
そして、一方アーセナルでは、ウォルヴズのルーベン・ネヴェスの獲得の噂が盛り上がっていて、これはジャカのリプレイスメントであるというもっぱらの評判。
この噂が出てきた数日前は、エイジェント主導に過ぎないという意見もちらほら見かけたが(※彼のエイジェントはジョルジュ・メンデス)、ネヴェスはれっきとしたアーセナルのターゲットであるという見方が優勢になってきているようにも感じる。Tier1のワッツもそのひとり。
Xhaka edging closer to Roma, all parties wanting to get the deal done quickly now.
Neves on Arsenal’s list of replacements 👇https://t.co/A1Wavwa90i
— Charles Watts (@charles_watts) June 8, 2021
ジャカの退団が不可避だとすると、この夏のアーセナルは、ジャカ、(オーデガード)、セバーヨス、トレイラ、ゲンドゥージといったMFsを大量に放出することになり、ミドフィールドがいっきに大改造を余儀なくされるエリアになる。ウィロックやAMNのような選手もここに入れたら、もはやいまのMFsのなかで残るのはわずかしかいない。
ルーベン・ネヴェスはその大改造の最初のひとりになるのだろうか。
今回は、ジャカからネヴェスへの代替について、少々書いてみたい。
Who is ルーベン・ネヴェス?
PLのファンにはいまさらだろうが、選手の基本情報をおさらいしておこう。以下、TMより。
- 名前: Rúben Diogo da Silva Neves
- 誕生日: Mar 13, 1997
- 年齢: 24
- 身長: 1,80 m
- 国籍: Portugal
- ポジション: midfield – Defensive Midfield
- 足: right
- 残り契約: Jun 30, 2023
ジャカとの比較だと、年齢は5才差(※ジャカは今年29才)で身長は6cm低い。ポジションは同じ(MF/DM)。残り契約2年も同じ。
ジャカとの大きな違いは、ジャカの左足に対して右足ということ。アルテタは左のエリアに左足を置きたがるコーチなので、パーティも右足となるとどうなるのか。なかなか興味深い。
現在のMVは、£40.5M。ジャカのそれは£19.8Mで、現時点ではおよそ2倍の差がある。
実際に取り引きされる金額はわからないが、それがMVに近い金額だとすると、このリプレイスメントにおよそ£20Mを費やすことになる。そのような規模の大金であるならば、当然、年齢差以上のアップグレイドを期待したい。
ディープライイングプレイメイカー
ルーベン・ネヴェスといえば、ジャカとPLのMFを比較しようとしたときには必ず含まれる選手というイメージがある。チェルシーのジョルジーニョなど、深い位置からパスで試合をつくるいわゆるディープライイングプレイメイカー(レジスタ)タイプ。
ぼくはアルテタがジャカをどのような選手で代替するかについて非常に興味深く思っていたが、それがネヴェスだとすると、これまでのジャカへの依存度の高かったプレイから、劇的に何かを変えようとは思っていないのかもしれない。それくらいには、両者は似ているタイプだろう。
ジャカとネヴェスのスタッツ比較
ふたりの実際のアウトプットはどうなのか。スタッツを比較してみたい。
20-21シーズンのダイジェストで非常にわかりやすいのが、Scott Willis氏の以下のグラフィックでの比較。
ところで、このチャートはかなりわかりやすいのでぼくは好きである。比較対象の全体(トップ5リーグス)の平均とその選手が平均よりどれだけ優れているかが直感的にわかる。
Ruben Neves compared to Granit Xhaka pic.twitter.com/y3ihKBruEE
— Scott “says soccer” Willis (@oh_that_crab) June 6, 2021
赤丸がネヴェスで、ネイヴィーがジャカ。やはり全体的にはわりと似通ったところにいる。
ジャカのスタッツで著しいのは、プログレッシヴパス(前方へのパス)などパスが非常に優秀である反面、プレッシャーが非常に悪いということ。平均より大きく下回っているのはプレッシャーとプレッシャーリゲイン(ボール奪取)で、全体でもだいぶ下位にいる。このあたりはアーセナルのプレイスタイルもあるかもしれない。
一方でネヴェスは、さすがにパスのスタッツではジャカに見劣りするが、それ以外はおおむね同等か上回る。とくにプレッシャーではジャカとの差が大きい。タックルもネヴェスのほうが優秀だ。
より詳しく観ていこう。以下のリンクは、おなじみのFBref.comより。直近2年(19-20/20-21)のPLのスタッツを比較したもの。
Player Comparison: Granit Xhaka vs. Rúben Neves
細かい数字はリンク先を観ていただくとして、ポインツだけまとめよう。ジャカ v ネヴェス。
ネヴェスの特徴1:ジャカなみの鉄人
ジャカといえば、アーセナルではもっぱら怪我をしない選手という印象が強いが、この2シーズンのネヴェスはそのジャカよりもプレイタイムが多い。
プレイタイムは2シーズンで、ジャカが5,108分、ネヴェスが5,731分。
TMのインジャリヒストリによれば、ネヴェスは19-20はケガがゼロで、20-21はCovid感染で10日離脱のみ(ミスは1試合)。※ジャカはケガで5試合ミス。
ジャカのリプレイスメントとしては、理想的なフィットネスの持ち主であると云えそうである。
ネヴェスの特徴2:めっさシュート(ロングレンジ)を打つ
この2シーズンで、ゴールズはジャカが2、ネヴェスが7。ちなみに20-21シーズンはネヴェスのゴールズは5でチームトップタイ。
それはよしとして。
問題はショッツ。ジャカの32に対して、ネヴェスのショッツは驚きの126。P90では1.98でおよそ試合ごとに2本。ジャカは0.56で2試合に1本。SoT%ではジャカのほうが優れているので効率はいいが、とにかく自分でゴールを奪おうという意欲が旺盛である。
現在のアーセナルのMFからの得点貢献の少なさは深刻で、ネヴェスはそこを大きく改善する可能性がある。
Ruben Neves at Wolves
Shots (excluding penalties) inside the box 13
Shots from outside the box 184
— Orbinho (@Orbinho) June 6, 2021
ネヴェスはウォルヴズで、ボックス内からのショッツ13。ボックス外からのショッツ184。
Mr.ロングレンジシューター。
ネヴェスの特徴3:ジャカと比較できるパッサーでポゼッションに貢献。ロングレンジパスに特長あり
パス成功数は、3,601 v 3,220。
P90でのパスは、アテンプトが71.3 v 61.4、成功率が88.9% v 82.3%。
パスマスターのジャカと比べれば、パスで彼より優れた選手などこの世界にそう何人もいないのだから、そこは多少劣っても問題ではない。
ネヴェスのパスで特徴的なのは、ロングレンジのパスの割合が多いこと。
%ではジャカがパス全体の16%がロングレンジなのに対し、ネヴェスはなんと25%がロングレンジパス。
ロングパスの成功率は、81.4% v 72.5%となっている。もちろんウォルヴズというチーム事情もあるだろうが、1/4とはかなり多い。
アルテタはジャカやルイスの正確なロングパスを重宝していたのは間違いなく、彼にとって大いに魅力になっているかもしれない。
ポゼッションのスタッツでは、P90のタッチ数が、80.0 v 72.4。
全体的にジャカのほうが優れているが、これもアーセナルとウォルヴズというチームの違いを考慮すれば、そこまで大きな差はなさげ。
ポゼッションではボールキャリーズ(自分でボールを運んだ回数)が気になるところだが、P90で57.2 v 46.4。ここでジャカよりいい数字だとかなり推せるのだが。。
ネヴェスの特徴4:タックルとプレッシャーはジャカより優秀
上記のダイジェストのとおり。
P90で、タックル数が1.83 v 2.42。タックル勝率が61% v 70%。プレッシャーは13.7 v 20.0。プレッシャー成功率は同等で28.5% v 28.7%。
そのほか、ブロックやインターセプションなど、ディフェンスのスタッツはほぼネヴェスがジャカを上回っている。
プレッシングやタックルなどのアグレッシヴ守備は、アーセナルの泣き所なのだから、ここは非常に重要な能力になる。
ジャカとネヴェスのスタッツ比較まとめ
以上を雑にまとめると、
- ケガ等でなかなか離脱せずプレイタイムが維持できて
- MFからのゴール脅威が増えて
- パスでもジャカと同等かそれに少し劣る程度のクオリティが維持できて
- 守備ではさらに安定する
という感じ。
スタッツからだけ見ても、いちおうアップグレイドになると見てもよさげである。それが£20M分あるかどうかはわからないが……
「ジャカからネヴェス」とアーセナルのミドフィールドの今後
ぼくはルーベン・ネヴェスのことは、ずっといい選手だと思っていたので、基本的にこの動きは悪くないと思っている。
ただ、いくつか気になることがあって、諸手を挙げて歓迎したい気分というわけでもない。
そのひとつは移籍金で、ウォルヴズの要求といういわれる£35-40Mというのはやはり高く感じる。平時ならまだしも。このご時世で相手の要求をそっくり受け入れるというのはなんとも。自分たちはいつも妥協させられているような感覚なので、よけいにそう感じる。もっと安く決着するなら、とてもいいと思う。
それともうひとつは、ジャカのリプレイスがネヴェスのような似たタイプの選手だということ。
ネヴェスは24才とこれからピークがくる年齢であり、ディフェンス面ではジャカからのアップグレイドになりそうなので、彼を選ぶことはもちろんまるで理解できないということはない。
ただ、わざわざジャカとタイプが似ている選手を選ぶとなれば、根本的に20-21のチームプレイ(遅攻)をあまり変えようと思っていないことなのかとも思えて、少しもやっと感じる部分はある。
まあアルテタはシティにいたときも、ジョルジーニョを欲しがったというので、基本的にあのタイプを好んでいるということなのかもしれないが。
今回の件で、いろんなひとのいろんな意見を読んだが、わりと共通していることは、ジャカをネヴェスに取り替えても「アーセナルのミドフィールドにおけるathleticの欠如は解決されない」というもの。
“athletic”というワードは、アーセナル界隈のミドフィールド論議ではよく見かけていて、ポストジャカのMF選びのキーワードっぽいところがある。athleticの意味は、ここでの文脈的には「アクティヴな動き」や「スピード」や「力強さ」といったもののことを指していると思う。
ジャカにはパワーも強さもあったが、動きの少なさやスピードの遅さは顕著で、とくにPLのようなリーグでは致命的なほどだった。
なので、これまでのチームプレイからの進歩を考慮してジャカを代替しようと思えば、当然そういったathleticな選手が納得できる選択だと思われているわけで、仮にネヴェスでもよかったとしても、彼に虎の子の予算をぶっこむみたいなことは、ちょっとどうかと思わないでもない。
もっとも、これだけの人数のMFsがアーセナルからいなくなれば、ネヴェスひとりの補強で済むはずもなく、もうひとりathleticなCMを取ってくれれば、まったくもってネヴェスは納得の補強になると思う。さらに割安になれば云うことはない。去年ウォルヴズはAMNを欲しがっていたということで、彼を取り引きに加えるという憶測もあるが……
アーセナルがこの夏にどんなMFを取るかは、今後どういうフォーメイションでどういうチームプレイをしていくかにも当然大きく関わるはずで、最初のひとりがルーベン・ネヴェスとなると、つぎの一手がますます興味深くなった。
おわり
PS
アーセナルのMF選びではこのブログエントリがとてもよかった。
SCOUTING BLOG: SUGGESTIONS FOR THE MYSTERY MIDFIELDER (LONG READ)
パーティのパートナー、プレイメイカータイプ、ハイブリッドタイプ、No.8……とタイプ別に候補の選手をリストアップしている。
ぼくは名前を聞いたことがないような選手も多くいたので、参考になった。
ああ…恋しいよサンティ…
おれたちのエドゥが名もないブラジリアンCMをしれっと連れてくるにちがいないです。
ガビのような真面目なヤング。
更新ありがとうございます!あつも楽しみにしてます!
最近思うこと…
記事とは関係なくて申し訳ないんですけど
ヴェンゲルの復帰です。
今フランスが軒並み強いのもありますけど
フランス色がなくなってきてしまってブラジリアン?アフリカン?なアーセナルがオールドファンとしてはさびしいとこ
ヴェンゲルさんがいるうちにアーセナルに戻して、アーセナルイズムとは何なのかを
ファンも組織の幹部も見直してもいいのかなと思います。
最近はブレブレすぎて資金はあるけどクラブとしての在り方が謎すぎます
フランス代表にアーセナルの選手が誰もいないのはつらい…
お疲れ様です。
AMNは戻れへんのかな?
スピードもテクニックもスタミナもあるし、攻も守もできる。使い続けたら、結構いける気がするけどなぁ。スクランブルでRFBも行けるし…
数字には出てないですけど、ジャカはボール貰った後中々前向かないんですよね
次の行動まで基本的に時間がかかりすぎている
早いのは決めうちのバックパスくらい
ルベンネベスがその辺の判断の速い選手
積極的に前向ける選手だと補強と言えるんじゃ無いでしょうか
ネヴェスはイングランド来る前、有望株と噂されてたころから割と注目してた選手で、アーセナルに来てくれたら凄い嬉しいですね。
ジャカと比較するとジャカよりボールハンドリングはよくてプレシャー下でもボールを捌けるでしょうし、守備も年々よくなってフィジカルコンタクトも頑張る印象です。
単純なアップグレードになるでしょうが、ただ今の左可変?だとネヴェスそこまで左を遜色なく使う選手じゃないので、うーん、、
というか中盤どうするのか?
底にパーティ単独なのか、パーティの隣に置くのか。。ネヴェスは隣の方が輝きそう。
前目だとウーデゴールより劣って見えてしまって批判にさらされそう。。
なんだかんだ弄りたがりのアルテタを満足させる補強って難しそうですよね。
ファン目線でもアルテタ次第だよなーで全て(笑)
ウルブズはプレースタイルも違うので一概に比較はできないけど、ジャカよりもプレースピードの速い選手という感じはする。そのへんはkroenkeoutさんと同感。
僕は「ハイプレスを破るために」という文脈でジャカのプレーをずっと見てるんだけども、正直あまり効果的だとは思えない。(僕個人はジャカのファン)
ハイプレスは人数を捻出するために必ずどこかを1人で2人をマークしており、たいていは逆サイドの一番遠いところに弱点がある。そこをダイレクトに突くパスを出すには、ジャカはプレス耐性がなさすぎる。
現状アーセナルはGKやCBからのロングパスがそこまで良いチームではなく、ハイプレスを破るためのロングパスはそもそも不足してる。それが、速攻のスイッチが入らない一つの理由だと思う。
なので、(ジャカのファンではあるが)レジスタの更新という考え方は分かる気がする。
僕はジャカのアーセナルでの活路はむしろ前に出てグラウンダーを活かす(IH的な)仕事をすることにあると思ってるが、そこはそれこそ近年ではathleticになってるポジションでもある。
オフサイドのルールが変わればレジスタの存在感が見直される時代が来るかもしれないが、だからといってPLのプレー強度が急に下がるとも思えない。