ウェンブリーで行われた16/17シーズンFAカップファイナルは、大方の予想に反してアーセナルが勝利。不甲斐ないシーズンを送った今季アーセナルのイメージを払拭するかのような積極的なプレイで見事優勝を飾った。まじありがとう。今季はいろいろあったけど勝てばやっぱりうれしいとしかいいようがない。
アーセナルFCとして13度目の優勝、ヴェンゲル監督はひとりの監督として7度目の優勝ということでどちらも史上最多らしい。この4年で3度目の優勝。どれだけFAカップに強いんだ。
この試合なによりうれしかったのは、選手たちが最初から最後まで自信満々にプレイしたということ。どういうメンタルで試合に望んだのかと考えるに、もはや失うものがなく「捨て身」に近い精神状態だったのかもしれないのだけれど、攻めてはチャンスを次々につくり、守ってはゴール前のスペースをガッチリ埋めてと、どんな局面でもリーグチャンピオンのチェルシーを上回るプレイぶりはまるで催眠術にでもかかっていたかのようだった。
彼らのあんなに生き生きとしたプレイは久しく観ていなかった気がする。うとうとして寝過ごしそうになりながらもちゃんと生中継を観ることができて本当によかった。こんないい試合を見逃していたらおれは何のために生きているのかわからない。
FAカップ決勝のトーキングポイント
オフサイドの判定は難しい
前半5分にもならない時間帯でのサンチェスによる先制点。ハンドとオフサイドと二重で議論を呼びそうなゴールになってしまったがゴールはゴール。サンチェスはこれでシーズン30得点。アーセナルでの5戦連発も初めてとのこと。これでさよならなんて泣けてくるな。
このゴールまでの一連のプレイでサンチェスの胸トラップはハンドに見えたが、ボールの軌道は変わっていなかったのでたぶん手には当たってなかったのだろう。それはいいとして。
その後のプレイで、明らかなオフサイドポジションにいたラムジーがそのプレイに関与していたかどうかが議論の別れるところで、これもボールがネットを揺らしたあとに主審がラインズマンに駆け寄り意見を求めた結果オフサイドは認められず。
プレミアリーグを観ていると、どうもイングランドではこのようなプレイの場合、オフサイドポジションにいる選手にボールが当たりでもしない限りはオフサイドの反則を取られることはめったにないような気がする。これが日本だったらかなりの確率でこれはオフサイドだったんじゃないだろうか。
まあ逆の立場だったらと思えば青い人たちの怒りも理解できなくもない。彼らにはこういって慰めたいね。
ざまあwwwwwww(あえて2ちゃんねる風)。
レフェリングにおけるVAR等の技術的な進歩はあるにせよ、この「オフサイドポジションにいた選手のプレイへの関与」はロボットレフェリーにでもならない限りは今後もヒトの判断に委ねられるはずだ。いくら技術が進歩してもやはりレフェリーというひとりの人間が重要な審判を下すというファジーな部分があるということは、それもスポーツの魅力といえるんだろうか。「レフェリングも試合の一部」論にはおれ懐疑的なんだ。
エジルとウェルベックはシュートがなぜか決まらない
エジルもウェルベックもチャンスを決められない。
ウェルベックを観ていると「持ってないなあ」と思う。ジルーは「持ってる」と思える瞬間が最近は結構ある。いい選手なんだがCFとしては決定力が決定的に足らない。いつも惜しいのだ。この試合でも何度かチャンスを逃してしまった。サイドでドリブルで仕掛けたりというプレイを観ると、ジルーよりもウェルベックを選ぶ意味がわかろうというものだが、CFに必要なのは得点力だ。そこが改善されなければいつまでたってもアーセナルのエースにはなれないだろう。
エジルも同様にビッグチャンスを2度ほど決めきれなかった。ニコニコ動画のハイライトで「エジルとポグバは得点力さえあれば神」みたいなコメントが流れていたのに妙に納得してしまった。パスはあんなにうまいのになぜかゴールは決まらない。シュートはゴールへのパスなんだということを誰か彼に伝えてほしい。それがダメなら催眠術だ。
メルテザッカーに謝ろうぜ
ていうかぼくは謝りたい。ごめんよBFG。まさかあんたがこの試合でここまで活躍するとはみじんも思っていなかった。もしかしたらMOM級だったかもしれないとすら思う。前日練習風景にはドビュッシーの姿もあったので、メルティよりドビュッシーを使えばいいのにとまじめに思っていたほどである。
※写真はArsenal公式より
メルテザッカーは392日ぶりのスターティングということで、このビッグマッチにほとんどぶっつけで対応できたのは驚異的ですらある。
この活躍には敵将もシャッポを脱いだ。
「わたしにとってのペア・メルテザッカーは若いプロ選手の完璧な見本だね」
「今日彼が見せたものは、信じられないような日々の取り組みのたまものだ。エヴァートン戦まではベンチにすらいなかったのだから」
「今夜彼は今季初めてスタメン出場した。選ばれないときですら来るべき瞬間に向けてずっとハードワークしていたんだ。今夜の彼を賞賛するよ」
泣ける話しじゃないか。
チームのキャプテンとしてチーム内での存在自体が重要だという人もいるが、ぼくはやはりレギュラーかつ中心選手がキャプテンであるべきだと思っている。来季以降メルティはどうなるんだろうと思っていたが、この調子だと引き続きチームを引っ張っていくのかもしれない。
コシエルニも慢性的な怪我を抱えながらのプレイであるとの告白もあったし、もちろん32才のメルティも通念を通して活躍を期待してはいけない選手だ。ホールディングやガブが光った3バックシステムはこのまま継続されそうな勢いなだけに、来季のCB陣がどうなるのか注目である。
右ウイングバックを担うベレリン輝きすぎ。チェンボもがんばれ
今シーズンを振り返ればベレリンにとってはあまりいいシーズンではなかっただろう。とくにディフェンスの競り合いではフィジカルの弱さが露呈し、自信を失ったせいもあるのかたびたび判断を誤るという場面も見られ、それまでの評価を一段階落とすかに思われた。
しかし、最終盤にヴェンゲルが驚きの3バックを採用してからはチェンボと右のウイングバックを競い、チェンボが離脱した数試合ではベレリンのウイングバック適性を改めて感じたものだ。
とくにウイングバックというポジションで遺憾なく発揮されたのが彼のスタミナだ。この試合でも終了間際の時間帯になっても自陣からのスプリントを幾度も繰り返し、カウンターの起点になっていた。これまでにも見られたプレイであるが、ライトバックよりも守備負担が軽いウイングバックならではの思い切ったプレイだといえるだろう。
ベレリンのライトバックでビッグマッチに挑むには不安が残るが、ウイングバックなら彼の攻撃センスもこれまで以上に発揮できる。適役である。
16/17シーズンが終了。ヴェンゲル監督とアーセナルのこれから
FAカップを獲ってご満悦のヴェンゲル監督は去就を問われ「木曜日(6/1)にははっきりする」と発言。アーセナルにとってすべての日程が終了しシーズンが終了したいま、さすがにこれ以上のはぐらかしはないだろう。
現時点でヴェンゲルが本当に退任するとは誰も思っていまい。 FAカップも獲ったし、3バックシステムを採用してからのアーセナルはかなり強かった。UCLを逃したとはいえ、終わってみれば#WENGER OUTがかすむ程度には上り調子で終わったシーズンだっただろう。ボードメンバーはヴェンゲル続投を希望しているということだし、本人ももちろん乗り気。契約更新に向けての障害はない(なぜここまで結論を伸ばしたかの理由が気になるが)。
ヴェンゲル問題が片付けばアーセナルFCとして直面している大きな課題はもちろん所属選手たちの契約更新だ。残り契約が1年未満の主要選手は、チェズニー、カソルラ、チェフ、メルテザッカー、エジル、ギブス、ウィルシャー、ジェンキンソン、チェンバレンそしてもちろんサンチェス。
エジルとサンチェスの契約更新は、ほかの選手たちに与える影響も大きいだろう。個人的にはサンチェスは契約を更新するとは思っていないが、エジルは更新するんじゃないだろうか。
サンチェスは契約更新なしで残り1年使う。エジルも残る。ならチェンボも残る。そんな感じならまあ悪くなさそうにも思える。
これは来季こそはプレミアシップを獲るな。アッハッハ。