今シーズン、アーセナルからのローンで、リーグアンのStad Reimsでプレイしているフォラリン・バロガン(21)。
最近は、ほとんど毎週のように彼の活躍がメディアで伝えられているのはご存知のとおりで、先日はFC Lorient(H)でのハットトリックでゴールを14として、ついにリーグアンの単独リーディングスコアラーになってしまった。ラカゼットも活躍中でなにより。。
フランスリーグにいるスター選手たち、エンバッペ、ネイマール、メッシらよりもゴールが多いとあって、見出しのインパクトは強烈。そんなわけで、いまフロ・バロガンは、外国でブレイクしたフットボーラーのひとりとして英国でも注目が集まっているところ。
ローンが大成功しているこの状況は、アーセナルのファンや関係者の誰にとってももちろん喜ばしい。だがいっぽうで、来シーズンの彼をどのように扱うべきかがクラブにとってはますます悩ましくなってきた。
と、昨日の『BBC Sport』が伝えていた。
バロガンは「うれしい頭痛」。フランスで大活躍のバロガンがアーセナルを悩ます
『エンバッペ、メッシ、ネイマールをぶっちぎるアーセナルのバロガン』。2月7日づけの記事。
‘Arsenal’s headache’ – the youngster outscoring Mbappe
冒頭部分とマネジャーのコメントを訳そう。
あなたは、キリエンバッペ、リオネル・メッシ、ネイマールをフランスでぶっちぎる英国人ヤングスターのことを聞いたことがあるだろうか? それがアーセナルには「うれしい頭痛」になりそう?
ランスがストライカーをアーセナルからローンで獲得したとき、彼は昨シーズンにミドルスブラで3点取っただけの選手だった。わずかな見出しになっただけ。だが、いまや多くの目がフォラリン・バロガンに注がれている。
いま、イングランドU-21のFWが、フランスのリーグ1において14ゴールでトップスコアラーになっている。ランスはミッドテーブルチームであり、同郷の英国人Will Stillに率いられている。彼はまだ30才で、プロとしてフットボールをプレイした経験もない。
バロガンはこの10日のあいだに、PSGでの追加タイムでのイコライザーや、ロリアンでのハットトリックもあった。
「ゴールも素晴らしい。だがほかのすべてもだ」フランスのフットボールライターJulien Laurensが語る。「ストライカーを観るとき、ふつうはゴールを観るもの。しかし、動き、アウェアネス、知性、そのすべてが重要であり、彼にはそのすべてがある」
マネジャーのStill「彼はスーパーに完成されたストライカー」。「彼はゴールを背にしてプレイできるし、深く落ちてもプレイできる。彼が得点する。彼は決定的な仕事をする」
この記事で触れられている彼の記録。
- ヨーロッパのトップ5リーグで、彼よりゴールが多いのは、Erling Haaland、Harry Kane、Victor Osimhenだけ
- ランスはバロガンが来てからマネジャーを交代している。Oscar Garciaのもとで1勝のみ。10月13日にWill Stillが来て以来敗けなし
- バロガンはGarciaの下、最初の6試合でもG5
- バロガンのゴールはランスのすべてのゴールの54%(14/26)。ヨーロッパのトップ5リーグで最高率。チーム2位はJunya Itoの4
- リーグアンでバロガンより多くゴールした英国人はGlenn Hoddle(88/89モナコ)だけ。その記録を破る5ゴールまでバロガンにはまだ16試合ある
来シーズン、アーセナルはバロガンをどうする?
アーセナルファンの一部には、フランスでのローン大成功を「サリバ2.0」と評する声もあるバロガン。フレンチクラブは選手を成長させるいいクラブ。
だが、この予想外の状況は、アーセナルの来シーズンを考えると非常に悩ましくもある。
彼がこれだけトップレヴェルで活躍すると、当然ほかのクラブからも関心を持たれるのは必至であり、なんとか彼を守らねばならないが、いまのチームに3人めのストライカーとして彼が絶対に必要かどうかは議論が分かれるところ。
来年のアーセナルにはCLがありそうだとはいえ、いまのストライカーたちをキープするなら、少なくともいまより彼のプレイタイムは減る。現在のフォームは維持できない。
おそらくクラブの理想はもう一年ローンで、彼にさらなる経験を積ませること。また、彼のためにチームに席が空くかどうか時間稼ぎもしたい。
ただし、アーセナルとの契約は2025年までなので、来年も1年ローンなら戻ったときには残り契約1年。悠長なことは云ってられない。
タイミング的に、このBBC Sportの記事にインスパイヤされたっぽい『The Sun』が、いまフランスでブレイクしているバロガンを、アーセナルが夏に売却する可能性について書いていた。状況からすると、それも絶対ないとは云えない。
Arsenal could cash in on Balogun in summer as they are faced with dilemma
来年のもっともありえそうなシナリオとして、彼を半年キープしてPLとCLでプレイする準備ができているかテスト、場合によっては後半はローンと。
それもありだとは思う。彼が契約を延長するなら。
ファーストチームの都合。3人めのストライカーは必要か?
これまで観られてきたように、アルテタはただでさえチームを固定する傾向があるため、バックアップ選手のチャンスは限られる。
幸いにもエンケティアがいまレギュラーでプレイタイムを得ているのは、ジェズースがケガをして不在のおかげであり、仮に彼がいまもフィットしていたら、エンケティアの機会はいまほどたくさんはなかっただろう。
そんななかで、3人めのストライカー。どうだろう。選手のハッピーな姿は想像できない。
ジェズースをウィンガーとしてもカウントするやりかたもなくはないが(それをやると今度はネルソンの居場所がなくなりそう)。
バロガンのファーストチーム入りを考えるとき、より大きな問題は、ジェズースというよりはエンケティアだろう。
オールラウンダーのジェズースはCFオプションとしても絶対に外せない。そうなるとエンケティアとバロガンのどちらを優先するかというのが、チームにとっての課題になるはず。
うえのスタッツ比較を観てもわかるように、ジェズースと比較したとき、Shootingが優秀で、ほかはまあまあというふたりのスタッツはわりと似ている。もし、チームにふたりのタイプの違うストライカーがほしいなら、必ずジェズースと、あともうひとりになる。
アルテタのなかでエンケティアの総合的評価はかなり高いはずで(実際ジェズース不在のあいだは彼にだいぶ救われている)、そんな彼に対してアルテタがバロガンをどれだけ評価するかが問われる。
これは、1月27日づけのバロガン分析記事。
Folarin Balogun flourishes in Ligue 1
攻撃・守備・ポゼッションと、全方向にわりとバランスがいい?
誰かが云っていた。いまファインフォームではあるが、彼は、完成されたストライカーというには程遠く、まだいろいろな部分で改善の余地があると。
ぼくはその意見にはわりと賛成で、やはりいまは選手の成長のためには、3人めのストライカーとしてベンチを温めるよりも、プレイタイムを優先したいフェイズと思われる。
本人の意向?
これはわからない。
2021年4月にアーセナルと契約延長してからは、クラブについてポジティヴな発言しかしていないと思う。
フォラリン・バロガンがアーセナルとの新契約にサイン | ARSENAL CHANGE EVERYTHING
だが、彼はこのときもだいぶアーセナルとの契約延長を渋っていたことは記憶に新しい。
当時指摘されていた理由は、彼はとにかくプレイタイムがほしかったこと。アーセナルでそれが叶うかわからなかった。
あとはヨーロッパの多くのクラブから引き合いがあったこともあるだろう。まだ未来のスター候補でしかなかったあのときですら、彼には進路オプションが多数あった。
そして、いま。
彼はあのときとは比べ物にならないほどの自信をつけている。これは間違いない。
また、これからアーセナルとの契約が短くなればなるほど、ほかのクラブからの引き合いも増えるだろう。今度は以前と違って、トップリーグで結果を出した若いストライカーであり、なんなら、ビッグクラブがここに入ってくる可能性だってある。
ただ、アーセナルとの関係において2020-21の状況と違うのは、いまアーセナルがトップチームに化けているということ。あのとき、バロガンだってチームがPLのトップを競っているなんて想像もしなかっただろう。文字通り「化けた」ということばがふさわしい。
そうしたことを考えたとき、バロガンが自分の将来をどうイメージするか。
もちろん、彼にはアーセナルとともに歩む未来を考えていてほしいが、彼がべつの道を選んでも、正直あまり驚かないような気もする。
どうかね?
もしそうなれば、アーセナルにはできるだけ高値で彼を売ってもらうよりない。€100mくらいかな?
冗談はさておき、彼の契約が残り2年になるこの夏まで、当然アーセナルは新契約をオファーするだろうが、もし彼がそれを拒むようなら、アーセナルは大きな決断を迫られそうだ。
どうなるか観てみよう。
おわり
<追記>
このエントリを書いてから、ふと思ったのは、この状況は、ウィリアム・サリバのときとちょっと似てるなと。それを書いておきたくなった。
彼はマルセイユで大活躍してアーセナルに戻るかどうか去就が注目されていたところ、そのときアーセナルには同じポジションに£50mで買ったばかりのベンジャミン・ホワイトがいた。
そこでサリバをどうするかは、このブログでも(クラブの無計画?に)批判的なトーンでけっこう書いたんだけど、結局アルテタはベンジャミンのポジションをRBにコンヴァートして、サリバのためにRCBの席を空けたのだよね。おかげでトミヤスはレギュラーポジションを奪われてしまったという。
アレはけっこう意外な動きだった。トミヤスは悪くなかったどころか、RBとしてかなりよかったので、純粋にサリバのためにそうしたのだろう。
そして、いまではRCBのサリバとRBのホワイトはトップチームを支えるレギュラーになっている。アルテタの大胆な変更は、成功したのだ。
この再現が今回もあるかと考える。
エンケティアはたまにWGでプレイしているが、サカやマルティネリよりWGでのプレイ(タッチラインウィンガー)が優れているとは観えないので、やはりカギはジェズースか。
この冬も結局アーセナルはサカのバックアップ(RW)を確保していないので、ジェズースがRWでプレイする未来は観えそうな気がする。
それか、もしこれをアルテタがジェズースにやらせたらウルトラCだろうが、ジャカ役。
今シーズン、ポジションの高いジャカはこれまでより守備負担がだいぶ軽く、あそこにジェズースのようなボールを持って何かを起こせるタイプが入ると、かなりおもしろそうではある。
まあ、それは全体バランスも崩れるだろうし、ないか。妄想。
追記以上
夏に大きな買い物をする予定がある以上、この前のチェルシーの財務の件でも大きかったアカデミー卒選手の売却益は確保したいところ。個人的には3人目にはもう少しタイプの違うキャラクターを求めたく、バログンは高値の内に売り抜けられると良いねって感じです。チームで見てみたいという気持ちも否定できませんけど。
エンケティアとバロガン似てる問題は前々から指摘されていて。でもそれでいてバロガン延長、エンケティア延長があった。アーセナルのプランを見せてもらいましょうや。