昨日、今後PLに導入される半自動オフサイドのことをちょっと書いたら、その後、もっとでかいトピックがやってきた。
EXCLUSIVE: Blue cards to be introduced for football sin-bins, with players removed from field for 10 minutes for cynical fouls or dissent
✍️ @ben_rumsby#TelegraphFootball
— Telegraph Football (@TeleFootball) February 8, 2024
『The Telegraph』の独占スクープで、金曜(※今日)にIFAB(International Football Association Board)から「ブルーカード」の導入について発表があるでしょうということ。
ブルーカードとは初耳だが、これは以前からフットボール世界で「オレンジカード」として知られてきたもの。イエローカードとレッドカードの中間で、短時間フィールドから退場という罰則を宣告する。
もちろんこの新ルールが導入されればかなり大きなルール改定になるはずで、この報道には多くのフットボールファンが反応、関心度は非常に高いことがうかがえる。そして、当初の反応としては、評判は非常に悪いという。
フットボールにおけるブルーカード、それついて少し。
「ブルーカードの試験導入が発表されます」 by The Telegraph
くだんの記事を要約しよう。※ペイウォール
シンビン(sin-bin)トライアルの一環として、フットボールへのブルーカード導入が金曜に公表へ
フットボールのルール策定機関であるIFABが、新カード導入を正式に承認した。
この革命的なルール改定は、IFABにより、シンビンプロトコルの一部としてアナウンスされる。それにより、選手はシニカルファウル(cynical foul)あるいはマッチオフィシャルへの異議を行うと、10分間フィールドから退場になる。
オレンジではなく青色が選ばれたのは、黄色や赤色とはっきり区別するため。
ブルー2枚はレッド
金曜に公表される新プロトコルにおいては、新カードの対象になるファウルは有望な攻撃(promising attack)の阻止とレフリーへの異議と、限定的なものになる。そして2枚のブルー、あるいはイエローとブルーの組み合わせでもレッドカードになる。
プロの試合では、プロトコルをさらに改良する必要があるため、トップレヴェルのコンペティションは最初のテストから除外されるが、エリートのトライアルは、早ければ夏にも開始される可能性がある。
そこにはFAカップと女子FAカップが含まれるかもしれない。FAは来シーズンの試験導入を検討している。
しかし、UEFAはプレジデントが先月「それはもうフットボールではない」と語ったようにまったく逆の姿勢であり、夏のEUROや来シーズンのCLなどではシンビンは導入されないだろう。だが、いずれその導入を強いられることはありうる。
ラグビースタイル
FAのチーフエグゼクティヴも参加するIFABでは、11月に、PLのようなエリートコンペティションにおけるラグビースタイルのテストにまず同意していた。
シンビンはグラスルーツやユースレヴェルでは、何年にもわたり異議への対策としてうまく運用されてきた。
IFABは、べつのラグビーユニオンルールのグローバルトライアルについても承認している。そこでは、チームキャプテンだけが判定についてレフリーとの対話が許可されているというもの。
このトライアルは、IFABの幹部たちが警告するなかで、急いで進められてきた。「これはフットボールを殺すがんになりかねない」
IFABの年次ビジネス会議において、シンビンはその取り締まりのカギになり、レッドカード未満の有望な攻撃を防ぐファウルに適用されることを決定した。
このひとつの例として、EURO2020のファイナルにおける、イタリーDFのGiorgio Chielliniがブカヨ・サカのシャツを引っ張りイエローカードだけで済まされた事例が挙げられた。
以上。
FIFAの反応
まず先にこれを紹介しておかねばならないが、FIFAはこの「ブルーカード報道」については、不正確で時期尚早であると態度を明確にしている。
FIFA wishes to clarify that reports of the so-called ‘blue card’ at elite levels of football are incorrect and premature.
Any such trials, if implemented, should be limited to testing in a responsible manner at lower levels, a position that FIFA intends to reiterate when this…
— FIFA Media (@fifamedia) February 8, 2024
ただし、全面的な否定というよりは、エリートレヴェルではなく、もっと低いレヴェルでのテストを経てからとして、将来的な導入については否定されていない。あくまで、やるとしても「いまじゃない」という。3月のIFABの会議でもそれを主張するそうだ。
ブルーカードの適用対象
これは、The Telegraphの記事を読めばわかるように、当初のトライアルではかなり限定された運用法になるようだ。
すなわち、ブルーカードが適用されるのは以下の2点のみ。
- 有望な攻撃(promising attack)の阻止
- レフリーへの異議申し立て
まず、“promising attack”とはなんぞやだが、これはつまりカウンター状況などの攻撃側に有利になりそうなプレイをイエローカード覚悟で止めるような、いわゆるタクティカルファウルが想定されているようだ。トランジションでの完全に故意の、意図的なファウル。
これは、r/Soccerでもr/Gunnersでもファン反応に散見されたが、タクティカルファウルというと、マンシティのRodriやFernandinhoをその典型例として思い浮かべるひとが多かった。そういった状況で、カード一枚の罰でカウンターのチャンスを阻止できれば、やるほうとしてはコストは安いし、やられるほうは不公平感が募る。たしかに、チートをしたほうが得をしがちというルールの抜け穴みたいではあった。
もうひとつはレフリーへの異議なので、こちらはとくに疑問はない。
こうしてスタートで適用範囲をかなり限定してきたのは、やはりそうしないと、現場で混乱するからだろう。
ブルーカード導入と聞いて、すぐにそんなのあらたな混乱を引き起こすだけと拒否反応を示すひともすくなくなかったが、そういうひとはブルーカードを、単純にイエローとレッドの中間のカードとして利用されることを想像したかもしれない。だが、少なくともテスト期間ではそのようなことはない。これだけ用途が具体的だと、それ専門カードみたいですらある。
将来的なブルーカードの適用範囲がどのようなものになるか、それはそれでとても気になる。
いつどこで開始される?
The Telegraphの記事だと、トップディヴィジョンとかエリートレヴェルだとか、なにやら用語がはっきりしないが、FAカップだけは具体的に名前が挙げられている。
これは、別の記事だったと思うが、FAカップの早いラウンドでテストという説もあるようだ。
つまりイングランドでは、いちばん早いのは、来シーズンのFAカップと女子FAカップ。そこで導入される可能性がある。
とはいえ、繰り返すように、それは本格的な導入ではなくトライアルの一貫なので、あくまで試験的なものになるのだろう。
ブルーカードのファン反応
冒頭のThe Telegraphのtwには、ブルーカードの導入に賛成か反対かアンケートが実施されていて、ためしにYESで投票してみた結果がこれである。
圧倒的不人気。
redditなどの反応を観ても、やや少数派にみえた肯定的なひとも「理論的には賛成。しかし……」という条件付きなひとが少なくなかった。しかしのうしろでは、現実の運用での混乱が心配されている。
わかりやすい反対意見として「どうせRodriにはブルーカードは出ない」というものがある。これはウケる。
現状でも2枚のカードであれだけ紛糾しているなかで、さらに3枚め。彼らにマネジできるのかどうかという不安。
ここには、ブルーカードがどうこうというよりは、レフリーに対する絶望がある。
わたしのブルーカードへの疑問
ブルーカードについて、こうした反応をたまたま見かけた。
エイドリアン・クラーク氏は、Arsenal Mediaのお抱えパンディットであり、毎試合の公式ライヴ番組「The Breakdown」のホスト。マッチデイプログラムの戦術ノートなども書いている人物。
Not a fan of the blue card, sin-bin trial.
Pretty confident it will just add another painful layer of subjectivity we all spend hours arguing about.
10v11 rarely makes for a fun spectacle, so why strive for more of it?
Football is a simple game. Let’s keep it that way 🔵❌
— Adrian Clarke (@adrianjclarke) February 8, 2024
クラーク:わたしはブルーカードもシンビントライアルも好きじゃないね。
われわれが何時間もかけて重ねている議論に、さらなるレイヤーを加えるだけに決まってる。
10 v 11でおもしろい試合になるのは稀なのに、どうしてそれを増やそうとする?
フットボールはシンプルなゲイムだ。それをつづけようよ。
つまりこのひとは、ブルーカード(シンビン)がさらなる退場者を生み出すルールだと考えているわけだ。たしかに初期の限定的試験運用だとそういう側面はあるかもしれない。タクティカルファウルをやっても、嵐のようなブーを受けながらもイエローカードで済んでいたのが、一時的退場になる新ルール。
こういう意見のひとは、彼に限らずそれなりにいそうである。ゲイムをできるだけシンプルにすべきという主張も、多くのひとが同意するだろうし、ぼくもまったく賛成する。
だが、将来的なブルーカードの適用範囲というのは、きっとこれだけじゃないんでしょう? とてもうまくいっているというラグビーのルールをかなり参考にしているらしいから、それに似たものになるのだろうか。
ぼくは、そもそもシンビンとは、さらなる罰を与えようとかさらなる退場者を出そうというコンセプトではなく、むしろ厳しすぎる退場ルール(レッドカード)を緩和しようというコンセプトなんだと思っていた。
たとえば、相手を足裏で蹴ってしまったような状況で、これまで問答無用でストレイトレッドだったものを明白に意図的なものに限定するとか。
いつだったか、エディ・エンケティアが相手DFを蹴ってしまいレッドカードが出たことがあったが、たしかあのとき彼には相手DFが見えていなかった。ああいう意図的でなかったとか偶発的だったとはっきりわかるものは、ブルーカード。とか。誰が観てもレッドカードは行き過ぎた制裁だと思えるようなファウルは、たまにある。
これまでこのブログでもつねづね書いてきたように、現状のレッドカードは、あまりにも罰が重く、ゲイムバランスが極度に悪くなり、ゲイムの本質である競争にまったく与しない。レッドカードというのは、ゲイムのぶっこわし屋である。もちろん対戦相手のチームにそれが出ればマイチームが有利になりうれしいが、そうした利害を越えてゲイムそのものを俯瞰的に見れば、それはできるだけないほうが好ましいに決まっている。
タクティカルファウルをより厳しく取り締まるという方向性が納得できるいっぽうで、レッドカードの罰の厳しさを軽減するという方向性もまたシンビンに期待されているものなんじゃないかと思うのだが、どうなんだろう。ゲイムバランスの調整。品質管理。
このあたりの話は、おそらく今後さまざまなメディアでも解説してくれそうである。もっと詳しいことがわかったらまたブログに書こう。
おわり
エディの例は良く分かります。
そんな風に過去の印象的なレッドorイエローのうち、これはブルーカードがあれば良かったですねという例を挙げてみると導入の際に納得感を醸成しやすそうに思いました。
子どもらのサッカーコーチでレフやってたことある身からするとこんなん対応するの嫌ですけどね笑(10分たった退場者をピッチに戻すの忘れそう。。)