日曜は、オールド・トラフォードでのPLマンU戦。
アーセナルは、ちょうど20年ぶりとなるPLタイトルに向けて戦っているなか、今回絶好調フォームでマンUと対戦するという状況から、Sky Sportsがこんな企画記事をアップしていた。
「VARがあったらインヴィンシブルズは救われたのか?」。
Ref Watch: Manchester Utd vs Arsenal 2004 special – Would VAR have saved The Invincibles?
PL試合の審判を検証する「Ref Watch」の特別編。似たような振り返りはこれまでにもあったと思うが、何度やってもいい。ナイスな企画。
「インヴィンシブルズ」といえば、アンリ、ベルカンプ、ヴィエラにピレス、キャンベル、ユングバーグらを擁した、03/04シーズンに前人未到のPL無敗優勝をなしとげた伝説のチームであり、翌04/05シーズンに、OTでマンUに敗けるまで49試合無敗をつづけたチーム。無敗優勝も49試合無敗もイングランドでは、20年たったいまもやぶられていない記録である。
そして、その記録を中断させた悪名高い試合が、オールド・トラフォードのマンU戦。時代が違うとはいえ、ホームチームのあまりの傍若無人なプレイぶりに、いまだに非常に議論な試合として語られる。
20年前のこの試合。アーセナルファンなら誰もが考えただろう、もし偏りのない正当な判定ならあの試合の結果はどうなっていたか。49の無敗が、50にも51にも100にもなっていたかもしれない。
まさにいまがその20年後。タイトルを争うアーセナルにとっては、超重要となる日曜のマンU戦を前にこちらの記事を紹介しよう。
49試合無敗のインヴィンシブルズを終わらせた2004年のPL試合。マンU vs アーセナルのレフ検証
2004年10月24日マンチェスターU vs アーセナル(2-0)。レフリーは、Mike Riley。現在はPGMOLのジェネラルマネジャー。
この動画も何度も貼ってるなあ。下に各事案の判定検証があるので、先にこの映像を観ておくことを推奨します。
この試合のハイライト映像は、マンU公式もYouTubeにアップしているが、彼らに都合の悪いシーンはかなり省略されている。漫☆画太郎もびっくりの地獄甲子園。なにをやっても許されるルール無用の球場でやりたい放題。2024年の感覚だと、目を疑うようなダーティなプレイがつづく。
フルタイムの様子。アーセナルの面々は、当然猛烈なフラストレイション。MOTMに選出されたファーディナンドにつめよるアンリの姿も。
この試合の両チームのスクワッド。4-4-2同士というのが時代を感じさせる。エドゥもいる。
試合後には、両チームの選手が入り乱れたトンネルのなかでの事案、通称“pizzagate”(セスクが投げたピザがサー・アレックスに命中)も起きた。
以下、記事から引用しよう。コメンテイターは、PLの元レフリーDermot Gallagher。
<事案>前半、Ruud van Nistelrooyがアシュリー・コールに足裏で行った。オランダ人はボールを奪ったわけでもなく、アシスタントレフリーの目の前で行われたチャレンジだった。だが罰せられず
Dermot Gallagherの見立て:レッドカード。マンUは、ここで10人になっているべきだった
彼は、その後にはシリアスなファウルで3試合バンも受けていた。わたしは、これはレッドカードであると思う。
これはナイスなタックルではなかった。しかし、それが見過ごされたのは、アシュリー・コールがMike Rileyから観えない逆のサイドにいたからだろう。コールは彼をブロックしたが、Van Nistelrooyは彼を前から蹴った。これはレッドカードになるべきだった。
<事案>フレデリック・ユングバーグがゴールまできれいに抜けたかと思いきや、Rio Ferdinandと衝突。Rileyはプレイオンを促した
Dermot Gallagherの見立て:いろいろな解釈ができるが……
あれはファウルじゃないのか? そこが問題のカギだ。Mikeは、ショルダーto ショルダーだと思った。彼はFerdinandが身体の強さを使って割り込んだと考えている。
彼らはサイドバイサイドであり、だから彼はファウルにならず、プレイオンになった。もしあれがファウルなら、レッドカードになっている。
<事案>大きな判断。0-0で動かなかった試合が、ソル・キャンベルがボックスのなかでWayne Rooneyにファウルし、ペナルティ。Rileyは躊躇なくスポットを指さし、ユナイテッドにリードするチャンスを与えた
Dermot Gallagherの見立て:ノーペナルティ
レフリーなら誰だってあとで振り返って考えるものだ。「もしひとつ決断を変えられるなら、どれになるだろう?」。わたしは、自分のそれを知っている。そして、わたしがまったくもって正直に考えるに、Mikeがレフリーのキャリアのなかでひとつ決断を変えるとしたら、それになるだろう。
彼はソル・キャンベルが足を出して、Rooneyが転倒したと考えた。だが、彼はわれわれが観ることができたサイドからの観察はなかった。あれはファウルじゃない。
<事案>前半、アーセナルがブレイクしそうになっていた局面で、Gary Nevilleがジョゼ・アントニオ・レイエスを後ろから斬りつけた。Nevilleはボールを奪い取ったと主張
Dermot Gallagherの見立て:ファウル。イエローカードの可能性あり
これはファウルだ。だがレッドカードじゃない。ゲイムが変わり、レッドカードが出やすくなっている今日であっても、あれをレッドカードだと云うものは誰であれ間違いである。
あれは、彼がちゃんとボールを奪おうとしているため、退場にはならない。イエローカードの可能性はある。だがそれ以上じゃない。
以上。この記事には結論のようなものはない。
さて、この4つの事案について貴殿の判断はいかがだろうか。
ぼくなら、ニステル(©粕谷秀樹)は議論の余地なしでレッドカード。あんな選手にひどいケガをさせるような危険なプレイが許されていいはずはない。しかも、どう観ても故意という悪質さ。現在の基準なら、間違いなくそうなるだろう。それどころか彼のようなスター選手がやれば、試合後も大騒ぎになっていてもおかしくないほどの汚さ。
ファーディナンドもラストマンディフェンスでレッドカード。どう観てもフレディが前に出ていてショルダー to ショルダーのチャレンジじゃない。
ルーニーはシミュレイションでカード。もちろんペンもなし。こういうのがあるからアーセナルの選手にもダイヴはやめてほしいんだ。敵なら絶対許せないもの。ボックスでうまく転んだほうが得をする。フットボールはそういう競技じゃないはず。
ネヴィルもまあふつうにカードだろう。あれはレイエスにナツメグされた直後の後ろからのチャレンジで、いまの価値観だと復讐じみて観えて印象も非常に悪い。ボールにもさわれていない。
ということで、この試合にアーセナルが敗けて連続無敗記録がここで終わった理由は、かなりの部分はこの偏った判定にある。あらためてそう思うのであった。いまよりもっとファウルにおおらかな時代だったにせよ、多くのマンUのチャレンジには悪意が見えるし、全体的にひどすぎる。ソーシャルメディアのある世の中では、もう許されなくなった。
それにしても、この試合でレフリーを務めた人物がのちにPGMOLのような団体のえらいひとになっているというのがなんとも云えない。不正で逮捕されても秘密を隠しとおしたら、いつの間にか出世している官僚みたいである。
ルーニーのペナルティのシーンなんかは、待ってましたとばかりに躊躇なくペナルティを宣告するのだから、そもそも最初からホームチームにひいきをしようとしていたようにしか観えない。阿部四郎。
ニステルの事案は、アシスタントレフリーの目の前で起きたというがそれも知らん顔。ホームびいきは、主審のみならず審判全員の意向だったのだろう。アレックス・ファーガソンのチームだもの(みつを)。
上に貼った映像を観てもらえばわかるように、議論な場面はここに挙げられた4つだけではない。とくにレイエスへのラフプレイはひどく、あからさまに標的になっている。この試合の彼がそれだけ相手にとってやっかいな存在だったということなんだろう。ああいうのは、いまの判断基準なら、ひとつひとつはカード対象でなくても合せ技でカードが出たりする。いや、当時だってそういうやりかたがなかったわけじゃないが、この試合ではどういうわけか繰り返し汚いプレイが許された。
と、ここまで書きながらも、いっぽうで当時のレフリーの仕事の難しさについても、ある程度理解をする必要もあるとは思う。だって、一度試合を止めて映像を確認するようなこともないのだから、ペナルティのような決定的な判断もその瞬間の判断に任せるしかない。それはいまよりずっと難しかったことは想像できる。肉体的な接触にもっと寛容だったみたいな時代性もあるので、そういう意味では一概に批判はできないところもある。まあ、ひどいのはひどいが。
われらも、いまVARをひたすら批判しているわけだが、あの時代に戻りたいわけじゃない。こうした試合がいまではありえないと思えるくらいには、進歩もある。選手も昔よりは守られているだろう。レフリーにおかれては、なんとかうまくやってもらうことを願うばかりである。とくにVARでは起きている問題のほとんどが人災だから、本来はもっとうまくやれていいはず。
「VARがあったらインヴィンシブルズは救われたのか?」の答えは、当然イエスだろう。あの美しいチームの記録を、強制的に止めたマンUが憎いよ。スポーツを超えたところで特権を振りかざしていた彼らが。
ということで、アーセナルファンにおかれては、20年前のできごとを思い出してマンUというクラブ/チームへの憎しみが再燃したことうけあいかと思われる。
日曜は勝つだけじゃなく、こてんぱんにしてもらいたいね。マッチプレヴューも書いたので読んでください。
おわり