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ニコラ・ペペがヴィヤレアル加入。アーセナル時代のフラストレイションに思う

こんにちは。

元ガナーのニコラ・ペペがスペインのヴィヤレアルにフリーで加入。

彼は、この夏にトルコのTrabzonsporを退団してから所属クラブなしとなっていたため、29才と引退するにはまだちと早い年齢で、今後どうなるのかちょっと心配していたところだった。ラ・リーガというヨーロッパのトップリーグのクラブに復帰することも、彼にとっては願ってもないことだろう。

それはそれとして、ペペは先月末にはBBC Sportの単独インタビューに応えて、アーセナル時代をややネガティヴに語っていたことがすこし話題になっていた。

ぼくは個人的には、当時の彼のアルテタからの扱われ方やファンの批判には多少気の毒にも思っていたし、その後のキャリアの凋落もけして彼にふさわしいものだとは思わなかったので、ふつうはあまり歓迎されない元選手のこうしたネガティヴ発言も理解できるところがあると思った。

今回はそれについてすこし。



ニコラ・ペペ「高い移籍金は選手のせいじゃない」

2024年7月25日の『BBC Sport』より。ヴィヤレアル移籍が決まる前。

ペペ:(アーセナル時代)全然簡単じゃなかった。それに、ファンはぼくのパフォーミングを喜んでなかったし。

ぼくが最初加入したとき、ファンはぼくのパフォーマンスではなく値札で判断していたんだ。でも、アーセナルにいたときぼくだってグレイトなことをやったりもしていたと思うよ。あそこでの時間を後悔はしていない。

しかし、ぼくの移籍金はあのときのクラブ最高額で、だからぼくはどの試合でもゴールを決めることを期待された。

「アーセナルがぼくを£20mで買っていたら」

もしアーセナルが、ぼくを£20mで買ったのなら違っていたのかもしれない。でもそれは選手のせいじゃない。選手が£100mとか90mで買ってくれと頼むわけじゃない。でも、それがフットボールの世界というものだし、それがみんなが理解できないことなんだ。

MudrykやAntonyのようなベストでプレイできていない選手もいるが、彼らだって悪い選手じゃない。

「アルテタはぼくを完全には信頼してくれなかっただけ」

(アーセナルとアルテタ)退団するときは、彼らにはだいぶ助けられた。ぼくはケガをしていたから簡単ではなかった。復帰も大変だったし…… でも彼らはすぐにぼくのクラブを見つけるよう努力してくれた。だから、いい条件でクラブを去ることになったんだ。

アルテタとはつねにグレイトな関係があった。ただ、彼はぼくを完全には信頼してくれなかったというだけ。それが残念だ。

彼はウィニングチームをつくり、悲しいことに、ぼくはそこには入っていなかった。でも、彼は尊敬できるひとだ。彼もぼくを尊重してくれたこともわかってる。彼の健闘を祈るよ。

アーセナルで自分が経験したプレッシャーで、いまはかなり余裕ができている。それはもうぼくが気にすることじゃないんだ。だって、多くの批判を受ければ、それだけ皮が厚くなるから。だから、この先何が起きても準備はできている。とても余裕があると感じている。

「イングランドへの復帰も否定しない」

(ニースやTrabzonsporではケガに悩まされた)もう2年ぶりのプリシーズンで素晴らしい気分。フィジカリーにはいい調子だし、ぼくがかつてそうだったような素早い選手に戻る必要がある。

ぼくはこれまで多くを学んできた。もちろん以前と同じ選手だ。年は取ったが、それはふつうのこと。以前と変わらない。ぼくは間違いなく過去のパフォーマンスを再現できる。必要なことは、フィジカルコンディションを整え、クラブからの信頼を得て、ファンに愛されること。そのすべて。

いいプレイをしてたくさんのゴールを決めている選手を観るに、それは彼の周囲にあるもののおかげだ。協力的なコーチ、クラブ、愛情あるファン。それが、選手がいいプレイをするためにとくに重要だと思う。

ぼくらはすべてのオファーを聞く。そして代理人が、本気のクラブをぼくに教えてくれる。シリアスなオファーじゃなければ、ぼくも聞かない。何が起きるか見てみよう。イングランドへの復帰も否定しない。

以上

 

およそ2週間前のインタビューの時点で、まだつぎのクラブを検討していたということは(PL復帰すらほのめかしている)、ヴィヤレアルはけっこう急に決まったのかもしれない。2026年までの2年契約?ということは、ヴィヤレアルの恐る恐るみたいな、まだ全幅の信頼を寄せているわけではないという本音が見え隠れするような感じがするが、ペペにはぜひともにこのチャンスをつかんでもらいたいものである。

 

今回のペペの「もし£20mだったら」というコメントについては、まったく同意できるというか、そのとおりと云うよりない。

ちなみにペペのアーセナルでのアウトプットは、初年度の19/20がG8 A10、20/21がG16 A5、21/22はぐっと試合を減らしてG3 A6(※すべてのコンペティション)。こうした数字を見れば、彼の「値札で判断された」という主張は、いくらか説得力があるんじゃないだろうか。リーグで二桁ゴールを決めるウィンガーが£20mならまったく悪くない。72mじゃなくて27mだったら、ファンももっと寛容になれたはず。しかも、その金額は彼が決めたわけでもないのに。その点でも不幸があった。同情。

彼は、値札で判断されている選手の具体例としてMudrykやAntonyの名前を出していて、それもまあそのとおりだと思う。過剰な批判をされちゃってる人たち。プロなら期待に応えるのが仕事という見方もあるのかもしれないが、まあそれにしても。彼らがもっと安かったら、同じ批判だったろうか?

ただ、コーチからの評価について、ペペの場合はGAのアウトプットというよりは、チームプレイが問題だった。すなわち守備貢献。チームファーストの献身やハードワーク。

今回のインタビューでもペペは、アルテタとはいい関係だったとしつつ「完全には信頼してもらえなかった」と恨み節を述べているが、それもなぜそういうことになったのかは、いまでははっきり理由がわかる。

今年の夏もそうなっているように、アルテタのチームはポジションに関わらずどの選手にも守備貢献を求めるし、それに消極的な選手の居場所はますますなくなっている。そろそろ大きな進捗がありそうなMikel Merinoなんて象徴的な案件だろう。ヨーロッパでトップクラスのデュエルモンスターMF。

ペペだって、そういうことがわからなかったわけじゃないだろうが、以前もアルテタの要求(タッチライン)と自分のやりたいこと(カットインサイド)について対比的に述べていたように、彼はきっと「自分の持ち味」にこだわったのだろう。それを否定されたら存在理由がなくなってしまうことを恐れたのかもしれない。アルテタは、自分の云うとおりにしてくれればきっとペペも成長できると信じたのだと考えると、結局相手を信じなかったのはペペのほうだったりして? 信じてもらえなかったのではなく、自分が信じなかった。自分の可能性を。

アーセナルは、近年ターゲットをU-23にフォーカスしたりと移籍市場におけるふるまいをだいぶ変えてきているが、それ以前の時期が大きな教訓や反面教師になったのだろう。そのとりわけ大きな教訓のひとつがペペ。チーム/クラブのフィロソフィに合わない選手、あるいはパーソナリティやキャラクターに難ありの選手は、いくら優秀でも買ってはいけない。とくに後者の重要性については、たしか以前にエイミー・ロウレンスも述べていた。いまのリクルートでは人間性を非常に重視しているのだと。謙虚に学ぶ姿勢があり、受け入れる姿勢がある選手。

ペペは、人間性に問題ありというわけではないだろうが、ことフットボーラーとしては、アルテタの要求には応えなかった。応えられなかったのかどうかはよくわからない。まあでもそれを含めての人間性。柔軟性。いまチームで成功している選手たちのなかに、アルテタに懐疑的なものはひとりもいないはず。

 

ということで、ニコラ・ペペ。彼のスペインでのフットボールライフに幸あらんことを。ヴィヤレアルとばっちり合えばいいね。

おわり



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