こんにちは。
昨日は、日本が初めてブラジルに勝ったそうで。わしもネリが出ると直前に気づいて途中まで観てたんだけど、まさか2-0から日本がひっくり返すと思わず。途中で観るのをやめてしまった。日本は強くなったなあ。
アーセナル界隈では、残念ながら日本の勝利よりもネリのCFのほうが話題だった。やっぱり彼はWGよりもCFのほうがいんじゃないかという。
あとメリーノもゴール。彼は、今回のワールドカップ予選でスペインのゴール全体の40%にからんでるとか。ウケる。アルテタが初めて彼をストライカー起用したときから、こんな未来が待っているなんて。
そしてワールドカップ予選といえば、スウェーデン。IsakとGyoみたいなストライカーがいるのに予選落ち危機という。いと信じたがし。おかげでヘッドコーチのTomassonが解任されたという。トマソン? Jon Dahl Tomassonてヨン・ダール・トマソンか! 小野伸二がいた時期のフェイエノールトはよく観てたから、彼の名前にピンと来てしまった。なんという懐かしさ。
さて、それはいいとしてredditをつらつら眺めていたら、おもしろいサブがあることに気づいた。といってももう一週間近く前のものだが。
I'm a Premier League set-piece coach, ask me anything!
byu/SpursOfficial insoccer
トトナムのセットピースコーチのAMA。AMAはAsk Me Anything. 有名人がソーシャルメディアで一般人からの質問に答えるやつ。 ちなみにこのサブは、トトナム公式のポストである。
まさかこのブログでToTがらみの記事を書くことになるとは思わなかったが、内容は興味深いものだったので、まあお許しあれ。今回はこれを紹介したい。
トトナムのセットピースコーチAndreas Georgsonの「なんでも訊いてね」
本人から回答があった質問のやりとりだけ。Top voted順に
ハイ、わたしはAndreas Georgsonです。トトナム・ホットスパでセットピースコーチをしているよ。UK時間の10月14日火曜4:30からRedditユーザーの質問に答えるよ。
わたしが説明するのは、この役割にともなうもの。このポジションのスタッフが、ほかのコーチングスタッフたちとどんなふうに働いているか。それとトトナムでの暮らしがどんなものか。その他もろもろだよ。
だから、これから質問をしていってね。火曜の午後はできるだけそに目を通すつもり。
COYS!
あなたはキックオフもセットピースだと考えますか? それはしっかりと練習できるもの? 昨シーズン、ブレントフォードがそこからいくつかのゴールを決めていて、わたしの記憶が正しければ数シーズン前のボーンマスもそれをやった。キックオフは、ほかのセットピースと似たようなものとして扱われているのでしょうか? 1.1k
わたしはそれはセットピースだと考える。われわれはそう捉えているし、だからチームはそのための戦略が必要になる。しかし、週に40分程度しか(セットピース練習のための)時間がなければ、キックオフのために使える時間はかなり少なくなる。
しかし、それについて柔軟な戦略の必要性はあるし、われわれにもそれがある。
“MNF(Monday Night Football)”みたいな番組での分析で、これまでになかった気付きを得ることはある? 879
もちろん、そういうこともある。実際にそこから得たことを自分たちのプロセスに加えるようなことはほとんどないけど、それが小さなディーテイルにはなりえる。
コーナーは、イン・スウィンガーかアウト・スウィンガー、どちらがいい? 544
それは選手たちのスキルによるところがあるかな。わたしたちのことを見返せば、わたしはおもにイン・スウィンガーのコーナーを推してきた。
※べつのユーザーから参考リンクの提示。2023年8月の記事。この記事によると当時のアーセナルのコーナーの95%がイン・スウィンガー
Premier League Corners: Inswingers vs Outswingers, Short vs Crossed & More
攻撃セットピースのとき、どれくらいの距離なら「直接いける」と思える?
いい場所というのはあると思う。なぜなら、ペナルティボックスに近すぎれば壁を抜くのは難しいから。25メーター以上あったとすれば、それもゴールはかなり難しい。
だから、スウィートスポットは20-25メーターのあいだ。そのレンジ内なら射程圏内で、わたしなら選手にシュートしてほしい。それ以外なら、べつの方法を試してもらいたい。
ほかのスポーツからセットピースのインスピレイションを受けることはある? ラグビーのラインアウトとコーナーにはすごく類似性があると思う 96
インスピレイションを得るためにほかのスポーツはよく観るよ。いまのところラグビーはそうでもないけど。だって、ルールがよくわからないから……
毎週どれくらいの選手たちとの時間がある? 85
フルスクワッドとは40分程度かな。でも、大部分はちょっとしたことを加えようとしているだけだから。だから、それ以外に課外ワークとして60分くらい個人ワークやユニットワークがある。
そしてもちろん、さらに個人からのフィードバックがあり、チームMTGもある。この役割の大部分は、いかに時間で効率的にやるかなんだ。与えられた時間を使ってやるだけ。
ワールドカップでオランダがアルゼンチン戦でやったようなWeghorstの即興フリーキックは、どうしてすごくめずらしい? 35
結局は、自分たちにある時間の問題だと思う。特別なフリーキックルーティーンをやろうとすれば、すべてをシンクさせてうまくいかせるためにどうしたって時間がかかる……。それに、そこで時間をかけたところで、20試合に1度しかそのポジションから蹴るチャンスがないかもしれない。
だから、週40分のなかの多くの時間をそのために費やしても、長い期間それが起きないこともある。それが起きたときには忘れてしまっているかもしれないよ。それが、それを優先するコーチが少ない理由であり、それよりも多くのコーチはコーナーのために時間を使う。コーナーは試合のなかで5-6回はかならず起きるから。
あなたのようなコーチになりたいひとに助言を 25
なんでもそうだと思うけど、フットボールはとくになにが起きるかわからない業界で、キャリアを計画するのは難しい。だから、わたしが思うのは、夢の仕事でそのひとが必要だと考えることを進歩させることだと思う。そして、その夢の仕事が来たときに備えておく。
あの蹴るときに腕を上げるやつって、なんかのサインなの? 28
イエス! あれはボールの受け手にとってはタイミングのためにとても重要なんだ。正しいタイミングで正しい場所にいるよう、全員に促している。
すでに飽和状態にあるなかで、新しいセットピースのパターンを思いつかせるものは何ですか? 23
わたしが思うに、その多くのルーティーンは特別驚くようなものではないし、原則とルーティーンがセットになってじょじょに改良されていくんじゃないかな。
あなたは先生なんですよね? それが選手たちとのワークにどんな影響を与えている? 24
そのとおり。わたしのフットボールでの最初のフルタイムでの仕事は、サポート教師兼スクールコーチ。わたしは、英語や数学に課題を持つ子どもたちが、フットボールを犠牲にせずにそれを学べるよう支援していた。
たぶん、それは彼らを助けるという以前に、ひととどうつながるかを学ぶ方法だったと思う。
ファン/評論家とあなたたちの観点との最大の乖離はなんだと思いますか? セットピースだけでなく、フットボールならなんでも 21
コーチを始める前だったら、わたしはこう云っただろうね。それは技術と戦術、正しい選手を選ぶことがすべてだと。
でも、いまの仕事を始めてから、スピリットや団結、プロセスについてより理解するようになった。長期間にわたり進歩していくためには、すごくゆっくりしたプロセスが必要になるんだ!
うちのU-7チームにセットピースの極意を教えてくれませんか? 20
セットピースのトレイニングなんてやめて! 彼らにはプレイさせるだけでいい。ゲイムのオープンなスピリットを楽しませるだけで。
ロングスローのリバイバルはあなたの仕事にどのような影響を与えている? 19
これまでわたしが想像していたよりもずっと、スローインの戦術と技術についてたくさん考えなきゃならなくなってるね。自分でももっとたくさん学ばなきゃならない領域だと感じている!
あなたがセットピースコーチングを始めたきっかけは? あるいはそれを専門分野にしようと思ったきっかけは? 18
正直、セットピースなんて全然興味なかったよ! Thomas Frankに誘われたんだよね…… でも、情熱は高まってきている。
最初にそれに惹きつけられたのはブレントフォードにいるときだった。とても進歩的なクラブで、Thomasといっしょに働いていた。
頭から離れないセットピースはありますか? 18
オールタイムでのお気に入りはこれだな。ブレントフォードでEthan Pinnockを使ってバックポストのルーティーンをやったんだ。そこでわたしは人生で初めてセットピースを担当した。それがとても成功して効果的だったから、それがわたしの頭にいつもあるね。まるで初恋みたいに。消えることがない。
フリーキックでの壁についてどう思う? 壁はテイカーの目印になるのか、それともキーパーの視界を遮るのかの議論があります 16
16-25メーターのスウィートスポットからだと、4-5人でつくる壁が合理的になる。それより外側だと、たしかにGKの視界を遮ることになるかもしれない。反応を遅らせる可能性はある。
セットピース関係でルールをひとつ変えられるなら、何にする? 14
100%間違いなく、わたしならリスタートの時間を最大15秒に限定するルールを加えるね。わたしはロングスローは楽しんでいるよ。でもそれに45秒もかけることは楽しめない! GKの8秒ルールみたいに。
試合をスピードアップさせるためにも、スローインやフリーキックにも似たようなルールがほしい。そのほうがより楽しめるし、おもしろいよ。
バスケやアメフトでは、ほかのチームの優れたプレイを模倣することは非常に一般的ですが、セットピースでも同様ですか? あなたはどこからインスピレーションを得ている? 12
それは間違いなくできるでしょうね。ディーテイルをピックアップして盗む。観るポイントは違うだろうし、それが自分のアイディアのきっかけになることもあるかもしれない。
セットピースルーティーンに選手たちの意見はどれほど反映される? 11
選手たちがだんだん慣れてきて、わたしとの関係が良くなっていくにつれて、彼らからの意見もどんどん増えていく。わたしはそれを本当に楽しんでるね。
フットボール以外ではどんなスポーツがあなたの仕事に影響を与えていますか? 9
特定のスポーツというのはないかな。一般的な成長過程とか、マインドセット。そこが自分にとって最大の影響。
以上。トトナム関連のやりとりは割愛した。
どうもこのひとはThomas Frankについてブレントフォードから転職したひとみたいだな。
わたしの雑感とセットピースについて
今回のAMAでもっともユーザ評価の高かったやりとりは、いちばん最初のキックオフについて。これは、あのいきなり相手ハーフの深い位置にボールを蹴り出してエリアを稼ぐ、PLでも最近の流行しているあれのことだろう。ラグビーでよく観るやつ。アーセナルはやってないかな?
ラグビーだとそれがごく基本的な戦術なのは、ラインアウトでボールを奪う確率が、スローインでボールを奪う確率よりも高いってことなんだろうか。
本来スローインというのは、やるほうに有利でなければおかしいのだろうが(ボールをピッチの外に出したチームへの罰として)、実際はかならずしもそうじゃないし、そのことが再評価されはじめたから、最近の流行があるんだろうと思う。
ところでこの件で思い出すのはヴェンゲルさんが提案していたルール変更。いわゆるヴェンゲル提案。そのなかにスローインのルール変更として、キックインの提案(選択式)がある。ちょうど4年前に書いた記事。
アーセン・ヴェンゲルのフットボール改革。オフサイド、キックイン提案いろいろ | ARSENAL CHANGE EVERYTHING
AW:わたしはスロウインのルールも変えたい。試合終了まであと5分。スロウインはアドヴァンテッジでなければならないが、そうした状況では、自分たちがアウトフィールドに9人しかいないのに対し、相手は10人いる。スタッツが示しているのは、こうした状況で10回中8回はボールを失っている。ピッチのオウンハーフでは、スロウインのかわりにキックを選べるべきだ。
たしかに、スローインで出しどころがなくて困って、結局無理めの50/50のボールを奪われるシーンというのは、どの試合でもしばしば目にする。選手が手でボールを扱える機会とはいえ、攻撃側にあまり有利になってないのはちょっとバランスが悪いとは思う。
そしてこのヴェンゲル提案は、まさに、いまのキックオフルーティーンを予言していたみたいではないか。もしキックインのルールがあれば、あのキックオフなど誰もやらなくなる。ボールを相手のGKにそのまま渡すみたいなものなんだから。
スローインについては、ここ数年のアーセナルにはずっとイライラさせられてきたが、今シーズンはめっきりシンプルになったし、早くなったと感じる。あきらかにやりかたが変わった。あれはやっぱりチームのなかでも問題意識があったのか。
受け手の選手たちがぐるぐるポジションを入れ替えたりなんだりなにか難しいことをやろうとしていたが、それで時間ばかりかかって、相手選手も集まってきてしまい、結局成功しない。いまみたいに後ろ方向でもどこでも、とっとと早く入れたほうがよほど成功しているように見える。そこは間違いなく今シーズンのよいところだと思う。考えすぎない。
個人的に、今回のAMAでこのひとに訊いてほしかったこととして、フリーキックでの守備側のオフサイドトラップがあるな。ちょっと前にリヴァプールがアーセナル戦でやったやつ。素人考えでは、あれはPLでもなんでもっと普及しないのだろうと思う。
その試合でもサカにオフサイドトラップを破られて、ハイリスクなことは証明されていたし、やらない理由もわかるんだが、もうちょっと高い頻度で観てもいいような気がしている。リターンが大きいから。
あと流行といえばロングスロー。いまやPLだとどのチームでもやっている印象がある。腕力があって、鋭いロングスローが放り込める選手がいたら、毎回コーナーキックみたいなものだから、すごく脅威だ。そのうち、ロングスローが得意な選手の価値があがるかもしれない。
これは以前にも書いたかもしれないが、PLでデラップ(父)がプレイしていたとき、ああいうロングスローと、ラグビーのラインアウトみたいにゴール前で選手を持ち上げたら最強の組み合わせじゃないかと思ったんだけど、それはルール違反になるんだろうか。さすがにフットボールでは観たことがない。空中戦では絶対負けない。そして守備側もそれをやりだして。ボックス内でトーテムポールが乱立して、もはやなんのスポーツかわからなくなるな(笑い)。ワッショイワッショイの掛け声とともに。
最近のPLは、ほんとうに劇的な戦術のシフトがあると感じる。もっと速く、もっとダイレクト。セットピース重視。このまま今年アーセナルがタイトルを取ったときには、セットピースでタイトルを取ったチームとしても記憶されそうである。
そして、セットピースコーチが一般的な存在になっている。逆にいまこの状況でそれを雇わないチームはどういう意図なのか。ビッグ6でそれがいないのはマンUのみ。

先日、ズビメンディもインタビューでイングランドに来てからデッドボール(セットプレイ)の重要性に驚いたと云っていた。
キックオフルーティーンやロングスローの流行で、かつて英国フットボールがkick and rushなどと云われていた時代に戻りつつあるような錯覚さえある。
だが、かつての英国の姿と違うのは、いまのPLにはコーチも選手も世界中から才能が集まって、あらゆるフットボール集合知があわさって得た結果ということですよね。最先端からそこに行き着いた。正反合を繰り返して、いまここにいるのが強い。
ここでお聴きいただきましょう。なんとD’Angeloが亡くなったというニュース。今朝しってたいへんに驚いた。51才。そんな若かったんかい。
D’Angeloといえば、彼の最初のアルバムが出たころに学校の先輩に教えてもらったことを思い出す。もらったカセットテープの背中には「Hip hop R&B」と書かれていて、それが新しいアメリカの潮流なのだと。たしかほかにAaliyahとかが入っていたような。あれはいいテープだった。R.I.P.
おわる