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イングリッシュプレミアリーグが18/19シーズンもVARを導入しないことを決定

おとといBBC SPORTSが報じたところによると、EPLの20クラブメンバー株主が参加する会合において、投票により来季18/19シーズンも今季同様にVAR(ビデオ判定/ヴィデオ・アシスタント・レフェリー)を使用しないことを決めた模様。

Video assistant referee: Premier League clubs vote against VAR for 2018-19

フットボールにおけるVARは、オーストラリアリーグ(Aリーグ)が先陣を切り、ヨーロッパの5メジャーリーグにおいても、今季17/18シーズンからすでにドイツのブンデスリーガとイタリアのセリエAが導入済み。またVARに積極的といわれるFIFAは、6月のワールドカップでもビデオ判定を導入すると見られている。

最近ではCLのユヴェントス対レアル・マドリッドのセカンドレグなど、ビッグマッチでレフェリーのジャッジが議論を呼ぶシーンがたびたびあり、改めてVARの注目度が高まっているなかでの決定となった。



VAR導入は見送りながら、引き続きテストは継続

プレミアリーグでの来シーズンのVAR導入は見送るものの、今季に引き続きFAカップ、リーグカップでは導入するという。将来的にはそれも導入せざるを得ないが、現状ではまだ時期が早いということだろうか。

VARの議論では、レフェリーが映像を改めて確認することで数分間試合の流れが中断されるという「フットボール体験の阻害」が指摘されている。この会合ではそういったVAR使用時のスタジアムのファンやTV視聴者とのコミュニケーションの改善も要求されているという。

なお、BBCのくだんの記事によると、独『Kicker』による調査で、VARのテクニカルな問題を理由にドイツでは47%の選手たちがVARの廃止を求めているらしい。トップクラブの監督や100%正しいジャッジを求めるファンから導入が叫ばれながらも、いざ実際に導入してみれば、ファンからも選手からも不評ということになる。

VARは「ラジオスター」を殺すのか?

個人的な関心からこのブログでもVARに関しては何度かエントリを書いている。ぼくは基本的にはVAR導入賛成派なので「ヒューマンエラーもフットボールの一部」という言説には反対したいと思っている。多くの場合そういった意見を持っているひとというのは、比較的古参のフットボールファンに多い印象がある。

しかし、時代は変わった。いまではもう、現場のレフェリーよりもリビングの高精細なTVで観ているファンのほうが「そこで何があったか」を正しく理解できるようになってしまった。レフェリーの誤審をそれを見守る数百万人のファンが指摘できるような状況で、その誤審も含めてフットボール文化を楽しめといわれてもそれは無理だし、嫌だ。

それに、VARを導入したからといってそれが何もかも殺すとは思えない。映像を確認したところで結局はそれをレフェリーという人間が判断するのだから、例のユヴェントスとマドリーがわかりやすいが、あの試合で仮にVARが導入されていたとしてもやはりあれはペナルティと判断されていただろう。あの重大な場面でペナルティを取るか取らないかは、そこで起きた事実以上に、いまだにレフェリーの判断が尊重されている。最終判断をするレフェリーが人間である限りは、ある種の情緒的な判断の余地も残されているといえる。

(ユヴェントスの事件は、リプレイを見ても決定機の選手を後ろから押しているので間違いなくファールと思われるプレイだった。が、あのファールを取るか取らないかが議論があるということは、つまりそれだけレフェリーがああいったプレイを、普段その単体のプレイだけでなく試合の流れなども勘案したうえで判断しているという証拠でもある。ブッフォンらユヴェントスの選手たちも、100歩譲ってあすこはファールだったかもしれない、でもよりによってあの場面でファールを取るなんてマイケル・オリヴァーよ、あんたは血も涙もないのかと。そう訴えていたはずだ。いや知らんけど。プロフットボールというエンタメ興行の慣習?からすると、あの場面のあのペナルティは取っても取らなくてもおかしくはなかった。マイケル・オリヴァーがたまたま空気を読まなかっただけだ。それくらいレフェリーのジャッジはいつもファジーだし、レフェリーのレフェリーというものがいない限りそれはVAR導入後もなくなることはないはずである)

いずれにせよ現状のシステムが発展途上だということは認めたとしても、それがこのままいつまでも続くとも思えない。いずれわれわれが驚くような技術改善が必ずあるはずだから。プレミアリーグの基準では、まだ納得できるほどシステムが成熟していないということだろう。他リーグの状況も観察しているだろうから、そういった結論になることは理解できる。

VARへの提言

しかし、このままいけばシステムが完全に満足できるものじゃなくても導入せざるを得ないタイミングというのは今後あるだろう。たとえば今度のワールドカップでVARが重要な場面でたくさん使われて、それを見てどうしてPLでは導入しないんだというファンの声が高まるとか。それはそれでありえそうだ。

ぼくがVARのストレスを少しでも軽減するために提言したいのは、それを指摘しているひとも少なくないけれど、確認のプロセス自体を現場で公開することだ。

レフェリーだけが(彼だけが確認できる特別な)映像を確認したり、導入が検討されているというビデオ判定を担う新たなレフェリー「ヴィデオ・オフィシャル」が確認するのではなく、スタジアムのスクリーンですぐにリプレイを出して、その同じ映像をスタジアムのファンとレフェリーが一緒に確認する。その映像はもちろんTV中継でもリアルタイムで流す。それで現地のファンもTV視聴のファンも納得できるし、ジャッジプロセスのブラックボックス化もある程度は防げる。ユヴェントス戦のようなジャッジはおそらく覆らないが、それはいままでと同じである。

 

それにしても来季のPLでも、またストレスのたまるシーンと付き合わねばならないのかと思うと、若干気が重い。アーセナル(クロエンケ?)はどっちに投票したのか気になる。



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