いつものプレヴューエントリにつづき、アーセナルとリヴァプールの試合のみどころをまとめていきたい。
ファインフォームながら未完成なアーセナルが、絶好調のリヴァプールにどう対応するか。中立のファンでも楽しめるとてもみどころの多い試合だ。
まずは基本的な情報から。
アーセナルとリヴァプールの対戦成績(過去6試合)
※画像はWhoScored.comより
何度も言及しているように、PL直近6試合でアーセナルの勝ちはなし。分けと負けが3度づつとなっている。
アーセナルはトップ6全般に弱いが、なかでもリヴァプールは相性の悪い相手といえそうだ。とにかく失点が多い。得点もそれなりにとってはいるが得点10に対して失点は17ともうちょっとで倍に近い差になるところだ。
アルシャヴィンの4得点など、点が入りまくる印象があるこのカード。3点や4点といった大量失点も珍しくない。というか6試合中5試合で3-4失点している。
アーセナルにとっては、リヴァプールの強力なアタッカーに対し、失点をいかに防ぐかがキーポイントになる。
チームキャラクター
今季のそれぞれのチームのプレイスタイルをまとめたものがこちら。
注目はアーセナルの弱点。チャンスをつくられる。危険なエリアでファウル。個人エラー。スルーボールの守備。に問題あり。今回もいかにも問題ありそう。
逆にリヴァプールの弱点はあまりない(オフサイド回避と空中戦)。
空中戦が弱いというリヴァプールに対しアーセナルはセットピースに活路を見出したいが、リヴァプールのセットピース守備はヴェリストロングだ。
いずれにせよ、簡単ではない。
マイケル・コックスのリヴァプール評
ここ10年でもベストなチームと称賛するコックスのコメント。
コックス:当初、クロップのリヴァプールは純粋にエナジェティックで、敵の攻撃機会に対してのカウンタープレスに頼ったコンバットスタイルだった。しかし、彼らは守備の規律を整え、戦術的な順応性とヤヴァいカウンターアタックのスピードでより成熟した。
クロップのアプローチは4人めのアタッカーを使うというオプションを得た。シャキーリはクロップによりオプションを与えている。
ホームで3-0勝利したサウサンプトン戦で、彼はフロントの3人の後ろでNo.10でプレイした。また右にポジションをスライドしてサラーに本来の位置でフォワードとしてプレイさせたりもした。シャキーリとサラーは2週間連続でお互いにアシストしている。ハダースフィールドとカーディフでの勝利においては、彼らは右から脅威になっていた。アーセナルはそこに用心する必要がある。
まあそこでLB危機なんですけどね。よりによって左サイドの守備がタフなリヴァプール戦で。
リヴァプールのフォーメーション
Squawkaがリヴァプールが採用するであろうフォーメーションを予想している。
ぼくはリヴァプールはこれまでのように4-3-3でプレイするのかと思ったら、ここ2試合は4-2-3-1でシャキリを使って結果を出しているようだ。
シャキーリを使った4-2-3-1で現在の流れを踏襲
シャキリの良さがもっとも出やすいフォーメーション。
ミルナーを使って従来の4-3-3へ戻す
この2試合ベンチだったミルナーを出してくるか。ビッグマッチで彼を出すなら、クロップの信頼に応えるという余計なモチヴェイションが生まれそう。
シャキーリをMFで使った4-3-3
シャキリの守備力が問われる。アーセナルにとっては、このなかでは悪くないフォーメーションに見える。
シャキーリっていつの間にかキーマンになってたんだな。。ちょっと前はあんなにクロップに怒られてたのに。
リヴァプールのプレスとアーセナルのビルドアップに注目
ここからは少し戦術的なポイントについて。POTPのプレヴュー記事をネタ元に。
リヴァプールのプレス位置
今季リヴァプールはプレスの開始位置を少し下げているという特徴があるそうだ。
今回、このまま少し後ろに下がったコンサヴァティヴなやり方を続けるのか、あるいは今回アーセナルのバックからのビルドアップに対して、従来のハイプレス/ヘヴィメタル・フットボールに戻すのか。
この記事では、アーセナルがポゼッションを失いやすい位置を考えれば、これまでどおりプレス位置を下げておくことが有効と指摘している。
アーセナルはバックからつなぐことについて心配されながらも、オウンサードでボールを失ったの20.4%、これはリーグ平均(20.7%)に近いものになっている(=とても悪いわけではない)。
もっともこのスタッツで注意が必要なのは、これがボールを失う起点の場所であるからで、よりダイレクトなチームはクリアやロングボールで相手にボールを渡せばオウンサードでのロスト率が高まることになる。しかしそれでも敵がボールを回収する位置は自分たちのゴールからは遠い。アーセナルがまれにGKからロングボールを出すときに心配なのは、ミドルサードでのロスト率が高いからだ。
アーセナルのミドルサードでのポゼッションロストは37.9%。リーグで最悪の数字だ。これはアーセナルがバックからプレイすることは問題がなく、ボールを前に運ぶこと、ボールをアタッキングエリアに運ぶことに苦しんでいることを示している。
これはリヴァプールにとっては好都合で、今季ミドルサードでのリカヴァリー回数はリーグ4位となっている。リヴァプールはよりミッドブロックをつくって、アーセナルにDFのあいだにパスを出させる、そうすれば中盤でボールを奪える。
16/17シーズンの初日に3点を取られはしたが、彼らはエミレイツでうまくやった。アーセナルがボールを前に運ぶのに苦労した試合だったが、じつはリヴァプールは彼らのアタッキングサードではボールは10%しかリカヴァリーできなかった。それは18/19シーズンのここまでどのチーム平均よりも下回る数字だ。リヴァプールは重心をウイングに置いて、中盤でボールを奪おうとするだろう。
アーセナルが中盤でボールを失っているというのは、いわれてみればなるほどと腑に落ちるところがある。
アーセナルが苦しいときはエジルにボールが渡らないときで、エジルがボールに触れないときはだいたい攻撃が停滞している(ファイナルサードへボールを送れていない)。
アーセナルのビルドアップ、ワンパターンすぎ問題
同じくPOTPの記事より。アーセナルのビルドアップは予測可能なほど極めて単純であるという、レスター戦のあとに書かれたPM ANALYTICSの記事を引用している。
レスターがある程度フルアムのアプローチをコピーできたのは、アーセナルのビルドアップパターンが信じられないくらい予想可能だからだ。十中八九、アーセナルのビルドアップパターンは同じである。
ボールの動きはレノから始まる。ホールディングMFのひとりにパス。CBのホールディングに渡す。LBのリヒトシュタイナーへ。LBからジャカへ。LBはそのままチャンネルを全速力。ジャカはイウォビを探してパス。
もしアーセナルがまた同じパターンでビルドアップを始めるなら、リヴァプールは喜んで中盤に座ってプレスを仕掛ける前にMFのスペースを消し、ボールがフルバックからワイドに来たときとライン際でパスするところを狙うだろう。アーセナルがやり方を変えないならリヴァプールの手のひらでプレイするようなことになる。
アーセナルのビルドアップ解決策
同じくPOTPより。アーセナルがビルドアップのやり方を変えるなら、MFでのエジルの関与が重要だと。ふたりのCMが開き気味になって、エジルが下がってくるスペースを空ける。
エジルは小さなスペースでもうまく使うことができるので、彼がMFまで降りてきてビルドアップを助けるなら、そこに活路が見いだせる。
そして彼が空けたスペースを今度はミキタリアンやイウォビといったサイドの選手が使うことができると。
なるほど。
エジルがMFまで降りてくるときはだいたいうまくいっていないときだが、エジルがもっとピッチ全体でイニシアティブを取るようなプレイができれば、アーセナルがボールを前へ運べる回数も増えるだろう。
注目のマッチアップ
アーセナルの予想ラインナップはぼくのと違うのだけど、まああったほうがわかりやすい。
サラー、マネ、フィルミーノ、シャキリは全部きっついんだけど、ひとつあげるとすればサラーのところ。彼はCFでスタートの可能性が高いようだが慣れた右サイドに流れることも多いはず。
つまり、サラーと対峙することになるであろうアーセナルのLB(ナイルズかコラシナツ)、LCB(ホールディング)、LCM(ジャカ)、それと戻ってDFをフォローするLFW(イウォビ)。
彼らが協力して90分サラーとのワンオンワンの局面をつくらせないようにしなければならない。そうでなければザハの二の舞である。
またムスタフィとリヒトシュタイナーには、マネに仕事をさせないというタフな仕事が待っている。スピードのあるマネに対しとくにムスタフィの責任が重大だ。一皮むけてほしい。
さいごに・前半の改善
ここで指摘されているようなこと、加えてそれ以上のこともエメリは分析済みで、それに対応してくるリヴァプールに対し、さらにどう対応するか、対応の対応の対応とかをじっくりと考えているはずだと思う。カウンターのカウンター。のカウンターとか?
しかし、エメリが毎度いっている「自分たちのスタイルやアイディアでプレイしたい」をそのままぶつけると、今回ばかりは痛い目を見るのではないかと思う。
たとえば、両フルバックを上げる、高いディフェンスラインを保つ、はたまたGKからショートパスをつないでビルドアップするに至るまで、これらエメリ・アーセナルの基本的なコンセプト<ポゼッション&アタッキングフットボール>は、リヴァプールみたいなチームにとっては大好物だと思うのだ。自分たちはカウンターアタックをやる気マンマンなうえ、頼んでもいないのにわざわざリスクをかけてくれる。それをやってくるのを手ぐすね引いて待ってると思うのだ。
少なくとも、ここまでリーグで対戦したいくつかの中堅チームですら、手ぐすね引いてたかわからないけど、アーセナルのいつものプレイを待っていたフシはある。だからアーセナルは前半苦労することになる。
だからいつだって相手の予想を裏切る、つねに裏をかくことが重要だと思うのだ。
でもどうもそれができていない。
これまでやってきたことといえば、前半に相手の策にハマり、後半に見事カウンターする。
でもたまには最初からカウンターをかましてほしい。だって、相手がアーセナルを分析しているのと同じ時間、こちらだってリヴァプールを分析しているのだから。
ぼくはこういう強い相手なら、エンタテインメントなフットボールでなくてもいいので、なぜそういうプレイに至ったのかが見て納得できるような賢いプレイを観たい。なんなら後半まで待たずとも、試合中にフォーメーションやコマを動かしてもらって全然構わない。事前にたくさんのオプションを準備しているのだから選手もそれくらいは対応できるだろう。
さいごはアーセナル・ウイミンのレジェンドで、BBCパンディットになっていたアレックス・スコット氏のことばで終わろう。
スコット:リヴァプールみたいなチームを相手に、もしアーセナルがレスターで見せたような試合の入り方をするようならきっと罰せられるだろう。そして、週末をお祝いするようなセカンドハーフ・カムバックもない。
しばらくこのカードはお祭りみたいなノーガードの殴り合いがつづいたけど、いまの実力差を考えると、ノーガードでちんちんにやられるのはもっぱらわれわれのほうだと思ったほうがいい。
Arsenal v Liverpool: Why Gunners are not a soft touch any more – Alex Scott
アレックス・スコットのプレヴュー記事。なかなか勇気づけられるいい記事でおすすめ。
以上
キックオフは日本時間今夜26:30(日曜深夜2;30)。勝ってほしいね。COYG
おまけ
そうそう。負けたときのダメージを和らげようと思ってエクセルを駆使してこんなグラフィックをつくってしまった。例の「プロジェクト84」。
すげえがんばっただろう? これから試合のたびに更新するので見てください。
いまのところ、CP戦のドローが響いて2ポインツの借金。トップ4フィニッシュに向けては、まだまだ大丈夫。
「プロジェクト84」ではリヴァプールに負けるのは想定内だから安心だね!
ぼくがエメリ・アーセナルのトップ4フィニッシュを信じるようになった理由と「プロジェクト84」
〉「プロジェクト84」ではリヴァプールに負けるのは想定内だから安心だね!
↑ほんと、勇気づけられます笑
勝っちゃったら +1の貯金なんですね!
それくらいの気持ちでいるのが、今日はいいかもしれませんね。
> 勝っちゃったら +1の貯金なんですね!
そのとおりで!
勝っちゃえばいいのにね。