終わるまでは終わらない。
UELラスト16、ノックアウトステージの2戦目となった対ACミランはアーセナルが下馬評を覆し、アウェイでまさかの勝利&クリンシート。好調を維持するミランを相手にこれ以上は望んだらバチが当たりそうという理想的な勝利で、来週ホームでのセカンドレグに向け非常に大きなアドヴァンテージを得た。
この試合に負ければ1977年以来の公式戦5連敗だったということで、さすがに選手たちも集中した。無失点で試合を終えられたのも4試合ぶり(ここ12試合でクリンシートは2つめ。どちらもEL)。前日CLでToTを下したユヴェントスにインスピレーションを受けたかのように守りきった。
終わってみれば、あの程度のクオリティのチームを相手にして最高の試合をしたとはいえないが、アーセナルのファンとしてはこれは久々に拍手を送りたくなるようなアウェイでの勝利だ。
AC Milan 0-2 Arsenal (agg 0-2)
アーセナルFCのスターティング・イレヴン
無難に4-3-3。このところラムジーとジャックが揃ってスタートしている。ベレリンの代役はチェンバース。LBはAMNに先んじてコラシナツがスタート。いいか悪いかはともかく、それが年功序列というものだろう。たまにはいいじゃないか。
全世界の一流メディアがアーセナルを大絶賛
おれ調べ。アーセナルってすごいんだな。やっぱり世界から賞賛されるアーセナルだ。誇らしいや。
BBC SPORTS「Awesome Arsenal forget recent struggles(ヤバいアーセナル。最近の悪い流れを忘れさせる)」
SKY SPORTS「Arsenal answer their critics(アーセナル、批判に応える)」
The Guardian「Rejuvenated Gunners gain advantage in Italy(元気モリモリご飯パワーのガナーズがイタリアで先手を取る)」
London Evening Standard「Wenger welcomes end of ‘nightmare week’(ヴェンゲルが「悪夢の一週間」の終わりを歓迎)」
どうだい誇らしいだろう? 町工場の職人にでもなった気分だろう?
ボスのコメント
ヴェンゲル:これは重要な勝利だ。悪夢の一週間を過ごしていたからね。だがまだ勝ち抜けたわけではない。ホームで仕事を終わらせる。わたしはチームが見せたスピリットと反応にハッピーだよ。
われわれはこの試合でリスクを取る必要はなかった。しかし注意深くなりすぎるのも、われわれの流動性を失わせる。最後まで粘り強く守ったね。
ガットゥーソのコメント
ガットゥーソ:たくさんのミスを犯しすぎた。全然コンパクトにプレイすることができなかった。彼らは勝利に値した。
彼らが攻撃するたびに失点の可能性があった。うちの選手たちはこのレベルの試合には慣れていなかったんだ。しかしそれにしてもミスが多すぎた。
フットボールでは絶対はない。ロンドンでは勝ちにいくよ。遠足に行くわけじゃない。
ああ、やっぱりミランは再建中なんだなあ。ちなみにフットボリスタで読んだ記事によると、彼らはチャイナ資本でいまでもグダグダなようでFFP(ファイナンシャル・フェア・プレイ)に引っかかっているらしく、今季終了後にはドンナルンマなどスター選手の売却を余儀なくされるとのこと。
17/18UEL ACミラン vs アーセナルの論点
ACミランのクオリティ
イタリアリーグは観ていないし、戦前の評価からどれだけ強いチームなのか戦々恐々としていたが、正直なところ、ミランがここまで悪いチームだとは思わなかった。そう思った人も多かったんじゃないだろうか。
彼らは13試合負けておらず、最高潮に自信満々であの程度のクオリティということは、下手すると彼らはPLのボトムチームよりも弱い。
この試合が特別に悪かったのかもしれないが、それにしてもこっちが唖然とするようなパスミスや判断ミスをやらかしすぎていた。ビルドアップで簡単にプレスに引っかかるし、単純なパスミスが多く、アーセナルにとってはゴール前にクロスやスルーボールのほうがいやなのに、可能性の低いミドルシュートを連発。まるで超絶悪いときのアーセナルを見ているようだった。
はじめは緊張しているように見えたアーセナルの選手たちも、時間がたちミランの選手たちのできの悪さを見るにつれ、次第に自信を回復していくようだった。彼らのようにプレイされれば、逆にアーセナルにとっては与し易かっただろう。
もちろん、アーセナルは弱いチームにだって簡単に負ける。ホームでのセカンドレグでも細心の注意を払う必要があるけれど、このアウェイマッチはアーセナルが自信を回復するには十分すぎたと思う。週末のリーグ戦(ワトフォードH)で勝てば、来週のセカンドレグはより自信をつけて臨めるはずである。
エジルが結果を出す
BBCはミキタリアン、SKYはエジルがMOMだったが、ぼくはエジルを推したい。ショートカウンターからワンタッチで出した最初のミキタリアンへのアシストも、次のラムジーへの絶妙なスルーボールもどちらもエジルならではという感じで、非凡なものだった。
Here’s to the next 💯#WeveGotOzil 〽 pic.twitter.com/bFKYLNuFBq
— Arsenal FC (@Arsenal) 2018年3月8日
彼はこの試合でゴール+アシストが100に到達。おれたちのマエストロにとって記念の試合となった。
相変わらずマーティン・キーオンらがエジルに対してネガティブキャンペーンを行っているが、この試合では見返したかたちである。このまま活躍を続けてほしい。
よかった選手
攻撃の選手以外では、チェンバースが意外によかったと思う。彼はベレリンの代役で荷が重い部分もあったはずながら、RBを無難にこなしていた。逆にベレリンのように上がりすぎないことが功を奏したともいえる。試合開始当初はなかなかパスが回ってこなかったが、彼の落ち着いたボールさばきを見たチームメイトたちがパスを出し始めたように見えたのが微笑ましかった。信頼はこうして勝ち取っていくんだなと。
相変わらずハイボールは苦手なオスピナも重要なセーブを見せるなど、比較的安定したプレイを見せたと思う。もしこの試合がチェフだったらと思うとちょっと怖かったかもしれない。すでにチェフはアーセナルにとってアンラッキーチャームになりつつある。ペナルティストップの連続失敗記録もひどいものだし、こちらも記録がかかった200クリンシートの失敗はもう10試合連続とかなのだ。リーグもオスピナを起用したほうがマシかもしれない。
怪我?のコラシナツと交代で入ったAMNは、とてもよかった。彼の落ち着きようは尋常じゃないな。ミランのどの選手よりもフットボールセンスがあるように見えた。ときに落ち着きすぎでひどいパスミスをすることがあるのがたまにキズながら、この試合ではいい集中を見せていて終盤の左サイドは盤石だった。彼がこうしてトップレベルで着々と経験を積み重ねていることが後々利いてくるはずである。素晴らしい。
悪かった選手
これはダントツでムスタフィを筆頭に上げざるを得ない。ミランの選手たちが唖然とするようなミスを犯したと書いたが、それを合わせてももっとも悪い印象を残したのがムスタフィだ。彼はいったいなんなんだ? わざとやってるんじゃないかというびっくりするようなミスをたびたび繰り返していた。家族を人質に取られていたとか、フリーメーソンとかロスチャイルドとか徳川埋蔵金とかそういう陰謀論を疑いたくなるほどである。
それと、アーセナルのパスミスの多くはCBのふたりがだいぶ稼いでいたと思う。アーセナルはコシエルニやムスタフィに可能性の低いロングボールを蹴らせるのは禁止してはどうか。あれでは何のためにあんな低い位置にジャカが張っているのかが全然わからない。ジャカはもっと中盤でイニシアティブを取ってほしい。あんな安全なショートパスだけのつなぎ役ではあそこに陣取っている意味がない。
ジャカといえば全体的には無難にプレイしたと思う。でも最後のミドルシュートだけはボスも激おこだったな。「ふざけんな」っていってたよあれ。あと数分守るだけなのに、敵陣に相手を押し込んでいる状況であんなどうでもいいミドルシュートを選択するなんて気の緩んでいる証拠。いいとこないなジャカは。
ウィルシャーはちょっと身体のキレがない様子に見えた。たびたび囲まれてボールを失っていた。5メートルの爆発をまた見せてほしいんだが。
さいごにウェルベック。なんか最近ウェルベックが岡ちゃんみたいに見えてきた。とにかくハードワーカーだし、憎めないんだけど、点取れよっていう。CFでチャンスもちゃんとあって得点だけできないってやっぱりセンスだよなあ。
記録の数々
いくつかの記録的なスタッツがあるようだ。
- アーセナルはヨーロッパの大会でラスト16のファーストレグに勝利するのは、2011年のバルセロナ戦(CLで2-1)以来
- アーセナルはEL/UEFAカップで2002年以来初めてサンシーロでACミランに勝利したチーム。ミランは10試合負け無しだった
- アーセナルの勝利でミランの13試合無敗が終わる。ミランにとっては12月以来の敗戦
- エジルがアーセナル189試合で彼が絡んだ直接の得点は100に(37ゴールと63アシスト)
- エジルは今シーズン5ゴール、9アシスト。アーセナルでもっとも得点に直接絡んでいる
- アーセナルの得点でミランの無失点は599分で終わる
試合スタッツ
やっぱりなあ。ポゼッションが低ければ低いほど勝率高いんじゃないか?
UELラスト16ファーストレグ結果
まだ知らない人いたらゴメン。
アーセナルのアウェイ勝利に驚いている人も多そうだが、BVBがホームで負けているのがやった!という感じである。ザルツブルグ? おお南野拓実か。彼は交代出場したようだ。マルセイユには酒井宏樹がいるし、わりと日本人もいるんだなあ。
アトレチコやリヨン、スポルティングあたりは順当だろうか。アーセナルが勝ち続ければアトレチコは避けられないはずだが、今回のBVBのように上位進出の本命がスリップするようなことがあると、俄然アーセナル界隈は盛り上がりそうだ。
以上
次は日曜のワトフォード。ホームである。「アーセナルは玉ナシ」発言のトロイ・ディーニーに大いなるブーイングが降り注ぎそうな一戦。勝たないと。COYG
このブログ面白いですね
ミラン戦の各選手への評価は概ね同意です。
でもジャカに関しては、若干彼の肩を持ちたくなります。この試合に限らず、アーセナルはサイドを広く使うようなアタッカーが居ないので、ジャカ得意のロングパスを披露する環境が無いように思えます。みんな中央に寄ってパスを受けたがるので、ショートパスを繋ぐしかないのかと。
最後のボス激おこシュートも、みんな疲れ果てて動けてない状況で、フリーでシュートコースが空いたならジャカらしくチャレンジして良かったと思います。どうせ後半はフィニッシュまでいく場面無かったし
中途半端にボテボテの枠内シュート飛ばしてキャッチされるよりは、ああやって景気良く打ってくれる方がマシです。
こんにちは。コメントどうもです。
ちょうどぼくもアーセナルのワイドアタッカーについてはここしばらく考えていて。
いまイングランドのトップサイドはみんな足の早いサイドで輝くアタッカーを使っているのに、サンチェスが消えたアーセナルにはひとりもいないと。
CFの後ろにふたりのNo.10。それも時代遅れといわれる理由なんでしょうねえ。
ジャカはなるほど。そうすよねえ。この試合はたしかに頻繁に上がるベレリンもモンレアルもいなかった。
でも最後のシュートは擁護できないかなあ。あそこはそもそもシュート打つ場面じゃくてゆっくり回して時間稼ぐ場面だったし。
チームが疲れ果ててるならなおさら体力温存でボール回してればそれでよかった。
確かに最後のシュートは、勝負に徹するなら時間を潰しにいくべきだったかもしれませんね。
最近のアーセナルのサッカーはなんだか窮屈で、ジャカ砲が見たいなぁなんて思ってたので「もう打っちゃえ」と念じてしまってました。
サイドアタッカー欲しいですね。居ないにしても、ベンゲル爺さんがもうちょいポジショニングの指示をしてくれたらなぁ…
> 最近のアーセナルのサッカーはなんだか窮屈で、ジャカ砲が見たいなぁなんて思ってたので
それはぼくも完全にアグリーですね。決まれば気持ちいいですもんね!