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Arsenal, Controversy, Player, Transfer

ラムジーの夏のユヴェントス行きが決定と報じられる。アーセナルにとって彼の放出は本当に正しかったのか?

アーロン・ラムジーの行き先はついにユヴェントスに決まったようだ。

公式発表はもちろんまだないが、シーズン終了後に移籍するというプリコントラクトの締結間近と各メディアが伝えている。明日トリノが代理人入りするとか(ロンドンの代理人入りよりわかりにくい)。

Arsenal’s Aaron Ramsey agrees five-year deal with Juventus worth £36m

アーセナルがラムジーとの契約更新をしないことが伝えられて以来、ユヴェントスだけでなく、PSG、RM、バイエルンといった名だたるビッグクラブがこぞってラムジーの獲得を目指したと云われるが、結局はイタリアNo.1クラブが仕留めた。

体制の変革の時期でクラブ内に多少の混乱があったとはいえ、ラムジーの退団は紛れもないアーセナルFCサイドの選択だった。

財政状況が厳しいなか、アーセナルが彼をフリーで行かせることは本当に正しい選択だったのか。あらためて問いたい。

まずは『Guardian』に比較的詳しい契約内容が書かれていたので、ユヴェントスが支払うであろう彼の獲得コストについて考えてみたい。



選手獲得コスト=移籍金+選手給与×契約期間+アルファ

ラムジーについて書く前に、まずは選手獲得についての基本的なところから。

移籍市場のニュースなどを見ると、まず「移籍金(相手クラブに払う違約金)」が大きくクロースアップされる。選手価値を現す尺度としてはもっともわかりやすいからだろう。

しかし選手を獲得するということは、その後には契約期間中選手を雇用するということで、移籍金に加えて契約期間分の選手給与、それにボーナスなどのプラスアルファのコストがかかる。

実際にその選手を獲得するクラブにとっては、移籍金は選手獲得に関してかかる全体のコストの一部であり、それ以外の部分も大きい。

メディアが移籍金の多寡ばかりをセンセイショナルに囃し立てる一方で、クラブはそれも含めた選手雇用の全体コストで選手獲得を検討している。

したがって移籍金だけに注目していると、ときにクラブの挙動が不可解に映ることもある(移籍金は十分安いはずなのになぜか獲得しないとか)。

とはいえ、選手価格がどんどんインフレする現在ではとくに、どんなクラブにとっても契約満了で移籍金という大きなイニシャルコストが発生しない選手というのは魅力的である。

選手はフリーエイジェントで有利な契約が可能に

一般に人気選手の場合、フリーエイジェント(契約切れ)になると獲得競争が起き、移籍金がかからない分契約期間や選手給与といった選手サイドへのオファーが高騰していく傾向がある。

今回のラムジーについても同様で、われわれアーセナルのファンが考えていた以上に高待遇でのイタリア移籍になるようだ。

ユヴェントスがアーロン・ラムジーにかけるコスト。※イタリアでは金額が税引後?

今回のラムジーのイタリア移籍に関する報道で、ガーディアンのように具体的に「5年で36Mポンド、週給140kポンド」と契約金額について言及されているものがあるが、この金額について「税引き後」の金額であるという指摘がある。

イタリアではそういう習慣があるらしい。この週給は税引き後なので要するに手取りだ。われわれアーセナルのファンが普段目にしているのはイングランド式に手取りでなく総額(税引き前)であるそうな。

BBC Sportsのようなメディアはまだ正式に報じていないが、どのような金額で報じるか注目したい。

ググるとイタリアのプロフットボーラーの所得税は43%と定められているということなので(イングランドでは50%)、イタリアで36Mポンドの契約はイングランド式に税引き前で表記するなら、およそ「63Mポンドの契約」となるはずである。

同様に週給もイタリアで140kポンド(税引き後)ならば、イングランド式では、週給はおよそ「245kポンド」となる。びっくりするくらい巨額ではないか。

くだんのガーディアン記事では、週給140kポンドでクラブでクリスチャーノ・ロナウドに次ぐ高給になる(ディバラやダグラス・コスタより上)というのだから、この税引き後説はおそらく正しいのだろう。

アーセナルで245kポンドといえば、エジルよりはまだだいぶ下だが、200kあたりと云われるオバメヤンやミキタリアンよりも上のレヴェルである。

これはラムジーがアーセナルに求めていたと云われる希望額を大幅に上回っている。ラムジーサイドもぐうの音も出ないほど納得の高待遇だということだ。

ラムジーほどの選手といっては失礼だがここまで給与が高騰したということは、ほかのビッグクラブとの争奪戦があったことが伺われる。

もし2018年夏の残り契約1年での移籍だったら……

ところで、もっと前のタイミングで今回ラムジーにそれなりの移籍金が発生していたら、ユーヴェのこの高待遇は準備できただろうか。いや無理だっただろう。

この大きな選手給与を提示できたのは、本来かかるべき移籍金を給与コストに組み替えたから出せたものに違いない。

もしアーセナルがラムジーの残り契約が1年未満になる前に売却を試みたとしたらどうなっていたか。総予算63Mポンド(税込)で考えてみよう。

もし移籍金が40Mなら、給与に使えた残りは23M(5年・年俸4.6M・週給89k)

もし移籍金が30Mでも、給与に使えた残りは33M(5年で年俸6.6M・週給128k)

となり、もちろん今回のプリコントラクトの「週給245k」には遠く及ばない。これくらいのレヴェルのオファーならアーセナルの提示した条件にも勝てなかったはずだ。

おそらく半年前の時点で63Mの総予算だったら、ユーヴェはラムジーに魅力的なオファーを提示することは不可能だった。2018年の夏に戦うにはもっと多くの予算が必要だったということだ。

ユーヴェは破格の待遇をラムジーのために用意したが、どうしても欲しかった選手に対して、5年で総額63Mポンドならむしろコストを抑えてかなりうまくやったと云えるのではないだろうか。

低コストでいい選手を取るというユーヴェのやり方は、アーセナルがやっている拙いチームマネジメントとはまるで正反対である。

一部報道ではユヴェントスは今月での獲得を希望したとも云われるが、残り契約半年アーセナルにとっては現金化の最後のタイミングでさらに移籍金は下がっていたはずで、その程度ならまだ出せる予算の余裕はあったのかもしれない。

ちなみにアーセナルがラムジーの新契約に提示していたと云われる週給180kポンド(真偽は不明)をイタリア報道基準での額にすると、せいぜい「週給100kポンド」程度にしかならない。

それだって、税引き後の金額としてはまだいいほうなのだろうが、いずれにせよユヴェントスの給与オファーが巨大なことには変わりない。

ルールではそのシーズンで契約が切れる選手と外国クラブがプリコントラクトの交渉ができるのは1月に入ってからだが、実際には当然エイジェントが水面下で動いていただろう。だから、移籍金なしでの獲得を前提にしたビッグクラブがちらつかせるオファーに対して、アーセナルがより好条件を提示できるチャンスなどほとんどなかったに違いない。

それでもラムジーはアーセナルを選ぼうとしていたっていう泣ける感動ストーリー。。

ラムジーの契約更新をやめた判断が問われる

ラムジーは冬の移籍市場が始まってからも、ある種の目玉物件(お買い得)として連日メディアを賑わせていた。

今日(昨日)ユーヴェ移籍が決まったと報道されてから、SNSなどでもまたあらためてクラブのラムジーを手放すという方針への批判がヒートアップしているように感じる。

たしかに、去年のラムジーとの契約更新を途中で断念するという一連のラムジー騒動は、ファンにとっては納得しづらいことが多すぎた。

何度も云うようにぼくは個人的に彼の大ファンではないが(別にキライなわけじゃないよ)、いまのスクワッドならむしろラムジーは必要な選手だっただろうし、何よりエメリのようなインテンスなプレイを好むコーチが、ラムジーのようなハードワーカーを軽視する理由もいまだによくわからない。

このようにビッグクラブの多くが食指を伸ばした彼のような選手が、現在エメリのファーストチョイスではないということはちょっとした驚きではないだろうか?

ブリティッシュ(ウェールズ人)でHG、28才というピーク年齢、クラブに10年在籍という中心選手、チーム戦術にマッチしていて、現在は調子も悪くない。ふつうに考えればPLクラブなら当然キープしたい類の選手だ。

伝え聴くところによれば、アーセナルとの契約延長交渉において、当初憶測だけで多くのファンから批判もされていた彼サイドが要求していたサラリーも、そこまで非現実的なものでもなかった。

そしてなにより、ラムジーがなぜか一度出してから取り下げられたオファーを受け入れようとしていたという事実がやるせないことこの上ない。

当然おおっぴらにはできなかっただろうが、彼にはその時点でもすでにアーセナルより好条件を出すオファーはいくつもあったと思うのだ。今回のユーヴェのように。

それでもラムジーはアーセナルに残ろうとした。受け入れるタイミングは誤ったかもしれないが、少なくともアーセナルの選手としてキャリアのピークを終える決心はできていた。

残り契約が少なくなるにつれ、忠誠心があるのかないのかわからない選手がいるなかで、クラブが大切にしなければならない選手だったと思う。

本当にラムジーのことでクラブの判断が批難されるのは、今後のラムジーの来シーズン以降の活躍にかかっているだろう。

彼には活躍してほしいようなしてほしくないような複雑な気分である。



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One Commnet on “ラムジーの夏のユヴェントス行きが決定と報じられる。アーセナルにとって彼の放出は本当に正しかったのか?

  1. 悲しくなる。
    泣きたくなる。
    ラムジーは、ポジションは難しい選手だったかもしれませんが、
    とてもワクワクする楽しい神出鬼没な選手でした。
    あと4ヶ月でいなくなるなんて・・・

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