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Arsenal, Arteta, Controversy, Data, Tactics

20/21シーズン序盤のアーセナルのまずさ

さらにアーセナルのファクツ

一週間ほど前の『The Athletic』で、こんな記事があった。※要課金

Arteta’s shot-shy Gunners: Quality chances but slow build-up blunting Aubameyang

シュートを打たないアーセナルの現状をいろいろな角度から指摘した記事で非常におもしろかった。

アーセナルの「遅い」フットボール

そのなかのひとつに、アーセナルのフットボールは<遅い>というのがある。アーセナルほどゆっくりボールを回すチームはないと。

アーセナルの試合の平均ポゼッション(※ボール保持の入れ替わり?)が「82」。これはリーグで最少だそうである。

それだけボールを持ったら奪われないようにするし、加えて云うならばボールを失ってからもボールを奪い返すまでに時間がかかるということだろう。アーセナルはポゼッションだって52.6%(リーグ11位)と大したことないのだから、つまりそういうことだ。

攻守の切り替わるテンポが遅い試合をやるチーム。

ヴェンゲルさんの時代はこれが「91」。さらにちょうど今週末に試合をするリーズ・ユナイテッドは「104」にも達するということ。リーズの試合はぼくはほとんど観ていないけれど、これだけの差があるとアーセナルの試合とはスピード感が違うのだろうね。

ところで以前、ぼくはこのブログでアルテタのフットボールが予測可能になっているということについて、スコアどおりに演奏するという意味で「ウェストコーストジャズ」になぞらえたことがあったけれど、この記事ではgunnerblog氏がアーセナルを“easy-listening jazz”、リーズを“Bulgarian techno”にたとえていた。なんというシンクロニシティ。ていうかブルガリアンテクノってなんだよ(笑い)。

べつに攻守の切り替わりが少ないことそれ自体がネガティヴなわけではないのだろうが、プレイスピードが遅いことについてはきっといいことではないだろう。われわれがチャンスクリエイションに苦しんでいるのは、ボールを持っているときにいつだって相手が目の前にいるからで、それはなぜかといえば自分たちのプレイスピードが遅いからでもあるはずだ。

アグレッシヴな守備の欠如

アーセナルの守備が受け身であるとはすでに述べたとおりだが、「PPDA」にもそれは表れていると『The Athletic』の記事は指摘している。

PPDAは、passes per defensive action(守備アクションごとのパス数)で、その数字が高ければ高いほど緩慢な守備ということになる。

これがアーセナルでは昨シーズンの「12.4」から今シーズンは「16.1」と劇的に上がっている。ただし、これに関してはここまでの8試合のタフなフィクスチャをもう一度思い出す必要はあるだろうが。リヴァプールやシティを相手にすれば、どんなほかのチームよりも守備は難しいものになる。

ボールプログレッションに難あり

もうひとつこの記事から。かなりショッキングなデータが提示されている。

アーセナルはチャンスクリエイションに問題を抱えていて、その原因のひとつはもちろんそもそも相手ハーフの深い位置までボールを運べない、ボールプログレッションに問題があるとは広く認識されているが、アーセナルがファイナルサードにボールを入れる割合はたったの「35%」しかないということ。

ボールを持ってそれをアタッキングサードまで運べるのは、じつに3回に1回程度。これはPLで20チーム中14位だそうである。

では回数ではどうか。アーセナルがアタッキングサードで攻撃(ポゼッション)を終えた回数は、試合平均で「29」。これはPLで19位という。。

©The Athletic

数シーズン前のヴェンゲルさんのチームが「44」というのだから、そこから恐ろしく劣化している。そしてリーズ。。

この記事ではアタッキングサードへのパスをジャカとルイスに頼りすぎということも問題点として挙げているが、そこはロングボールに頼りすぎと云い換えてもよさそうに思える。

このブログでも何度も繰り返し指摘しているように、現状のアーセナルではピッチ中央・ライン間でプレイする選手がいないため、ボールを前に進めるためにはUシェイプでボールを回すか、あるいはミドフィールドを省略してロングボールを使うしかなくなってしまっている。

われわれがリヴァプールのような精度でプレイできない以上、ボールプログレッションにおいてはこれは大きな問題である。

解決策?

やれること/試せることはいろいろあるんだろうと思う。

オバメヤンを中央に置いたり、プレイメイカーを置いたり、バック4にしたり。

ヴィラの敗戦はアルテタにとってもショッキングなものだったはずだから、この2週間が終わってからチームがどうなっているかはとても興味深い。

最近またザルツバーグのドミニク・ソボスライや、ホッセム・アワーについて移籍の噂で、アーセナルのファンたちが盛り上がっているのを目にしたりするのだけど、正直云ってぼくはアルテタがいまのチームの戦いかたを維持したままなら、彼らがいてもチームは大して変わらないんじゃないかと思ったりする。

いまのチームにアワーが加わっても若いウィリアンにしかなれないんじゃないかとか。わからないけど。少なくともこの保守的な戦いかたをしている限りは、多少選手が変わったくらいで劇的な変化が現れるようには思えない。

それよりも、アルテタがいまのスクワッドで最適解を見つけるほうが先だ。そこに至ってないのは明らかだし、いまのチームでも進歩できる余地がかなりあるように思える。

週末に戦うリーズはどうもアーセナルとは対照的なチームであり、今回もまたビッグテストになる。

アルテタがこれからどう課題を乗り越えてゆくのか。緊張感をもって注視していきたい。

COYG



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3 Comments on “20/21シーズン序盤のアーセナルのまずさ

  1. このデータからいうと、仮にオーバを中央に置いたとして、
    オーバにパスをつなぐ方法(フォーメーションやメンバー選び)に変化がなければ、
    大して変化はないということですかね。
    まぁオーバのとんでもない決定力からすると得点は増えるかもしれませんが・・

    アルテタはウィリアンに動きすぎないよう指示したっていう記事があった気がしますが、
    個人的には間違ってないと思うんですよね。要は幅を大きくとって、相手DF間の距離を長くする。
    空いたスペースに飛び込んだり、飛び込んだ結果、ラインが崩れたところを突くとかを
    やりたいんだと思うんですよねぇ。

    シティでいえば、そのキーを握ってるのがデブライネだったり、シルバだったりしたわけですけど、
    そういう選手がいないってことでしょうね。正直思い浮かびませんもんね。

    今でも割とよくやってると思うけど、ベジェリンのパスとかシュートの精度がもう少し上がるだけで
    かなり違うと思うんですけどね。逆にいうと、左サイドは中にカットインするプレー少ないですよね。KTもサカも割と縦に抜けることが多いような。。

  2. ティアニーを下げて3-4-3にした当初はルイスとムスタフィだったから、少々創造性を欠いたサッカーをやっててもロングパスでチャンスを作れたと思う。
    トランジションに備えて全員がマーカーの正面にポジしてても(chanさんの嫌いなやつだ)、ロングパスはあまり関係ないから。

    トランジションやプレスに対する意識を捨てない前提で言うなら、中盤でグラウンダーをカットされる心配がないから前線で多少の自由度を作れた、とさえ言えると思う。

    ガビ・ホールディングは足元は上手いけど、ルイスのロングパスの代わりになるか?というとかなりハードルが高い。
    まして今CB・DMFは全員初顔で、しかもプレシーズンはゼロに近かった。
    連携はないと考えるのが自然だと思う。

    僕は4バックにもプレメーカーの起用にも賛成だけど、連携を作るのには時間がかかると思う。
    中盤で頻繁にカットされるようだと、よけいに全員がマーカーの正面から動けなくなってしまう。
    そこで「じゃあトランジションなんて気にしなくていいや」になるくらいなら、僕はロングパスのほうがまだましだと思う。(まあルイスとジャカは別の意味で怖いので微妙だけどw)

  3. 攻守の切り替えが遅いのは気になってました
    折角プレスでボール取ってもショートカウンターにいかずに横パスばかりですから…
    攻撃の形をはめすぎてて相手からしたら怖くないでしょう
    勝てない上にboringなサッカーが結局まだ続くんでしょうか
    IB明け何か変化を求めます

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