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アーセン・ヴェンゲルのフットボール改革。オフサイド、キックイン提案いろいろ

アーセン・ヴェンゲル「ゲイムをよりスペクタキュラーにしたい」

FIFAのYouTubeチャンネル「FIFA TV」2021年3月にアップされた、Living Football | FIFA Football Magazine Show | Episode 4より。拙訳にて失礼。

フットボールをもっと楽しいものにするために

(アーセン、過去を振り返る前に未来について語りましょう。わたしたちのゲイムの最も美しい部分である「ゴール」がもっと増えるかもしれないのですから……)

ヴェンゲル:ゴールが増えること。それはつまりわれわれが、ゲイム(試合)をもっと派手に、もっと速く、もっと観ていて楽しいものになるようにしたいということ。そして選手も同様。

わたしの周囲には、このゲイムをより魅力的にできるか考えているひとたちがいる。(フットボールは)いま世界でもっとも人気のあるスポートだが、そこにはトリックがあるとも思っていて、進化を拒んだり、立ち止まっているだけでは悪くなってしまうかもしれないのだ。

(具体的には? 新しいアイディアをお持ちですよね?……)

わたしには新しいアイディアもあるし、たくさんのアイディアズもある。もちろん、それらを実験するためには精査されねばならず、そこから結論を得ていく。

そのうちのひとつは、オフサイドルールを少しばかり変えるために、オフサイドルールを使うこと。

オフサイドルールの変更

(あなたはIFABの年次MTGでそのアイディアを開陳しましたが、もともとそのアイディアはどこから来たのでしょう?……)

基本はVARの利用が開始されたことだね。なぜならオフサイドのルールは、不確定な場合に使われるものであり、レフェリーはストライカーに対して大目に見たり(benefit of a doubt)していた。そしてVARでは、そういったことがなくなってしまった。

なぜならVARはその正確性から、つねにストライカーには少しだけ不利になる。なぜならゴールの前にはほんのちょっとだけ前に出たりするから。いまやVARのおかげでそれが許されることもなくなった。悪いね、キミの身体のほんの一部分が前に出ていた、だからゴールは許可できないよと。

これはちょっとしたアンチ・エモウショナルだ。それによってわれわれもたくさんのフラストレイティングな状況を観てきた。

(これまでオフサイドルールの変更はかなり珍しいことでしたので、FIFAプレジデントのGianni InfantinoがIFAB会議のあとのプレス会見で、それについて語ったことを聞いてみましょう……)

インファンティーノ:われわれは、変更の可能性があるオフサイド法についてテストをするつもりだ。オフサイド法の変更は、実際IFABの135年の歴史のなかで2度だけ行われたことがある。

最初は1866年から。3人の選手が後ろにいなければならなかった。そして1925年にはふたりに変更され、つぎの1990年にはアタッカーはディフェンダーのラインの内側にいなければならなくなった。

IFABとしてのわれわれの目的は、IFABの仲間たちとも話していることだが、それはつねにフットボールをより魅力的にできるかどうか観ていくこと。もちろんその本性は失わずにだ。

オフサイド法に関しては、ゲイムのスピードをともなう変化であり、VARの使用開始によってオフサイドかそうでないかは明確になった。VARがなければレフェリーがそれを決めていた。

われわれは新しいルールで、フットボールがより攻撃的になる可能性があると考えている。

(なるほど。では明確にしましょう。現状のルールでは、ゴールするときに使える身体の一部が出ていればオフサイドですが、もうそれだけではオフサイドにならなくなると。これから何が変わるのか、何が変わる可能性があるのでしょう?……)

ヴェンゲル:わたしたちが提案していることは、ゴールに使える身体のどの部分であっても、ディフェンダーと並んでいるかぎりは、ゴールしてもオフサイドではないこと。

(オフサイドではないんですね? ではアタッカーが一歩先を行けるということ……)

そのとおり。だいたいは。

(それで試合はどうなるのです? スタティスティクスでは?……)

つまり、われわれもまずはそれを分析せねばならないということ。ディフェンダーの戦術上のインパクトがどうなるか。深く落ちねばならなくなるのか、あるいはオフサイドでよりアグレッシヴになるのか。試合のなかでの頻度も。

われわれもこれまでの平均についてはわかっている。PLでは試合ごとに平均4つのオフサイドがある。われわれの分析によれば、それはふたつしかなかった。だからさらにふたつがありえるわけだ。しかし、もっと重要でない場面では、選手が期待していたよりも大きなアドヴァンテッジを得られたかもしれなかった。だから、われわれは実験をせねばならない。

そして、これが起きるだろう。われわれが計画していることは、それを実験すること。ナショナルシーズンのあいだに、6ヶ月プレイする、シーズンの半分で、正式なルールと、シーズンの半分は新しいルール。それで結論を出すと。

(それでわかるわけですね。では試合の動画で説明してもらえますか?……)

<※ヴィデオクリップで説明>

ここでは、このフランス人ストライカーの身体の一部がオフサイドになっている。しかし、われわれのルールではもうこれはオフサイドにならない。なぜなら、ゴールできる身体の一部がディフェンダーと並んでいるから。

こちらは女子ワールドカップ。この女性もここでオフサイドになっているが、われわれのルールでは彼女はオンサイドになる。

(これが試合をより魅力的にすると……)

試合では危険な状況とゴール、得点できる状況がもっと生まれるようになっていく。

(ここまでの提案の受け入れはどうですか?……)

わたしは自分のチームとともにコンサルテイションを行っている。世界中のマネジャー、ディフェンダー、ミドフィールダー、ストライカーたちと。それらをまとめてみると、ディフェンダーたちは反対していたとか(笑)。

(それは驚きましたね!笑……)

ストライカーたちはみんな賛成。ミドフィールダーたちは半々。

だからこのアイディアは拒否されているわけではなく、全員が反対しているとは云えない。ディフェンダーは失点したくないのだから当然理解できる。

オートメイテッドオフサイド

(つぎは、「オフサイドの自動化」automated offside の話を聞いたのですが説明をお願いできますか?……)

いまわたしたちは選手がオフサイドかそうでないかを、オンラインかどうかで観ているが、それを待っている平均時間は71秒で、1分のときもあれば20秒のときもある。難しい状況のときは、もっと長く感じるときだってある。

われわれの自動オフサイドは、たぶん2022年には準備できているはずで、自動化というのは、つまり信号がラインズマンに直接送られ、ラインズマンは腕時計の赤い光でオフサイドかどうかわかる。

(フットボールでは感情面も重要なものですよね?……)

とても重要。わたしたちも、そのあとの判定でキャンセルされたたくさんのセレブレイションを観てきた。だから、これはとても重要なステップだと思っている。

凖自動化はまずVARからラインズマンへの信号を送ることで実施される。しかし、わたしたち、とくにわたしは、自動オフサイドをかなり積極的にプッシュしている。ラインズマンには直接信号を送るということ。

<※中略>

ヴェンゲルの目標

(あなたのFIFAチーフオブグローバルフットボールとしていまの目標はなんですか? オフサイドルール以外で……)

オフサイドルールは、わたしの責任のなかでは小さな小さな一部分に過ぎない。

できるだけシンプルにそれをまとめるなら、FIFAはこれまでおもにコンペティションの運営を行ってきた。とくにワールドカップのような巨大なコンペティション。それと、ゲイムのルールの守護者として、とても力強く守ってきた。

そしていまでは教育的な役割も担っている。わたしもその一員であり、FIFAプログラムのなかでそこを拡げていく責任がある。世界中でコーチを教育し、選手を教育すること。そして、教育を通してゲイムをより美しくしようと努めている。

わたしの主な責任は、フットボールコミュニティのために、リサーチセンターをつくり、オンラインアカデミーをつくること。公共のためにも。

またそれの別の側面として、トップゲイムについて、洗練されていて、しかしシンプルな分析。それをファンや放送事業者に説明していく。

2年ごとのワールドカップ

(あなたはFIFAワールドカップは2年ごとに行ったほうがよいとも主張されていますね?……)

そう。なぜなら、いまどきはみんなが望んでいることは、意味のある試合だけだから。みんな単純なゲイムは望んでいない。そういう危機感がある。たとえば、4年では制限になり、ワールドカップがその地位を失うかもしれないとか。

わたしはそうは思わない、毎年開催している大きなコンペティションもあり、その地位はコンペティションのクオリティに関連しているのであって、期間ではない。

一方でわたしが信じているのは、これはより小さな国々にとってワールドカップへ行くチャンスが増えるということ。48のナショナルチームスが参加するが、ワールドカップに出られる機会があれば、彼らに発展を促すことになる。より大きなチームとも競える。

それと、いまヨーロッパとその他の地域では、巨大な隔たりがある。そこでわたしたちが行っていること。211のニーズを分析し、彼らが国内で何を必要としていて、それに対応する。

だが、すでにひとつわかっていることがある。わたしにとって今日これをあなたに伝えることは重要だ。それは、コーチと選手の教育レヴェルが上がっていけば、その国にとってもFIFAランキングで上がっていけるチャンスになるということ。

おわり



※コメントくださるかたにお願い
プレヴューエントリでは、試合の結果がわかるようなコメントはお控えください
お互いリスペクトしあって楽しく使いましょう

4 Comments on “アーセン・ヴェンゲルのフットボール改革。オフサイド、キックイン提案いろいろ

  1. スーパーフォーメーションサッカー?
    昔やったなあと思ったら、子供のSWITCHの中に入ってました。

  2. ルール改正の方向性からも、ヴェンゲルさんにとってサッカーがどういうものなのかよく分かりますね。
    個人的にはオフサイドのあたりなんかは大賛成です。たくさん点の入る試合は楽しいので

  3. オフサイド以外は賛成。今すぐにでも変えてほしいくらい。特にキックインは。

    オフサイドはなぁー。今のは攻撃側に厳しすぎる反面、逆側に振り切りすぎてるからすんなり受け入れにくいなぁ。

    ルールが変われば戦術も変わるだろうから、そういう意味で見てみたい気もするけど。

    昔のバルサみたいなライン押し上げてのポゼッションサッカーは難しくなるんじゃないかってコメント見た覚えもある。

  4. おぉ、スローイン→キックインの件は小生完全に勘違いしていたので、このエントリは大変に助かりました。オウンハーフに限定するのであれば大賛成です。

    尚、ナスリ氏のトレンド入りは、小生の観測できる範囲でもその体型が話題になっていたからかと、、、

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