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アーセナルFCが20-21シーズンの決算を報告。過去最大の赤字を計上す

こんにちは。

気になるウクライナ情勢。プーチンが核兵器の使用をほのめかしているというのは、マジヤバですな。BBCのようなメディアすら「誰もが驚いたウクライナ全面侵攻が現実となったいま、ロシアの核使用の可能性も完全に除外できない」と報じているほど。誰の意見も訊かない狂人の独裁者が、ほんとうに大量殺人兵器をぶっぱなしかねないとは。これは現実なのか。事実は小説より奇なりとはよくいったものである。

まさしくパブリックエネミーNo.1になっているロシアについては、フットボール世界も対応しつつある。

昨日づけでFIFAとUEFAが共同で発表した声明では、ロシアのクラブとNTはすべてのコンペティションズから一時的に出場を制限されるということ。クラブにとってはUCLやUELなどからのサスペンション、つぎのワールドカップ予選の試合もキャンセルされたということで、ロシアNTはこのままだとワールドカップにも出られないのだろう(オリンピックのようにロシアチームではなく、名称を変えて、国旗掲揚や国歌斉唱もなしで参加する道はあるのかも。ただしいずれにせよ予選でプレイできないのではそれも難しいか)。

ぼくはこの件では、ロシアの富豪がオーナーのチェルシーがどうなるかが、もっとも気になっていたが、プーチンに近いとされるアブラモビッチはいまだになんら制裁も受けておらず。彼のサイドが出している声明も、フットボールファンが納得できるようなものではないみたいだ(くわしくは追ってないけど、stewardshipがどうたらとか、プーチンの説得を試みるとか? それらについてはいろいろ議論がある)。

ちなみに、かつてアーセナルの株主だった、やはりロシアの富豪ウスマノフはEUで資産凍結されたとBBC Sportsが報じていた。彼はいまエヴァトンにかなり投資しているのですな。

これからアブラモビッチはどうなるか。チェルシーはどうなるか。緊張感をもって注視しよう。彼らになにかあれば、PLにもかなり影響が大きい。

さて、前置きが長くなってしまった。今回は、昨日AFCが発表していた昨シーズンの決算報告について伝えたい。

Covid-19の影響(無観客試合等)がかなり大きく、クラブ史上最大の損失を出したということで、クラブ財政においては記憶されるシーズンになりそう。

ざっと観ていこう。



アーセナルFC20-21シーズン決算報告「£107Mの損失」

Club financial results for 2020/21

毎年発表されているクラブの決算。DeepL Senseiのちからを借りて全訳する。※小見出しはぼくによる。自動翻訳の修正も多少した

アーセナル・ホールディングス・リミテッドは、このたび2021年5月31日に終了した年度の連結決算を発表しました。税引き後の年間損失は£107.3M(2020年は £47.80Mの損失)でした。

会計年度の業績は、コロナウイルスの大流行により、2020/21シーズンの試合の大半が非公開で行われたことが重大な影響を及ぼした。非公開で行われた試合については、チケット(およびその他のマッチデー)収入が完全に失われました。税引き前損失(未監査)は、£85M(2020年は£35M(未監査))であり、COVID-19の影響に起因すると考えられています。

当年度の業績は、以下の主要な要素に分解されます。

マッチデイ収入(無観客試合の影響が甚大)

年間のサッカー収入は£327.60M(2020年は£343M)でした。31試合のホームマッチ(プレミアリーグ23試合、うち4試合は2019/20シーズンの中断により延期、UEFAヨーロッパリーグ6試合、国内カップ戦2試合)を行ったものの、そのうちファンがいる試合はわずか2試合だった。その結果、マッチデー収入は約£75M減少して£3.8Mとなった。しかし、放送収入は、2019/20シーズンの終了とヨーロッパリーグの準決勝進出(前シーズンはラウンド32で敗退)に関連する分配金を反映して、£184.4M(2020年は£118.9M)に増加した。商業収入は、主にパンデミック関連の要因により、£136.4M(2020年は£142.3M)とわずかに減少しました。

給与(選手給与の伸びは選手が合意した賃金カットで相殺。リストラも)

賃金コスト全体は£244.4M(2020年は £234.5M)に終わり、選手賃金の根本的な伸びは、トップチームの選手が合意した賃金削減スキームを含むCOVID-19に対応したコスト削減策によって相殺されました。COVID-19の影響に対応するために実施したスタッフのリストラに関連して、クラブは£6.7Mの特別費用を負担しています。

選手の売却益(Covidによる市場の流動性悪化の影響)

選手登録の売却益は£11.8M(2020年は£60.1M)、選手ローンは£3.1M(2020年は£3.5M)となりました。選手売買益は引き続き全体の収益性に大きな影響を与え、2020/21年中に利益を実現する能力は、クラブの獲得予算がパンデミックによる財政圧迫の影響を受け、全体的な流動性が低下した市場環境に悪影響を受けた可能性があります。2020/21年を含む過去5年間の選手登録売却益の年間平均は£42.2Mです。

その他

純金融費用は£39.8M(2020 年は£13.6M)で、グループのスタジアム・ファイナンス債の償還と、グループの最終親会社である KSE UK Inc.が提供する融資による借り換えに関する単発の例外費用 £32.2Mの影響を受けています。この借り換えは、スタジアム・ファイナンス債券の重要な要素がゲー ト収益に関連していたため、パンデミックに直接起因するものでした。

£114.8Mの費用で選手登録を追加し、償却費を計上した結果、無形固定資産(選手登録)の簿価は£294.2M(2020年は£33.5M)に減少しました。

保有キャッシュ

年末のキャッシュポジションは、COVID-19と通常のシーズンチケットの更新手続きの遅れにより大きな影響を受け、期末残高は£18.8M(2020年は£110M)となりました。

KSEによるオーナー投資

重要な資金は、最終的な支配者であるE・S・クロエンキー氏が100%保有する最終親会社であるKSE UK Inc.によって提供されてきました。この年、KSE UK Inc.はスタジアム・ファイナンス債の借り換えと運転資金のために必要な資金を提供しました。財務上の課題は依然として大きいですが、クラブは所有者であるクロッケ・スポーツ&エンターテインメント社の揺るぎない支援とコミットメントを受け続けています。

以上

 

DeepLは金額をすべて「XX億XXXX万ポンド」に訳してくれたが、それだとぼくはまったく金額がイメジできないので、すべて「£XXM」と修正させてもらった。

さて、このシーズンの巨大な損失も、すでにAST(Arsenal Supporters Trust)などが指摘していたため大きな驚きはない。が、やはりクラブ史上最大の損失に直面するインパクトはある。

もっとも影響が大きかったのが、やはりマッチデイ収入(入場料収入含む)。

Covidパンデミックによる無観客試合のせいで、前年よりも入場料だけで£75Mも収入が減っている。無観客は基本的にどのクラブも同じで、フットボール世界も不景気になるわけだ。そして、なかでもアーセナルはクラブの収入に対するマッチデイ収入の依存度が高いため、よけいに無観客の打撃が大きかったという。

しかし、そんななかでも放映権収入がかなり増えているのは興味深い。118.9Mから184.4Mに増加したということは、入場料収入の減少額に近い。試合数もさることながら、やはり放映権料自体が上昇しているのだろうか。そのあたりは、フットボールファイナンスでおなじみの@SwissRamble氏のtweetsを待とう。

オーナー投資については、最近になってようやくKSEがアーセナルに私財の投資を始めたと云われていて(それはKSEの私財ではなく、あくまでAFCの金だという議論もある)、この会計のなかにも計上されているようだ。この報告のむすびにも「親会社からの多大な投資があった」と触れられているとおり。

ジェイムズ・ベンジによれば、KSEはアーセナルFCに£200Mほどつかっているのではないかという。それは、クラブのランニングコストに使われているようである。

ファンが期待しているような、選手補強に金を出しているわけじゃないということですかね。まあ、そのあたりもきっとSwiss Ramble先生がフォロウしてくださるであろう。

来シーズンからエミレーツのチケットが平均4%の値上げへ

この巨額損失ともちろん関係あるだろう、チケットの値上げもクラブから発表されていた。

Season ticket prices for 2022/23

席種を問わない全体のチケット値上げは、2014年以来ということ。このあたりは、サポーターズグループとの折衝もあったんじゃないかと推察される。

なお、年齢の若いサポーターにはディスカウントプログラムもあらたに提供されるということで、そのあたりが落とし所だったのかもしれない。単純な値上げだけだと、ファンも理解しづらいだろうし。

イングランドではチケットの価格がどんどん高騰して、観光客や裕福な人しかステディアムで観戦できなくなっているというのは、フットボール文化の衰退という文脈でよく云われていたことだ。若年層のファンを増やすのは、長期的にはクラブにも利益が多い。

チケットとえいば、アーセナルはPLのクラブのなかでもかなり高いことで知られている。『The Sun』の去年夏の記事でも、シーズンチケット(最安)の値段はアーセナルがトップ。アーセナルの£891は、1試合平均だと£47になるらしい。

首都ロンドンのクラブが高い傾向にあるのは、やはり地価が関係するのかと思いきや、ロンドン・ステディアムをホームとするWHUがもっとも安かったりする。

 

アーセナルの21-22シーズン(今シーズン)は、ヨーロッパの試合がいっさいなかったし、国内カップスも早々に敗退、全体として試合数はかなりすくなかった。とはいえ、エミレーツには観客も戻っているし、22-23シーズンはヨーロッパの舞台にも返り咲くはず。うまくいけば念願のUCLである。

チーム一高給だったオバメヤンが去り、夏に契約が切れるラカゼットも退団の可能性が高い。チームには若い選手ばかり。アーセナルは財政的にもこれからは上向いていきそうだ。その財力をつかって、チームも強化される好循環の波に乗ってほしい。

 

おわる



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2 Comments on “アーセナルFCが20-21シーズンの決算を報告。過去最大の赤字を計上す

  1. ヒットラーが1938年にチェコで使った脅しが、80年後の今でも通用すると判断したんでしょうプーチンは。自由な世界の住人ほど脅しには弱いと。僕は歴史学科のグータラ学生でしたが、こういう人間の暗部はすごく見覚えがあります。判断として間違ってないのが嫌なところで。

    ただプーチンが愛する偉大なるソビエト連邦の、そのまた恩人のカール・マルクスは「2度目は単なる喜劇だ」って二番煎じを嘲笑してたんですよね。歴史は繰り返してないと信じたいです。人間はもうちょっとマシになれると思った若い人達がいたから共産主義とソビエト連邦が生まれたんで、同じ理由でロシア人がプーチンを排除する可能性だってあると。(サッカー関係ねえし!wスイマセン)

  2. グローバル経済の時代、資源大国ロシアの強みを生かそうとしたら、逆用されて資金カットの兵糧攻めと言う状況が興味深いです。
    宣伝でも一歩以上負けてますし。

    翻ってガナーズの財布の話ですが、予想以上に甚大な影響ですね。
    分析だと観客収入以外の資金源が他のクラブに比べて少ないとの指摘もあったようでしたが、手が回らないんでしょうかね?

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