昨日の報道によると、セドリック・スアレスのフラム行きが近いようだ。
Exclusive: Fulham are set to complete the signing of Arsenal defender Cedric Soares on a six-month loan. No option or obligation to buy. Fulham will cover wages, which total close to £100k-a-week. Silva views Cedric as a key signing. Story: https://t.co/RBbGN0H9Vc
— James Olley (@JamesOlley) January 25, 2023
ジェイムズ・オリー(ESPN):<独占>フルハムが、アーセナルのDFセドリック・スアレスを6ヶ月ローンで獲得する見込み。買取のオプションもオブリゲイションもなし。フルハムは選手の給与をカヴァする。総額で£100kpwに近いもの。マルコ・シルヴァはセドリックをキーになる補強だと観ている。
アーセナルとしては、タイトルがかかった大事なシーズンで、万が一の事態に備えてRB/LBでプレイできる彼をキープしたかっただろうが、選手本人の意向を尊重したということなんだろう。彼もすでに31才とキャリア終盤で、きっと少しでもプレイ時間を無駄にしたくなかった。
さて、それはそれとして、一昨日はセドリック本人のアーセナル加入に関わった「代理人」キア・ジューラブシアン(Kia Joorabchian)の話題が盛り上がっていた。成績が低迷し、オーナーがクラブ売却の意向を示すなど、最近はまさにエヴァトン崩壊の様相を呈しているが、その舞台裏には彼がいたんじゃないかというスキャンダルな話。
セドリックだけでなく、ウィリアンやダヴィド・ルイスらは彼がアーセナルに連れてきたと云われる選手であり、この数年間では、アーセナルともたいへんにゆかりのある人物だ。
今回はセドリックの退団と、このスーパーエイジェントについて書きたい。
ありがとうセドリック
サウサンプトンを戦力外になった選手として、セドリックの意外なアーセナル移籍が実現したのは、いまから3年前の2020冬のことだった。
そこから、アーセナルでライトバックのレギュラーとしてプレイした時期はあまりなかったものの、それでもチームの重要なバックアップ選手として貢献は小さくなかった。
今回、フラムのボスMarco Silvaは、セドリックをチームのキープレイヤーとして高く評価しているということで、アーセナルでプレイした3年間がなければそれもなかったと思われる。ポルトガルNTにだって招集されたのだから、この3年間は本来彼が望むような期間ではなかったにせよ、彼にとり無駄ではなかった。
去年夏から、アーセナルからフラムへ移籍するのはベルント・レノにつづいてふたりめ。新天地でアーセナルでは得られなかった、より充実したフットボールライフを過ごしてほしい。
チャールズ・ワッツがセドリックのローン移籍について見解を述べている。
It was a tough decision for Cedric to leave this month. He’s been desperate to play, but leaving Arsenal now is a difficult call for any player, given the opportunity they have. Ultimately, his desire to play & Marco Silva’s determination to sign him made his mind up.
— Charles Watts (@charles_watts) January 25, 2023
ワッツ:セドリックにとり、今月クラブを去るのはタフな決断だった。彼はどうしてもプレイしたかったが、いまのアーセナルを去るのはどんな選手にだって難しい判断だ。機会のことがあったとしても。つまり、彼はどうしてもプレイしたかった。そしてマルコ・シルヴァの覚悟が、彼に決断をさせた。
たしかにタフな決断だ。あと半年我慢するかどうか。PLタイトルを取るチャンスなんてなかなかないのだし。ましてや、彼にも愛着があるだろうこのチームで。
アーセナルは、現在ヴァヤドリッドのRB、Ivan Fresnedaの獲得で交渉中と云われる。もしこの案件が決まっても、彼はスペインにローンバックのかたちで残るらしいが、夏にアーセナルに加入すれば、アーセナルにはRBが3人。セドリックの戻る場所はない。つまり、このセドリックのローン移籍は実質的にはアーセナル退団になるだろう。
なんにせよ、おつかれさまだ。ゴールセレブレイションの見切れ芸に幸あれ。
ジェイミー・キャラガーとキア・ジューラブシアンのいさかい
さて、そしてジューラブシアン。
ここしばらくは、彼のことがフットボール世界で注目されていた。おもにエヴァトンがらみで。現在のエヴァトンのシッチャカメッチャカぶりは、ご存知のとおり。
エヴァトンの舞台裏など、アーセナルのファンもそれほど興味ないだろうから、くわしくは書かないが。
ざっくりとした経緯としては、エヴァトンの大株主(オーナー)Farhad Moshiriとキア・ジューラブシアンの「不健全な関係」について、ジェイミー・キャラガーとSimon Jordan(TalkSportのホスト)が指摘し、それにジューラブシアン本人が、とくにキャラガーについては「学のない男の戯言」のように厳しく反論したという。
Joorabchian hits out at ‘uneducated’ Carragher and rows with Jordan over Everton influence
このひとは、以前もインタヴューでスヴェン・ミズリンタットを酷評したりと、好戦的なキャラクターなのかもしれない。
それに対し、さらに反撃したのがキャラガー。
Kia, there is no need to get personal, I’m just analysing your role in football clubs!
Involved in helping Everton to the bottom of PL 🤷♂️
Involved at QPR, which ended with relegation 🤷♂️
Your signings at Arsenal took them to 8th, now they’ve gone, they’re top 🤷♂️
— Jamie Carragher (@Carra23) January 25, 2023
キャラガー:キア、個人的なところはいいとして、わたしはただ数々のフットボールクラブにおけるあなたの役割を分析しているんだよ!
エヴァトンを助けようと関与して、PLのボトムチームに 🤷♂️
QPRに関与して、結局降格 🤷♂️
アーセナルは、あなたの契約した選手で8位になって、みんないなくなったいま、彼らはトップだよ 🤷♂️
口ケンカは後出しのほうが強いというライフハック。。そしてアーセナルも流れ弾。
「アーセナルは優勝できない」発言をはじめ、ギャリー・ネヴィルの株がますます下がっていた最近アーセナル界隈では、この発言をしたキャラガーは「最後のまともなパンディット」みたいな評価をされててちょっとウケた。
アーセナルとジューラブシアンの関係は、ぼくのブログでも検索したら、過去にいっぱい書いていて、基本的にはネガティヴなことばかり書いている。もちろんアーセナルファンで彼に好印象を抱いているものは、あまりいないだろう。むしろパブリックエネミー。
“スーパーエイジェント”ジューラブシアンは、じつはエイジェントではなかった
というわけで、この界隈では、とかく胡散臭い人物だと思われている彼だが、今回の件でredditを観ていたら、彼が正式な代理人資格を持っていないということを知った。
彼が所有するエイジェントファーム(Media Sport Investment)はあっても、あくまで彼の会社であるというだけで、彼自身はエイジェントではないという。エントリ冒頭で「代理人」とカギカッコ付きにしたのはそのため。ちまたでは、彼はスーパーエイジェントのひとりと呼ばれながら、エイジェントですらなかった。
redditには、ブラジルでは罪人だとか、マネーロンダリングをやっているとか、さまざまなネガティヴコメンツがあって、それらが真実かどうかぼくは知らないのだが(正直そこまで興味ないんで調べる気力なし)、彼がエイジェントでないという件については、たしかにTMにも彼の代理人としての名前は載っていないのは、これだけさまざまな案件に関わりつつ奇妙なことだと以前から思っていた。彼が関与したという選手の代理人情報が、それぞれ全然別の会社だったり。
彼は、正確にはサードパーティの「コンサルタント」として数々の案件に関与しているらしい。あやしさ100点満点。
コネクションを駆使して、人間関係を取り持って、実際のビジネスでは結局なにをやってるんだかよくわからないけど、いつも羽振りはよさそうで、会社のえらい人たちにも重宝されている。そういうひと、世の中にけっこういるよね。いわゆるブローカーとか、フィクサーみたいな?
云われてみれば、彼については、誰それの案件を手伝ったとか、誰それを強く推薦しているだとか、そういうエピソードが多く、彼自身が代理人を務めているという案件はなかったのかもしれない。
エヴァトンのMoshiriは、まさにその会社のえらい人で、ジューラブシアンは「彼の耳」として重宝され、かなりの影響力を発揮していたんじゃないかと疑われている。
ジューラブシアンがアーセナルで影響力を行使する時代は終わったのか?
彼のアーセナルでの影響力については、ラウル・サンレヒがアーセナルを離れることになったときに、このブログでもいろいろ書いた。
それまでアーセナルはヴェンゲルさんがスーパーエイジェントとの付き合いを嫌っていて、実質ジューラブシアンがアーセナルに深く関与するようになったのは、2018-19以降のポストヴェンゲルの時代だ。
『The Guardian』のPaxtonは、ジェイミー・キャラガーの当該tweetに対し、「そのとおり。だからアーセン・ヴェンゲルはジューラブシアンと付き合いたくなかった」と。
Spot on. There is a reason Arsene Wenger wanted nothing to do with Joorabchian https://t.co/lulizr5zmE
— Freddie Paxton (@Freddie_Paxton) January 25, 2023
だから、サンレヒが去ったことで、アーセナルにおいては一定の影響力低下はあっただろう。一時期彼は、アーセナルについて「われわれは~」のように語るなど、ほんとうに深く関与していたのだから。
そして、今回セドリックの退団で、アーセナルと彼の関係はさらに一区切りつくのか。
ただ、クラブで要職にあるエドゥと彼がマブダチという事実は残るし、それに彼はマーティン・オーデガードの移籍にも関与したと云われている。彼についてレアル・マドリッドとの取引は、結果的にも大成功だったので、ジューラブシアンで唯一のいい思い出と云える(?)。
だから、エドゥがその気なら、今後も彼のアドヴァイスは聞くことはあるのかもしれない。
ウィリアンはもちろん、コウチーニョも、かなりプッシュしていたのが彼だと考えると、ファンとしてはやっぱり今後も関係をつづけるのは御免被りたいものだが。
もっとも、今回のキャラガーとのやりとりは、ソーシャルメディアでも大いに注目されて、ジューラブシアンの評判にとってはまったくの逆宣伝になっているため、エドゥも移籍案件であからさまに彼に協力を求めるようなやりかたは今後難しくなるように思う。
ビッグクラブなら、スーパーエイジェントとの付き合いも避けて通れないにせよ、さすがにKJはマズいと。
少なくとも、ウィリアンの獲得などまだ嫌な記憶も残っているし、そのような評判の人物とクラブが関わるのは、アーセナルのファンはうれしくないだろう。いま、この最高に高まっているファンとクラブとチームの一体感に、誰が水を差したいだろうか。
ということで、これからもスーパーエイジェントとの付き合いには気をつけよう。
おわり