どうも。
アーセナルWomenのMFマナ・イワブチが、ノースロンドンのライヴァルクラブであるトトナムにローン移籍するということで、お知らせがあった。
Wishing you all the best for the future, @Buchi_Mana 👊
— Arsenal Women (@ArsenalWFC) January 18, 2023
Welcome Mana Iwabuchi! 🇯🇵 pic.twitter.com/TqI04DQrVB
— Tottenham Hotspur Women (@SpursWomen) January 18, 2023
ぼくもこのニュースにはちょっと驚いたものの、これまでの彼女のクラブでの境遇をおもえば、移籍はやむを得ないかとも思えた。女子チームのことはほとんどフォロウしていないけど、twitterなんかで試合のスターティング11が発表されるのを観るたび、ほとんど毎回ベンチ(あるいベンチ外)だったから。Jonas Eidevallの下で、チャンスを得るのに苦しんでそうだという気はしていた。
だが今回は移籍先が移籍先だけに、その意味でもファンの注目を集めているようだ。両クラブの苛烈なライヴァル関係は云うまでもないのだから。
ただ、この移籍を男子のそれと同じように観ることはできないという意見もある。
岩渕真奈がトテナムへシーズン終了までローン移籍
まず、AFCからのおしらせ。
マナ・イワブチが、トトナム・ホットスパへのローンで加入するために、アーセナルを去る。ローンはシーズン終了まで
マナはアストン・ヴィラでプレイしたあと、2021年5月にわれわれに加入した。
彼女は、2021年8月18日のUEFA WCLのOkzhetpes戦でデビューし、その試合で初ゴールまで14分しかかからなかった。
この日本代表は、そのあと28試合に出場し6ゴールしている。最後のゴールは2022年12月のWCL、FC Zurich戦9-1で勝ったとき。
アーセナルの全員がマナの貢献に感謝し、キャリアのつぎのチャプターでの成功を祈っている。
いちおう半年ローンということながら、雰囲気的に、パーマネント移籍のように感じているひとも多いようだ。彼女はもうアーセナルには戻らないのかもしれない。
岩渕真奈からのメッセージ
Instagram?より。
アナウンスされているとおり、わたしはローンでトトナムでプレイすることにしました。わたしも、ふたつのクラブのあいだにあるライヴァリーは十分に理解していますので、これはわたしのフットボールキャリアのなかでも、もっともタフな決断になりました。
しかしながら、わたしの信念はわたしのことをほんとうに欲しがってくれるクラブのためにプレイすることです。わたしはクラブとサポーターのために100%でプレイする所存です。
わたしのキャリアももう終わりが近づいていますし(わたしも年を取ったなあ!)、これはわたしの情熱であり、この決断はわたしが叶えたい目標にもとづいて決めたことです。わたしがスパーズでプレイすると決めた決断について、がっかりするひともいるかもしれません。とくに心の底からわたしを応援してくれたアーセナルファンの人たち。それについてはごめんなさい。
わたしは、どこにいてもベストを尽くします。どんな環境でもそれは変わりません。わたしは100%スパーズに、未来にコミットします。
現在のわたしにしてくれたすべての人たちに、ほんとうに感謝します。
Mana Iwabuchi
ぼくは最初に英語のほうを観て、そのあとに日本語のメッセージを読んだので、日本語のほうがちょっとウェットというか、よりソーシャルメディアの(否定的な)反応を気にしたものになっているような気がした。
一説によると、このひとは以前にミナミノ(リヴァプール)を応援すると云って、アーセナルのファンからだいぶひんしゅくを買ったことがあるとか? そんなのぜんぜん知らんかった。そういう苦い経験があるから、ことば選びに慎重になっているのかもしれない。いやな世の中だなあ。
女子チームには男子ほどのノースロンドンのライヴァル関係はない
この移籍については、ぼくの観測範囲でも想像どおりそれなりのネガティヴ反応はあるが、ポジティヴ反応や非ネガティヴ反応のほうがふつうに多かった。「トミヤスがしょんぼりしちゃう」とかそういう害のないやつ(笑い)。
その理由のひとつは、アーセナルでの彼女のプレイタイムがかなり限定されていて移籍はやむを得ないという同情があるし、それと現在の女子リーグではToTとアーセナルは競合していないということもあるようだ(競技上ではほとんどライヴァルではない)。
このイワブチToT移籍についてアーセナル世論のネガティヴ反応へのコメントと思われるが、おなじみのTim Stillman(Arseblogにコラム書いてるひと。女子フットボールのエキスパートでもある)が、こんなtweetsをしていたのが、興味深かった。※スレッド以下も
Third consecutive January that Arsenal have loaned a player to Spurs after Emma Mitchell and Viki Schnaderbeck. Loan makes sense for Iwabuchi, she wants game time ahead of the World Cup. She can do that without moving house / country now and reassess her options in the summer.
— Tim Stillman (@Stillmanator) January 18, 2023
スティルマン:1月にアーセナルがスパーズに選手をローンに出すのは、これで3年連続だ。(イワブチは)Emma MitchellとViki Schnaderbeckにつづく。ローンは、イワブチにとり理にかなっている。彼女はワールドカップ前にゲイムタイムがほしかった。これは、いまの彼女に、引っ越し/海外移籍なしでできることで、夏には落ち着いてオプションを探せる。
この移籍についての疑問に答えるもの/説明として云っておこう。WSL(Women’s Super League)におけるノースロンドンのライバル関係は、ファンの感じ方が異なる傾向があるんだ。なかにはそれを強く感じている人もいれば、クラブのレヴェルがまったく異なることや、歴史の欠如を考えると、そうでない人もいる。
いっぽうで、こうした移籍はかなり理解できるものだ。まず彼女たちはミリオネアではない。シーズン途中に、根こそぎ引っ越しや海外移籍、しかもほとんど時間もないなかでそれを行うことは、女子選手にとりけしてスムースにはならない。アーセナルからローンでスパーズへ行くことは、そうしたステップを排除できる。
なるほどっすなあ。
まずアーセナルからスパーズへの移籍はべつに珍しくないんだと。今回イワブチを裏切りだ、がっかりだなどと騒いでるのは、むしろふだんは女子フットボールなんか全然観ないし、関心もないやつらだろうという。
それと、女子選手は(男子選手のように)ミリオネアじゃないという指摘も興味深い。イワブチがどれほどサラリーをもらっているかはわからないが、男子チームの選手にくらべて多くもらっているようには思えない。
女子選手の待遇向上というのは、フットボール世界でもしばしば話題になることだが、選手の待遇がある程度競技自体の人気にもとづいて算出されるなら、男子と大きな差がついてしまうのはやむを得ない。
ちなみにアーセナルの男子チームは、あるサイトによればファーストチームで現在もっともサラリーが低いのがリース・ネルソンで(アカデミー上がりは契約更新するまでは安くなりがち)、それでも£15kpw。日本円だと約240万円/週なり。。それくらいあれば、衣食住のコストを気にする必要はあまりなさそう。彼らは地元だし。なんなら、引っ越しするにしても誰かに全部任せたり。
もっとサラリーが安ければ、あるいは外国人なら、そうはいかない。
ということで、今回イワブチが禁断の移籍をしたみたいな安易な言説には、あんまり同調しないほうがよさそうである。
岩渕選手の今後の活躍をお祈りして。
おわり
とても良い記事だと思いました。
ネットニュースの見出しだけ見たときは勝手にちょっとネガティブな印象を持ってしまいましたが、こちらの記事を読んでネガティブな感情は一切なくなり純粋に応援したい気持ちになりました。
いつもの戦術的な記事も楽しく読ませて頂いていますが、こういうものもありがたい限りですm(_ _)m