試合の論点
アーセナル vs ブレントフォードのトーキングポインツ。
アーセナルはフォームが落ちているのか。そろそろチームにロテイションが必要?
アーセナルはPL2試合連続で勝てず。PLで2連続で勝てないのは、アーセナルにとって今シーズン初めて。FAカップのシティを入れると3試合連続で勝ちなしである。
今回はひとつゴールを奪ったが、それもなんと1月22日のマンU以来、およそ3週間ぶりのゴールだった。
ここに至るまでの今シーズンのわれらのファインフォームを思うと、最近はちょっと調子が落ちているというふうに観ざるを得なくなってきた。
たしかにブレントフォードは強かったし、相手を褒めねばならない部分も大きい。アルテタが試合後に述べていたように、そのような強い相手に対しアーセナルにいい部分がなかったとも思わない。
だが、相手のやりかたが最初からわかっていたと云っているわりには、やはり攻撃面での物足りなさは否めないという気がしている。特定の守り方に対しての工夫や意図をあまり感じなかったというか。いつもどおりにやるなら、よりいっそうのクオリティを発揮する必要があった。
またこの試合はボールを奪われたときには、ことごとくオープンな争いを強いられたが、守備面でもこれまでと同じクオリティではなくなっているとも感じた。
まず、攻撃ではアーセナルがボールを7割持ったので、相手のディープブロックを崩そうとして使った時間が長かった。そこでは何度もパターン化された攻撃が繰り返されて、それがうまくいかず、観ていてもかなりフラストレイションがあった。最後の決め手になるクリエイションに欠けたという印象が残る。
ああいう相手なら遠くからのショットも有効だったろうに、オープンプレイの流れのなかでそれを積極的に試そうとする意図もあまり感じず。いくつかの宇宙開発は、なんだか苦しまぎれっぽかった。雑なロングショットを打たせることは、それこそ相手の思うツボ。
左のトライアングル(ジンチェンコ、マルティネリ、ジャカ)、右のトライアングル(サカ、オーデガード、ホワイト)がそれぞれポジションをロテイトしながらボールを回して、相手ブロックのスキを伺うというやりかたは、さすがにもうPLのどの相手にも学習されている。そのために相手がアーセナルの攻撃に対処がしやすくなっている側面もあるだろうし、あるいはアルテタが要求しているであろう、それでも相手の想定を凌駕するようなクオリティやスピードでプレイすることができていなかった。
それと、守備でもだいぶ苦しまされた。基本的にハイラインでボールを持って支配的にプレイするアーセナルは、ボールを奪われればかなりの確率でカウンター的状況が発生して、いかにも相手のやりたいような展開を強いられていた。
そして、守備で決定的だったのがサリバとトーニーの空中戦だろう。
予想どおりダヴィド・ラヤはつねにロングボール一択で(彼のキック精度も半端じゃなかったなあ)、トーニーとサリバの空中戦の機会も幾度となく訪れたが、SofaScoreの記録によれば空中戦(成功率%)はサリバが1/11(9%)で、トーニーが12/14(86% ※Optaの記録では12/13で92%)。数字だけ観ても文字通りトーニーの完勝で、サリバの完敗。10回以上の空中デュエルがあって勝率が10%を切るとは、やはり尋常ではない。こうなればアーセナルのディフェンスは苦しくなる。相手のやりたい放題。
ちなみに、失点のFKを与えたファウルもトーニー v サリバだった。あそこもトーニーは、ハイボールを競り合おうとするサリバを意図的に背負い(おんぶのように後ろ手でつかんで)ファウルをもらう巧者ぶりだった。
トーニーは、これで今シーズンのPL記録をつくってしまったという。
👥 Ivan Toney won 12 aerial duels in Brentford’s 1-1 draw with Arsenal today, a record in a Premier League match this season pic.twitter.com/BzUTtsyVjr
— WhoScored.com (@WhoScored) February 11, 2023
これは、試合前にもっとも恐れていたことで、もっともやらせてはいけないことだったはずではないのか。相手のやりかたも、彼のプレイスタイルもわかりきっていたのだから。
サリバはフランスでの充実したローン期間、かなり優秀なスタッツを残していたが、唯一?平凡な部分が空中戦で、そこは彼が今後のCBとしてのキャリアのなかで改善の余地があるとはつねづね云われていたことだ。
サリバはワールドカップ以降、疲労のおかげであきらかにフォームが落ちているという指摘もある。
最近の試合につづけて、この試合で大きな見せ場のなかったマルティネリも、同じようにワールドカップ以降のバッドフォームについて言及されがちな選手だ。
奇しくもこの試合の直前に『The Athletic』が、15-16レスターなど、過去の成功したPLチームを引き合いにして、アルテタの固定されたチームについて論じていたが、彼がレギュラーチームを固定化する傾向があるのはここで云うまでもない。
もちろん、レギュラーで長くプレイするメリットはある。だが、いまのチームを観ていると、もう少し相手に合わせてチームを調整してもいいのではないかとも思えてくる。フィットネスやチーム全体でモラルを保つ意味でも。
今回なら、ディープブロックに対して、後ろでゲイムメイキングするジンチェンコではなく(オーヴァーラッピングFBの)KTのほうが適していたという声も多いし、またサリバの惨状を観れば、空中戦や1 v 1が鬼強いトミヤスが望まれる声があるのもとても理解できる。試合中、空中戦で負けつづけるサリバを観ていて、アルテタはどうにかしなければとは思わなかったのだろうか。
ジャカもそう。あの固く深いブロック守備を崩すのに必要だったのはクリエイションで、彼のストロングポイントはそこではない。であれば最初からヴィエラでもよかったかもしれない(彼は最後のFKもあったりであまり印象はよくなかったけど)。そこにトロサールを入れてみるという意見にも、ぼくはわりと賛成だ。
アルテタが水曜のシティではなんらかの調整をするのか。あるいはまったくしないのか。
その試合は、エヴァトンやブライトンとまったく違う試合になるのは間違いないだろうから、こうした試合で起きたことはあまり参考にする必要がないとしても、いまこのチームには新風を入れたい。という気はする。
ジェズースは結局シティに間に合わなかったなあ。
VARでオフサイドラインが描かれず?? 相変わらずレフェリーに翻弄されるアーセナル
今回も誤審だと、町はもう大騒ぎさ。
問題の73分の失点シーンのフリーキック状況。
まず、ガブリエルをブロックしている相手のNo.5 Ethan Pinnock(写真手前)がオフサイドポジションにいる。オフサイドポジションにいても問題ないのは、その選手がプレイに関与していないとき。相手DFをつかんでブロックしているので、当然関与しているとみなすべきだろう。
もうひとつ、アルテタが不確かだと云っていた、ふたつめのオフサイド疑惑は、これ。
ゴールをアシストした、写真奥にいるChristian Nørgaardがオフサイドくさい。
以下はreddit有志によるオフサイドライン。うむ、これは間違いなくオフサイドであるな。
つまり、あのゴールは無効になってなきゃいけなかったんだよ。
試合後にトーマス・フランクが述べていた。「ボールがキックされたとき、たしかにEthanはオフサイドポジションにいましたと。つぎの疑問は<彼はそれほど邪魔をしていたのか?>。レフェリーたちはノーだと判断した。わたしも賛成だね!」。
まあ、自分たちに有利な判定にわざわざ異を唱えるわけもないんだけど。ヴェンゲルさんなら「わたしは観ていなかった」と云ってるやつ。
で、今回の問題は誤審があったというだけでないのは、英国でたいへんに信用あるという『Daily Mail』によれば、VARを担当していたLee Masonがこの事案をチェックするのに「VARラインを引くのを忘れた」というのですな。そんなことってある?
Exc: VAR Lee Mason forgot to draw offside lines on Ivan Toney’s equaliser in a mistake that could have a huge impact on Arsenal’s title hopes.
Christian Norgaard was offside. Had the lines been drawn, the goal would have been disallowed.#AFChttps://t.co/V2woDadQpF
— James Sharpe (@TheSharpeEnd) February 11, 2023
Chris Foy(「Mail日曜版」&PGMOL):アイヴァン・トーニーがボールをネットにいれて、Lee Masonがチェックを行った。
VARはそこにオフサイドがあるのか、ビルドアップでEthan Pinnockがガブリエルをブロックしているかどうかをチェックしていた。ファウルの可能性をチェックして、彼はそれはなかったと判断した。ゆえに、レフェリーのPeter Bankesもそれを、はっきりと明白な(clear and obvious)エラーとしなかった。
いや、ファウルもクソも「プレイに関与しているかどうか」が問題なんだから、そこでファウルのあるなしを論じても意味ないでしょうに。「Noファウル&プレイに関与」という判断は成立するはず。
しかしながら、ゴールへのビルドアップでは、トーニーにクロスを送ったChristian Norgaardはオフサイドポジションにいた。
しかしながら、事実としては、VARはラインをしっかり調査しなかった。ラインは、単純に、描かれなかった。それはヒューマンエラーだとカウントされる。もしラインが描かれていれば、あのゴールはオフサイドとして認められなかった。
PGMOL(レフの元締め団体)のフォイ氏は、ふたつめは「オフサイドだった」と認めている。
つまり誤審ではないか。これはひどい。またですか。
r/Gunners有志は、今年のアーセナルがポインツを失った5試合は、この試合を含めてすべて悪い審判によるものだったと主張している。
マンUでの誤審を、あとになってPGMOL(の一員)が認めた件は、まだ記憶に新しいが。
サウサンプトンではジェズース。
ニューカッスルではガブリエル。
エヴァトンでもガブリエル。
もしこれらすべてがアーセナルに有利な判定だったら。
これいい加減、どうにかならないのか。毎度ながらほんとうに興ざめする。
PLもPGMOLももっとこのことに危機感を持つべきだ。ヒューマンエラーとVARシステムは、関係ないんだから。VARでオフサイドラインを描き忘れたって、ルールはないんかい。それこそがありえないエラーだろう。まさか悪意?
この試合については以上
多分今季一番勝つの難しい相手だったけど、アーセナルのパフォーマンスはそこそこ良かったと思います。まったく乱れないブレントフォードの5バックをなんとか崩そうという創意工夫もあった。ホワイトのオーバーラップの頻度を増やしたりとか。結果からしてアルテタは改善点を探すだろうし、スタメンを多少変えるのもアリだけど、むしろ重要なのは自分たちのコンセプトが間違ってないと改めて示すことだと思う。まぁホントは勝ててわけだし。