hotいま読まれているエントリ

Arsenal, Arteta, EPL, Match

【マッチレビュー】23/24 EPL アーセナル vs ウェスト・ハム・ユナイテッド(28/Dec/2023)ゴールが遠い

試合の論点

アーセナル vs WHUのトーキングポインツ。

アーセナルの不安な部分が露呈した試合。そしてモイーズの術中にはまる

まず、これはWHUがうまくやっただろう。

アーセナルのファンがこの試合の内容と結果を、すべて自分たちのせいと云うのなら、それはちょっぴり傲慢だと思う。

彼らは、とにかくボールのうしろに全員いるみたいなシットバック&ロウブロックで中央を固めて、ボールを奪ったらカウンター、あるいはポゼッション、とやることがはっきりしていて、ゲイムプランを感じさせた。ボックス内の守備もカチンコチンに硬かった。そして、そのプランを完璧に遂行できる選手たちもいた。洗練されたオーガナイゼイションもあった。あんな試合でゴールがふたつもできたのはラッキーもあるが、それだけではなかった。

彼らが2-0にした時間もよかったし、その後もアーセナルがプッシュしながら徐々に疲労してミスも増えて、エナジーも減退して、みたいな試合の経過を観ていて、すっかりモイーズの術中にハマったと思ったものだ。彼はマネジャーとして、この試合がアーセナルとのアウェイ試合で初勝利ということだが、ヴェテランだけあるというか。狡猾だった。

いっぽうで、アーセナルはアンラッキーもあっただろう。

サカやジェズースにクリアなゴールチャンスがあったし、30もショッツがあって、それがひとつも入らない試合はPLでもあまりない。それがひとつでも入っていれば、エミレーツの観客を前にして試合の流れが変わった可能性はある。相手GKのAreolaを称賛すべきセイヴもいくつかあった。

それと、最初の失点のVAR。ニューカッスルにつづいて、今回もまたカメラアングル的に「はっきりした証拠がない」として、オンフィールドの判断が支持されるという消極的VAR判断。テクノロジーを恨むしかないという、お粗末なレフェリングアゲイン。まあ、ワールドカップでも観たようにテクノロジー自体は存在していて、それがPLに導入されていないというだけらしいけど。

おれは出てたと思う

VARはともかく、もしあれがはっきりゴールラインから出ていて、そのあとも試合が0-0で進んでいれば、また試合の流れは違っていたかもしれない。前半開始から、アーセナルは怖いくらいのテンポとスピードで相手を圧倒していたのだから、ふつうに考えて、失点するよりも得点するほうの可能性のほうがずっと高かった。

と、そういうもろもろがありつつ、この試合でなんだか非常に嫌な印象を残したのは、もともといまのアーセナルに内在していた問題が露呈したと感じるから。

やはり、このチームのゴールを決める能力には大いに不満がある。

圧倒的な支配やコントロール、あるいはチャンスを、肝心のゴールにコンヴァートできない。この試合でも、あんなに相手ボックスの周辺やなかでボールを持って、それなりにチャンスをつくっているようで、全体的にゴールの匂いはあまりしなかった。ブレイクスルーするような気がしなかった。ボックス内でのアタッカーたちの存在感の薄さと云おうか。今回はハヴァーツ/トロサールの身長差の影響もあって、アタッカーたちのフィジカルプレゼンスもなかった。

19試合で36ゴールは、ほかのトップチームとくらべて極端に少ないということはないものの(それでもトップ5チームのなかでは最少)、こういう試合だと頼れるゴールスコアラーがいないことが一気に弱点になってしまう。

ジェズースが来て以降も、もうしばらくアーセナルでは「ちゃんとしたNo.9」が待ち望まれているのは、こういう試合が少なくないからだろう。今回の試合を含めて、今シーズンのPLでの3つの敗け、ニューカッスル、ヴィラ、WHUでは、アーセナルは合計56ショッツでゼロゴールという。

アーセナルには、ハーランドもケインもサラーもいなくても、なんとなく楽観的でいられたのは、去年の複数の選手でゴールをシェアした実績があったから。それならそれでもよかった。試合前にアルテタが云ったように(ひとりの9に頼るよりも)ゴールを複数人でシェアしたほうが一貫性を保てると述べたのは、けっこう説得力があると思った。

だが、それはあくまで去年のああいう実績があったからで、今年はジェズース・サカ・マルティネリのフロント3の19試合までのゴール・アシストは、40%も数字が落ちているという。

それでは、メインストライカーもおらず、単純にアタッカーが脅威になっていないというだけである。

正直、9らしい9を補強すればこの問題が解決するのか、ぼくもよくわからないが、このままじゃダメという気は非常にする。

そういう、現時点でのレギュラーアタッカーの問題がひとつ。

もうひとつは、ベンチ。現状アーセナルにはアタッカーのオプションがほぼないと云ってもいいかもしれない。ジョーカーというか、ゲイムチェンジャーのようなサブ。今回、もしハヴァーツがベンチにいれば、それはプランB的な意味でよかったと思うが。ふだんは、唯一トロサールがベンチから切り札として使えるくらいか。アルテタがちゃんと信頼しているカード。

今回は最初のサブが、エンケティアとネルソン。あの状況で、このふたりにすごく期待できると思ったファンはどれほどいただろうか。チームメイトも。

ああいうときに必要なのは、なによりも期待感だと思う。「彼ならなにかしてくれそう」と思える選手。ムードが変えられる選手。スタンドもわいて、エナジーを取り戻せる。

しかし、彼らがピッチに入ることで、なにかがブーストされたか。あまりそういうふうには観えない。アルテタとしても、彼らのサブを起死回生のカンフル剤として利用したというよりは、ジンチェンコとマルティネリという低フォームのふたりを下げるという動機のほうが強かったんじゃないかと思える。

それとESR。2点を追いかける残り10分で。いや、もちろんぼくは彼のファンだから、淡く期待はしてたけど。まあ、ああいう感じでも驚かない。

理想的なアタッカーのサブ(戦術的なサブ)というものがあるとすれば、それはやっぱり、ピッチ上でなにかコトを起こしてくれそうな選手だと思うのだ。とくに、ああいう試合展開では。2-0からずっとプッシュしているはずなのに、いつの間にか膠着状態みたいになってしまって、追いかけるほうがだんだん疲労して集中力が落ちてミスが出て、エナジーを再充填するのに苦労するみたいな状況。

エンケティア、ネルソン、ESR、ぼくはみんな一人残らず活躍してもらいたいのだが、正直、いまの彼らにこの試合のああいった流れを変えるような強いキャラクターみたいなものは感じていない。

このチームは、もちろんまだ発展途上なので、理想のチーム/スクワッドデプスになるまでには、未完成部分も多いとは思うし、そんな完成されたチームを実際つくれるのかどうかもわからない。

しかし、現状の問題をこのまま放置しておくのは、ちょっと危険すぎるように感じる。この試合の攻撃パフォーマンスを観たら、とてもPLタイトルは無理だと思えてきた。

いまのアーセナルは、とてもよくコーチングされてチームプレイの完成度が高いゆえに、相手にとっては予測可能性もとても高い。ゆえに、こういう相手が完璧に準備した試合はこれまでもあったし、ロウブロックと組織だった守備に苦労して、いくら支配してもゴールが奪えないみたいな展開は今後も起きうる。

だから、アーセナルは相手に予測されていようがなんだろうが、さらにクオリティでそれを上回るか、あるいはそんな対策などお構いましにゴールをこじ開ける力強さが必要であり、無慈悲なストライカーが決定的な要素になりうる。それこそ、グアルディオラがシティでやってきたことなのだろうし、ハーランドのようなストライカーの必要性だったのだろう。

シーズン前にも、アーセナルとシティなどとの比較では、ストライカーが決定的な違いになりうるという予想もあったが、なんだかそれが現実の問題として突きつけられているようだ。

メインストライカーの補強はあっても夏だというが、1月はどうするのか。MFとDFが優先ターゲットはいいとして、アタッカーはこのままで大丈夫なのだろうか。ゴールが取れなきゃ試合には勝てないのだが。サカがケガしたら終わるのだが。

今シーズンが終わるまで、このフラストレイションを抱えながら試合を観るのはつらい。

このあと、ハヴァーツが毎試合でゴールを決めてくれることをお祈りしますか。

ラヤがペナルティセイヴ

この試合で唯一のポジティヴだったことかも。アーセナルのGKがペンを止めるのはひさしぶりに観た。

 

この試合については以上

※コメントくださるかたにお願い
プレヴューエントリでは、試合の結果がわかるようなコメントはお控えください
お互いリスペクトしあって楽しく使いましょう

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *