今年の夏のUSツアー最後の試合となったリヴァプール。ご覧になりましたか。
カラフィオーリのデビューもなく、結局試合には敗けて内容も消化不良なところもあったりと、後味はあまりよろしくない試合であった。
もちろん、ただのプリシーズンマッチでありシリアスに捉える必要はないが、いろいろと考えさせられることはあった。
これにてUSツアーは終わりで、ロンドンに帰ってPL初戦まであと2試合の親善試合。だんだんと新シーズンが近づいている。
この試合をざっくり振り返ろう。
アルテタの試合後コメント「リカルドにかける時間はたっぷりある」
試合直後のインタビューとプレス会見より。箇条書きで。AFC公式サイトより。
- スタッフと選手、新加入も含めてみんなで過ごした10日間実りが多かった
- 3-4日の準備だけでこれほどの試合ができている
- リカルドはまずファミリーに慣れること。今日はとてもコンディションが違ったので適応する必要があった
- アカデミー選手たちにも満足。これまでもみんなに機会を与えたかったができなかった。だがなかでもチャンスを掴んだものもいるのがとてもうれしい
- (試合について)とても競争力があった
- 最初の7-8分で2-0にしておくべきだった。ひとつのアクションで失点し試合が変わった
- 高い場所でボールを奪ったときやトランジションで困難があったが、そこは進歩できるし、概ね満足
- 後半はこちらが試合を支配した。勝てなかったことはうれしくない
- (コーチとしての成長?)いろんなところで。まず自省的であること、進歩できる改善点を分析し、あとは優秀な人材にいてもらうこと
- (Arne Slotのリヴァプールについて)プリシーズンの試合では良さそうだ。はっきりしたアイディアがある
- (現時点でのチームの評価)いいコンディション。今日は強いテストだった。最初はよかったがそのあとはコントロールを失った。とくにうまくやれなかったことが2点。ひとつは彼らのようなチームにトランジションでランを許したこと
- (若い選手たちについて)とても満足。これがツアーから得たいことでもあった。使ってみたいたくさんのタレントがいる
- (シーズンに向けて憂いなし?)まだ進歩はできる。この試合も最初のゴールが入っていればとても違うものになっていた。そこが目標だ。ボールをネットに入れることが違いになる。チャンスはつくっていたのにゴールはしない。そこを進歩させないと
- (フィラデルフィアでの記録的入場者数)美しいステディアム。これはフレンドリーに過ぎないが、来てくれた皆さんに感謝したい
- (カラフィオーリはつぎの試合でプレイする?)彼を管理する必要がある。ここに来るまでもとても多忙な48時間だったし、時差ボケもある。まだチームとトレインしていないし、まず彼を知るためにゆっくりとやっていきたい。たっぷり時間はある
- (ハヴァーツのゴール)よかった。彼も4つのトレイニングセッションを行っただけで、あのコンディションでプレイせねばならなかった。だが、彼はここに来る前に準備していたのだろう、とてもよいシェイプだった。調子は良さそうに見える
マーティン・オーデガードの試合後コメント「勝ちたかった」
なぜか90分フルでプレイしたキャプテン(その必要はあったろうか)。唯一のゴールをアシスト。身体の向きでカットバックと見せかけて。あれはうまかった。試合後のインタビュー。AFC公式サイトより。こちらも箇条書きで。
- (試合について)試合にはいつだって勝ちたい。プリシーズンだから、これが世界の終わりというわけじゃないががっかり。後半はよくなったと思う
- (USツアー)とてもグレイトな11日間だった。よりフィットしてシャープになった。準備はできていると思う。まだトップではないが、キックオフには準備できている
- 調子はいい。自分自身もよく休めたし、ワークできた。自分もチーム全体もシャープネスを取り戻す必要があるし、まだいくつかの試合もある
- チームともいっしょにたくさんいい時間を過ごして、お互いを知り一体感を得た、グループとしてよりまとまった
- USに来てサポーターと会えたことが素晴らしい。プレイするのも楽しかった。今日は勝てなくて残念
- またエミレーツでもファンに会うのが待ち切れない
スターティング11
SofaScoreより。
4-3-3
マルティネリ、ジェズース、ネルソン
ハヴァーツ、パーティ、オーデガード
ジンチェンコ、ガブリエル、キヴィオール、ホワイト
ハイン
サブは、ヴィエラ(46 マルティネリ)、トロサール(46 ネルソン)、MLS(70 ジンチェンコ)、ワニエリ(70 ハヴァーツ)、ジョルジーニョ(78 パーティ)、エンケティア(78 ジェズース)、ヘヴン(84 ガブリエル)、ニコルズ(84 ホワイト)
この試合でデビューも期待されたカラフィオーリは、ベンチにも入らず。同じくベンチに入らなかったティンバーは、連続してプレイしていたのでお休みということ。ケガなどではなかったようである。実質一年のブランクがある選手だから、慎重になって当然ではある。ふたり仲良く並んで試合を観ていた。
スターティング11については、マルティネリのLW、ハヴァーツのL8、ジンチェンコのLBという左サイドのトリオについて、「ワークしないことはわかっているのになぜ?」とアルテタのセレクションに疑問を呈する声が試合前からあった。
ところでこの試合は、リヴァプールのほうがスタートからかなり若い選手を入れてきていて、ベンチも名前を聞いたことがない選手ばかり。シニア選手を揃えてスタートさせてきたアーセナルに比べると、彼らは準備が遅れているのかもしれない。
そしてMo Salahの髪型よ。最初誰かわからんかったね。そういえば、Salahはまだ新シーズンの去就がはっきりしないらしいですな。この試合でも存在感を見せつけ、もし彼が退団するとなればリヴァプールは代替を見つけられるかどうか不安があるという記事を読んだ。ぜひ、シティのKDBともどもそうしていただきたいものだ。
カラフィオーリはファンサービスでちょっとでも出せばよかったのにと思ったが、ファンサービスといえば、この試合はフルタイム後の恒例になっているシュートアウトがなかったのは、リヴァプールの要望だったらしい。新マネジャーのリヴァプールはセットピースも特徴的に観えたし、もしかしたらペナルティでも何か秘策があって見せたくなかったとか? ペナルティ戦は面白いから観たかったけども。
試合の雑感
Pre-season in Philly 🦅
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— Arsenal (@Arsenal) August 1, 2024
結局2-1で終わった試合。まあ全体的にはドロウくらいがふさわしかったんじゃないかと思える。もちろん、リヴァプールが3点取っていた可能性のほうが高かったからアーセナルが勝ちにふさわしかったとは云わないが、アーセナルの後半のカムバックからすると、控えめにいってドロウくらいがフェアだったんじゃないかと。
この結果に、試合後はアーセナルファンのあいだで個人が散々な云われようであるが、それは前半のアーセナルの消極的アプローチによるフラストレイションも大いに関係があると思ったものだ。
前半、最初の数分だけはほんとうに声が出るくらいシャープなチームプレイをしていたアーセナルだったが、すぐに流れはリヴァプールに。上の攻撃モメンタムのチャートを観ても、13分に決まったSalahのゴールはそうした流れを奪い返されたあとで生まれたもので、ミケルのいう「ワンアクションで失点」は若干語弊があるように思う。
そして、その流れをつくったのはやはり安全第一のハインのロングボールだろう。信頼できるレギュラーチームではないし、ハイプレッシングのなかでバックからのプレイでボールを失うリスクをかけたくなかったのは理解できるが、あれではあまりにも消極的過ぎるように感じた。ハインはラヤのようなロングパスの精度はないし(今回のロングボール成功は4/16)、仮に高い位置でボールを失うリスクは回避できても、毎度簡単に相手にボールを与えるだけで、ターンはつねに相手にあり。こちらのプレイは連続せず、勢いが生まれない。逆に相手を勢いづかせることになってしまった。
だから、観ていて、非常にフラストレイションがたまる前半だった。
もちろん、リヴァプールのようなビッグチームとの対戦であり、プリシーズンで選手も違うがためのアプローチだと信じたいが、あれはシーズン中にもありえることだ。
アルテタというコーチは、わりと保守的というか慎重なアプローチを取りがちなコーチであり、ときにそれが慎重すぎると感じることがある。彼がアーセナルに来てからは、バックからのプレイにもっと積極的に挑もうとしていた時期もあるので、考え方の移り変わりもあるのだろう。
しかし、「勢い(momentum)」はよくアルテタ自身も言及することであり、試合に勝つために、試合を優位に進めるために、ゴールするために非常に重要な要素だと思える。ブライトンのようにとまでは云わずとも、より積極的アプローチでプレイすることは新シーズンの課題になりえるのではないかとこの試合を観て思ったのだった。
と、そういう試合だったし強固な守備を誇るわれわれが2失点もしてしまったので、ファンはイライラしていて、HTもFT後も選手個人がとても攻撃されていた。
なかでも大きな批判を受けているのがトーマス・パーティ。最近ぼくは、6の選手を「ライスの6での配球」とくらべてどうかを観るようにしていたので、この試合の彼にそこまで悪い印象はなかったのだが、「走れない」「守れない」とあまりに批判をされているので、なにか見逃してしまったプレイがあったのかと思うほどであった。
試合全体を観ずにこのハイライトだけ観たら、彼はかなりいい試合をやったようにしか観えないだろう。ライスの6にはないパスがある。
🇬🇭Partey vs Liverpool – Preseason
Really, really good on the ball. So progressive. But he’s a problem in defensive transitions. Struggles to cover ground. Needs a double pivot partner in bigger games, imo.pic.twitter.com/whPfp868tz
— 🇳🇴 kimmoFC (@kimmoFC) August 1, 2024
彼がとくに大きく批判されているのが「守備トランジション」で、単独6としては致命的だと。アルテタも試合後にトランジションのまずさを挙げていたように、そこでパーティが悪目立ちしてしまった。
昨シーズンの終盤に、彼が5試合だったか連続してスタートしたときも、その期間の被xGがかなり上がっていたというデータがあって、パーティの悪影響という指摘はあった。
この試合でも、パーティのプレイにアルテタがタッチラインで大きな落胆の様子を見せていたという話もあるし、アルテタがそれに気づいているのなら(気づいていないはずはないが)新シーズンの6はどうするつもりなのか、とても気になる。
最近ファンのあいだでは、Mikel Merinoとウィンガー/ストライカーが来れば、この夏の移籍ウィンドウは大成功のような雰囲気もあるが、Merinoは8で持ち味を発揮するMFであり、ライスを引き続き6に据えるとなれば、EURO2024でイングランドが見せたようなビルドアップの問題はアーセナルにも起きうる。カラフィオーリがライスのとなりに来て、劇的に事態が変わるとか?
高齢で高給のパーティに具体的な引き合いがなく(サウジはどうなった)、来年の契約切れ覚悟で彼がチームに残りそうななか、新シーズンでアルテタがパーティをどう評価しているのか、とても気になるところだ。
あとはパーティとともに、大きく批判をされていたのは、ジンチェンコとネルソンだろうか。
ジンチェンコはまあアレだね。今回のゴールの起点になったプレイもあるように、これまでどおり攻撃面では文句の付け所はない。むしろ相変わらずボールを持てば、違いをつくってくれる漢。
だが致命的に守備ができない。彼が対峙したのは、いまもワールドクラスと云われるSalahだからという擁護もあるが、そうでなくとも守備は安心して観ていられないのは確か。アルテタは彼をMFで使うつもりもないようだし、そもそもアルテタはMFにもかなり守備力を期待する。ハヴァーツやMerinoを取ろうとしていることからも明らか。
この夏に彼を売却するとは思えないが、今年はカラフィオーリも来て、これまで以上にベンチを温める時間が長くなりそうに思える。
それとネルソンも、まあいつも通りに観えた。彼は、ちょっとプレイがワンパターンというか、一度成功したプレイとまったく同じことを繰り返そうとする傾向があるように思う。だから二度目は成功せず、いいプレイがつづかないので観ていてフラストレイションがたまる。
たとえば、同じウィンガーでもサカは相手にとっていつも予測できないことをやろうとしていて、それが彼を「ダブルチームでなければ止められない」選手にしている。そういう頭脳がある。ここ数年、彼が意識的に弱足(右足)を使おうとしていたのも、予測不可能性をもっと向上させるためだろう。
サカのような予測不可能性を身につけることは、ネルソンがウィンガーとして成長するためにかなり重要なことだと、彼のプレイを観てあらためて思うのだった。
この試合については以上。
さてUSツアーもこれで終わり。一週間で3試合だから、なんだかんだすごくタフな日程だった。W1 D1 L1という結果は、気にすることはないね。インヴィンシブルズだってプリシーズンには敗けた。誰もケガなく終えてよかった。
ケガといえば、マンUはプリシーズンでかなり悲惨なことになっちゃったみたいである。アーセナル戦でやったYoroが3ヶ月、Højlundが6週間、AntonyとRashfordもケガだとか。選手の深刻なケガはあんまりプギャーできないけど。
マンUに行った16才のChido Obiが、ファーストチームのサードストライカーになるという話があって(そういう条件で勧誘したとか)、Højlundが不在なら彼がセカンドということ? PLでいきなりベンチ入って、なんならプレイするの? これは大胆すぎるので、ぜひ観てみたい。笑いものになるか、センセイションになるか。
新シーズンのアーセナルも去年のようなチームの奇跡的フィットネスは、期待しないほうがいいでしょうな。シーズン終盤でほとんど全員フィットしているなんて、あんなの、めったにないことだろうし。ケガに備えよ。
ここでニュースです。このたび、ロシアと各国の受刑者交換によって、長らくロシアで拘束されていたWSJの記者、Evan Gershkovich氏が釈放されたということ。
Russia to free Evan Gershkovich and Paul Whelan in prisoner swap
アメリカやノルウェイ、ドイツなどは計8人のロシア人を解放し、いっぽうロシアが解放した16人のなかに彼が含まれた。
彼は熱心なアーセナルファンということで、アーセナル界隈でもずっと安否が心配されていたのは、以前このブログで触れたとおり。
これはよいニュース。
アーセナルは移籍関連で、Merinoやエンケティアなど、また風雲急を告げそうな状況がいくつかある。大きな動きがあれば、またこのブログでお伝えしよう。
ではまた。COYG!