試合の論点
アーセナル vs クリスタル・パレスのトーキングポインツ。
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— Arsenal (@Arsenal) December 19, 2024
前後半の劇的変化でオーデガードの偉大さを再確認。ゲイムチェンジャー
前半も後半も、ほとんどの時間でわれらがボールを持って試合をコントロールしてはいた(ポゼッション前半70%、後半71%)。
だが、4分というしょっぱなに失点したおかげで、最初から1点を追いかける立場でゴールのプレッシャーがじんわりとにじみ、時間がたつにつれなんだか息苦しくなっていった感じがある。攻めても攻めてもこじ開けられないというのが、最近のアーセナルトレンドだから。そのうち疲れて逆襲されて。みたいな。
この攻撃モメンタムのチャートも既視感がかなりある。ボールを持って攻撃しているのはほとんど一方的なのに、なぜかゴールできない(※前半まで)。
1-0でリードされて迎えたHTのときの感想は、not good enoughとしかいいようがなかった。とても悪いパフォーマンスというわけではないけど、リズムに乗れず、どうにもクリックしない。つねに何かが足りないと感じるような。もちろんゴールもなし。
これって、フラム戦やエヴァトン戦で、試合を通して感じたこととそっくりだったんだよなあ。
しかし後半、キャプテンMØ効果でこれががらりと変わる。後半開始からサリバとオーデガードが入り、ティンバーがRCBからRBにポジションを変更。
後半から20分くらいの波状攻撃はすごかった。怒涛の勢い。スタンドのプッシュもかなりあった。あそこでひとつゴールできたのは大きい。
そのあとサカも入ってチームプレイに貢献することになったが、やはりオーデガードの存在感は別格だっただろう。
決して近くにいるとはいえないストライカーを見つけ出す、あの目の覚めるようなスルーボール。ご飯が何杯でもたべれる。それを2回もやった。
ああいう野心的で挑戦的なパスがチームには必要だったし、固い守備を打破するためのスーパープレイが必要だった。ミケルの云うmagic moment。彼のような選手がまさにゲイムチェンジャー。45分のプレイでアシスト2を記録した。
オーデガードの個人能力が超絶すごすぎだが、あともうひとり効果的だった選手として後半からRBでプレイしたティンバーを挙げたい。右サイドでの彼の貢献もまったく小さくなかった。オーデガードの活躍をサポートした。彼は前半もRCBとしてもビルドアップでかなり効いていたが、高い位置で攻撃的にプレイすることでも持ち味が発揮された。彼のあの狭いエリアでプレイできるスキルはとても貴重。ジェズースの2点め、アシストのサカをプリアシストしたのも彼。
この試合で右8でスタートして前半だけで下がったワニエリは、残念ながらあまり活躍できなかったが、この日の後半の師匠のパフォーマンスはしっかり見返しておくべきだろうと思う。AMでプレイする選手として、彼が学び吸収できそうなものがかなりありそうだから。
しかし、ワニエリはだいぶトップチームでのプレイにも慣れて、周囲の選手にボールも要求するようになっているが、まだチームメイツから100%の信頼を得ているという感じでもない。ビルドアップで下がってボールに触れるのだが、リターンパスを要求してもそれが返ってこないとか。そういうシーンがちょくちょく観られる。チームとして、意識的に彼にもっとボールに触れさせてリズムをつくるというやりかたもあるだろうけど、まあ17才はこれからだね。
試合後、チームとして、今回の前半の停滞や物足りなさをどう分析するだろうか。今回は、オーデガードやサカのような選手がベンチにいたおかげで試合途中から流れを変えることに成功したものの、ふだんのPL試合などでは彼らは最初からピッチにいる。そのような状況でも、フラムやエヴァトンのようなことが起きている。
今回の前半のような展開を観ると、「これからも同じことをやりつづけるだけ」でいいのかどうか、若干の不安はある。
このような試合を経験してから、今後アーセナルの試合がどのように変化していくか、注目しよう。
ガブリエル・ジェズースは復活した?
突然の3ゴール。びっくり。
というか、残念ながら2点めはわりとはっきりとオフサイドで、もしこの試合にVARがあれば取り消された可能性が高い。この近距離でラインズマンが観えなかったように思えないので、空気を読んでくれてありがとう。
だが、それでもあのジェズースがあんなふうにゴールを決めたことが驚いたし、うれしい。
1点めは、往年の彼が帰ってきたみたいな彼らしいゴールだった。オーデガードのスルーボールに反応して、ハーフターンでボールを受けるとボックスに侵入、タックルしてきたDFをひょいっとジャンプでかわし、ショットもGKもひょいっとかわすやつ。ひょいひょいっと。スキルフルなゴール。いかにも彼らしい。
そして2点めと3点めは似ていて、どちらもGKとの1 v 1を冷静に決めた。右足だと難しいだろうファーサイドの奥。あれは、どちらもすごく自信を感じたなあ。自信は、彼にずっと足りなかったもの。
これまでのああいう状況での彼は自信なさげな感じがありありで、よくショットを外してしまっていた。9なら簡単に決めなきゃいけないということが、プレッシャーになっていたみたいに。そうして長いあいだゴールができていなかった。
ゴール以外にも、彼らしいシャープなターンでDFをかわしてショットみたいなシーンもあった。切れてる。
どういう心境の変化でこうなったのかはよくわからないが、まあいずれにせよ、こうなった。カラバオカップというプレッシャーのあまりない試合というのもよかったのかもしれない。
試合後のメディアの反応などを観るに、もうストライカーの補強がいらないとか、まるで救世主のような書き方をしているのもあるのだが、ぼくはそこまではまだ信じられていない。
アルテタも云うように、今後次第だろう。フットボーラーにとって難しいのは安定してパフォームすること。とくに、今回はカラバオカップであり、ホームである。もっともっと厳しい状況で違いをつくれるかどうかが問題で、ひきつづきゴール・アシストの決定的仕事ができるかどうかでストライカーとしての真価が問われる。
ただ、これが明るい材料なことには変わりない。とくにチームにとっては大きい。もし、これからジェズースがまともな戦力として数えられるようになるなら、攻撃オプションの幅はかなり広がるし、なにより試合中に変化をもたらすことができるのはアルテタにとってかなり助かるはず。
1月にストライカーを取る可能性などもともと低かったと思うが、リスクをかけて新しい選手を取るよりも、ジェズースが復活してくれたほうがずっといいに決まっている。
アルテタは、今後ジェズースに時間を与えていく必要があると述べた。今回の活躍はさすがに目覚ましいので、この勢いをなんとかキープしたいところ。土曜のPLパレスで彼をひきつづきスタートさせるか、ハヴァーツに戻すかは、けっこうマジで悩ましくなったんじゃないかと思う。同じ相手だからとくに。
そのほかよかった選手とそうでもなかった選手
トロサールのことをちょっと書きたい。彼はよかった。すごく効いていた。
前半はスターリングの右サイドが停滞していたおかげでもあり、チームとして左サイドからの攻撃がいつもより多かったのは彼のおかげもあるだろうし、後半にジェズースがLW、トロサールが9とポジションを交換した時間帯もよかったと思う。
試合前にマルティネリのことを書いたから、とくにトロサールの左ワイドでのタッチラインしぐさを観察していたら、なんだかボールのもらいかたがうまいと思った。
ネリが止まった状態でボールを受けてからの1 v 1で苦しんでいるとき、タッチラインのトロサールはランの勢いを殺さずにボールを受けるから、縦に相手を抜きやすいとか。あれは本人の問題なのか、パスの出し手の問題なのか、両方なのかよくわからないけど。とにかく、ネリがワイドの1 v 1で苦しんでいるようなプレイのやりかたは全然感じなかった。
コーチたちはこの両者のLWのプレイの違いをよく分析する必要があるんじゃないだろうか。今回トロサールは90分プレイしたので、週末のPLではマルティネリが戻るだろうし。彼をうまく使わないといけない状況は変わっていない。
この試合のトロサールはよかった。
あとは、ちょっと残念なのはまずキヴィオール。ビッグガビ不在で最近めっきり高評価だった彼ながら、いきなりやらかしてしまった。失点は完全な個人エラーから。Matetaへのロングボールはパレスの典型的やりかたで、警戒している必要があったはずなのに、あんなに簡単に出し抜かれるとは。彼はそのあとも似たようなかたちで裏を取られているのは印象が悪かった。
パレスのああいうダイレクトプレイは、週末のPLでも狙ってくるはずなので、注意すべし。
スターリングも残念なひとりか。ジェズース大復活の影で、相変わらず停滞しているひと。彼を使わないのは宝の持ち腐れみたいなことを云うファンもいるようだが、あのパフォーマンスでは使われないのもしかたなし。彼は、千載一遇みたいな絶好のゴールチャンスも逃してしまった。フリーキックは惜しかった。
KTはよかったんじゃないか。長期間のブランクはそこまで感じなかった。
アーセナルのLBとしては、インヴァートしてCMでプレイするのがお約束だが、アルテタはKTに合わせたのか、彼は左ワイドのLBポジションでプレイしていたようだ。オーヴァーラップからのクロスなどもあったし、彼のクラシックなFBスタイルをリスペクトしたのかもしれない。それでいいと思う。
今シーズン、彼が今後こうしてプレイ機会を得ていくのかはわからないものの、少なくとも実戦で使えることがわかったのはよかった。スクワッドのLB状況はいまだに不透明で、今後も何があるかわからないから。人数はいたほうがいいに決まっている。
今シーズンかぎりのKT
と、そのKTについて、試合後にオーンステインから残念なおしらせが。
🚨 EXCL: Kieran Tierney to leave Arsenal in summer at latest after club decided against using option to extend contract. #AFC deal ends June & date to add 1y gone. 27yo can pre-agree with non-English clubs (or possibly go permanently) in Jan @TheAthleticFC https://t.co/nycJxvN22S
— David Ornstein (@David_Ornstein) December 18, 2024
来年6月に契約切れのKTについて、一年延長オプションを持っているAFCが、それを使わないことを決めたということ。つまり彼のフリーエイジェントを認める。そのため、彼は1月には海外クラブとプリコントラクトを結ぶことができるし、1月の移籍もありえるとオーンステイン。
こういうタイミングでこう来たか。
今年かぎりの彼の移籍は既定路線だったとはいえ、あんなふうに久しぶりにプレイして、ファンからも愛されていると再確認した直後。夢から現実に戻ったみたいである。
Feels amazing to be back out at the Emirates! Thank you so much for the reception… always grateful ❤️ Onto the semis 💪🏼 @Arsenal pic.twitter.com/T6WbJ9sOOO
— Kieran Tierney (@kierantierney1) December 18, 2024
彼は、やっぱりセルティックに戻るんかな。心のクラブ。それがいちばんいいような気もする。彼のケガ履歴を含めて受け入れてくれるクラブは多くなさそうだし。
Celtic are expected to push for the signing of Kieran Tierney from Arsenal and are ready to battle Premier League clubs for the left-back’s signature. @TeleFootball https://t.co/SJTqd7oxLW
— Sam Dean (@SamJDean) December 19, 2024
それでも、今シーズンまだ時間はある。また彼のプレイを観られることを期待しよう。
この試合については以上
アーセナルのつぎの試合は土曜のPLクリスタル・パレス(A)。
アウェイだから、今回よりもタフな試合にはなるだろうが、相手が積極的になってくれたほうがいいこともある。
カラバオカップの100倍は重要なPL。今回の試合の勢いをつぎもぜひ活かしたい。
ではまた。
COYG!