試合の論点
アーセナル vs ととなむのトーキングポインツ。
Securing our fifth Premier League north London derby double 🔐
All the highlights from a special evening in N5 📺 pic.twitter.com/k0o3Yf3Y6o
— Arsenal (@Arsenal) January 16, 2025
タフな状況を乗り越えてNLDに勝利。PLをあきらめない
この勝利はかなり大きい。ダービーマッチに勝つのは、いつだって大きな意味があるものだが、いまのわれわれの状況からすれば3ポインツ以上の価値がある。
今週は、この試合の前にリヴァプール、フォレスト、チェルシーとPLのトップ4のうち3チームがポインツを落としていたため、絶対にここで3ポインツがほしかった。こういうとき、ライバルチームに付き合ってしまうのもアーセナルあるあるだったので、ここでそれに付き合わなかったことは、なお素晴らしい。運命に抗った。久しぶりにリヴァプールと結果を揃えなかったということもある。
これでアーセナルは、トップのリヴァプールと4ポインツ差の2位。一時的に奪われていたポジションに戻った。リヴァプールは1試合消化が少ないとはいえ、ポッシブル9差を7差に縮めることができた。まだシーズン半分残っていることを考えれば、われわれはかなりいい位置にいると思ってよさそう。
直近のニューカッスルとマンUの2連敗はカラバオカップとFAカップで、PLでもCLでもなかった。だから、考え方を切り替えればよかった。
だが、それをやるのは云うほど簡単なことではなかったはず。そもそもチームは過密日程で疲弊していたし、キープレイヤーにはケガ人続出で、ちまたではフィニッシュ問題が注目されゴールへのプレッシャーは高まっていた。一部ファンからの大きな反発も。とても、チームが心身ともに万全で臨んだ試合ではなく、自信レヴェルも落ち込んでいた。
だが、それでも試合には勝った。ホームでファンの期待に応えた。そこが重要だろう。やはりこうでないと。
この試合の結果は、今シーズンの重要な転換点だったとあとで振り返るようにせねばならない。
ちなみに、アーセナルの現在の成績は、最後までタイトルを争った昨シーズンのこの時期とほとんど同じだったりする。ポインツもGDも同じ。驚くほど似ている。
つまり今シーズンここまで、ぼくらはずっとひどいシーズンだと思い込んでいたが、いまのポジションはPLのタイトル争いをあきらめるどころか、これならまだ大いに野心を持っていいということ。なんという元気の出るスタッツか。もちろん、今後も楽観は全然できないわけだが、すくなくとも可能性はある。ミケルが最近よく云う、自分たち次第。
もし今回望んだ結果を得られなかったらまた絶望的な気分になっていただろうが、相手がToTだったおかげでむしろ大きなはずみにもなった。
アーセナルのシーズンは、まだまだ終わらない。ありがとうガナーズ。
依然として残るアーセナルの攻撃問題。求むケイオス
せっかく勝ったのに、ちょっとネガティヴなことを書く。
25分に、ToTがコーナーキック(ショートコーナー)の流れでゴールを決めたときは、ほんとうにがっかりしたものだ。あれほど自分たちが一方的に攻めている展開にも関わらずゴールは決まらず、逆になぜか相手にはワンチャンスを決められてしまう。そういう最近の試合展開をそのまんまなぞっているような失点だったから。
Sonのショットは、ディフレクションもあったので、アーセナルには不運もあったが、その不運もまた最近のアーセナルらしかった。ここでも、呪われているような不運はつづくのかと。
もっとも、その後40分にはアーセナルがコーナーからゴール(ビッグガビのヘッダーによるゴールではなくソランキのOGと記録。コーナーの判定にはやや幸運もあった)、またその直後の44分には、トロサールが目の覚めるようなショットでゴールを決めて逆転したし最終的には気持ちよく勝ったので、なんだか有耶無耶にされそうになるが、前半のアーセナルが逆襲するまでの試合展開を考えると、これまでのフィニッシュ問題や根本的な攻撃問題は、依然として未解決として残っているんじゃないかと思わないではいられなかった。
もし、あのトロサールのゴールがなかったら。またこれまでと同じように最後まで苦しんだかもしれない。後半の選手たちの疲労っぷりやベンチの攻撃オプションのなさを見れば、それもかなりありえたと思う。そしてアーセナルにとっては、ここでドロウなら敗けみたいなものだった。
ぼくは試合前のブログ記事で、秩序と混沌についてちょっと書いていて(思いつきで書いたつもりだったけど、以前にも似たようなことを書いてたかも)、そういう目線で今回の試合も観ていたんだが、やっぱり考えていたとおりのことが今回も起きていたと感じていた。
ToTは、もちろんアーセナルがほとんどの時間を圧倒できるほどクオリティの低い相手ではないが、それでも今回とくに前半はかなりアーセナルが彼らを支配した。その結果、相手は深く守る時間もそれなりにあった。そうなったときに、いつもの見慣れた風景があらわれる。
「攻撃がどんどんワンパターン化」「予測可能な攻撃」。
などとメモっていた直後に、あの失点が起きた。
それをとくに思ったのは、右サイドのいつものエリア。オーデガードがボールを持ったときに、スターリングに預けて、ティンバーが近づいていって、また戻して……という3人の関係。何度も何度も繰り返し似たようなパターンで、とくに意外性もなく、つねに相手のDFの目の前でボールを回している。時間がたつにつれ、相手もそれに慣れてきて、つぎに何が起きるか予想できるようになっていって、どんどん状態が固定化されていくという感覚があった。
ゴールがつねに<混沌>から生まれるイレギュラーな事態だとしたら、<秩序>のなかではそれが起きにくくなってしまうという。いくらボールを持って試合をコントロールしているつもりでも、ゴールがいっこうに決まらない。それをおかしいとか不運だとか思ってる。それがずーっとつづいているのがいまのアーセナルだろう(というか秩序を壊すのがゴールと云ったほうがいいのか)。
それは、サカがスターリングになったことの影響も大きい。このチームはサカがいてさえああいうことがよく起きていたが、彼の場合はそこから自力でmake things happenすることができた。事態を動かすことができた。スターリングには残念ながらそれがないので、ただあのエリアでボールを持つ時間が長くなるだけみたいになってしまう。しばらくすると無理めなチャレンジを奪われて。それも想定内。観ているぼくらも、ああまたかと思う。
シュートへの消極性も、まるで秩序(なにも起きない状態)を守ろうとしているように観えてしまう。今回、試合のなかで何度も何度もチャンスがあるのにそれを活かせない、スタンドのため息をさそうようなプレイがあった。とくにボックスに侵入しているにも関わらずシュートを選択しないようなとき。ぼくのメモだと74分に思わずメモりたくなるくらいのやつがあった。オーデガード。
キャプテンはこの試合でもかなりシャープさが戻ってきた感じがあるが、このまえもペナルティを外したり、今回もビッグチャンスを外すなど、ゴールに関しては以前の感覚を取り戻せていない。
ロング/ミドルレンジ(ボックス外)のショッツ%がPLでもっとも少ないチームとして、このメンタリティは本当にどうにかしたほうがいいんじゃないだろうか。試合には勝ちたいくせに、シュートやゴールに貪欲じゃないなんて、やっぱりおかしいでしょう。本質を見失っていると思う。
以前ジェズースについて、アルテタが「ゴール前でケイオスをつくれる」と絶賛していた時期があるが、こういう試合を見ると、むしろいまになってまたゴール前での混沌はどんどん排除されているように感じる。そして、いつまでもゴールが決まりませんと苦しむことになる。
そういう状況のなかだったからこそ、あのトロサールのゴールはほんとうに久しぶりに気持ちよかった。あれは、最近のアーセナルとしては異例のショットでしょう。いちおう彼はボックスには足を踏み入れているが、いかにもあそこからシュート以外のオプションを探してしまいがち。
先に書いたようにこの試合でも前半あれだけの支配でショッツが4しかなかったなかで、トロサールのあのショットは、まさに打ってほしいときに打ってくれたから。思わず「打っちゃえ!」と画面に向かって小さく叫んだところで打って決まった。なぜそこでシュートを打たないんだ!とつい云いたくなってしまういまのチームでは、かなり欠けている決意あるシュートとゴールだった。
そういう点で、ストライカー補強のことを考えると、CLスポルティングでみた、Victor Gyokeresはよかったなと。彼のメンタリティは、いまのアーセナルのチームではおそらく完全な異物だろう。ひとりよがりで、成功率の低そうな無理めなショットもまったく躊躇しない。場合によってはチームメイトからひんしゅくも買いそう。
でも、そういう異物がいまの整理整頓されたチームにすごく必要だなと。そういう混沌がチームに含まれていれば、今度は秩序でもゴールもできそうに思える。相手はつぎになにがどうなるか予測できないんだから。いまはとにかくワンパターンで予想可能すぎる。
最近のアーセナルの攻撃が停滞している問題にははっきりと傾向や理由があると、今回あらためて感じた。フィニッシュだけじゃない。アルテタは、とくにこの2試合は何度も「パフォーマンスにふさわしくない結果」と主張しているが、パフォーマンスにふさわしくない結果の試合を、連続して2つも3つも繰り返してしまうなら、やっぱりなにか理由はあるはずなのだ。解決されるべきなにかが。
アーセナルはビッグ6との対戦でたいへんに優秀な成績を残しているのは、そういったことも無関係ではないと思う。相手が強ければ強いほど、攻守の役割が固定されず、混沌状況も生まれやすいから。われわれは、相手が役割を固定し守ろうとしたときのほうが、よほど苦しまされるという気がする。
It’s been 630 days since Arsenal lost a Premier League game against the big six 😳 pic.twitter.com/17kuH4jIab
— Football on TNT Sports (@footballontnt) January 15, 2025
だから、やっぱりアーセナルはこの混沌状況をつくるということに、もっともっと意識的で意図的でなければいけないと思います。
この冬はいっそアダマ・トラオレを買ったらどうだろう。つぎになにすっかわかんないひと。彼みたいなのがいたら、きっとどさくさでゴールも決まるようになる。