おはよう。
さて、昨日は今シーズンのUCLでプレイする登録スクワッド(リーグフェイズ)の発表があった。UEFA公式サイトでも確認できる。
Arsenal | Squad | UEFA Champions League 2025/26
アーセナルが発表したリストのなかでも注目は、23名のなかに含まれたマックス・ダウマン(15)。彼は来る12月31日が16才の誕生日なので、それまでにCL試合でプレイすればUCL史上初の15才CLプレイヤーになるということ。これは歴史的できごと。
彼はそもそもCLでプレイする資格があるかどうかは、ファンのあいだでもこれまでさまざまな憶測があったが、こうしたかたちで疑問に応えることになった。
しかし、今回15才の彼が「リストA」に登録されたことについては新たな疑問となっている。ワネーリやMLSといった18才の選手でさえ、リストBに登録される見込みだというのに。
今回はそれについて。
アーセナルの25-26 UCLスクワッド(リストA)
公式にも発表されている。全23名。
Arsenal players on List A
Goalkeepers: David Raya, Kepa Arrizabalaga, Tommy Setford
Defenders: William Saliba, Cristhian Mosquera, Ben White, Piero Hincapie, Gabriel, Jurrien Timber, Riccardo Calafiori
Midfielders: Martin Odegaard, Eberechi Eze, Christian Norgaard, Leandro Trossard, Noni Madueke, Mikel Merino, Kai Havertz, Martin Zubimendi, Declan Rice, Max Dowman
Forwards: Bukayo Saka, Gabriel Martinelli, Viktor Gyokeres
ダウマンのほかに注目は、ガビー・ジェイズースがここに含まれなかったこと。彼はすでにピッチでボールを使ってトレイニングできるくらいには回復しているようだが、残念ながら完全復帰はそこまで近くないようだ。
しかし、ご心配なく。今回発表された登録スクワッドは、1月にはあらためて3名までの追加登録が可能になる(※上限は25で変わらず)。その時点で彼が起用できる状況ならきっとここに含まれるだろう。
いっぽう、先日マイナー手術を行ったというハヴァーツはスクワッドに含まれた。
今回発表されたリストAに名前がないワネーリとMLSは、ふたりともリストBに含まれる見込みということ。
UCLスクワッドのリストAとリストB、“locally-trained”解説
毎年わかりにくいのだが、UEFAコンペティションのルールで、クラブは「リストA」と「リストB」という2種類のスクワッドを登録する必要がある。
それと、今回は15才のCLスクワッドへの登録の可否の件で、UEFAのホームグロウンルールともいえる“locally-trained”(地元育成)にも注目が集まっている。
それらをあらためて確認しよう。アーセナルの公式サイトでも、ちょうどそのことに触れているので以下に引用する。
UEFAの規定により、リストAは最大25人の選手で構成され、そのうち2人はGKでなければならない。また少なくとも、この25の枠のうち8つは「locally trained players(地元で育成された選手)」専用として確保される。さらにこの8つの枠の中では、4名を超える「association-trained players(協会のクラブで育成された選手)」を登録することはできない。
“locally trained”について、くわしく説明がある。
- Club-trained players(クラブで育成された選手):15-21才までのあいだに、クラブで3シーズンまたは36か月間登録されていた選手
- Association-trained players(協会のクラブで育成された選手):15-21才までのあいだに、同じ協会のべつのクラブに3シーズンまたは36か月間在籍していた選手
もしクラブのスクワッドのなかでlocally trained playersが8名に満たないとき、リストAに登録できる選手の人数もそれにしたがい削減される
ちょっとわかりにくいが、これはいわゆるHG(ホームグロウン)ルールとほぼ同じだろう。25名のうち8名がHGで、仮にHGの登録人数が減っても、そのかわりに非HG選手を登録することはできないという。逆にいえば、HG登録の人数に関わらず「非HG枠は最大17名まで」ということ。
リストBについて。
リストAに加えて、大会期間中、クラブは各試合の前夜00:00 CETまでにリストBの提出も行う。これにより、U-21の選手がチームに加わることになる。
リストBに登録できる選手は、2004年1月1日以降に生まれた選手で、15才の誕生日を迎えてから2年間、または1年以内の同一協会内のクラブへのローン期間を1回までとし、合計3年間連続して、当該クラブでプレイする資格を有しているもの。
16才の選手は、過去2年間クラブに登録されている場合に提出できる。
クラブはシーズン中にリストBに無制限の人数を登録する権利があるが、リストは試合前日の00:00 CETまでに提出する必要がある。
各クラブは、リストAに少なくとも2名のGKを含める必要があり、合計で少なくとも3名(リストAとリストBを合わせた)を含める必要がある。
リストBは、U-21選手用のリスト。
アーセナルの“locally trained”は誰?
ここであらためてアーセナルが今回登録したリストA選手を観るに、そのなかでホームグロウン(locally trained)は以下7名になると思われる(※これ間違ってたらごめん)。したがって、アーセナルの最大スクワッドは24名ということになる。
- David Raya
- William Saliba
- Ben White
- Eberechi Eze
- Declan Rice
- Bukayo Saka
- Gabriel Martinell
たしかサリバは、リーグアンにローンされていた時期もHG資格を得るためにアーセナルでスクワッド登録されていたというハックじみた話がありましたね。
英国人のセットフォードやマドゥエケがここに入っていないのは、彼らがユース時代に長らく外国にいたから。セットフォードはアヤックスユース出身で、マドゥエケも16才のときにPSVに移籍しており、イングランドに戻ったのは2023年で、“locally trained”の資格を有さないということ。
そして、おや?と思うのはダウマン。もちろん彼は英国人で2015年から(6才??)アーセナルアカデミー在籍という超生え抜き。そんな彼が、UEFAルールではlocally trainedとみなされないという。
な~んでか?(なんだっけこれ)
マックス・ダウマンは、25/26UCLでHGとしてプレイできない?
この件は、しばらく前にThe Athleticが記事にしていた。それをざっくり紹介しよう。
Arsenal’s Max Dowman and Liverpool’s Rio Ngumoha not classified as ‘locally trained’ for UEFA squads
- UEFAの規則によると、アーセナルのマックス・ダウマン(とリヴァプールのRio Ngumoha)は、CLにおける10代の選手登録に必要な“locally trained(地元育成)”の要件を満たしていない
- リストAスクワッドには最大で25名を含めることができるが、そのうちの8名は“地元育成”である必要がある
- “地元育成”とは、15才から21才までのあいだの期間に、最低でも3シーズンそのクラブで過ごすか(club trained)、あるいは同じ国のフットボール協会のクラブで過ごさねばならない(association trained)
- もしアーセナルあるいはリヴァプールが、彼らをリストAスクワッドに指名するなら、ダウマンもNgumohaも、17名の非地元育成スポットに入れることになる
- さらに、もしチームがリストAスクワッドに地元育成された選手登録を8名未満にした場合、スクワッドの最大人数がその分減る
- たとえば、7人しか地元育成選手を登録しないのなら、スクワッドの最大人数は24名になる
- ユース選手は、その多くがリストBに登録されるが、それはダウマンとNgumohaには不可能
- Ngumohaは2024年9月にリヴァプールに加入しており、彼らのリストBには登録ができない。なぜなら、規則では16才の選手をそのリストに載せるためには、過去2年間中断なくクラブに所属していた必要があると定められているから
- また、ダウマンはユースキャリアを通してアーセナルに在籍しているものの、まだ15才の彼は「15才から21才までの決められた期間」という要件を満たしていない
これは、redditでも議論されていたように、UEFAのルールが現実に追いついていない例と思われる。
要するに、ダウマンのような若年でCLでプレイする選手のことが想定されていない。だって、「15才から21才までの期間で3シーズン」という規則は、もっとも若くても18才の選手しか想定していないということだから。それより若いからHGじゃないというのは、やはり奇妙だろう。
リストBについても、わざわざ追加のように16才の選手に対する規則(過去2年間のクラブ在籍)はあるのに、15才はそこに当てはまらない。
だから、UEFAは、リストAの「15才~21才」の部分を、単純に「21才まで」と変更したほうがいいんじゃないか。リストBは「16才」ではなく「16才未満」とするとか。
すでに15才選手が出てきてしまった現状もあり、この規則は昨今ますます若年化しているフットボーラーの実情に合っていない。リヴァプールに移籍してまだ日が浅いNgumohaはともかく、ダウマンがHG選手とみなされないのはやっぱりおかしいだろう。
あまりにも若い子どもにシニアフットボールの機会を与えるべきではないという議論はあるかもだが、それはまたべつの話だろうし、そもそもこのUEFAのルールにそういった意図があったようには思えない。選手の年齢制限もないのだから。
それにしても、非HG扱いにも関わらずスクワッドに入れたかった15才。なんて少年なのか。マックス・ダウマン。
彼が今シーズンのCLで歴史をつくるのは間違いなさそうだ。
おわり